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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

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第百二十七話 盗まれた巡礼記

 王城・密談室。


 ライオット国王を中心に、王国中枢の者たちだけが集められていた。


 国王ライオット。


 第一王妃ミリア、第二王妃シズク。


 王太子ウィル、第一王女シリス、第二王女アイリス。


 そしてビルセイヤ、セシリア、エミリア、ツバサ。


 さらに王城古文書庫を管理する宮廷学者長、老学者バルトスも同席していた。


 部屋の中央には、一冊の古びた羊皮紙台帳が置かれている。


「確認が終わりました」


 バルトスが深く頭を下げる。


「昨夜盗まれた書物は、間違いなく『世界樹巡礼記』でございます」


「内容を説明してくれ」


 ライオット国王が促す。


 老学者はゆっくりと頷いた。


「約四百年前、アルティア王家に仕えた巡礼騎士が残した旅の記録です」


「巡礼騎士?」


 セシリアが首を傾げる。


「世界各地に残る聖地や霊樹を巡った騎士でございます」


「そんな人がいたんですね」


 アイリスも驚いたように呟く。


「ええ」


 バルトスは静かに続ける。


「ただし、この巡礼記は最後まで完成しておりません」


「未完成?」


 ビルセイヤが尋ねる。


「はい」


 バルトスは別の古い帳簿を開いた。


「巡礼騎士は最後の旅から帰還せず、行方不明となりました」


 部屋が静まり返る。


「つまり……」


 ツバサが腕を組む。


「途中で消息を絶ったってことか」


「その通りです」


 老学者は重々しく頷いた。


「そのため巡礼記も途中までしか残されておりません」


◇◇◇


 バルトスは机へ一枚の古地図を広げた。


「幸いにも、巡礼記の写本作成時の控えが一部だけ残っておりました」


「全部じゃないの?」


 シリスが尋ねる。


「盗まれた本をそのまま写す前段階の下書きです」


「なるほど」


 ウィルが頷く。


 地図には、アルティア王国を中心にいくつもの印が描かれていた。


「この丸印が巡礼騎士の訪れた場所です」


 バルトスが一本ずつ指していく。


「まず王都アルティア。」


「次にルミナスの深森。」


 ビルセイヤたちは顔を見合わせる。


「やっぱり」


 セシリアが小さく呟く。


「そして――」


 老学者の指がさらに北へ動く。


「雪山地帯、フロストヴェール。」


「雪山?」


 エミリアが目を見開く。


「はい。」


「その先に『蒼氷の霊樹』という記述があります」


 アイリスが思わず息を呑んだ。


「白き霊樹以外にも……」


「あるのか」


 ビルセイヤが低く呟く。


「さらに西。」


「『紅蓮の火樹』」


「南。」


「『翠海の霊枝』」


「東。」


「『黄金樹の丘』」


 地図には全部で六か所ほど印が残っていた。


 しかし、その先は破れている。


「ここから先が盗まれた巡礼記に書かれていた部分です」


 バルトスが悔しそうに言った。


「つまり蛇の牙は」


 ビルセイヤが静かに言う。


「残りの霊樹の場所を知った可能性がある」


「はい」


 部屋の空気がさらに重くなる。


◇◇◇


「白き霊樹だけでは終わらない」


 ライオット国王が低く呟いた。


「奴らは世界中の霊樹を狙っている」


「おそらく」


 ビルセイヤは頷く。


「世界樹の根を一つずつ侵食するつもりでしょう」


「そんなことをすれば……」


 シズク王妃が顔を曇らせる。


「世界そのものに影響が出ます」


 エミリアが静かに答えた。


「精霊の流れ。


 大地の魔力。


 森や海。


 全部が繋がっていますから」


 アイリスは枝杖を胸へ抱き寄せた。


 若葉が、小さく震えている。


「怖がってる……」


 彼女は小さく呟いた。


「枝杖が?」


 ビルセイヤが尋ねる。


「うん……」


 アイリスは目を閉じる。


「何か、嫌なものが近付いてるって」


◇◇◇


 その時だった。


 コンコン。


 密談室の扉が叩かれる。


「失礼します!」


 近衛騎士が飛び込んできた。


「陛下!」


「どうした」


「城下で黒衣の集団を発見しました!」


 全員が立ち上がる。


「場所は?」


 ウィルが問う。


「古書店街です!」


「やはり」


 ツバサが舌打ちする。


「まだ王都にいる」


「人数は?」


 ビルセイヤが尋ねる。


「四名!」


「現在、近衛騎士団が追跡しております!」


 ライオット国王が即座に命じる。


「ウィル!」


「はい!」


「近衛第一小隊を投入!」


「ビルセイヤ殿たちも協力願いたい!」


「もちろんです」


 ビルセイヤは即答した。


◇◇◇


 王城を飛び出す。


 石畳を全力で駆け抜ける。


 夕暮れの王都。


 人々は突然走り出す騎士団を見て慌てて道を開けていく。


「古書店街は西側だ!」


 ウィルが先頭を走る。


 その後ろをビルセイヤたちが続く。


「相変わらず速いな」


 ツバサが苦笑する。


「王子なのに」


「鍛えてるからな」


 ビルセイヤが短く答えた。


 数分後。


 一行は古書店街へ到着する。


 しかし。


「いない?」


 セシリアが周囲を見回す。


 近衛騎士たちが辺りを封鎖しているが、黒衣の姿はない。


「逃げられたか」


 ウィルが悔しそうに拳を握る。


 その時だった。


「ビルセイヤ」


 エミリアが静かに呼んだ。


「こっちです」


 路地裏。


 石壁に、小さな印が刻まれている。


「蛇の牙」


 ツバサが吐き捨てる。


 しかし今回は少し違っていた。


 蛇の印の横に、さらに一本の線。


 北を示す矢印だった。


「北?」


 セシリアが眉をひそめる。


「フロストヴェール……」


 ビルセイヤが静かに呟く。


 地図で見た最初の霊樹。


 蒼氷の霊樹。


「奴らは次の目的地を示したのか」


 ウィルが低く言う。


「挑発かもしれない」


「いや」


 ビルセイヤは首を振る。


「急いでる」


「?」


「俺たちに見つかる前提で逃げてる」


「つまり」


 ツバサが目を細める。


「もう先に向かってる」


「ああ」


 ビルセイヤは頷いた。


「時間がない」


◇◇◇


 その夜。


 再び密談室。


 ライオット国王は静かに結論を告げた。


「ビルセイヤ殿」


「はい」


「休む間もないが、次の任務を頼みたい」


 ビルセイヤは黙って頷く。


「目指すは北方雪山、フロストヴェール。」


「蒼氷の霊樹を守ってほしい」


 その言葉を聞いた瞬間。


 アイリスの枝杖が、再び優しく光った。


 そして白き霊樹の加護枝も、小さく共鳴する。


 まるで。


 ――行って。


 そう背中を押しているようだった。


 ビルセイヤは静かに加護枝を握る。


「必ず守ります」


 世界樹を巡る戦いは終わらない。


 白き霊樹の次は、蒼氷の霊樹。


 蛇の牙との戦いは、ついにアルティア王国の外へ広がろうとしていた。


 新たな旅路。


 新たな霊樹。


 そして、新たな試練。


 ビルセイヤたちは再び北を目指すことになる。


――続く。



第二章・「霊樹巡礼編」が本格始動しました。


次回、第百二十八話では、王都出発前夜、アイリスとの再会、そして白き霊樹から託された加護枝の新たな力が明らかになります。

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