表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
175/227

第百二十六話 白き霊樹の加護枝

 白き霊樹の加護枝と、アイリスの翡翠の枝杖。


 二つが共鳴した瞬間、応接室は柔らかな翡翠色の光に包まれた。


 光は暖かく、眩しさはない。


 春の日差しのような優しい輝きだった。


「きれい……」


 アイリスが思わず呟く。


 胸に抱えた枝杖は、小さく震えるように光を放ち、白き霊樹の加護枝へ向かって若葉をゆっくりと揺らしていた。


 まるで再会を喜ぶように。


 あるいは、離れ離れだった家族を見つけたように。


「これは……」


 ライオット国王も目を見開く。


 シズク王妃は思わず胸元へ手を当て、シリスも扇子を閉じたまま光景を見つめている。


 ウィルだけは静かに目を細めた。


「本当に、生きているようだな」


「ああ」


 ビルセイヤは小さく頷いた。


「ルミナスの深森で、白き霊樹から託された枝です」


 その言葉で、部屋の空気が変わった。


「白き霊樹……」


 ライオット国王が静かに呟く。


「話を聞かせてもらおう」


「はい」


 ビルセイヤは一礼した。


◇◇◇


 応接室の机には、ガルディア辺境伯ダリウスから預かった封書が広げられていた。


 ビルセイヤは王都を出てから今日までの出来事を、一つひとつ丁寧に説明していく。


 ガルディアで起きていた異変。


 翡翠に侵された魔物。


 白枝の泉。


 蛇の牙。


 黒杭。


 森の民。


 そして、白き霊樹。


 部屋の誰一人として口を挟まない。


 静かに耳を傾けていた。


「……以上です」


 話し終えた頃には、部屋は重苦しい沈黙に包まれていた。


「まさか……」


 シズク王妃が小さく息を呑む。


「世界樹へ繋がる霊樹が、本当に存在していたなんて……」


「しかも蛇の牙が狙っていた」


 ウィルの表情も険しい。


「父上」


「ああ」


 ライオット国王は重々しく頷いた。


「事態は、想像以上だ」


◇◇◇


 その時だった。


 アイリスがそっと手を挙げた。


「あの……」


「どうした?」


 ライオット国王が尋ねる。


 アイリスは少しだけ遠慮がちに、白き霊樹の加護枝を見つめた。


「その枝……触っても、いいですか?」


 ビルセイヤは少しだけ微笑み、加護枝を差し出した。


「もちろんだ」


「ありがとうございます」


 アイリスは両手で丁寧に受け取る。


 その瞬間だった。


 白き霊樹の加護枝が淡く輝き、アイリスの枝杖も強く共鳴した。


 翡翠色の光が部屋いっぱいへ広がる。


「えっ?」


 アイリスが驚く。


 加護枝から、小さな光の粒が浮かび上がった。


 その粒はゆっくりと枝杖へ吸い込まれていく。


 すると――


 カサリ。


 枝杖の先端から、新しい若葉が一枚芽吹いた。


「増えた……!」


 セシリアが目を見開く。


「本当に成長したわ」


「そんな……」


 アイリスは震える声で枝杖を見つめた。


「昨日まで一枚だったのに……」


 今、若葉は二枚になっていた。


 しかも枝そのものも少しだけ長くなっている。


「成長してる」


 エミリアが優しく微笑む。


「白き霊樹が認めた証ですね」


◇◇◇


 すると、アイリスは突然目を閉じた。


「アイリス?」


 シズク王妃が心配そうに声を掛ける。


 だがアイリスはゆっくり首を振る。


「……何か、聞こえる」


「聞こえる?」


 ビルセイヤが問う。


 アイリスは静かに頷いた。


「風の音じゃない……」


 翡翠色の光が、さらに柔らかく揺れる。


 部屋の全員が息を呑んだ。


「"ありがとう"って……」


 その言葉に、エミリアが目を見開いた。


「まさか……」


「白い木……」


 アイリスは小さく呟く。


「白い木が、お礼を言ってる」


 部屋は完全に静まり返った。


 世界樹の声。


 いや、正確には白き霊樹の想い。


 それを受け取ったのだ。


「継承者候補だから……」


 ビルセイヤは静かに言った。


「枝を通して繋がったんだ」


 エミリアも頷く。


「精霊魔法とは違います。


 これはもっと深い……


 世界樹の系譜だけが持つ繋がりです」


◇◇◇


 アイリスはゆっくり目を開けた。


 その瞳には、ほんの少しだけ翡翠色の光が宿っていた。


「ビルセイヤさん」


「なんだ?」


「白い木が……」


 アイリスは少し考えるように言葉を選ぶ。


「"まだ終わってない"って」


 ライオット国王の表情が変わる。


「まだ終わっていない?」


「はい」


 アイリスは頷いた。


「"根は繋がっている"


 "白だけではない"


 ……そんな感じです」


 ビルセイヤは加護枝を見る。


 白き霊樹が最後に言っていた。


 世界樹の根は世界中へ伸びている、と。


「つまり……」


 ウィルが低く言う。


「ルミナスの深森だけでは終わらない」


「ああ」


 ビルセイヤは頷いた。


「他にも世界樹へ繋がる場所がある」


 ライオット国王は静かに立ち上がる。


「ならば王国だけの問題では済まんな」


◇◇◇


 その時、応接室の扉が叩かれた。


「失礼します!」


 近衛騎士が慌ただしく入ってくる。


「陛下!」


「どうした?」


「昨夜の侵入事件について、新しい報告です!」


 部屋の空気が一変した。


「話せ」


「古文書庫から、一冊だけ本がなくなっております!」


「何だと?」


 ライオット国王が立ち上がる。


「何の本だ?」


 騎士は息を整えながら答えた。


「題名は――」


 一瞬、部屋が静まり返る。


「『世界樹巡礼記』でございます」


 ビルセイヤの目が鋭くなる。


 世界樹巡礼記。


 名前からして偶然とは思えない。


「内容は?」


「まだ確認中ですが、王家の古い探索記録らしく……」


 ウィルが拳を握る。


「蛇の牙の狙いは、それだったのか」


「いや」


 ビルセイヤは静かに首を振った。


「違う」


「?」


「本そのものじゃない」


 ビルセイヤはアイリスを見る。


「世界樹の場所を知るための地図だ」


 部屋の全員が息を呑んだ。


「奴らは次の霊樹を探し始めている」


◇◇◇


 ライオット国王は深く息を吸い、静かに命じた。


「ウィル」


「はい」


「王都の警戒をさらに強化せよ。


 古文書庫は全面封鎖。


 関係者以外立入禁止だ」


「承知しました」


「シリス」


「はい、お父様」


「各貴族へ極秘通達。


 王都への出入りを厳重に管理する」


「かしこまりました」


「マリア」


「はい」


「アイリスから目を離すな」


「命に代えましても」


 最後にライオット国王はビルセイヤを見る。


「ビルセイヤ殿」


「はい」


「君には、もう一つ頼みたいことがある」


 その声は国王としてではなく、


 一人の父としての願いが滲んでいた。


「アイリスを守ってくれ」


 ビルセイヤは少しだけ考え、


 静かに頷く。


「守ります」


 そして続けた。


「でも、それだけじゃありません」


「?」


「アイリス王女自身が、自分を守れるようにします」


 アイリスは驚いたようにビルセイヤを見る。


「そのために三か月の約束があります」


 ビルセイヤは微笑んだ。


「だから今は、訓練を続けてください」


 アイリスは枝杖を強く握る。


 若葉が、小さく揺れた。


「はい!」


 その返事は、


 以前よりずっと力強かった。


 王都へ戻ったことで終わった旅ではない。


 むしろ、ここから新たな戦いが始まる。


 世界樹巡礼記を奪った蛇の牙。


 次なる霊樹。


 そして、世界樹の継承者候補であるアイリス。


 王都アルティアは静かに、


 次なる嵐を迎えようとしていた。


――続く。



第二章・王都帰還編が本格始動しました。


次回、第百二十七話では、盗まれた『世界樹巡礼記』の内容を調査し、蛇の牙が狙う「第二の霊樹」の存在が明らかになります。また、アイリスの新たな修行も始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ