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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第九十三話 王女の試験

 アイリス王女の突然の冒険者宣言。


◇◇◇


 その衝撃は応接室にいた全員を驚かせた。


◇◇◇


 しかし当の本人だけは至って真剣だった。


◇◇◇


 冗談でも思いつきでもない。


◇◇◇


 本気で冒険者を目指しているのだ。


◇◇◇


「私は本気です」


◇◇◇


 アイリスは真っ直ぐライオット国王を見つめた。


◇◇◇


 その瞳に迷いはない。


◇◇◇


「お父様も許可してくださいました」


◇◇◇


「正確には根負けしただけだ」


◇◇◇


 ライオット国王が即座に訂正する。


◇◇◇


 疲れ切った表情だった。


◇◇◇


 その姿にビルセイヤたちは思わず苦笑する。


◇◇◇


「三日三晩だぞ?」


◇◇◇


「朝から晩まで説得された」


◇◇◇


「お父様♪」


◇◇◇


 アイリスが満面の笑みを浮かべる。


◇◇◇


「その笑顔で誤魔化されん」


◇◇◇


 即座に返すライオット国王。


◇◇◇


 娘に甘いことで有名な名君だが、今回ばかりは本当に苦労したらしい。


◇◇◇


 そんな父娘のやり取りに部屋の空気が少し和む。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


「ですが陛下」


◇◇◇


 セシリアが静かに口を開いた。


◇◇◇


 その表情は真剣だ。


◇◇◇


「冒険者になるというのは簡単なことではありません」


◇◇◇


 命を懸ける仕事。


◇◇◇


 時には仲間を失うこともある。


◇◇◇


 華やかな冒険譚の裏には、常に死が付き纏う。


◇◇◇


「ええ」


◇◇◇


 アイリスは頷いた。


◇◇◇


「分かっています」


◇◇◇


「だから修行もします」


◇◇◇


「剣術も魔法も学びます」


◇◇◇


「覚悟はあります」


◇◇◇


 強い意志が込められた声だった。


◇◇◇


 ビルセイヤは少し驚く。


◇◇◇


 シーサスで初めて会った頃のアイリスは、好奇心旺盛な王女という印象が強かった。


◇◇◇


 しかし今は違う。


◇◇◇


 夢を見る少女ではなく。


◇◇◇


 夢へ向かって歩き始めた少女の顔だった。


◇◇◇


 その時。


◇◇◇


「ならば試験だ」


◇◇◇


 低く落ち着いた声が響く。


◇◇◇


 全員の視線が向く。


◇◇◇


 ウィル王太子だった。


◇◇◇


「兄様?」


◇◇◇


 アイリスが首を傾げる。


◇◇◇


 ウィルは腕を組みながら言った。


◇◇◇


「冒険者になるというなら、それに相応しい力を証明してみせろ」


◇◇◇


「力を……?」


◇◇◇


「そうだ」


◇◇◇


 王太子の表情は真剣そのものだった。


◇◇◇


「冒険は遊びではない」


◇◇◇


「魔物は待ってくれない」


◇◇◇


「盗賊も容赦しない」


◇◇◇


「王女だからといって見逃してもくれない」


◇◇◇


 その場にいた冒険者たちは無言で頷く。


◇◇◇


 全て事実だった。


◇◇◇


 命を預ける仲間として認められるには、相応の実力が必要なのだ。


◇◇◇


「だから試験を行う」


◇◇◇


 ウィルはそう言い切った。


◇◇◇


「試験内容は?」


◇◇◇


 アイリスが尋ねる。


◇◇◇


 すると。


◇◇◇


 ウィルの口元が僅かに上がった。


◇◇◇


「私に一撃入れろ」


◇◇◇


 沈黙。


◇◇◇


 数秒間、誰も反応できなかった。


◇◇◇


「え?」


◇◇◇


 エミリアが目を丸くする。


◇◇◇


 ツバサも驚いた顔をしていた。


◇◇◇


「兄様にですか?」


◇◇◇


「そうだ」


◇◇◇


 ウィルは頷く。


◇◇◇


「訓練用の木剣で構わない」


◇◇◇


「私に有効打を与えろ」


◇◇◇


「それができたら認めよう」


◇◇◇


 アイリスは言葉を失った。


◇◇◇


 アルティア王国第一王子。


◇◇◇


 王太子ウィル。


◇◇◇


 剣術、軍略、政治に優れる次期国王。


◇◇◇


 王国でも指折りの剣士として知られている。


◇◇◇


 近衛騎士団長と互角とも言われる実力者だ。


◇◇◇


 そんな相手に一撃。


◇◇◇


 今の自分には到底無理に思えた。


◇◇◇


 だが――


◇◇◇


 数秒後。


◇◇◇


 アイリスはゆっくりと顔を上げた。


◇◇◇


「分かりました」


◇◇◇


 その場にいた全員が驚く。


◇◇◇


「受けます」


◇◇◇


 迷いのない声だった。


◇◇◇


 ウィルも僅かに目を見開く。


◇◇◇


 だが次の瞬間には笑みを浮かべていた。


◇◇◇


「良いだろう」


◇◇◇


「なら三日後だ」


◇◇◇


「王城訓練場で試験を行う」


◇◇◇


 こうして。


◇◇◇


 アイリス王女の冒険者への第一歩が始まった。


◇◇◇


 その日の夜。


◇◇◇


 王城の庭園。


◇◇◇


 月明かりが花々を照らしている。


◇◇◇


 その片隅で、一人の少女が木剣を振っていた。


◇◇◇


 アイリスだった。


◇◇◇


 ブンッ。


◇◇◇


 風を切る音が響く。


◇◇◇


 一振り。


◇◇◇


 また一振り。


◇◇◇


 額から汗が流れ落ちる。


◇◇◇


 腕は痛い。


◇◇◇


 足も重い。


◇◇◇


 それでも剣を振るのを止めない。


◇◇◇


「負けません……」


◇◇◇


 小さく呟く。


◇◇◇


 王女だから。


◇◇◇


 女だから。


◇◇◇


 そんな理由で夢を諦めたくない。


◇◇◇


 ビルセイヤたちのように。


◇◇◇


 自分も世界を見たい。


◇◇◇


 自分の力で歩いてみたい。


◇◇◇


 その時だった。


◇◇◇


 首元に下げていた翡翠色のペンダントが淡く輝く。


◇◇◇


 ほんの一瞬。


◇◇◇


 まるで少女の決意に応えるように。


◇◇◇


 そして誰にも気付かれることなく、その光は静かに消えていった。


◇◇◇


 来るべき運命の日が、少しずつ近付いていた。


第二章 第九十三話


「王女の試験」


――続く。

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