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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第九十一話 封印された真実

 王家秘蔵図書庫。


 建国記録保管室には、重苦しい沈黙が流れていた。


 ウィル王太子は、開かれた建国記の頁を見つめたまま動かない。


「どうしたんですか?」


 エミリアが不安そうに尋ねる。


 ウィルはゆっくりと顔を上げた。


 普段冷静な彼には珍しく、その瞳には明らかな動揺が浮かんでいる。


「この記述は……私も初めて見る」


 ビルセイヤたちは顔を見合わせた。


 王太子ですら知らない内容。


 それほどまでに秘匿されてきた記録なのだろう。


 ウィルは再び本へ視線を落とし、静かに読み上げる。


『我が友アークレイドは語った』


『異界の災厄は、一つではない』


『世界の外側には、無数の世界が存在する』


『そして世界と世界の狭間には、災厄を喰らう者たちが眠っている』


 全員が息を呑んだ。


 聞いたこともない話だった。


「世界の外側……?」


 セシリアが呟く。


 ビルセイヤも眉をひそめた。


 異世界転移者である自分ですら知らない概念。


 神話か、伝承か。


 だが、アークレイドが残した言葉なら無視はできない。


 ウィルはさらに読み進める。


『異界の魔神は先触れに過ぎぬ』


『真なる災厄は、さらに外側に存在する』


『もし封印が破られれば、世界は滅ぶ』


 空気が凍り付いた。


 エミリアが小さく身震いする。


「怖い話ですね……」


「だが気になるな」


 ツバサが腕を組んだ。


「異界の魔神は倒したんだろ? なら何が問題なんだ?」


 もっともな疑問だった。


 魔神は消滅した。


 古代神殿も崩壊した。


 それで終わったはずではないのか。


 しかし、ウィルは次の頁を開く。


 そこには、赤い文字で追記が記されていた。


 先ほどまでとは明らかに違う筆跡。


「これは……アークレイド本人の文字か」


 ウィルが驚いたように呟く。


 そして読み上げた。


『もし我が封印が破られた時』


『後継者へ伝える』


『世界樹ユグドラシルを探せ』


 その瞬間、ビルセイヤの表情が変わった。


 世界樹。


 神話に登場する伝説の存在。


「ユグドラシル……」


 アイリスが小さく呟いた。


 なぜか、その名が胸の奥に強く残った。


 シズク王妃も首を傾げる。


「王家の伝承にも残っていますね。ですが、実在したという話は聞いたことがありません」


 ライオット国王も腕を組んだ。


「建国神話の一節だと思っていたが……」


 どうやら、王家も詳しくは知らないらしい。


 ウィルはさらに先を読む。


『世界樹の継承者は、災厄に対抗する鍵となる』


『我が友アルトよ』


『未来のため、この記録を残す』


 そこで文章は終わっていた。


 誰も言葉を発しない。


 ただ静寂だけが続く。


 やがて最初に口を開いたのは、シリス王女だった。


「面白いですわね」


 優雅な笑みを浮かべている。


「建国神話だと思っていたものが、実は歴史だったなんて」


「お姉様は落ち着き過ぎです!」


 アイリスが思わず突っ込む。


 その言葉で、少しだけ空気が和らいだ。


 ライオット国王も静かに頷く。


「確かに驚くべき内容だ。だが、今すぐ世界が滅ぶわけではない」


 王の声は落ち着いていた。


「まずは情報を整理しよう」


 混乱に飲まれず、現実を見る。


 それこそが、この国を治める王の姿だった。


 その時、ウィルがビルセイヤへ視線を向ける。


「どう思う?」


 ビルセイヤは少し考えた。


 アークレイド。

 異界の魔神。

 世界樹ユグドラシル。

 そして、後継者。


 全てが一本の線で繋がり始めている気がした。


「分からないことばかりです」


 ビルセイヤは建国記を見つめる。


「でも、アークレイドは未来を信じていた」


 静かに続けた。


「だから、この記録を残したんだと思います」


 ウィルは深く頷いた。


「そうかもしれないな」


 誰も気付いていなかった。


 アイリスだけが。


 世界樹ユグドラシルという名を聞いた瞬間から、胸の奥に不思議な熱を感じていたことに――。


第二章 第九十一話


封印された真実


――続く。

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