表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
138/165

第八十九話 建国王と英雄

 謁見の間は、水を打ったように静まり返っていた。


 ライオット国王をはじめ、王妃たち、王族、そして列席する重臣たちの視線が、ビルセイヤたち四人へと集まっている。


 その重圧を受け止めながら、ビルセイヤはゆっくりと口を開いた。


 古代神殿での出来事。

 蛇の牙が神殿を探索していたこと。

 最深部で発見した封印の祭壇。

 そこで出会った、千年前の英雄アークレイド。

 そして――異界の魔神との戦い。


 見たもの、聞いたもの、感じたもの。


 何一つ隠すことなく、全てを語った。


 途中、重臣たちの間から何度か驚きの息が漏れる。


 だが、誰一人として口を挟む者はいなかった。


 やがて話が終わる。


 再び、重い沈黙が落ちた。


「……信じられない話だな」


 一人の重臣が、呆然としたように呟く。


 無理もない。

 千年前の英雄。異界の魔神。建国神話の裏側。


 どれも普通なら、おとぎ話の中にしか存在しない話だ。


 だが――。


「私は信じよう」


 静かに響いたのは、ライオット国王の声だった。


 重臣たちが一斉に国王を見る。


 ライオットは玉座からゆっくりと立ち上がった。


「なぜなら」


 国王の眼差しが、真っ直ぐビルセイヤたちを射抜く。


「アークレイドという名は、王家に代々伝わっているからだ」


 その一言で、謁見の間の空気が変わった。


 ビルセイヤたちも思わず顔を上げる。


「王家に……?」


 セシリアが驚いたように問い返す。


 ライオット国王は静かに頷いた。


「ウィル」


「はい、父上」


 ウィル王太子が一礼し、近くの騎士へ合図を送る。


 しばらくして、数人の騎士たちが巨大な額縁を運び込んできた。


 高さは二メートルを優に超える。

 年代を感じさせる、古びた一枚の絵画だった。


「これは……」


 ビルセイヤが目を見開く。


 そこに描かれていた人物を、彼は知っていたからだ。


 白銀の鎧。

 腰に下げた長剣。

 鋭さと優しさを併せ持つ眼差し。


 間違いない。


 英雄アークレイドだった。


「やっぱり……」


 ツバサも目を見張る。


 あの神殿で共に戦った男が、千年の時を越えて王城の絵画の中に立っていた。


 ライオット国王は、その絵を見つめながら静かに語り始めた。


「アルティア王国の建国は、およそ千年前」


「初代国王アルト・アルティアによって成し遂げられた」


 誰もが知る建国神話。

 王国の民なら、子供でも一度は耳にする話だ。


 だが、国王はそこで言葉を切り、ゆっくりと続けた。


「しかし――王家には、その続きを記した記録が残されている」


 全員が息を呑んだ。


「初代国王アルト・アルティアは、一人で国を築いたわけではない」


「彼には、共に戦う仲間がいた」


 ライオットの視線が、絵画の人物へと向けられる。


「その一人こそ――英雄アークレイドだ」


 ざわり、と場が揺れた。


 重臣たちですら驚きを隠せていない。


 どうやら、この話は王家の中でも限られた者しか知らぬ極秘事項らしい。


「建国神話では語られていない」


「だが、王家の記録には確かに残されている」


 国王の声が、謁見の間に静かに響く。


「アークレイドは、異界から現れた魔神を封印するため、自ら神殿へ向かった」


「そして――二度と戻らなかった」


 ビルセイヤたちは顔を見合わせた。


 神殿でアークレイド本人から聞いた話と、完全に一致している。


「つまり……」


 エミリアが小さく呟く。


「本当に、英雄だったんですね……」


「そうだ」


 ライオット国王ははっきりと頷いた。


「そして君たちは、その英雄と出会った」


 国王の視線が、再びビルセイヤへ向く。


「さらに、アークレイドは君に力を託した」


 ビルセイヤは静かに頷いた。


 右手に、あの時の感覚が蘇る。


 託された剣技。

 受け継いだ知識。

 そして、最後の言葉。


 あれを忘れることなどできない。


 すると、ふいに柔らかな声が響いた。


「面白いですわね」


 シリス王女が、上品に微笑んでいた。


「建国の英雄に選ばれた方が、こうして目の前にいらっしゃるなんて」


 アイリスも目を輝かせる。


「やっぱり凄いです、ビルセイヤさん!」


 その勢いのまま、今にもビルセイヤへ駆け寄りそうな雰囲気だ。


「アイリス」


 ウィルが頭を押さえる。


 完全に、妹の暴走が始まりかけていた。


 だが、ライオット国王は止めなかった。


 むしろ興味深そうに、ビルセイヤを見つめている。


「まだ話がある」


 国王が静かに告げる。


 その一言で、再び場が引き締まった。


「アークレイドについて記された、王家秘蔵の資料が存在する」


 ビルセイヤたちは息を呑む。


「本来なら、王族以外に見せることはない」


 ライオットはゆっくりと玉座の段を下り、一歩だけ前へ出た。


「だが――君たちには知る資格がある」


 その言葉は重かった。


 王家が千年守り続けてきた秘密。

 建国神話の裏側。

 英雄アークレイドの真実。

 そして、この世界の奥底に眠る秘密。


 その全てに、自分たちは触れようとしている。


 ビルセイヤの胸が高鳴った。


 脳裏に蘇るのは、アークレイドが最後に残した言葉。


『この世界は広い』


『そして、お前が思う以上に深い』


 あの言葉の意味に、少しずつ近付いている気がした。


 王家秘蔵の資料――。


 そこには、一体何が記されているのか。


第二章 第八十九話


建国王と英雄


――続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ