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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第八十五話 王都アルティアからの召喚

 冒険者ギルドは静まり返っていた。


 つい先ほどまで祝宴の熱気に包まれていた酒場とは思えない。

 笑い声も、ジョッキのぶつかる音も止まり、全員の視線が一人の騎士へと集まっている。


「国王陛下が……?」


 ビルセイヤが思わず聞き返した。


 騎士は真面目な表情のまま、静かに頷く。


「はい」


 その声音には一切の揺らぎがない。

 冗談でも、言い間違いでもないのだと、それだけで分かった。


「ビルセイヤ殿、およびセシリア殿、ツバサ殿、エミリア殿」


 騎士は一人ずつ名前を確認するように口にした。


「四名を王都へ招待したいとのことです」


 今度はギルド中がどよめいた。


 ビルセイヤだけではない。

 パーティ全員が対象だったのだ。


「私たちも?」


 セシリアが目を丸くする。


「はい」


 騎士はそう答え、一通の封書を差し出した。


 赤い封蝋。

 そこに刻まれているのは、王家の紋章。


 冒険者であるビルセイヤには詳しいことは分からない。

 だが、隣で覗き込んだギルドマスターの表情を見れば十分だった。


「本物じゃねぇか……」


 思わず漏れたその呟きに、周囲の冒険者たちがざわつく。


 普通の冒険者が王都へ呼ばれることなど滅多にない。

 ましてや、国王直々の召喚となれば前代未聞だ。


「理由は?」


 ツバサが尋ねる。


 騎士は一拍置き、静かに答えた。


「古代神殿の件です」


 やはりか。


 ビルセイヤたちは顔を見合わせる。


 英雄アークレイド。

 異界の魔神。

 千年前の災厄と、その再来。


 どちらも国家規模どころか、世界そのものに関わる話だ。

 王都が動くのは当然と言えば当然だった。


「いつ出発ですか?」


 セシリアがすぐに尋ねる。


「三日後です」


 騎士は淀みなく答えた。


「王都から馬車を用意しております。皆様には、その馬車で王都アルティアまでお越しいただきます」


 かなり丁寧な対応だった。


 ただの召喚ではない。

 むしろ“招待”と呼ぶ方が近い。


 それだけ、王都が今回の件を重く見ているのだろう。


 騎士は用件を伝え終えると、深く一礼した。


「それでは、失礼します」


 そう言ってギルドを後にする。


 扉が閉まった瞬間――


 ギルド内が爆発した。


「すげぇぇぇぇぇっ!!」


「王都だぞ、王都!」


「国王陛下に会うのか!?」


 冒険者たちが一斉に騒ぎ始める。


 無理もない。

 地方の冒険者にとって、王都は憧れの場所だ。


 数多くの実力者が集い、王国の中枢が置かれ、あらゆる情報と財が集まる巨大都市。

 そんな場所へ、しかも王の招きで向かうなど、夢物語に近い。


「有名人になったな」


 ツバサがニヤニヤしながらビルセイヤの肩を叩く。


「他人事みたいに言うなよ」


 ビルセイヤは苦笑した。


「お前もだろ」


「確かに」


 二人が顔を見合わせて笑う。


 だが、その輪の中で――セシリアだけは少し考え込んでいた。


「どうした?」


 ビルセイヤが声を掛ける。


「ううん」


 セシリアは首を振った。


「ちょっと気になっただけ」


「何が?」


「アークレイドの最後の言葉」


 その場の空気が少しだけ変わった。


 祝宴の熱に浮かされていた空気が、ふっと静まる。


『この世界は広い』


『そして、お前が思う以上に深い』


 英雄が最後に残した言葉。


 ビルセイヤも忘れていない。

 あの穏やかな笑みと共に託された言葉は、今も胸の奥に残っている。


「もしかしたら」


 セシリアが静かに言った。


「王都で何か分かるかもしれないわね」


 その可能性は十分にあった。


 王都アルティア。

 王国最大の都市。

 歴史書も、古文書も、神話に関する記録も、地方とは比べものにならないほど集まっているはずだ。


 英雄アークレイド。

 異界の魔神。

 千年前の真実。


 何かしらの記録が残っていても不思議ではない。


「そうだな」


 ビルセイヤも頷いた。


 アークレイドが託した力。

 英雄の遺志。

 そして、この世界に隠された真実。


 知らなければならないことがある――そんな気がしていた。


 ギルドマスターが、しんみりした空気を吹き飛ばすように豪快に笑う。


「まあ、難しい話は後だ!」


 再びジョッキを掲げた。


「今日は飲め! 王都へ行くなら、明日から忙しくなるぞ!」


「それもそうですね」


 エミリアがくすりと笑う。


 張り詰めていた空気が少し和らぎ、再び宴が動き始めた。


 笑い声。

 乾杯の音。

 仲間たちとの語らい。


 平和な夜だった。


 戦いが終わったことを、ようやく実感できるような時間。

 失ったものも、背負ったものもある。

 それでも今だけは、無事に帰ってきた喜びに浸ってよかった。


 だが――その平和も長くは続かない。


 三日後。

 彼らは王都へ向かう。


 王都アルティア。


 そこには、新たな出会いが待っている。

 新たな陰謀が待っている。

 そして、ビルセイヤ自身の運命を大きく動かす出来事が待っている。


 古代神殿での戦いは終わった。

 英雄アークレイドとの出会いも、異界の魔神との死闘も、ここでひとまず幕を下ろす。


 だが、物語はまだ終わらない。


 むしろ、ここからが本当の始まりなのかもしれなかった。


 ――王都編、開幕。


第二章 第八十五話


王都からの召喚


――第二章・完

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