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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第七十四話 異界の魔神

 ピシッ――。


 神殿中央に浮かぶ巨大な魔法陣。


◇◇◇


 その中心で、空間そのものがひび割れていた。


◇◇◇


 黒い亀裂。


◇◇◇


 現実とは思えない光景。


◇◇◇


 まるで世界に傷が付いたかのようだった。


◇◇◇


 そして、その裂け目の奥。


◇◇◇


 巨大な赤い瞳がこちらを見つめている。


◇◇◇


 ただ見られているだけ。


◇◇◇


 それだけなのに全身が震えた。


◇◇◇


 呼吸が苦しい。


◇◇◇


 胸が締め付けられる。


◇◇◇


 魂そのものを見透かされているような感覚。


◇◇◇


「な、何よ……あれ……」


◇◇◇


 セシリアが無意識に後退る。


◇◇◇


 声が震えていた。


◇◇◇


 これまで数え切れないほどの魔物と戦ってきた。


◇◇◇


 だが、こんな恐怖は初めてだった。


◇◇◇


 戦う以前に、本能が逃げろと叫んでいる。


◇◇◇


「精霊たちが……」


◇◇◇


 エミリアの顔も青ざめていた。


◇◇◇


「怯えています……」


◇◇◇


「こんなの初めてです……」


◇◇◇


 風の精霊。


◇◇◇


 水の精霊。


◇◇◇


 土の精霊。


◇◇◇


 普段は無邪気な彼らが悲鳴を上げていた。


◇◇◇


 それほど危険な存在。


◇◇◇


 ツバサは日本刀の柄を強く握り締める。


◇◇◇


「冗談じゃないぞ……」


◇◇◇


「目だけでこれかよ」


◇◇◇


 もし本体が出てきたらどうなる。


◇◇◇


 考えるだけで背筋が寒くなった。


◇◇◇


 その時だった。


◇◇◇


 アークレイドが静かに前へ出る。


◇◇◇


 白銀の長剣を抜き放つ。


◇◇◇


 シャリン――。


◇◇◇


 澄み切った金属音が響いた。


◇◇◇


 美しい刀身。


◇◇◇


 千年前の英雄が剣を構える。


◇◇◇


「下がっていろ」


◇◇◇


 短い言葉だった。


◇◇◇


 しかし絶対的な自信が込められていた。


◇◇◇


「お前たちでは無理だ」


◇◇◇


 セシリアが反射的に言い返す。


◇◇◇


「何よそれ!」


◇◇◇


「私たちだって――」


◇◇◇


「死ぬぞ」


◇◇◇


 アークレイドは振り返らない。


◇◇◇


 ただ事実を告げる。


◇◇◇


「今のお前たちでは一秒も持たない」


◇◇◇


 悔しかった。


◇◇◇


 だが誰も反論できない。


◇◇◇


 あの瞳を見ただけで理解している。


◇◇◇


 格が違う。


◇◇◇


 存在する次元そのものが違う。


◇◇◇


 そう感じてしまった。


◇◇◇


「ビルセイヤ」


◇◇◇


 不意にアークレイドが名を呼ぶ。


◇◇◇


 全員が驚いた。


◇◇◇


「なぜ俺の名前を?」


◇◇◇


 ビルセイヤが問い返す。


◇◇◇


 アークレイドは微かに笑った。


◇◇◇


「見ていた」


◇◇◇


「先ほどの戦いをな」


◇◇◇


「この中で一番強い」


◇◇◇


「だから覚えた」


◇◇◇


 単純な理由だった。


◇◇◇


 だが英雄にそう評価されても、ビルセイヤは素直に喜べない。


◇◇◇


 今はそれどころではなかった。


◇◇◇


 その時。


◇◇◇


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


◇◇◇


 空間の裂け目がさらに広がる。


◇◇◇


 そして。


◇◇◇


 巨大な爪が現れた。


◇◇◇


 黒い鱗。


◇◇◇


 禍々しい魔力。


◇◇◇


 爪一本だけで五メートルを超えている。


◇◇◇


「来るぞ!」


◇◇◇


 アークレイドが叫んだ。


◇◇◇


 直後。


◇◇◇


 黒い腕が裂け目から飛び出す。


◇◇◇


 ドォォォォォォン!!


◇◇◇


 神殿の床が砕け散る。


◇◇◇


 石柱が吹き飛ぶ。


◇◇◇


 壁面に亀裂が走る。


◇◇◇


 たった腕一本。


◇◇◇


 それだけで神殿が崩壊しかけていた。


◇◇◇


「化け物かよ……」


◇◇◇


 ツバサが呟く。


◇◇◇


 その腕が再び動く。


◇◇◇


 今度はビルセイヤたちへ向かって。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


「邪魔だ」


◇◇◇


 アークレイドが踏み込んだ。


◇◇◇


 一歩。


◇◇◇


 たったそれだけ。


◇◇◇


 次の瞬間。


◇◇◇


 ズバァァァァァッ!!


◇◇◇


 銀光が神殿を走る。


◇◇◇


 黒い腕が根元から切断された。


◇◇◇


「え……?」


◇◇◇


 セシリアが目を見開く。


◇◇◇


 理解が追い付かない。


◇◇◇


 剣を振った瞬間すら見えなかった。


◇◇◇


 結果だけがそこにある。


◇◇◇


 切断された腕は黒い霧となり消滅していった。


◇◇◇


 アークレイドは剣を軽く下ろす。


◇◇◇


「千年前より弱いな」


◇◇◇


 その言葉に全員が絶句した。


◇◇◇


 今のが弱い?


◇◇◇


 冗談ではない。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 英雄の表情は険しかった。


◇◇◇


「いや……違う」


◇◇◇


 裂け目を見つめる。


◇◇◇


「まだ本体ではない」


◇◇◇


 その瞬間。


◇◇◇


 裂け目の奥から笑い声が響いた。


◇◇◇


 低い声。


◇◇◇


 男とも女とも分からない声。


◇◇◇


 だが確かな知性が感じられる。


◇◇◇


『久しいな』


◇◇◇


 声が響いた瞬間。


◇◇◇


 神殿全体が震えた。


◇◇◇


 アークレイドの瞳が細められる。


◇◇◇


『英雄アークレイド』


◇◇◇


 その名を呼ぶ声。


◇◇◇


 千年前の宿敵。


◇◇◇


 世界を滅亡寸前まで追い込んだ災厄。


◇◇◇


 異界の魔神だった。


◇◇◇


『また会えたことを嬉しく思うぞ』


◇◇◇


 不気味な笑い声が響く。


◇◇◇


 そして。


◇◇◇


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


◇◇◇


 裂け目がさらに広がり始めた。


◇◇◇


 世界の傷口が広がるように。


◇◇◇


 本体が現れようとしている。


◇◇◇


 千年前、世界を絶望に染めた災厄が。


◇◇◇


 アークレイドは剣を構え直した。


◇◇◇


 その横顔には、先ほどまでの余裕はない。


◇◇◇


 あるのは戦士の覚悟だけ。


◇◇◇


 そしてビルセイヤは理解する。


◇◇◇


 ここから先は、自分たちが経験したどんな戦いとも違う。


◇◇◇


 世界の命運を賭けた戦いが始まろうとしているのだと。


第二章 第七十四話


「異界の魔神」


――続く。

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