第六十八話 古代ゴーレム攻略戦
古代神殿入口――。
ズシン。
ズシン。
ズシン。
四体の古代ゴーレムが、ゆっくりとこちらへ迫ってくる。
高さ八メートルを超える石の巨人。
黒い石で形作られた全身。
手には巨大な戦斧。
両目には、不気味な赤い光が灯っていた。
その威圧感は、今まで戦ってきたどの魔物とも違う。
生命の気配がない。
怒りも、憎しみも、恐怖もない。
ただ侵入者を排除するためだけに存在している。
それが、逆に不気味だった。
◇◇◇
「気持ち悪いな」
◇◇◇
ツバサが日本刀へ手を添えながら呟く。
◇◇◇
「魔物の方がまだ分かりやすい」
◇◇◇
セシリアも剣を構えたまま頷いた。
◇◇◇
「弱点が見えないのよね……」
◇◇◇
その時だった。
◇◇◇
「見えました!」
◇◇◇
目を閉じて魔力の流れを探っていたエミリアが叫ぶ。
全員の視線が彼女へ向いた。
◇◇◇
「胸の中央です!」
◇◇◇
「強い魔力反応があります!」
◇◇◇
魔力核。
おそらくゴーレムを動かしている動力源だ。
◇◇◇
「壊せば止まるか?」
「たぶん……!」
◇◇◇
確証はない。
だが、他に方法もない。
◇◇◇
「なら、やるしかないな」
◇◇◇
ビルセイヤが剣を構える。
◇◇◇
「俺が正面を引き付ける」
「セシリアは左」
「ツバサは右から」
「エミリアは援護だ」
「了解!」
◇◇◇
次の瞬間、四人が同時に動いた。
最初に接敵したのはビルセイヤだった。
中央の古代ゴーレムが巨大な戦斧を振り上げる。
◇◇◇
ドォォォォォン!!
◇◇◇
戦斧が床へ叩き付けられた瞬間、石畳が砕け散った。
衝撃で砂塵が舞い上がる。
だが、ビルセイヤは紙一重で回避していた。
そのまま懐へ飛び込む。
◇◇◇
「硬いな!」
◇◇◇
脚部へ斬撃を叩き込む。
ガキィィン!!
火花が散った。
石を斬った感触ではない。
まるで金属を打ったような硬さだった。
◇◇◇
「普通には壊せないか……」
◇◇◇
その時。
◇◇◇
「はあああっ!!」
◇◇◇
セシリアが大きく跳躍する。
狙いは左側のゴーレムの腕。
全身のバネを乗せた渾身の一撃が振り下ろされた。
◇◇◇
ガキィィィン!!
◇◇◇
鈍い衝撃音が響く。
ゴーレムの腕に、細い亀裂が走った。
◇◇◇
「やった!」
◇◇◇
完全に断ち切れたわけではない。
だが、ダメージは通る。
希望が見えた。
一方、ツバサは右側のゴーレムを前に、静かに腰を落としていた。
日本刀を鞘へ納める。
居合の構え。
目の前には古代ゴーレムの巨大な脚部。
狙いは、膝関節だった。
呼吸を整える。
空気が張り詰める。
時間が一瞬だけ止まったような静寂。
そして――。
◇◇◇
キィィィィィン!!
◇◇◇
神速の抜刀。
一筋の銀光が走る。
次の瞬間、ゴーレムの膝関節が深く切り裂かれていた。
◇◇◇
ゴゴゴッ……!
◇◇◇
巨体が大きく傾く。
◇◇◇
「効いた!」
◇◇◇
ツバサが笑う。
◇◇◇
「関節は弱い!」
◇◇◇
それを聞いたビルセイヤの目が鋭く光る。
勝機が見えた。
だが、その時だった。
◇◇◇
「ビルセイヤさん!」
◇◇◇
エミリアが叫ぶ。
◇◇◇
「胸の核が露出しました!」
◇◇◇
転倒しかけたゴーレムの胸部装甲に亀裂が入っている。
その奥。
紫色の結晶が脈動するように輝いていた。
◇◇◇
「核か!」
◇◇◇
ビルセイヤは迷わない。
一気に地を蹴る。
跳躍。
加速。
狙いはただ一点。
◇◇◇
「はあああああっ!!」
◇◇◇
渾身の一撃が振り下ろされる。
◇◇◇
ズバァァァァァッ!!
◇◇◇
紫色の結晶が砕け散った。
瞬間、古代ゴーレムの両目から赤い光が消える。
そして――。
◇◇◇
ドォォォォォン!!
◇◇◇
巨体がその場に崩れ落ちた。
◇◇◇
「一体撃破!」
◇◇◇
セシリアが叫ぶ。
だが、安堵する暇はなかった。
その直後だった。
神殿全体が大きく震えた。
◇◇◇
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
◇◇◇
床に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
不気味な紫色の光。
神殿全体に刻まれていた古代文字が、一斉に明滅し始めた。
嫌な予感が走る。
エミリアの顔が青ざめた。
◇◇◇
「まずい!」
◇◇◇
「まだ終わってません!」
◇◇◇
残る三体のゴーレム。
その胸部から紫色の光が放たれる。
そして――。
倒れたゴーレムの残骸へ向かって、光が吸い込まれるように集まり始めた。
◇◇◇
「まさか……」
◇◇◇
ツバサが顔をしかめる。
嫌な予感は、最悪の形で的中した。
砕けた石片が、ふわりと宙へ浮かび上がる。
集まる。
繋がる。
融合する。
膨れ上がる。
崩れたはずの巨体が、まるで新たな肉体を与えられるように再構築されていく。
そして、現れたのは――。
高さ十五メートルを超える、超巨大ゴーレムだった。
四体分の石材を取り込み、異形の巨人へと変貌した守護者。
全身はさらに禍々しく黒く染まり、胸部には三つの紫色の核が脈打っている。
両腕は丸太のように太く、手にした大斧はもはや兵器というより処刑具だった。
◇◇◇
「冗談だろ……」
◇◇◇
セシリアが絶句する。
今までの四体ですら脅威だった。
それが融合し、さらに巨大化した。
古代神殿の守護者。
その“本当の試練”が、ついに姿を現したのだった。
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第二章 第六十八話
「古代ゴーレム攻略戦」
――続く。




