表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
113/159

第六十四話 森の番人

 オーガス西部――古代遺跡へと続く深い森。


 クラン【ホーム】は警戒を強めながら、木々の奥へと足を進めていた。


 フォレストエイプとの戦闘からしばらく経つ。

 だが、進めば進むほど違和感は濃くなるばかりだった。


「……静かすぎるな」


 周囲を見渡しながら、ツバサが低く呟く。


 本来なら、この規模の森であれば鳥の鳴き声や小動物の気配がどこかしらにあるはずだ。

 風に揺れる葉の音、枝を跳ねる獣の足音、遠くで鳴く魔物の声。


 だが今は違う。


 不自然なほど静まり返っていた。


 まるで森全体が息を潜め、何かを恐れているかのように。


「精霊たちも怯えています……」


 エミリアが表情を曇らせる。


「この先に近づきたくないって……ずっと訴えています」


 精霊魔法の使い手である彼女には、森に漂う異変がより鮮明に伝わっているのだろう。

 空気の流れ。

 魔力の淀み。

 木々に宿る精霊たちのざわめき。


 それらすべてが、同じ方向を指していた。


 ――この先は危険だ、と。


 ビルセイヤは足を止めた。


 視線の先。

 地面に深く刻まれた巨大な足跡がある。


 人間のものではない。

 オーガとも違う。


 大型魔物の痕跡だ。


 しかも、一つや二つではない。

 周囲の土をえぐるように、いくつもの足跡が残されている。


 ビルセイヤはしゃがみ込み、指先で土に触れた。


「……新しいな」


 小さく呟く。


「数時間以内だ」


 セシリアが息を呑んだ。


「つまり……」


「近くにいる」


 ビルセイヤは立ち上がりながら答える。


「それに、この痕跡の大きさからして相当な大型だ。たぶん、俺たちの存在にも気づいてる」


 その言葉に、全員の表情が引き締まった。


 嫌な緊張感が、森の空気をさらに重くする。


 そして――。


 ゴォォォォォォォ……。


 腹の底に響くような、低く重い唸り声が森の奥から流れてきた。


 空気が震える。

 木々がざわめく。

 枝の上にいた鳥たちが一斉に飛び立ち、ばさばさと森の上空へ散っていく。


「来る!」


 ツバサが叫んだ、その直後だった。


 ドォォォォォン!!


 目の前の巨大な樹木が、根元から吹き飛んだ。


 土煙が舞い上がる。

 木片が四方へ飛び散る。

 視界の先、倒れた大木の向こうから、ゆっくりと一つの影が姿を現した。


 ――巨大な熊。


 いや、熊という言葉だけでは足りない。


 身長は五メートルを優に超えている。

 漆黒の毛並みは夜そのもののように深く、全身を覆う筋肉は鋼鉄の塊のように膨れ上がっていた。

 血を思わせる赤い瞳。

 口元から覗く牙は、まるで剣のように鋭い。


 森の王。

 あるいは、災厄そのもの。


「ブラックベアロード……!」


 セシリアが思わず声を漏らす。


 Aランク上位。

 状況次第ではSランク指定討伐にもなる危険な魔物。


 通常なら、一流冒険者パーティでも真正面から戦うのは避けたい相手だ。

 そんな怪物が、この森の奥にいた。


「なんでこんな場所に……」


 セシリアの声に、エミリアも息を詰める。


 だが。


 ビルセイヤが見ていたのは、その巨体ではなかった。


 首元。


 漆黒の毛の間に埋もれるようにして、黒い首輪がはめられている。


 そして、そこに刻まれていたのは――蛇の紋章。


「やっぱりか」


 ツバサが苦笑交じりに呟いた。


「もう驚く気も失せてきたな」


 レッドオーガ。

 ブラックウルフキング。

 そして、今度はブラックベアロード。


 蛇の牙は、強力な魔物を操る術を持っている。

 もはや疑う余地はなかった。


「グオオオオオオオオオッ!!」


 ブラックベアロードが咆哮する。


 その声だけで周囲の木々がびりびりと震えた。

 腹の底まで響くような重低音。

 まるで森そのものが悲鳴を上げているようだった。


 次の瞬間。


 巨体が、信じられない速度で突進してきた。


「散開!」


 ビルセイヤの叫びと同時に、全員が左右へ飛び退く。


 直後――


 ドガァァァァァン!!


 ブラックベアロードが大木へ激突した。


 樹齢数百年はありそうな巨木が、まるで枯れ枝のように粉々に砕け散る。

 木片が雨のように降り注ぎ、地面が大きく揺れた。


「……まともに受けたら即死だな」


 ツバサが乾いた笑みを浮かべる。


 セシリアも剣を構え直しながら、険しい表情で頷いた。


「今まで戦った中で、一番危険かもしれないわね……」


 レッドオーガやブラックウルフキングとは、また違う脅威だ。

 純粋な破壊力と質量。

 あの巨体で突っ込まれれば、防御も回避も一歩間違えば終わる。


 その時だった。


 ブラックベアロードが再び咆哮する。


 すると――森の奥から、無数の気配が現れた。


 一つ。

 二つ。

 三つ。


 十。

 二十。


 まだ増える。


「嘘でしょ……」


 エミリアが青ざめた。


 木々の隙間から、次々と魔物が姿を現す。


 フォレストウルフ。

 フォレストエイプ。

 ジャイアントボア。


 どれも森の中では危険種として知られる魔物ばかりだ。

 しかも、その数は数十体規模。


 そして。


 そのすべての首には、黒い首輪がはめられていた。


 黒い金属。

 蛇の紋章。


 見間違えようがない。


「森そのものが支配されてる……!」


 セシリアが顔をしかめる。


 ここはすでに、ただの危険地帯ではない。

 蛇の牙が作り上げた“領域”だ。


 古代遺跡に近づく者を排除するため、森ごと支配下に置いているのだろう。


 ビルセイヤは静かに剣を構えた。


 古代遺跡は近い。

 だからこそ、敵も本気で排除しに来た。


 ここから先へ進ませないために。


「全員、油断するな」


 ビルセイヤの声が、張り詰めた森の空気を貫く。


「ここが正念場だ」


 セシリアが無言で頷く。

 ツバサは日本刀へ手を添えた。

 エミリアは静かに魔法陣を展開する。


 目の前にはブラックベアロード。

 その背後には、数十体を超える支配された魔物たち。


 古代遺跡への道を守る、森の番人。


 その強大な壁が、クラン【ホーム】の前に立ちはだかっていた。


 だが――。


 ビルセイヤの目に、怯えはない。


 守るべきものがある。

 辿り着かなければならない場所がある。

 ここで立ち止まるわけにはいかなかった。


 ビルセイヤは一歩前へ出る。


「道をこじ開けるぞ」


 その一言を合図に、仲間たちの気配が変わった。


 次の瞬間――

 古代遺跡を目前にした最激戦が、幕を開けようとしていた。



---


第二章 第六十四話


「森の番人」


――続く。




という流れにすると、第六十六話で古代遺跡突入へ綺麗につながります。


必要ならこのまま 第六十五話をそのまま執筆します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ