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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第五十八話 蛇の紋章

 レッドオーガ討伐から数時間後――。


 クラン【ホーム】は、救出した採掘員たちと共にオーガスへ帰還していた。


 街の門が見えた瞬間、採掘員たちの間から安堵の息が漏れる。


 無理もない。

 誰もが死を覚悟していたのだ。


 魔物に包囲された坑道の奥。

 逃げ場のない絶望的な状況から生還できたのは、奇跡と言ってもよかった。


「帰ってきたぞ!」


「採掘員たちだ!」


「無事だったのか!?」


 門前はたちまち騒然となった。


 知らせを聞きつけた家族たちが駆け寄る。

 泣きながら抱き合う者。

 その場にへたり込み、何度も無事を確かめる者。

 あちこちで感動の再会が繰り広げられていた。


「父ちゃん……!」


「よかった……本当によかった……!」


 その光景は、確かに救出の成功を物語っている。


 だが――。


 ビルセイヤたちの表情は晴れなかった。


 今回の一件は、ただの魔物討伐では終わらなかったからだ。


 レッドオーガの首に嵌められていた黒い首輪。

 そこに刻まれた蛇の紋章。

 そして内部から見つかった、あの金属片。


 ――『計画は順調』


 たったそれだけの文言が、妙に胸に引っ掛かっていた。


 嫌な予感しかしない。


 誰かが、どこかで、何かを進めている。


 その事実だけが、やけに生々しく感じられた。


◇◇◇


 帰還後、一行はその足で冒険者ギルドへ向かった。


 北部鉱山の救出報告を受けた受付嬢たちは驚きながらも、すぐにギルドマスターへの面会を手配する。

 救出任務の成功だけなら称賛で済んだだろう。


 だが今回は、それだけでは終わらない。


 明らかに、裏がある。


◇◇◇


 オーガス冒険者ギルド、ギルドマスター室。


◇◇◇


「話は聞いている」


 重厚な机の向こうで腕を組んでいた男が、低い声で口を開いた。


 オーガス冒険者ギルドのギルドマスター。

 筋骨隆々の巨躯に、顔にはいくつもの古傷。

 現役時代にどれほどの死線を潜ってきたのか、一目で分かる風格があった。


「北部鉱山の救出任務、ご苦労だった」


「ありがとうございます」


 ビルセイヤは軽く頭を下げる。


 だが、本題はそこではない。


「報酬の話の前に、見ていただきたい物があります」


 そう言って、ビルセイヤは机の上に二つの物を置いた。


 一つは、レッドオーガの首輪。

 もう一つは、その内部から発見された黒い金属片。


 ギルドマスターの視線がそこへ落ちる。


 そして――。


 その表情が、はっきりと変わった。


「……それは」


 低く漏れた声。


 ほんの僅かな反応だったが、その場にいた全員が気付いた。


 セシリアが身を乗り出す。


「知っているんですか?」


 ギルドマスターはすぐには答えなかった。

 深く息を吐き、椅子に背を預ける。


 しばしの沈黙。


 やがて、重々しい口調で言った。


「……噂程度だ」


 その一言で、部屋の空気が変わる。


 ビルセイヤたちの表情が引き締まった。


「王国各地で、似たような事件が報告されている」


「似た事件?」


 ツバサが眉をひそめる。


 ギルドマスターは頷いた。


「魔物の異常行動」


「盗賊団の活性化」


「商隊襲撃の増加」


「行方不明者の発生」


 一つ一つだけなら、珍しい話ではない。

 魔物の群れが村を襲うことも、盗賊が商隊を狙うことも、この世界では決して珍しくない。


 だが――。


「そして現場には、決まって蛇の紋章が残されている」


 その言葉に、室内が静まり返った。


 やはりそうだ。


 盗賊事件も。

 北部鉱山の襲撃も。

 全部が偶然ではなかった。


「組織名は?」


 ツバサの問いに、ギルドマスターは首を横に振る。


「正式な名称は不明だ。王国も実態を掴み切れていないらしい」


 そこまで言ってから、机の上の首輪を睨むように見つめた。


「だが、裏社会ではこう呼ばれている」


 一拍の間。


 そして、低く告げる。


「――蛇の牙」


 蛇の牙。


 初めて聞く名だった。


 だが、その響きには嫌な生々しさがあった。

 毒を持ち、獲物へ静かに食らいつく蛇。

 まさに今回の事件に相応しい名だと、誰もが思った。


「目的は?」


 ビルセイヤが問う。


 ギルドマスターの表情がさらに険しくなる。


「分からん」


 短い返答だった。


「だが、間違いなく大規模な組織だ」


「しかも、相当危険だろうな」


 そう言って、黒い金属片へ視線を落とす。


 そこに刻まれた文字を、誰もが改めて思い出した。


『計画は順調』


 たったそれだけの文言が、妙に重い。


 何の計画なのか。

 どこまで進んでいるのか。

 その先に何があるのか。


 誰にも分からない。


 だが一つだけ、はっきりしていることがある。


 このまま放っておいていい相手ではない。


 その時だった。


 コンコン、と扉が叩かれる。


「失礼します!」


 勢いよく扉が開き、受付嬢が飛び込んできた。

 顔色が悪い。明らかにただ事ではない。


「ギルドマスター! 緊急報告です!」


「何だ?」


「南門付近で、魔物の群れが確認されました!」


 全員が立ち上がった。


 ギルドマスターは舌打ちしそうな顔で眉間を押さえる。


「またか……」


 その一言が妙に重かった。


 まるで、最近こうした異変が頻発しているかのような口ぶりだ。


 ビルセイヤは机の上の蛇の紋章へ視線を落とす。


 胸の奥で、警鐘が鳴っていた。


 偶然ではない。


 絶対に。


 盗賊。

 魔物。

 鉱山。

 そして今度は街の南門。


 全てが、一本の線で繋がろうとしている。


 しかもその線は、オーガスという街そのものを包み込むように広がっていた。


「行くぞ」


 ビルセイヤが短く言う。


 セシリアが剣の柄に手を掛けた。


「ええ」


 ツバサも口元を引き締める。


「休む暇もなさそうだな」


 エミリアは小さく頷き、杖を握り直した。


 黒幕は近い。


 そしてオーガスの街では今まさに、さらなる陰謀が動き始めていた。


 蛇はまだ牙を隠している。


 だが、その毒は確実に街へ回り始めているのだった――。


第二章 第五十八話


「蛇の紋章」


――続く。





---


必要ならこのまま続けて、次の

第二章 第五十九話「南門防衛戦」

も、今の流れに繋がる形でそのまま執筆できます。

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