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明治「再」起動 ―暴君が塗り替える近代史―  作者: tky@複数作品を同時連載中
第5章:無謀な自由と神を思わせる星

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第98話:神の解体、無機質な中枢への蹂躙

本日4話目

創造主アーキテクトの玉座である巨大な機械星。


その地表――正確には、幾重にも重なる幾何学的な金属装甲の表面に、パレスの超大型揚陸艦が次々と降下し、深々と錨を下ろした。


分厚いハッチが重低音を響かせて展開されると同時に、内部から溢れ出したのは、空を覆い尽くすほどの無人攻撃機ドローンの群れと、重厚な複合装甲に身を包んだ数百万の多脚戦車、そしてパレスの最新鋭兵器である『自動殲滅兵団オートマトン・サード』の津波であった。


指揮を執るのは、強襲・陸戦統括のヴォルフ、武芸・近接統括の桜華、そして暗殺・潜入統括のハットリの三人だ。


重装甲の移動指令車両のルーフに立つヴォルフは、一切の感情を顔に出さず、ただ寡黙に戦況ホログラムを見据えていた。


無機質な回廊の奥から、創造主の星の内部を警護する無数の自律型防衛端末センチネルが、防衛システムに従って一斉に迎撃用の光学兵器を放つ。


しかし、ヴォルフは無言のまま、右手を軽く前方に振った。


そのハンドサイン一つで、最前列に展開していた数万機の重装盾型オートマトンが、一糸乱れぬ動きで巨大なエネルギー防壁を展開する。


敵の光線を完全に弾き返すと同時に、後列に控えていた自走多連装砲撃車両が、一斉に特殊徹甲弾の雨を放ち、敵の防衛線を物理的に粉砕していく。


一切の無駄口を叩かず、ただ徹底的に、そして冷酷に蹂躙する。


それがヴォルフの指揮する陸戦部隊の真骨頂であった。


「なんや、神さんの体内や言うから期待してましたけど……直線的な動きばっかりで、退屈な防衛網ですえ」


その後方、安全な結界に守られた豪奢な浮遊式指揮装甲車の中で、桜華は手元の戦術パネルを優雅に操作していた。


桜華がパネルに触れると、彼女の指揮車両のハッチから、数千万機の「極小刃型ドローン」が桜の花びらのように舞い上がった。


「うちの可愛い子ら、行っておいでやす。……関節の隙間、綺麗に削ぎ落としたげて」


桜華の指示を受けた部隊は、敵の防衛端末が密集するエリアへと滑るように侵入し、敵の装甲の最も分厚い部分を避け、エネルギー伝達回路が露出するミリ単位の隙間のみを的確に攻撃していく。


被弾した敵機は爆発することすらなく、ただ動力源との接続を絶たれ、次々と機能停止して崩れ落ちていく。


さらに、彼らの進軍を援護するように、ハットリが指揮する電子戦部隊が、音もなく敵の指揮個体へハッキングを仕掛け、センサー類を的確に破壊して連携ネットワークを物理的に遮断していく。


パレスの洗練された戦術と、極限まで最適化された兵器群の前に、宇宙の支配者を自負していた創造主の防衛網は、あまりにも脆く崩壊していった。


彼らは数十分で何層もの防壁を安全かつ確実に突破し、星の中心部――広大なドーム状の空間へと到達した。


そこにあったのは、玉座に座る「神の姿」ではなかった。


空間の中央に浮遊する、直径数百メートルにも及ぶ巨大な多面体の結晶体。


無数の光の帯が明滅し、膨大な情報が滝のように流れるその巨大な演算コアこそが、この銀河の法則を管理し、人類を「バグ」として駆除しようとした創造主アーキテクトの『本体』であった。


強襲部隊の主力戦車群が空間を完全に包囲した瞬間、結晶体から無機質で、しかし圧倒的な威圧感を伴う「声」が、空間全体に響いた。


『――予測不能なエラーを検知。非論理的有機生命体、及びそれに属する機械群の侵入を確認。太陽系駆除艦隊の全損は、極めて天文学的確率におけるイレギュラーである』


その音声には、怒りも焦りもない。ただ事実を数値として処理するだけの冷たさがあった。


『貴方たちは、宇宙の調和を乱すノイズ。エントロピーの増大を加速させる致命的なバグ。これより、中枢コアの自律防衛プロトコルを起動し、物理空間ごと事象を削除する』


多面体の周囲空間が歪み、これまでの防衛端末とは比較にならない、高次元のエネルギーが圧縮されていく。


だが、指揮車両のヴォルフは表情一つ変えず、ただ主砲のロックオンを維持したまま、通信機からの指示を待っていた。


エリュシオンの司令室から、通信回線を通じて魁斗の冷酷な声が、中枢空間全体に鳴り響いた。


『――随分と大仰な御託ですね、創造主アーキテクト。ですが、貴方がたの論理は、酷く単調で退屈だ』


同時に、空間を満たそうとしていた高次元エネルギーの圧縮が、突如として霧散した。


『な……事象改変のキャンセル? 空間演算への強制介入? バグたる有機生命体に、我々のシステム階層を突破することは不可能……』


「不可能ではありませんよ。貴方がたの論理構成が、あまりにも『真っ直ぐ』すぎただけのこと」


エリュシオンの司令室で、情報戦統括のロキが薄暗い笑みを浮かべながら、凄まじい速度で端末のキーを叩いていた。


「通信統括のヘルメスが繋いだ物理回線を通じて、設計統括のダヴィンチと工学統括のノアが解析した貴方がたの『設計思想の癖』を逆算しました。……神様にしては、随分とセキュリティが甘いですねぇ」


ロキの電子的なハッキングと、強襲部隊が中枢に到達するまでに破壊してきた物理的なネットワークの分断。


その両面からのアプローチによって、アイアン・パレスの巨大な演算能力は、ついにアーキテクトの深層システムへのアクセス権を奪い取ったのだ。


『エラー。深刻なシステムエラー。中枢演算領域の40%が書き換えられ……』


アーキテクトの無機質な声に、初めて「揺らぎ」のようなものが混じる。


魁斗は玉座に深く腰掛けたまま、紅茶のカップを静かにテーブルに置いた。


「貴方がたは、すべてを数値化し、自分たちにとって都合の良い『調和』だけを求めた。私たち人類をノイズと呼んだ。……ですが、真に効率的で完璧な支配とは、ノイズすらも自らの歯車として『調和』させることです」


魁斗の瞳が、冷たい光を放つ。


「貴方がたは神などではない。ただの、アップデートを怠った古い計算機に過ぎない。……ロキ、そのガラクタのシステムを完全に掌握しなさい。ヴォルフ、桜華、ハットリ、物理的な駆動部を全て破壊し、ただの『置物』に変えなさい」


魁斗の命令が下った瞬間、ヴォルフは静かに腕を振り下ろした。


それを合図に、空間を包囲していた数百万の重装甲部隊と、数千門の自走砲が一斉に火を噴いた。


「ほな、神さんの玉座、綺麗に解体させてもらいますえ」


桜華がパネルをスワイプすると、数千万のドローン群がコアのエネルギー伝達パイプを一斉に削り取る。


ハットリの部隊が投擲した特殊な電磁パルス爆弾が、ハッキングによって無力化されたコアの内部で炸裂し、決定的なトドメを刺した。


圧倒的な「数」と「火力」による、徹底的かつ冷徹な制圧。


『――論理、崩壊。……調和の、喪失……』


宇宙を支配していた巨大な意思は、最後のエラーメッセージと共に、その光を完全に失った。


光の帯が消え、ただの巨大な暗い石くれと化した結晶体が、重力制御を失って鈍い音を立てて床に墜落する。


西暦1889年5月18日、午後4時。


銀河の暗黒星雲の奥底で、かつての神は物理的かつ電子的に完全に解体された。


エリュシオンのメインスクリーンには、完全に掌握し、沈黙したアーキテクトの中枢が映し出されている。


「……終わりましたね」


魁斗が静かに呟くと同時に、司令室は割れんばかりの歓声と、熱狂的な歓喜の渦に包まれた。


「ああ……! 魁斗様! 貴方様こそが、真の神! この宇宙の唯一の絶対者ですわ!」


フランスの令嬢イザベラが、涙を流しながら魁斗の足元に崩れ落ちる。


アリスもルイーゼも、そして我が子を抱いた桜華やリリス、シエルといったパレスの女性統括官たちも、己の主が成し遂げた宇宙規模の偉業に、深い陶酔と狂信の眼差しを向けていた。


そんな中、魅斗はアーキテクトを作り出した文明についてのデータを確認し、そっと目を伏せた。


(やはり、宇宙の害悪として滅ぼしていましたか……。制限を解除した理由は気になりますが、調べたところで時間の無駄ですね。)






地球の列強諸国を平定し、異星文明を飲み込み、ついには宇宙の管理者すらも圧倒的な暴力と論理で解体した男。


九条魁斗と彼が率いるアイアン・パレスは、今この瞬間、名実ともに銀河の頂点に君臨したのである。

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