第64話:パレス・オリンピア、開宴
本日2話目
【1875年秋:ギリシャ・アテネ パレス・オリンピア・スタジアム】
五カ年計画の集大成。
世界を繋ぐ八大拠点都市の完成を祝し、全人類が熱狂する「パレス・オリンピア」が幕を開けた。
スタジアムを埋め尽くす十万の観衆。
その熱気をさらに煽るように、各国の誇りを背負った令嬢たちがバルコニーに立ち、自国の選手たちへ激を飛ばす。
【英国の誇り:アリス王女】
「誇り高き大英帝国の選手諸君!
伝統ある我が国の強さを、この地で世界に知らしめなさい!
勝利の栄光は、常に我らと共にあります!」
アリス王女がユニオンジャックを掲げると、英国席から地響きのような歓声が上がった。
(……ああ、魁斗様。私のこの叫びが、あなたの庭で踊る人形たちの、最高に美しい劇伴となりますように)
【フランスの美:イザベラ令嬢】
「華麗なるフランスの戦士たちよ!
美しく、そして残酷なまでに勝利を奪い取りなさい!
あなたたちの輝きこそが、この祭典の主役なのです!」
イザベラの扇が振られ、フランスの観客たちが熱狂に酔いしれる。
(見てください、魁斗様。私が煽れば煽るほど、彼らはあなたの用意した『ルール』に盲信していくわ)
【プロイセンの秩序:ルイーゼ令嬢】
「プロイセンの精鋭たちよ!
一切の無駄を排し、鉄の規律をもって敵を粉砕せよ!
勝利こそが我らの存在証明である!」
ルイーゼの鋭い声が、選手たちの闘志に火をつけた。
(感情を捨て、勝利という数値を追い求める彼らは、あなたのシステムの最良の部品です、魁斗様)
【ロシアの畏怖:アナスタシア大公女】
「広大なるロシアの息子たちよ!
冬の厳しさに耐えたその力を、今こそ爆発させなさい!
我らの魂の強さを、世界に刻み付けるのです!」
アナスタシアの祈るような叫びに、ロシアの民衆が涙し、吼える。
(恐ろしいパレスの力に抗うためではなく、パレスの中で輝くために、彼らは走るのですね……魁斗様)
【アメリカの希望:メアリー】
「アメリカのヒーローたち!
不可能を可能にするのが、私たちのスピリットよ!
世界で一番高い場所へ、一気に駆け上がりなさい!」
メアリーが突き出した拳に応え、アメリカの観客席が爆発的な熱狂に包まれた。
(すべてを失った私に残ったのは、あなたの掌の上で民衆を熱狂させる、この役割だけ……。愛しています、魁斗様)
五人の令嬢たちの他にも、各国の王族や名士の娘たちが、同様に民衆を鼓舞し、パレスへの忠誠を美しい言葉で飾り立てている。
スタジアム全体が、計算された熱狂という名の巨大な渦に呑み込まれていた。
スタジアムの最上層で、魁斗はワイングラスを傾けながら、その光景を優雅に眺めていた。
「素晴らしい演出ですね。 彼女たちが民を鼓舞し、希望を与え、私は彼女たちを導く。 摩擦を生まず、自発的に隷属させる……。 これこそが、完成された統治の形ですよ」
魁斗が穏やかに微笑むと、背後に控えていたテミスとアテナが、恭しく一礼した。
「マスターの仰る通りですわ。 彼女たちは、自分が何に縛られているかさえ気づかず、喜んであなたの鎖を飾る花となっているのですから」
【競技の開始:二人のスター選手】
ファンファーレが鳴り響き、最新のホログラム映像が空を彩る。
現代のオリンピックと同様に、陸上、水泳、格闘技など多種多様な競技が行われる中、大衆の注目は二つの球技に集中していた。
一つは、欧州と南米が火花を散らす「サッカー」。
イングランド代表の主将として現れたのは、アーサー・ライト。
「精密機械」の異名を持ち、パレスの演算すら凌駕するパス精度でフィールドを支配する、新たなカリスマだ。
もう一つは、北米とアジアが熱狂する「ベースボール(野球)」。
アメリカ代表のエース、ジャック・"サンダー"・ミラー。 パレスのバイオメカニクスによって最適化されたその右腕からは、時速160キロを超える「剛速球」が放たれるという。
貴賓席でワインを揺らす魁斗は、その熱狂の渦を静かに見つめていた。
「さあ、始めましょう。人類の情熱を、最も美しい形へと昇華させるのです」
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