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明治「再」起動 ―暴君が塗り替える近代史―  作者: tky@複数作品を同時連載中
第3章:大陸と資源の収奪

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第60話:天空の目と、地上の鋼鉄による依存

本日2話目

【1871年冬:蝦夷地・パレス本拠地 宇宙港発射場】


世界各地の拠点で基礎工事が着々と進行する中、魁斗は次なるフェーズへと移行した。


それは、地球という籠の外側から、すべてを俯瞰し管理するための「視座」の獲得だ。


1871年12月24日。


パレス本拠地の広大な発射場には、パレスの軍門に降った各国の代表たちが招かれていた。


彼らの目の前には、全長100メートルを超える、漆黒の多段式ロケットがそびえ立っていた。


「皆様、今日、人類は重力という名の摩擦を振り切ることになります」


魁斗の静かな宣言と共に、精密なカウントダウンが開始された。


秒読みを担当するのは、気象観測を司るアイオロスだ。


「三、二、一。

……点火」


大地を揺るがす轟音。


ロケットの底部から、超高熱の火炎が噴き出した。


数百トンの金属の塊が、空へと昇り始めた。


群衆は、その圧倒的なエネルギーの前に言葉を失い、ただ地面にひれ伏した。


「あれが……空を飛ぶ鉄の塔か……。

パレスはもはや、地上に敵はいないというのか」


かつての権力者たちは、自分たちが信じていた「力」が、いかに矮小なものであったかを思い知らされた。


数時間後、パレスの管理する通信網を通じて、一枚の画像が全世界へ同時に配信された。


それは、宇宙から撮影された、暗黒の中に青く輝く地球の姿だった。


「これが、あなた方の住む星の真実の姿ですよ」


魁斗は、配信された画像と共に、一つの通知を世界へ送った。


「パレスは天空に『眼』を設置しました。

これより、地球上のあらゆる資源の動き、軍隊の兆候、および天候の推移は、私の手元でリアルタイムに管理されます。

もはや、隠し事や密かな反乱は不可能です。

あなた方のすべては、常に天空から見下ろされているのですよ」


この「神の視点」の公開は、残党たちが密かに抱いていた、再起という名の非合理な希望を完全に打ち砕いた。


【1872年春:パレス・モデルTの提供と、未然に防がれた摩擦】


天空を制した魁斗が次に着手したのは、民衆の「生活習慣」の根底を支配することだった。


工学統括のノアが開発した、大衆向けの車両『パレス・モデルT』。


これを、各国の拠点都市に建設された巨大なショールームで、一般向けに提供開始した。


「馬がいないのに、時速40キロで走る魔法の馬車だ!」


「パレスの供給する燃料さえあれば、数日かかった距離を数時間で移動できる!」


パレスの演算システムは、この導入に際し、既存の馬車御者たちによる反発を事前に正確に察知していた。


ロンドンで暴動が起きる兆しが見えたその瞬間、パレスは彼らが行動を起こす前に「条件」を提示した。


教育のアテナが主導し、御者のリーダーたちを豪華な迎賓館に招き入れた。


「皆様、仕事を失う心配は無用ですよ。 パレスは皆様の経験と技術を高く評価しています。もちろん、『乗馬』という文化は、残していきたいと考えておりますので、こそは皆様と話し合いを続けていきたいところですわ。」


提示されたのは、破格の下取り価格と、最新車両の優先貸与に加えて、自分達の誇りを守る内容だった。


さらに、彼らを「パレス公認ドライバー」という特権階級に格上げし、高額な給与を保証する契約であった。


「馬の糞尿の始末に追われる毎日か、快適な運転席でパレスの燃料を使って富を得る毎日か。

どちらが合理的か、皆様の脳に計算させてあげれば十分ですね」


アテナの言葉通り、暴動を計画していた者たちは、その圧倒的な好条件に即座に膝を折った。


一ヶ月後、ロンドンの街からは馬の糞尿の臭いが消えた。


代わりに響き渡ったのは、エンジンの軽快な駆動音だった。


暴動を主導するはずだった者たちは、今やパレスの制服を誇らしげに纏い、率先して新時代の物流を支えていた。


人々は、パレスの車に乗り、パレスの燃料を買い、パレスの整備工場に通うようになった。


彼らの自由は、すべてパレスという巨大なシステムの一部として組み込まれたのだ。


【1872年夏:五年工程の着実な進捗】


蝦夷地のパレス本拠地、中央管制室。


ホログラム地図上の八つの拠点は、着実にその輝きを強めていた。


「リバティ・パレス、基礎基盤の構築完了いたしました」


「セントラル・パレス、物流オートメーション化の第一段階をパスいたしました」


「サハラ、アンデス、シドニー。

各拠点ともに、現地民の帰順率は98%を超え、労働生産性は予測値を上回っております」


行政管理のソロモンの報告に、魁斗は静かに頷いた。


「五年後――1876年には、地球は一つの完成された生命体となります。

不合理な摩擦は消え去り、人類は初めて『完璧な秩序』という名の幸福を得るのですよ」


魁斗の視線は、もはや五年後の地球にすら留まってはいなかった。


彼の机の上には、すでに次なるプロジェクト――月面拠点の設計図と、太陽系全体の資源管理計画が広げられていた。


九条魁斗の「最適化」という名の侵略は、重力をも超えて、果てしない宇宙へとその触手を伸ばし始めていたのだ。

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