表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/113

第102話 救出への決意

いつもお読みいただきありがとうございます。

第102話では、王都奪還の勝利の余韻が残る中、ノヴァたちが新たな脅威へ立ち向かう決意を示します。救出作戦と迫りくる闇、その中で仲間たちの絆が試される重要な転換点となる回です。どうぞ物語の続きもお楽しみください。

 夜明けが迫る薄紫色の空の下、星辰大聖堂前の広場には、勝利の余韻と疲弊が入り交じっていた。だが、ノヴァの瞳には、まだ見ぬ脅威への警戒が宿っている。

 

「準備を急ごう。時間がない」

 

 ノヴァの静かな声が、仲間たちを駆り立てる。星辰魔導騎士団の面々は、王都奪還の激戦を終えたばかりだというのに、すでに次なる戦場への旅支度を始めていた。特別に付与魔法を施した馬車が、王都の東門を駆け抜ける。漢字「軽」「速」「護」が刻まれた車体は、微かに青白い光を放っている。その速度は、通常の馬車の倍以上だった。

 

「このままの速度なら、三日でノルレア自由都市群の国境に到達できます」

 

 ジェイソンが地図を広げながら報告する。

 

「三日か……間に合うか?」

 

 レオンハルトの問いに、ノヴァは静かに答えた。

 

「間に合わせるしかない」

 

 その言葉の重みを、誰もが理解していた。王都を出発してから二日が経過した。国境まであと半日という地点で、馬車はノルレア自由都市群へと続く街道を疾走していた。

 

「ノヴァ、精霊たちの声はどうだ?」

 

 レオンハルトが尋ねる。ノヴァは目を閉じ、周囲の精霊に意識を向けた。

 

「……良くない。東方の精霊たちが、悲鳴を上げている。まるで、闇に呑まれているかのようだ」

 

「闇……ゼノンの仕業ですわね」

 

 セレスティアが忌々しげに呟く。その時、馬車を御するアルフレッドが突然手綱を引いた。

 

「団長! 前方に人影です!」

 

 全員が警戒態勢に入る。馬車が停止すると、街道の真ん中に二人の人物が立っているのが見えた。

 

「あれは……ゼオンとリリア!」

 

 ユーリが叫ぶ。かつて敵として対峙した黒鴉傭兵団の幹部、ゼオンとリリアだった。だが、二人の様子は明らかにおかしい。服は泥と血に汚れ、リリアの肩をゼオンが必死に支えている。

 

「待て! 罠かもしれない」

 

 レオンハルトが制止するが、ノヴァはすでに馬車から降りていた。

 

「ノヴァ!」

 

「大丈夫だ。彼らに敵意はない」

 

 ノヴァが近づくと、ゼオンが顔を上げた。その目には絶望と懇願が宿っていた。

 

「ノヴァ・ヴァルシュタイン……頼む。団長を……ギデオン団長を助けてくれ」

 

「何があった?」

 

「カルザン帝国が……ノルレアを侵攻した。十万の軍勢でだ」

 

 ノヴァの表情が険しくなる。ゼオンは続けた。

 

「我々は三万五千の兵をそろえ対抗したが……敵には恐るべき魔道兵器があった。おかげで軍は崩壊、団長が殿を務め我々を逃がしてくれたが……」

 

「ゼノン・クロフトの闇魔法に捕らえられた、というわけか」

 

 ノヴァの言葉に、ゼオンが驚愕の表情を浮かべる。

 

「なぜ、それを……」

 

「精霊たちが教えてくれた。ゼノンは今、カルザン帝国と手を組んでいる」

 

 ノヴァの言葉に、一同が息を呑んだ。

 

「ゼノンが帝国と……なるほど、だから精霊たちが悲鳴を上げていたのか」

 

 ノヴァは静かに呟きリリアに治癒魔法をかけた。温かな光が彼女の傷を癒していく。

 

「カイル、彼女を頼む」

 

「わかった」

 

 カイルが駆け寄り、より深い治癒魔法でリリアの傷を癒し始める。ノヴァは立ち上がり、仲間たちを見渡した。

 

「予想以上に事態は深刻だ。ゼノンはギデオンを人質に取り、僕達を誘き出すつもりだろう」

 

「罠だとわかっていて、行くつもりですか?」

 

 セシリアが不安そうに尋ねる。ノヴァは頷いた。

 

「ああ。だが、罠を逆手に取る。ゼノンの闇を僕たちの光で照らし出す」

 

 その瞬間ノヴァの瞳が強く輝いた。父の剣を握る手に精霊の力が宿る。

 

「ゼオン、リリア。君たちも来るか?」

 

「当然だ。団長を見捨てるわけにはいかない」

 

 ゼオンが立ち上がり、リリアもカイルの治癒を受けて立ち上がった。

 

「ありがとう、ノヴァ。私たちも戦う」

 

「よし。それじゃあ、全員揃ったな」

 

 ユーリが拳を打ち鳴らす。その明るさに場の緊張が少しだけ和らいだ。

 

「まったく、ユーリさんはいつも場を和ませますわね」

 

 セレスティアが微笑むが、その目は真剣だった。

 

「では、出発する。カルザン帝国との戦い、避けられないなら正面から受けて立つ」

 

 ノヴァの言葉に、全員が頷いた。星辰魔導騎士団の馬車は、再び東へと駆け出す。馬車の中で、ノヴァは作戦を練り始めた。

 

「ゼオン、敵の配置を教えてくれ」

 

「ああ。帝国軍は現在、ノルレアの中心都市ポルト・リベルタを占拠している。ギデオン団長は、街の中央にある旧評議会の建物に監禁されているはずだ」

 

「警備は?」

 

「少なくとも魔導師が十名、そして帝国の精鋭騎士が五十名は配置されている。さらに、ゼノンが直接監視している可能性が高い」

 

 リリアが地図を広げながら説明する。その詳細な情報に、レオンハルトが感心したように頷いた。

 

「流石は元幹部だ。情報が正確だ」

 

「僕たちだけで正面突破は無理がある。ではこうしよう」

 

 ノヴァが地図を指差す。

 

「まず、『光学迷彩付与布』を使用して潜入する。ユーリとゼオンそして僕の三人で建物に侵入し、ギデオンを救出する」

 

「おいおい、また俺かよ! この前の王都潜入でも散々だったのに」

 

 ユーリが不満そうに言うが、その目は笑っている。

 

「君の隠密能力は、僕たちの中で最も優れている。それにゼオンは建物の構造を知っている」

 

「まあ、確かにな。わかったよ、やるさ」

 

「残りのメンバーは?」

 

 レオンハルトが尋ねる。

 

「君たちには、陽動をお願いしたい。帝国軍の注意を引きつけてほしい。ただし全面衝突は避けること。目的はあくまでギデオンの救出だ」

 

「了解した。セレスティア、カイル、セシリア、ロバート、ジェイソン、アルフレッド、そしてリリア。我々は陽動部隊として行動する」

 

 レオンハルトが指示を出すと、全員が頷いた。

 

「ノヴァ、一つ聞きたい」

 

 ゼオンが真剣な表情で尋ねる。

 

「もし、団長が……闇に呑まれていたら、どうする?」

 

 その問いに、馬車の中が静まり返る。ノヴァは静かに答えた。

 

「ギデオンを救う。それが、父から受け継いだ僕の使命だ。闇に呑まれていても、必ず光を取り戻してみせる」

 

「……ありがとう」

 

 ゼオンの目に、涙が光る。

 

「団長は、俺たちにとって兄のような存在だった。頼む、助けてくれ」

 

「約束する」

 

 ノヴァの言葉に、ゼオンとリリアが深く頭を下げた。やがて地平線の向こうにノルレア自由都市群の街並みが見えてきた。だが、その上空には黒い煙が立ち込め街は静寂に包まれている。

 

「着いたぞ。みんな準備はいいか?」

 

 ノヴァの問いに、全員が頷いた。

 

「よし。作戦開始だ」

 

 星辰魔導騎士団は、馬車を降りて街の入り口に立つ。その目には強い決意が宿っていた。ノヴァは父の剣を抜き精霊に語りかける。

 

「精霊たちよ、力を貸してくれ。闇に呑まれた魂を、光で照らすために」

 

 剣が淡く光り始める。仲間たちもまた、それぞれの武器を構えた。

 

「では、行こう。ギデオンを救い出しゼノンの野望を打ち砕く」

 

 ノヴァの号令とともに、救出作戦が幕を開けた。夜の帳が降りたノルレアの街に、静かな影が動き始めた。ノヴァ、ユーリ、ゼオンの三人は光学迷彩付与布を纏い、旧評議会の建物へと忍び寄る。

 

「すごいな、これは。本当に見えないのか?」

 

 ゼオンが小声で驚く。

 

「ああ。光の反射角度を歪め、周囲の景色と同化させている。だが、音と気配までは消せない。慎重に行こう」

 

 ノヴァの指示に三人は息を潜めて建物へと侵入した。一方、陽動部隊は街の西側で派手に動き始めていた。

 

「さあ、始めますわよ! フランマ・マグナ!」

 

 セレスティアの炎が夜空を焦がす。その光に、帝国軍の兵士たちが慌てて駆け寄ってくる。

 

「敵襲だ! 魔導師を呼べ!」

 

「まんまと引っかかってくれましたわね」

 

 セレスティアが不敵に笑う。レオンハルトが冷静に指示を出した。

 

「あまり深追いするな。適度に引きつけて、撤退する」

 

「了解!」

 

 陽動部隊の華麗な連携に、帝国軍の注意は完全にそちらへと向けられた。その隙にノヴァたちは建物の最上階へとたどり着いていた。

 

「ここだ。団長はこの部屋に」

 

 ゼオンが扉を指差す。だが、その扉の前には黒いオーラが渦巻いていた。

 

「結界か……ゼノンの闇魔法だ」

 

 ノヴァが父の剣を構える。剣に浄化の力を込め一閃する。

 

「聖重力斬!」

 

 光の刃が闇を切り裂き、結界が砕け散る。扉が開き中には鎖に繋がれたギデオンの姿があった。

 

「団長!」

 

 ゼオンが駆け寄ろうとした瞬間、闇が立ち込めた。

 

「よく来たな、ノヴァ・ヴァルシュタイン」

 

 ゼノンの声が響く。部屋の奥から、黒いローブを纏った男が姿を現した。

 

「ゼノン……」

 

「君を待っていたよ。さあ、ギデオンを救いたければ、私と戦うことだ」

 

 ゼノンの手から、黒い魔力が放たれる。だがノヴァは動じなかった。

 

「ユーリ、ゼオン。ギデオンを頼む。ゼノンは僕が引き受ける」

 

「おう、任せろ!」

 

 ユーリとゼオンがギデオンのもとへ駆け寄る。ノヴァはゼノンと対峙した。

 

「あなたの闇は、もう通用しない。浄化の光が、すべてを照らし出す」

 

 ノヴァの剣が眩い光を放つ。その光にゼノンの闇が押し返される。

 

「くっ……まさか、闇魔法をここまで押し返すとは!」

 

「ゼノン、君はまだ引き返せる。闇から離れろ」

 

「黙れ! 私はアルスのような愚か者ではないのだ。私こそが真理に到達するのだ!」

 

 激しい攻防が続く中、ユーリとゼオンはギデオンの鎖を断ち切っていた。

 

「ギデオン団長、大丈夫か!」

 

「ゼオン……すまない、心配をかけた」

 

 ギデオンが立ち上がる。その目には、まだ正気が残っていた。

 

「よし、脱出するぞ! ノヴァ、もういいか!?」

 

「ああ、行こう!」

 

 ノヴァが最後の一撃を放ち、ゼノンを押し返す。四人は建物から脱出し、陽動部隊と合流した。

 

「全員無事か!」

 

「ああ、ギデオンも救出できた」

 

 レオンハルトが安堵の表情を浮かべる。だが、その時、街の中心から巨大な魔力の波動が放たれた。

 

「これは……帝国の魔道兵器か!」

 

「まずい、撤退だ!」

 

 一行は急いで街を脱出する。その背後で、カルザン帝国の旗が掲げられていく。数日後、大陸全土に帝国からの宣言が届いた。

 

「ノルレアの混乱は、カルザン帝国により収められた」

 

 その言葉に、ノヴァは拳を握りしめた。

 

「これで終わりじゃない。必ずこの事態を収拾する」

 

 仲間たちも頷く。新たな戦いの火蓋が、今、切って落とされた。だがノヴァたちの決意は揺るがない。世界を救うため、彼らの戦いは続く。

第102話では、ノヴァたちがギデオン救出へ向けて覚悟を固め、仲間との協力で闇へ挑む姿を描きました。物語は大きな局面へ入り、ゼノンとの対峙がいよいよ現実味を帯びてきます。続く展開では、各キャラクターの選択が今後を左右していきます。

執筆の励みになりますので少しでも面白いと思われましたらブックマーク・高評価をお願いいたします。また次回の話でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ