第22話「危険な2年生バトル。慎之介と漣樹の運命は?」その1
爆発する足場から間一髪飛び避けた慎之介。
歯を食いしばり、近くに浮遊する地盤に飛び乗る。が、そこにも丸山の呪符が貼り付いていた。
足を付けるやまたも爆発……。
咄嗟に次の地盤へと移る。
そして次、更に次。大きく跳躍して、後方の地盤へと飛び移った。
慎之介が足を付けた地盤が、彼を追うように爆散してゆく。
ジグザグに逃げるかの様に、次の足場にも飛び移った。
「既にアイツの手の中って事かよ」と言いながら足場に着くと、直ぐに真下の地盤に飛び降りる。
落ち行く慎之介が顔を上げると、直後に頭上の足場が爆散した。
見上げる上層に浮く地盤の底面全てに、丸山の呪符が貼られているのが見える。
あれではどこに逃げようと同じだ。
いつかは、爆発に巻き込まれてしまうだろう。
一段下の地盤に着地する慎之介を目にし、丸山がニヤリと怪しい笑みを浮かべた。
そして、腹の前で両手の指を絡め印を結ぶ。
――術を唱え始めた。
すると、頭上に浮いていた全ての地盤が、慎之介目掛けて突進を始める。
瞬時に危機を察知した慎之介だが、周りを見渡すと飛び移れそうな地盤が無い。
そう――最初からこの場所へ誘導する事が狙いだった様だ。
逃げ場を失い追い詰められた慎之介。
遥か下に見える地盤まで飛び降りるか?
だが、もしそこにも丸山の呪符が貼られていたとしたら……。
「考えてる余裕はないッ……」
そう言うと、意を決した慎之介は今いる地盤から飛び降りた。
下に見える地盤まで十メートルはあるだろうか……。着地の衝撃に足が耐えれるのか……と不安が過る。
そして更に下では大蛇の背に乗る漣樹と、近くの地盤から金色の結界を投げ飛ばす相楽が見える。
他で戦闘が行われている気配が無い事から残っているのは自分達だけのようだ。
「もうお前は袋の鼠だ、猿田ッ」と印を結ぶ丸山。
目の前の足場へと近づく慎之介。
無事に着地する事が出来るのか?
それ以前に、追ってくる地盤を防ぐ手立てはあるのだろうか?
足が地盤に着くと同時に、丸山が操る十数個の足場が激突し次々と爆散……。
慎之介を飲み込んだ。
その光景を見上げる櫻子が口を手で覆う。
桃眞の拳にも力が入る。
「慎之介……」
周りから鑑賞していた二年生と三年生が興味深そうに目を細めた。
高笑いをする丸山。
「はっはっはっは……。ヴァーカッ!!」
「誰が馬鹿だって?」と慎之介の声が聞こえた。
――上からだ!?
丸山が頭上を見上げると、地盤に立ち、見下ろす慎之介が居た。
桃眞達も慎之介の姿に気付き、寮生達からも響めきが起きる。
数人の三年生には分かっていたのか、その光景に頷いてた。
「貴様ッ……いつから?」
「さぁ。いつかな……」
「何だと……俺を馬鹿にしやがってッ。勝つのはこの俺だッ」と丸山が叫んだ時には既に勝敗は決まっていた。
慎之介が指先で手刀を作り唇に当てると、丸山を中心に北斗七星の紋様が浮かび上がり、それらを囲むように光の円陣が形成された。
その北斗七星の一つ一つが、慎之介が逃げ回る中で踏んだ地盤の場所。
つまり、慎之介は、逃げ惑うと見せかけ着地地点に結界の種を撒き、それらを結ぶ事で丸山を術の中に封印したのだ。
直前まで追っていた慎之介は、丸山が結界の中で見せられていた幻影である。
桃眞の横に居た三年生が口を開いた。
「禹歩だな」
「うふって何すか?」と桃眞が訊ねる。
櫻子もその三年生に顔を向けた。
「別名、マジカルステップ。自分の気を足から地面、または空間に伏せ、陰陽道の紋様を形成する事で様々な強力な術を発生させる。俺ら三年生でも数人しか出来ない高等レベルの法術だ」
「マジか……スゲェ」と唸る桃眞。その目がキラキラと輝く。
「慎之介。そんな技使えたんだ」
櫻子が感心した。
審判を勤めていた吉樹も、慎之介が使った禹歩にご満悦な様子だ。
「禹歩ですか。ナイスですねッ!!」とステップを刻むが、直後に我に返り、真剣な眼差しを上空に向けた。
「禹歩かッ!? こんな古臭い術を使いやがって」と身動きが取れずに苦悶の表情を浮かべる丸山。
「悪かったな古くて。無駄に図書寮に通ってる訳じゃないんだ。お前も本を読め」
そう言うと、結界が丸山の体を中心に収束すると同時に爆発。
勿論、慎之介なりに破壊力は弱めているだろう。
それでも周りの地盤ごと吹き飛ばし、丸山も場外へと消えていった。
烏帽子を脱ぎ、ほっと息を付く慎之介。
「ふぅ。昨日辞典でこの術を勉強してて助かった」
そう言った途端、慎之介は自分が立つ地盤の違和感に気付いた。
「ん?」
――ヒビ。
――亀裂……。
「あ、ヤベ」と自分の置かれた状況を悟った。
今の衝撃で地盤が崩壊を始めていたのだ。
辺りを見るが残された地盤は無い。
それこそ、漣樹達の周りにいくつか残ってはいるが、無事に着地できる自信がない。
そして、足場が無くなる。
烏帽子を追うように空中を落下する慎之介。黒い狩衣がバタバタを音を立てる。
このままでは、着地に失敗し場外に落下。
もしくは、上手く着地しても衝撃で地盤が粉砕し、結局は場外負けになるしかない。
どちらにせよ絶対絶命なのだ。
恐怖を感じながら歯を食いしばる。
そのまま、漣樹達の側を通過。
地表のクレーターまで目前だ。
慎之介は場外負けを覚悟した。
その時、突如として目の前に現れた光の五芒星と円陣。
――結界だ。
結界の中心が開いた。
その先に見えるのは……相楽の頭上。
そして、相楽の向こう側に大蛇に乗る漣樹。
結界のポータルのようだ。
ポータルを潜ると相楽の上空から現れる慎之介。
漣樹から向けられた眼差しを見つめ、全てを理解した。
ポータルで慎之介を救ったのは漣樹。
そして、それは何の為に?
相楽は慎之介の気配に気付いていない。
そう、漣樹は慎之介に奇襲を任せたのだ。
相楽に対し不敵な笑みを称える漣樹。
「何が可笑しい、寺沢……」
不意打ちとは趣味では無いが、漣樹に借りを作ったままと言うのは腑に落ちない。
慎之介は、空中を降下する中、懐から呪符の束を取り出すと念を込める。
そして、相楽に向かって投げ飛ばした。
呪符の束が空中分解しながらも、相楽に向かって空を裂く。
すると、慎之介の方へと振り返った相楽が掌を突き出した。
「気付いてないとでも思ったか馬鹿め」と防御結界を展開。
慎之介の呪符の全てが結界に張り付き、力を失うと地面にひらひらと舞い落ちる。
「馬鹿はお前だ」と漣樹の声が響いた。




