第四章 第二話『強いだけ』(改訂版 ver.1.01)
第四章、第二話です!
同じLEVEL12のカイルとの模擬戦を通して、
「LEVELが上がること」と「技術が上がること」は別だと実感したニール。
では、自分に足りないものは何なのか。
剣を使うニール。
弓を使うハリト。
短剣を使うミーナ。
三人がそれぞれ、自分たちの戦い方と向き合い始めます。
そしてニールの前に現れるのは――元五つ星冒険者。
新しい「レベル上げ」の始まりです。
それでは、第四章第二話『強いだけ』、どうぞ!
「というわけで!」
俺は。
受付台に。
両手をついた。
「剣をちゃんと習いたい!」
リディアさんが。
瞬きをした。
「はい」
「…………」
「…………」
「それだけ?」
「何がですか?」
「もっとこう……驚かないの?」
「昨日、皆さんから相談されていますから」
「そうだった」
忘れてた。
「それに」
リディアさんが。
俺を見る。
「先ほど訓練場で、カイルさんと随分楽しそうに戦っていましたよね?」
「見てたの!?」
「受付まで聞こえていました」
「何が?」
「主にニールさんの声が」
「…………」
隣で。
ミーナが。
吹き出した。
「やっぱりニール、うるさかったんだ」
「カイルもうるさかっただろ!」
「ニールの方がうるさかったよ」
「ハリトまで!?」
味方が。
いない。
「それで」
リディアさんが。
話を戻す。
「カイルさんと戦って、どうでしたか?」
「楽しかった!」
「そうではなく」
「もう一回やりたい!」
「そうでもなく」
「今度は勝つ!」
「ニール」
ハリトが。
俺の肩へ。
手を置いた。
「一回黙ろうか」
「なんで!?」
「話が進まないから」
ミーナが。
また笑った。
「ニールって、こういう時ほんとニールだよね」
「どういう意味だよ!」
「褒めてる褒めてる」
「絶対褒めてないだろ!」
リディアさんが。
小さく。
息を吐いた。
「では、質問を変えます」
「おう」
「ニールさん」
「はい」
「剣の何を、教わりたいんですか?」
「…………」
止まった。
「剣を」
「はい」
「上手く」
「はい」
「使えるように?」
「私に聞かないでください」
「…………」
何を。
教わりたい?
考えたことが。
なかった。
剣を。
上手くなりたい。
強くなりたい。
それじゃ。
駄目なのか?
「カイルさんと戦って」
リディアさんが言う。
「何か感じませんでしたか?」
「……あ」
思い出す。
槍。
間合い。
足の運び。
俺の剣を。
受けるんじゃなく。
ずらした。
力を。
ぶつけるんじゃなく。
流した。
同じ。
LEVEL12。
なのに。
俺とは。
戦い方が。
全然違った。
「俺」
自分の手を見る。
「速くはなってる」
「はい」
「力も強くなった」
「そうでしょうね」
「前より、身体も動く」
LEVELが上がった。
実戦も。
重ねた。
《蒼駆》もある。
《蒼閃》もある。
昔の俺とは。
比べものにならない。
だけど。
「剣そのものは……」
腰の剣を見る。
「どれくらい上手くなったんだろう」
分からない。
七歳くらいから。
剣は振ってきた。
父さんから。
教わったこともある。
町の大人に。
見てもらったこともある。
でも。
一人の剣士に。
構えから。
足運びから。
間合いから。
身体の使い方まで。
ちゃんと。
教わったことはない。
「カイルは」
俺は言う。
「同じLEVELだった」
「はい」
「でも、俺の力をずらした」
あの感覚を。
思い出す。
「俺だったら、たぶん受けてた」
来た攻撃を。
剣で。
受ける。
かわす。
そのあと。
斬る。
「カイルは違った」
俺が。
押せば。
ずらす。
踏み込めば。
間合いを変える。
俺の力を。
そのまま。
使わせてくれない。
「俺」
少し考える。
「身体が強くなった分を、そのまま剣に乗せてるだけなのかも」
リディアさんが。
少し。
笑った。
「ようやく、相談らしくなってきましたね」
「最初から相談してただろ!?」
「『剣をちゃんと習いたい!』しか言っていませんでした」
「大事だろ!」
「大事ですが、紹介する側は困ります」
なるほど。
強くなりたい。
上手くなりたい。
だけじゃ。
何を。
教えてほしいのか。
分からない。
「ハリトさんは?」
今度は。
リディアさんが。
ハリトを見る。
「僕?」
「はい」
ハリトが。
少し考える。
そして。
背負っている弓へ。
触れた。
「僕は……」
一度。
止まる。
「当てること、かな」
「当てる?」
俺が聞く。
「ハリト、かなり当てるじゃん」
「だから」
ハリトが。
首を振る。
「当てられる時に射ってるんだよ」
「……何が違うんだ?」
「僕は森で狩りを覚えた」
獲物を。
驚かせない。
気づかれない。
確実に。
当てる。
外さない。
無駄に。
矢を使わない。
「狩りなら」
ハリトが言う。
「待てるんだ」
「待つ?」
「もっと近づくまで。止まるまで。狙える位置へ来るまで」
「ああ」
分かる。
「でも」
ハリトの。
表情が。
少し変わった。
「冒険では、待てない時がある」
俺は。
黙った。
「仲間が襲われてる時」
ハリトが言う。
「魔物が突然飛び出してきた時」
森で。
何度も。
あった。
「当たるかどうか分からなくても、射た方がいい時がある」
「…………」
「当てるだけじゃなくて」
ハリトは。
少し考えて。
言った。
「射つべき時に、射てるようになりたい」
リディアさんが。
頷いた。
「狩人としての弓と、冒険者としての弓の違い、ですか」
「……たぶん」
ハリトが。
腰の。
緑の《勇者装具》へ。
目を落とす。
《導風》。
《翠嵐》。
ハリトは。
新しい力を。
手に入れた。
でも。
その力を使うのも。
結局。
ハリトだ。
「ミーナさんは?」
「私?」
「はい」
「私は――」
ミーナが。
即答しかけて。
止まった。
「……速くなりたい?」
「俺と同じじゃん!」
「一緒にしないで」
「なんで!?」
「なんとなく」
「ひどくない!?」
ミーナが。
笑う。
そして。
自分の。
腰の短剣へ。
触れた。
「でも」
少し。
考える。
「私も、ちゃんと短剣を習ったことはないかも」
「ミーナも?」
「里で教わったことはあるよ」
ミーナが。
自分の耳を。
指差す。
「私、音が分かるでしょ」
次に。
鼻。
「匂いも分かる」
そして。
軽く。
足を鳴らす。
「人間より速く動ける」
「便利だな」
「でしょ?」
にっと。
笑う。
「だから、それで何とかなっちゃってた」
相手の音を聞く。
気配を感じる。
先に動く。
懐へ入る。
短剣を振る。
「私」
ミーナが。
短剣を。
少しだけ。
鞘から抜く。
「短剣そのものは、どれくらい上手いんだろう」
「…………」
考えたことが。
なかった。
ミーナは。
強い。
速い。
索敵もできる。
でも。
それと。
短剣の扱いが。
上手いことは。
同じじゃない。
「三人とも」
リディアさんが。
言った。
「よく似ていますね」
「俺とミーナが?」
「僕も入ってるよ」
「そこじゃありません」
リディアさんが。
笑った。
「皆さん、実戦の中で強くなってきたんです」
依頼を受ける。
魔物と戦う。
失敗する。
考える。
また挑戦する。
「それは、冒険者としてとても大切な経験です」
「じゃあ、このままでいい?」
「いいえ」
「どっちだよ!」
「経験だけで身につけたものには」
リディアさんが。
俺たちを見る。
「本人も気づいていない癖が残ることがあります」
癖。
「ニールさんなら」
俺を見る。
「身体能力が上がったことで、力や速さに頼る場面が増えているかもしれません」
「うっ」
「ハリトさんなら」
ハリトを見る。
「慎重さは長所です。ただ、それが確実性を求めすぎることにつながっているかもしれない」
「……うん」
「ミーナさんなら」
ミーナを見る。
「優れた感覚に頼ることで、武器そのものを磨く機会を逃しているかもしれません」
「耳が痛いなあ」
三人とも。
黙った。
なんか。
全部。
ありそうだ。
「LEVELは大切です」
リディアさんが。
続ける。
「高いLEVELは、それだけ多くの経験を積み重ねてきた一つの証でもあります。身体能力にも、魔力にも影響する」
「だよな!」
「ただし」
来た。
「LEVELが高ければ、剣の使い方まで勝手に上手くなるわけではありません」
「…………」
「弓も」
ハリトを見る。
「短剣も」
ミーナを見る。
「そして、判断もです」
俺は。
自分の剣へ。
目を落とした。
LEVEL12。
数字が。
上がるのは。
嬉しい。
強くなっているのも。
分かる。
でも。
LEVELを。
上げるだけじゃ。
身につかないものがある。
「じゃあ」
顔を上げる。
「どうすればいい?」
「専門家に習うのが一番でしょうね」
「専門家?」
リディアさんが。
にっこり笑った。
「ちょうどいい場所があります」
◇
「うおおおおおおおお!」
「うるさい」
ハリトに。
言われた。
でも。
これは。
仕方ないだろ。
「すげえええええ!」
「二回目」
《ラグナード》の。
外壁近く。
大きな敷地が。
高い柵で。
囲まれている。
中では。
何十人もの。
冒険者たちが。
身体を動かしていた。
剣を。
打ち合わせる音。
矢が。
的へ刺さる音。
魔法が。
訓練用の壁へ。
ぶつかる音。
掛け声。
怒鳴り声。
笑い声。
入口の。
看板には。
《ラグナード冒険者訓練場》。
「こんな場所あったのか!」
「僕たち」
ハリトが。
中を見回す。
「ラグナードに来てから、依頼ばっかりだったからね」
「面白そう!」
ミーナの。
耳も。
ぴんと立っている。
中へ。
入る。
中央では。
剣士たちが。
木剣を使って。
模擬戦をしている。
少し離れた場所には。
弓の。
射撃場。
近い的。
遠い的。
高さの違う的。
板や。
木箱の陰に。
隠れた的まである。
「……あっち見てくる」
ハリトが言った。
「待て待て待て!」
「何?」
「まだ説明聞いてないだろ!」
「ニールに言われるとは思わなかった」
「俺だって成長してる!」
さらに。
奥。
壁や。
柱。
木箱を。
並べた区画。
短剣を持った冒険者たちが。
障害物の間を。
走りながら。
模擬戦をしている。
「私はあっちかな」
ミーナの。
目が輝く。
「お前もか!」
「ニールだって剣のところ見てるじゃん」
「俺は見てない!」
「見てるよ」
「ちょっとしか見てない!」
「見てるじゃん」
その横を。
リディアさんが。
普通に。
歩いていく。
「置いていきますよ」
「待って!」
◇
「ここは学校ではありません」
訓練場の。
中央付近。
リディアさんが。
説明する。
「ギルドが管理している訓練施設です。冒険者であれば、基本的な設備を利用できます」
「先生はいないの?」
「常勤の教官はいません」
「じゃあ、どうやって習うんだ?」
「頼むんです」
「誰に?」
「教えてほしい人に」
「…………」
なるほど。
冒険者らしい。
「もちろん、報酬を求める方もいます。弟子を取らない方もいます。逆に、後進の指導を好む方もいます」
「じゃあ」
俺は。
周囲を見る。
「誰に頼めばいい?」
「そこまで含めて」
リディアさんが。
一枚の紙を。
取り出す。
「今回は、こちらで候補を考えておきました」
「さすがリディアさん!」
「こういう時だけ素直ですね」
「いつも素直だよ!」
「そういうことにしておきます」
リディアさんが。
紙を見る。
「ニールさんには、ザイル・グレインさん」
「ザイル?」
「四十三歳。人間。元五つ星冒険者です」
「五つ星!?」
思わず。
声が出た。
「現在は第一線を退いていますが、剣士として長く活動されていました」
「LEVELは?」
「三十四です」
「三十四……!」
高い。
シロナより。
さらに。
上。
「すげえ……」
「ただし」
「何?」
「私ができるのは紹介までです」
「え?」
「教えていただけるかどうかは、ニールさんが直接お願いしてください」
「断られることもある?」
「もちろん」
「…………」
急に。
不安になってきた。
「ハリトさんとミーナさんについても」
リディアさんが。
二人を見る。
「それぞれ、候補になる方がいます」
「僕にも?」
「はい」
「私も?」
「もちろんです」
「誰?」
ミーナが。
身を乗り出す。
「それは――」
リディアさんが。
何かを言おうとして。
「あ」
止まった。
「ちょうどいいですね」
「何が?」
「ザイルさんがいます」
「え?」
俺は。
リディアさんの。
視線を追った。
少し。
離れたところ。
一人の男が。
立っていた。
「……あの人?」
「はい」
「元五つ星?」
「そうです」
「LEVEL三十四?」
「そうです」
「……普通じゃない?」
「本人の前で言うなよ」
ハリトが。
小声で言う。
「まだ聞こえてないだろ」
「聞こえてるぞ」
「うわっ!?」
男が。
こっちを見た。
結構。
離れてるのに!?
四十代くらい。
短く切った。
茶色の髪。
派手な。
鎧はない。
普通の。
訓練着。
腰に。
剣もない。
持っているのは。
一本の。
木剣だけ。
鍛えられている。
でも。
大男じゃない。
見ただけで。
圧倒されるような。
身体でもない。
本当に。
普通に見える。
「リディア」
男が。
歩いてくる。
「そいつか?」
「はい」
リディアさんが。
俺を見る。
「ニール・レインさんです」
「ふうん」
ザイルさんが。
俺を見る。
上から。
下まで。
そして。
腰の。
ベルトさん。
「青の勇者ってのは?」
「俺!」
手を上げる。
「そうか」
終わった。
「…………」
「…………」
「それだけ!?」
「他に何がある」
「もっとこう……『お前が青の勇者か!』とか!」
「お前が青の勇者か」
「言わせた感すごいな!」
後ろで。
ミーナが。
笑った。
ザイルさんは。
俺を。
じっと見る。
「剣を使うんだな」
「おう」
「どれくらいだ」
「七歳くらいからだから……八年」
「誰に習った」
「父さんに少し。あとは町の人とか」
「師匠は?」
「いない」
「そうか」
また。
終わった。
なんなんだ。
この人。
「振ってみろ」
「え?」
ザイルさんが。
足元にあった。
訓練用の木剣を。
俺へ。
放る。
「うわっ」
慌てて。
受け取る。
「それでいい」
「何するの?」
「俺に打ち込め」
「……いいの?」
「ああ」
ザイルさんも。
木剣を。
一本取る。
「一回でいい」
「一回?」
「ああ」
「一回で何が分かるんだ?」
「振れば分かる」
「…………」
なんか。
腹立つ。
俺は。
リディアさんを見る。
「いいんですか?」
「どうぞ」
ハリトを見る。
「やれば?」
ミーナを見る。
「やっちゃえ」
よし。
「じゃあ――」
木剣を。
構える。
ザイルさんは。
木剣を。
下げたまま。
構えない。
「構えないの?」
「いいから来い」
「…………」
相手は。
元五つ星。
LEVEL34。
勝てるなんて。
思ってない。
でも。
さっき。
カイルと。
戦ったばかりだ。
同じLEVEL12。
それでも。
技術で。
あれだけ。
違った。
だったら。
この人は。
どれくらい――。
「装具は使うな」
「分かってるよ!」
ベルトさんが。
淡く光る。
『《待機》』
「ベルトさんも乗るな!」
後ろで。
ミーナが。
また笑った。
「来い」
ザイルさんが言う。
俺は。
息を吐く。
見る。
足。
肩。
木剣。
間合い。
さっき。
カイルと戦って。
分かった。
ただ。
突っ込むな。
相手を見ろ。
一歩。
踏み込む。
まだ。
振らない。
ザイルさんは。
動かない。
もう一歩。
間合い。
入った。
「はっ!」
木剣を。
振る。
速く。
強く。
でも。
力任せにならないように。
ザイルさんの。
木剣が。
動いた。
カン。
小さな。
音。
「え?」
俺の剣が。
横へ。
流れた。
それだけ。
ザイルさんは。
追撃しない。
「…………」
俺は。
止まる。
「終わりだ」
「え?」
「もういい」
「いやいやいや!」
思わず。
木剣を下ろす。
「一回しか振ってないぞ!?」
「一回でいいと言った」
「何が分かったんだよ!」
「だいたい」
「だいたい!?」
ザイルさんが。
木剣を。
俺へ向ける。
「踏み込みが先に出る」
「え?」
「振る前に右肩が動く」
「…………」
「力を入れるのが早い。だから軌道を変えにくい」
「…………」
「握りすぎだ」
自分の。
右手を見る。
「相手を見ようとしてるのは悪くない」
「!」
「実戦をやってきたんだろ」
「お、おう」
「反応も速い。身体も動く」
少し。
嬉しい。
「LEVEL十二なら、身体能力も悪くない」
「だろ!?」
「ニール」
ハリトが。
何か。
言おうとした。
でも。
ザイルさんが。
先に言った。
「強いな」
「!」
俺は。
笑う。
「だろ!?」
「強いだけだ」
「…………」
ん?
「剣は下手だ」
「…………」
今。
なんて?
「そんなハッキリ言う!?」
「言ってほしくなかったのか?」
「いや、言ってほしいけど!」
「なら問題ない」
「問題ある気がする!」
ザイルさんは。
気にせず。
続ける。
「速い」
俺を見る。
「力もある」
木剣を。
軽く上げる。
「実戦も知ってる」
そして。
俺の。
木剣を見る。
「だが、お前は剣で戦ってない」
「……どういう意味?」
「身体で戦ってる」
「身体?」
「速くなったから速く振る。力が増えたから強く振る。危なければ反応してかわす」
「…………」
間違って。
いない。
「剣は?」
「え?」
「剣をどう使う」
「……斬る?」
「それだけか」
「…………」
答えられない。
「お前の身体が」
ザイルさんが言う。
「剣より先に強くなりすぎてる」
「…………!」
胸に。
刺さった。
LEVELが。
上がった。
身体が。
強くなった。
ベルトさんの力も。
増えた。
《蒼駆》も。
《蒼閃》も。
成長した。
だけど。
俺の剣は?
「勘違いするな」
ザイルさんが言う。
「強いことは悪くない」
「……うん」
「速さも。力も。お前の武器だ」
木剣が。
俺の胸元を。
軽く叩く。
「捨てる必要はない」
「じゃあ」
「使え」
「え?」
「力に使われるな」
ザイルさんが。
自分の木剣を。
軽く振った。
速くない。
力強くもない。
ただ。
すっと。
剣先が。
俺の目の前で。
止まった。
いつ。
動いた?
「力に剣を振らせるな」
ザイルさんが言う。
「お前が剣を振れ」
「…………」
俺は。
手の中の。
木剣を見る。
八年間。
振ってきた。
父さんから。
もらった剣を。
使ってきた。
冒険者になって。
魔物とも。
戦った。
それでも。
知らないことが。
こんなにある。
できないことが。
まだある。
だったら。
「ザイルさん」
「あ?」
「俺に」
木剣を。
握る。
「剣を教えてください」
「…………」
「もっと強くなりたい」
そこで。
一度。
止まる。
「いや」
違う。
「剣が」
ザイルさんを見る。
「上手くなりたい」
ザイルさんは。
何も言わない。
「LEVELが上がったからじゃなくて」
自分の。
剣を見る。
「ちゃんと」
もう一度。
ザイルさんを見る。
「剣で、強くなりたい」
しばらく。
沈黙。
そして。
「断る」
「えええええええ!?」
思わず。
叫んだ。
「なんで!?」
「うるさい」
「だって今の流れ、絶対教えてくれるやつだっただろ!」
「知らん」
「そこをなんとか!」
「嫌だ」
「お願いします!」
「嫌だ」
「何でもするから!」
「軽々しく言うな」
「じゃあできる範囲で!」
「急に条件つけるな」
ミーナが。
後ろで。
お腹を押さえている。
「笑うなよ!」
「ご、ごめん……」
「絶対笑ってる!」
ザイルさんが。
ため息をついた。
「俺は弟子を取ってない」
「じゃあ何でリディアさん紹介したの!?」
「候補です」
リディアさんが。
平然と答える。
「紹介まで、と言いましたよね?」
「言ってた!」
「では問題ありません」
「俺にはある!」
「ニール」
ハリトが。
俺を見る。
「諦めるの?」
「…………」
その一言で。
止まった。
諦める?
俺は。
ザイルさんを見る。
「……諦めない」
「だと思った」
ハリトが。
笑う。
俺は。
もう一度。
ザイルさんの前に立つ。
「お願いします!」
頭を。
下げる。
「教えてください!」
「断る」
「お願いします!」
「断る」
「お願いします!」
「しつこい」
「よく言われる!」
「褒めてない」
「それもよく言われる!」
「…………」
ザイルさんが。
眉間を押さえた。
そして。
俺を見る。
「明日」
「え?」
「日の出から一時間後」
「…………」
「ここに来い」
俺は。
顔を上げる。
「それって――」
「教えるとは言ってない」
「でも来いって」
「来れば分かる」
「それ絶対教えてくれるやつ――」
「来るのか?」
「来る!」
即答した。
「遅れたら帰る」
「分かった!」
「返事だけはいいな」
「よく言われる!」
「それも褒めてない」
「それもよく言われる!」
ザイルさんが。
また。
ため息をついた。
でも。
ほんの少しだけ。
口元が。
笑っているように。
見えた。
「よし!」
俺は。
拳を握る。
「明日から修行だ!」
「教えるとは言ってないぞ」
「修行だ!」
「話を聞け」
ミーナが。
吹き出す。
ハリトも。
笑った。
俺は。
もう一度。
手の中の。
木剣を見る。
LEVEL12。
三つ星。
青の勇者。
《蒼駆Ⅲ》。
《蒼閃Ⅲ》。
前より。
ずっと。
強くなった。
だけど。
剣士としては。
まだまだ。
「……面白くなってきた」
俺が。
呟く。
「負けてもないのに?」
ミーナが聞く。
「下手って言われた」
「それで?」
「まだ上手くなれるってことだろ?」
「…………」
ミーナが。
少し。
笑った。
「やっぱりニールだね」
「だから、それどういう意味だよ」
「褒めてる」
「今度は?」
「今度は本当に」
なら。
いいか。
知らないことがある。
できないことがある。
だったら。
覚えればいい。
習えばいい。
練習すればいい。
LEVELを上げる。
技能を育てる。
実戦を経験する。
誰かから。
技術を教わる。
強くなる方法は。
一つじゃない。
そして。
俺たちは。
まだ。
強くなれる。
俺たちの。
新しいレベル上げは。
始まったばかりだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「強いな」
からの、
「強いだけだ。剣は下手だ」
ニール、見事にぶった斬られました(笑)
LEVEL12。三つ星。そして青の勇者。
数字だけを見れば、ニールは確実に強くなっています。
でも、身体が強くなることと、剣が上手くなることは同じではない。
そしてそれは、ハリトやミーナも同じでした。
実戦の中で身につけてきたからこその強さがある一方で、まだ知らない技術も、気づいていない癖もある。
LEVELを上げる。
技能を育てる。
実戦を経験する。
そして、誰かから学ぶ。
この世界には、いろんな「強くなり方」があります。
ここから三人は、それぞれ新しい成長へ踏み出していきます!
そしてザイルさん。
「教えるとは言ってない」
……と言いつつ、明日の時間まで指定してます(笑)
果たしてニールは、ちゃんと剣を教えてもらえるのでしょうか?
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感想や「自分ならどんな技能を身につけたい?」なども、ぜひ聞かせてください!
次回もよろしくお願いします!




