『五百年の眠り』
第三章『緑の勇者』は、前話で完結しました。
シロナは、自分の次の冒険へ。
ニール、ハリト、ミーナもまた、新しい道へ進み始めます。
――ですが。
彼らの知らない場所では。
もう一つ。
静かに動き始めたものがありました。
ここからは、ニールたちも知らない物語。
五百年間。
誰にも見つからず。
誰にも知られず。
眠り続けていたもののお話です。
それでは。
幕間『五百年の眠り』。
どうぞ。
暗い。
音もない。
光もない。
そこには。
ただ。
長い時間だけが。
積み重なっていた。
誰にも。
見つけられることなく。
誰にも。
触れられることなく。
誰にも。
呼ばれることなく。
それは。
眠り続けていた。
百年。
二百年。
三百年。
四百年。
そして。
五百年。
◇
《エルティア大森林》。
その深部。
ニールたちが。
足を踏み入れた場所より。
さらに奥。
ハリトが。
リーフを手にした遺跡よりも。
さらに深く。
誰にも。
知られていない場所。
そこに。
巨大な何かがあった。
岩。
そう言われれば。
岩にしか見えない。
長い年月の中で。
土に覆われ。
苔が生え。
木の根が絡みついている。
形すら。
もう。
分からない。
五百年間。
一度も。
動いていない。
だが。
それは。
岩ではなかった。
その内部。
誰の目も。
届かない場所で。
突然。
小さな光が。
灯った。
緑。
ほんのわずかな。
緑色の光。
長い沈黙の中。
文字が。
浮かび上がる。
《経過時間――確認》
《休眠期間――五百年》
間。
《休眠期間――終了》
《選定機構――再起動》
緑の光が。
わずかに。
強くなる。
《緑系統――認証確認》
《使用者――認証済》
《同系統接続――確認》
《装具認証――二基》
《未認証――三基》
再び。
沈黙。
やがて。
《共有領域――再構築中》
《起動条件――照合》
光が。
一度。
強くなる。
そして。
《起動条件――未達》
静寂。
何も。
起きない。
巨大な何かは。
動かない。
目覚めない。
ただ。
緑の光だけが。
静かに。
明滅する。
そして。
その光も。
消えようとした。
その時。
ピシッ。
五百年間。
音のなかった場所に。
小さな音が。
響いた。
巨大な岩のようなもの。
その表面に。
一本。
亀裂が走る。
そこから。
ほんの一瞬だけ。
緑色の光が。
漏れた。
そして。
消えた。
◇
遠く離れた場所。
アルヴェリア王国。
リーヴェルの近く。
《蒼天遺跡》。
昔から。
そこにあった場所。
人々は。
その存在を。
知っていた。
だが。
そのすべてを。
知っていたわけではない。
遺跡の奥。
かつて。
ニールが。
ベルトさんと出会った場所。
そこから。
さらに深く。
誰にも。
知られていない空間。
そこにも。
巨大な何かが。
眠っていた。
石に覆われ。
土に埋もれ。
形すら。
分からない。
五百年間。
一度も。
動くことなく。
ただ。
沈黙していた。
その内部。
青い光が。
灯る。
《経過時間――確認》
《休眠期間――五百年》
《休眠期間――終了》
《選定機構――再起動》
青い光が。
静かに。
明滅する。
《青系統――認証確認》
《使用者――認証済》
《同系統接続――確認》
《装具認証――二基》
《未認証――三基》
《共有領域――再構築中》
《起動条件――照合》
そして。
《起動条件――未達》
光が。
弱くなる。
何も。
動かない。
何も。
目覚めない。
再び。
五百年間と。
同じ静寂が。
戻ろうとした。
その時。
ピシッ。
石の表面に。
亀裂が入った。
小さな欠片が。
剥がれる。
落ちる。
カラン。
五百年間。
何も。
落ちなかった場所に。
小さな音が。
響いた。
◇
青。
緑。
二つの光。
まだ。
何も。
目覚めてはいない。
動くこともない。
その姿を。
知る者もいない。
ニールも。
ハリトも。
知らない。
自分たちが。
《勇者装具》を手にしたこと。
自分たちの意思で。
その力を受け入れたこと。
そして。
二つの《勇者装具》が。
五百年ぶりに。
つながったこと。
その一つ一つが。
何につながっているのかを。
まだ。
知らない。
五百年前。
何があったのか。
なぜ。
すべてが止まったのか。
なぜ。
《勇者装具》は。
五百年間。
眠り続けていたのか。
そして。
なぜ。
今なのか。
答えを知る者は。
まだ。
いない。
ただ。
暗闇の中。
再び。
光が灯る。
《装具認証――二基》
《未認証――三基》
《共有領域――再構築中》
《起動条件――未達》
そして。
最後に。
《――待機》
光が。
消える。
再び。
暗闇。
何も。
動いてはいない。
何も。
目覚めてはいない。
ただ。
五百年間。
完全に止まっていたはずのものが。
今。
初めて。
次の瞬間を。
待ち始めていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
これにて第三章『緑の勇者』――そして、その裏側で起きていた物語まで終了です。
青。
そして、緑。
二つの《勇者装具》が認証され。
五百年ぶりに、二つの系統がつながりました。
その結果。
ニールたちの知らない場所で、何かが反応しています。
ただし――。
《起動条件――未達》
まだ、目覚めてはいません。
では。
《起動条件》とは何なのか。
五百年前に、何があったのか。
なぜ《勇者装具》は、それほど長い間眠り続けていたのか。
そして――。
《装具認証――二基》
《未認証――三基》
残る三つが認証された時。
何が起きるのでしょうか。
もちろん。
ニールたちは、そんなことを知りません。
彼らが今考えているのは――。
「ちゃんと戦い方を習ってみよう」
そんな、とても冒険者らしい次の一歩です。
けれど。
彼らが自分たちの意思で一歩進むたび。
五百年前から止まっていた何かもまた、少しずつ動き始めています。
第三章では、二人目。
緑の勇者が誕生しました。
五人のうち、二人。
残るは――三人。
ここから物語は、さらに広がっていきます。
次章も楽しんでいただけましたら嬉しいです!
そして、
「五百年前に何があった?」
「奥に眠っている巨大なものは何?」
「五人揃ったら何が起きる?」
など、予想や考察もぜひ感想で聞かせてください!
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