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第十話『僕のクエスト』(改訂版 ver.1.01)

前回、LEVEL10となったハリトは、


自ら選ぶ力――

《勇者技能(ブレイブスキル):導風Ⅰ》


そして、先代から受け継ぐ力――

《伝説技能(レジェンダリースキル):翠嵐Ⅰ》


二つの新たな力を手に入れました。


さらに、緑の《勇者装具》にも「リーフ」という名前がつき――。


ニールとベルトさん。

ハリトとリーフ。


ついに二人と二つになった勇者たち。


けれど。


遺跡を見つけても。

緑の勇者が誕生しても。


彼らはまだ、依頼の途中です。


冒険者の仕事は、無事に帰って報告するまで。


ハリトが自分で選んで始めた今回の冒険は、どんな終わりを迎えるのでしょうか。


それでは、第三章最終話。


第十話『僕のクエスト』。


お楽しみください!

「じゃあ、帰ろうか」


 ハリトが言った。


「その前に《翠嵐》試さない?」


「帰ってから」


「《導風》は?」


「帰ってから」


「俺の《蒼閃Ⅲ》!」


「帰ってから」


「《蒼駆Ⅲ》!」


「帰ってから」


「ちょっとくらい!」


「ニール」


「はい」


 俺たちは。


 遺跡の最奥を後にした。


     ◇


 来た道を戻る。


 さっきまで。


 緑の光で満たされていた通路は。


 今も淡く輝いていた。


 ハリトが歩くたび。


 壁や床に刻まれた線が。


 静かに光る。


「まだ反応するんだな」


「うん」


 ハリトが。


 腰を見る。


 そこには。


 緑の《勇者装具》。


 リーフがある。


「なあ、リーフ」


 俺が呼ぶ。


『《応答》』


「おお!」


「なんでニールが喜ぶの?」


「だって返事したぞ!」


「さっきもしてたでしょ」


「リーフ!」


『《応答》』


「リーフ!」


『《応答》』


「リーフ!」


『《応答》』


「ニール」


「何?」


「遊ばないで」


「遊んでない!」


『《呼称――認識済》』


「ほら! もう覚えてる!」


「だから何度も呼ばなくていいんだよ」


 ミーナが。


 肩を震わせている。


「ベルトさんより素直かも」


「確かに!」


 腰のベルトさんが。


 青く光った。


『《比較基準――不明》』


「聞いてた!」


「ニールさん」


 シロナが笑う。


「装具同士を張り合わせるのはやめましょうね」


「張り合わせてないよ!」


 ……たぶん。


     ◇


 やがて。


 あの広間へ戻ってきた。


 俺たちの足が。


 自然と止まる。


「……いない」


 ミーナが呟いた。


 オオカミの姿は。


 もうなかった。


 ハリトを試した。


 古代の《守護体》。


 その姿は。


 どこにもない。


 ただ。


 広間の中央。


 床に刻まれた紋章だけが。


 淡い緑色に光っていた。


「リーフ」


 ハリトが呼ぶ。


『《応答》』


「あの《守護体》は、どこへ行ったの?」


 少し。


 間があった。


『《情報――制限》』


「分からない?」


『《否定》』


「知ってるけど、言えない?」


『《肯定》』


「…………」


「それあるんだ」


 俺は。


 思わず言った。


「ベルトさんと一緒じゃん」


『《肯定》』


「そこ肯定するんだ!?」


 ハリトが苦笑する。


「五百年前のことも?」


『《情報――制限》』


「この遺跡が何なのかも?」


『《情報――制限》』


「森で起きている異変については?」


『《回答不能》』


「…………」


 ハリトが。


 小さく息を吐く。


「分からないことだらけだね」


「まあ」


 俺は。


 ベルトさんに触れる。


「こっちもずっとこんな感じだから」


『《肯定》』


「そこは否定してくれてもいいんだぞ!」


 でも。


 分からないなら。


 今は。


 それでいい。


 ハリトが。


 広間を見回す。


「行こう」


「いいのか?」


「うん」


 ハリトは。


 緑の紋章を見る。


「また来るかもしれないし」


「来るだろ」


「なんで言い切れるの?」


「だって、分かんないことだらけじゃん」


「……それはそうだね」


 ハリトが。


 少し笑った。


 俺たちは。


 広間を後にした。


     ◇


 長い階段を上る。


 上へ。


 上へ。


 やがて。


 前から。


 光が見えた。


「外だ!」


「ニール、走らないで」


「分かってる!」


「走ってるよ」


「ちょっとだけ!」


 階段を駆け上がる。


 地上へ。


 出た。


「…………」


 思わず。


 立ち止まった。


 森が。


 赤い。


 木々の向こうから。


 夕日が差し込んでいる。


「もうこんな時間か」


 ハリトも。


 空を見る。


 遺跡へ入った時より。


 ずっと日が傾いている。


 ミーナが。


 大きく息を吸った。


「外の匂い」


「遺跡の中と違う?」


「全然違う」


 尻尾が。


 少しだけ揺れる。


「落ち着く」


 シロナが。


 空と。


 周囲の森を見る。


「今日はここまでにしましょう」


「え?」


「このまま帰らないの?」


 俺とミーナが。


 同時に聞いた。


「日没まで、それほど時間がありません」


 シロナが答える。


「暗くなってから《エルティア大森林》を移動する必要はありませんよ」


「でも――」


「ニール」


 ハリトが。


 地図を開く。


「僕も野営した方がいいと思う」


「ハリトまで!」


「遺跡から少し離れた場所まで移動して、そこで今日は終わり」


「ラグナードが遠い……」


「最初から今日中に帰れる距離じゃないよ」


「知ってるけど!」


 分かっている。


 分かっているけど。


「宿のベッド……」


「お風呂……」


 ミーナと。


 顔を見合わせる。


「帰りたいな」


「帰りたいね」


「意見が合った」


「珍しいね」


「おい!」


「でも」


 ハリトが。


 俺たちを見る。


「帰るためにも、今日は休む」


「……はい」


 それも。


 分かっている。


 進めるからって。


 進んでいいわけじゃない。


 帰れるからって。


 無理に帰る必要もない。


 俺たちは。


 遺跡から十分に距離を取った。


 少し開けた場所を探して。


 野営の準備を始めた。


     ◇


 夜。


 焚き火が。


 ぱちぱちと音を立てる。


 俺は。


 毛布にくるまっていた。


「ニール」


「何?」


「まだ寝ないの?」


「寝る」


「さっきからずっとベルトさん見てるけど」


「だってさ」


 俺は。


 腰のベルトさんを見る。


「今日だけで色々ありすぎただろ」


「まあね」


「ハリトが勇者になって」


「うん」


「リーフが増えて」


「増えたって言わないで」


「俺もLEVEL12になって」


「うん」


「《蒼駆》と《蒼閃》がⅢになって」


「うん」


「ハリトが《導風》と《翠嵐》覚えて」


「うん」


「試したい」


「寝て」


「はい」


 ハリトは。


 焚き火の向こうに座っている。


 その腰で。


 リーフが。


 淡く光っていた。


「……ハリト」


「何?」


「勇者になった感じする?」


「しない」


「しないんだ」


「ニールはしたの?」


「…………」


 考える。


「しなかった」


「でしょ?」


 勇者。


 そう言われても。


 急に何かが。


 変わるわけじゃない。


 俺は俺だった。


 ハリトも。


 ハリトだ。


「でも」


 ハリトが。


 リーフへ触れる。


「少し、不思議な感じはする」


「何が?」


「今までいなかったものが、いるから」


「分かる」


 俺も。


 ベルトさんを見る。


 最初は。


 変な装具だった。


 今も。


 変な装具だけど。


『《評価――不明》』


「心読むなよ!」


「ニール?」


「何でもない!」


 ミーナが。


 向こうで笑っている。


 シロナも。


 小さく笑っていた。


 ハリトが。


 リーフを見る。


「……リーフ」


『《応答》』


「いや」


 ハリトが。


 少しだけ笑う。


「呼んでみただけ」


 少し。


 間があった。


『《了解》』


「それでいいんだ」


「いいんじゃない?」


 俺は。


 毛布に潜り込む。


「俺も最初そんな感じだったし」


「そうなの?」


「たぶん」


「覚えてないんだ」


「色々あったからな!」


「便利だね、それ」


 目を閉じる。


 焚き火の音。


 森の音。


 みんなの気配。


 ベルトさん。


 リーフ。


 今日から。


 一つ増えた。


 そんなことを。


 考えていたら。


 いつの間にか。


 眠っていた。


     ◇


 朝。


「……寒い」


 目を開けた瞬間。


 俺は。


 毛布を引っ張った。


 森の朝は寒い。


 ラグナードにいた時より。


 明らかに寒い。


 というか。


「誰だよ、火消したの」


「消えたんだよ」


「ハリト」


「何?」


「起きてたなら薪を――」


「夜中に二回入れたよ」


「ありがとうございます」


「どういたしまして」


 俺は。


 毛布にくるまったまま。


 もう一度。


 目を閉じる。


「じゃあ、もう少し――」


「起きて」


「まだ暗い」


「明るいよ」


「俺の心が」


「知らないよ」


 冷たい。


 緑の勇者になって。


 こいつ。


 絶対ちょっと冷たくなった。


「ニール」


「何?」


「朝ご飯なくなるよ」


 目を開けた。


「起きます」


「早いね」


 身体を起こす。


 焚き火のそばでは。


 ミーナが笑っていた。


「食べ物にだけは素直だよね」


「食うのは大事だろ」


「否定はしないけど」


 シロナは。


 すでに荷物をまとめ始めている。


「おはようございます、ニールさん」


「おはよう、シロナ」


「よく眠れましたか?」


「寒かった」


「途中で毛布を蹴っていましたからね」


「え?」


「ハリトさんが掛け直していましたよ」


「…………」


 ハリトを見る。


「何?」


「優しいじゃん」


「じゃあ次から放っておくよ」


「ごめんなさい」


 やっぱり。


 いつものハリトだった。


     ◇


 朝食を終える。


 野営地を片づけて。


 俺たちは。


 再び歩き始めた。


 目的地は。


 ラグナード。


 昨日までとは。


 逆方向だ。


 《エルティア大森林》の奥へ。


 奥へ。


 そうやって進んできた俺たちが。


 今度は。


 森の外へ向かっている。


 依頼は。


 まだ終わっていない。


 冒険者の依頼は。


 目的地に着いたら終わりじゃない。


 何かを見つけても。


 魔物を倒しても。


 人を助けても。


 ギルドへ帰って。


 報告するまでが依頼だ。


 ……これ。


 前の俺なら。


 たぶん。


 分かってなかった。


「ニール」


「ん?」


「そっちじゃない」


「え?」


 前を見る。


 ハリトたちは。


 少し右へ進んでいた。


「…………」


「何してるの?」


「考え事」


「歩きながら?」


「うん」


「危ないよ」


「はい」


 ミーナが笑う。


「青の勇者、森で迷子になりかける」


「やめろ!」


「ギルドで報告しよっか?」


「依頼内容に入ってないだろ!」


「追加情報」


「いらない!」


 シロナまで。


 少し笑っていた。


     ◇


 帰り道。


 ハリトは。


 何度も足を止めた。


 迷っているわけじゃない。


 地面を見る。


 木を見る。


 折れた枝を見る。


 時々。


 しゃがみ込む。


「またあった」


 ハリトが。


 地面を指した。


 足跡。


「《枝角鹿》?」


 俺が聞く。


「うん。それと、こっちは別の動物」


 ミーナも。


 しゃがみ込む。


「やっぱり外側に向かってるね」


「昨日見たのと同じだ」


「そうだね」


 ハリトは。


 紙を取り出す。


 位置。


 向き。


 数。


 周囲の状態。


 一つずつ。


 書き込んでいく。


「ハリト」


「何?」


「真面目だな」


「依頼だからね」


「緑の勇者になったんだから、もっとこう……」


「何?」


「勇者っぽいことしないの?」


「今してるよ」


「これが?」


「調査」


「地味じゃない?」


「じゃあニール」


「何?」


「勇者っぽいことって何?」


「…………」


 剣を振る。


 魔物を倒す。


 人を助ける。


 世界を救う。


 ……なんか。


 全部。


 すごくふわっとしている。


「分からん」


「でしょ」


 ハリトが笑う。


「だから今は、冒険者の仕事をするよ」


 そう言って。


 また紙に。


 何かを書き込む。


 緑の勇者。


 なのに。


 やっていることは。


 昨日までのハリトと。


 変わらない。


 でも。


 それが。


 なんとなく。


 いい気がした。


     ◇


 昼前。


 森の中で。


 小さな沢を見つけた。


 水を補給する。


 休憩。


 俺は。


 木にもたれた。


「疲れた」


「帰りなのに?」


「帰りだからだよ」


「意味分かんない」


 ミーナが。


 干した果物を食べている。


 俺も。


 一つもらう。


「うまい」


「銀貨一枚」


「高っ!」


「じゃあ返して」


「もう食った」


「銀貨一枚」


「鬼!」


「冗談だよ」


「怖いんだよ!」


 笑いながら。


 もう一つ取ろうとした。


 手を叩かれた。


「それは銀貨二枚」


「値上がりした!?」


 その横で。


 ハリトが。


 地図を広げていた。


 すると。


 リーフが。


 淡く光る。


『《経路情報――照合》』


「ん?」


 俺たち全員に。


 その言葉が伝わった。


 ハリトが。


 リーフを見る。


「何かあるの?」


『《古代経路――検出》』


「古代経路?」


 俺は。


 すぐに立ち上がった。


「近道!?」


「まだ分からないよ」


「でも道だろ?」


「五百年前のね」


「…………」


「あ」


 そうだった。


 リーフは。


 今の森を。


 ずっと見ていたわけじゃない。


 五百年前。


 先代の緑の勇者と。


 ここにいた。


 それから。


 長い間。


 眠っていた。


「どっち?」


 ハリトが聞く。


『《方向――北西》』


 ハリトが。


 地図を見る。


 周囲を見る。


「確認してくる」


「俺も――」


「待ってて」


「はい」


 ハリトと。


 ミーナが。


 少しだけ先へ進む。


 しばらくして。


 二人が戻ってきた。


「ダメだね」


 ハリトが言った。


「なんで?」


「沢が広がってる」


 ミーナも。


 尻尾を揺らす。


「水も結構強いよ。昨日の雨だけじゃないかも」


「地形が変わったんだ」


 ハリトが。


 リーフを見る。


「リーフ」


『《応答》』


「教えてくれてありがとう」


 緑の光が。


 小さく瞬く。


「でも、その道は今は使わない」


『《理由――要求》』


「理由聞いてきた!」


「僕に聞いてるんだよ」


 ハリトが。


 少し笑う。


「五百年前と、今では森が変わってる。沢が広がっていて、今の僕たちが通るなら危険が増える」


 少し。


 間があった。


『《情報――更新》』


「おお……」


「覚えたのかな」


 ミーナが。


 リーフを見る。


 ハリトも。


 少し驚いていた。


「……そういうこともできるんだ」


『《肯定》』


「じゃあ」


 ハリトが。


 今まで進んできた道を見る。


「今の道で帰るよ」


『《了解》』


「素直!」


 俺が言う。


 青い光が。


 腰で瞬いた。


『《評価――不要》』


「ベルトさん!?」


 ミーナが。


 吹き出す。


「やっぱり張り合ってない?」


「俺に言うなよ!」


 ハリトは。


 笑いながら。


 地図を畳んだ。


 リーフが。


 教えてくれる。


 ハリトが。


 確かめる。


 そして。


 ハリトが。


 決める。


 たぶん。


 それでいい。


     ◇


 午後。


 森の外側が。


 少しずつ明るくなってきた。


 木々の間隔が広くなる。


 見覚えのある場所も。


 増えていく。


「もうすぐだね」


 ミーナが言った。


「うん」


 ハリトが答える。


 その時だった。


 ハリトが。


 突然。


 止まった。


「どうした?」


「……いた」


「何が?」


 ハリトが。


 前を指す。


 木々の向こう。


 一匹の《枝角鹿》がいた。


 灰色の毛。


 細い脚。


 枝のように伸びた角。


 森へ来た時に見た個体と。


 同じかどうかは。


 分からない。


 でも。


 あの時とは。


 少し違っていた。


「逃げてない」


 ミーナが呟く。


 俺たちを。


 警戒している。


 でも。


 森の外へ。


 必死に逃げている様子じゃない。


 しばらく。


 俺たちを見て。


 それから。


 森の奥へ。


 ゆっくり歩いていった。


「……戻ってきた?」


 俺が聞く。


「分からない」


 ハリトが答える。


「異変が収まったとか?」


「それも分からない」


「一匹だけでは、判断できませんね」


 シロナが。


 森の奥を見る。


「はい」


 ハリトが。


 紙を取り出す。


「だから、これも記録しておく」


「原因は?」


「分からない」


「じゃあ」


 俺は。


 少し考える。


「依頼、失敗?」


「違うよ」


 ハリトが。


 紙へ書き込みながら答えた。


「僕たちは、原因を倒しに来たんじゃない」


 書き終えて。


 顔を上げる。


「何が起きているのか、調べに来たんだ」


「…………」


「空白地帯があった」


「うん」


「ギルドの地図にない遺跡があった」


「うん」


「《守護体》がいた」


「うん」


「リーフがいた」


『《応答》』


「そこ返事するんだ」


「それから」


 ハリトが。


 森を見る。


「来る時には外へ向かっていた《枝角鹿》が、帰りには一匹だけ森の奥へ向かった」


「うん」


「どうしてなのかは、まだ分からない」


 紙を。


 しまう。


「だから、それを持って帰る」


「分からないことを?」


「うん」


「分からなかったことも、情報だから」


 そうか。


 遺跡を見つけた。


 緑の勇者が生まれた。


 五百年前の《勇者装具》が。


 二つ。


 つながった。


 それでも。


 森の異変について。


 全部。


 分かったわけじゃない。


 だったら。


 もっと奥へ。


 ……じゃない。


 分からないからこそ。


 持ち帰る。


 それも。


 冒険者なんだ。


     ◇


 夕方。


 森を抜けた。


「出たー!」


 俺は。


 思い切り。


 伸びをした。


 空が。


 広い。


「やっぱ森の外っていいな!」


「森の奥へ行きたがってた人が言う?」


「それとこれとは別!」


 ミーナも。


 尻尾を大きく揺らしている。


「お風呂入りたい」


「飯!」


「そればっかり」


「宿!」


「増えた」


「風呂!」


「私の真似しないで」


 シロナが。


 俺たちを見て。


 笑う。


「ラグナードまでは、まだありますよ」


「…………」


 俺とミーナが。


 同時に止まる。


「シロナ」


「はい?」


「現実を言わないで」


「そう言われましても」


 ハリトが。


 俺たちの。


 少し前を歩いている。


「ほら」


「何?」


「行くよ」


 俺は。


 その背中を見る。


 そういえば。


 この冒険が始まった時も。


 ハリトが。


 少し前を歩いていた。


 《エルティア大森林》へ行くと。


 最初に決めたのも。


 ハリトだった。


 森の中で。


 どこまで進むか。


 どこで止まるか。


 考えたのも。


 ハリト。


 遺跡へ入ると。


 決めたのも。


 ハリト。


 《守護体》と。


 向き合ったのも。


 ハリト。


 緑の装具へ。


 手を伸ばしたのも。


 ハリトだ。


 俺が。


 連れてきたんじゃない。


「なあ、ハリト」


「何?」


「楽しかった?」


「何が?」


「今回の冒険」


 ハリトが。


 少し。


 考えた。


「怖かったよ」


「うん」


「分からないことばっかりだったし」


「うん」


「途中で何度か帰ろうかと思った」


「マジ?」


「もちろん」


「言えよ!」


「言ったらニール、すぐ帰ろうって言うでしょ」


「当たり前だろ!」


「だから」


 ハリトが。


 少し笑う。


「ちゃんと自分で考えた」


「……そっか」


「うん」


 ハリトが。


 腰のリーフを見る。


「でも」


 緑の光が。


 小さく瞬く。


「来てよかった」


 そして。


 俺を見る。


「楽しかったよ」


「そっか」


「うん」


 ハリトは。


 また。


 前を向く。


 俺は。


 その隣まで走った。


「じゃあ次は俺のクエストな!」


「何それ」


「今回はハリトだっただろ?」


「別に順番制じゃないよ」


「じゃあミーナでもいいぞ!」


「勝手に決めないで!」


「シロナでも!」


「私は自分で決めます」


「全員自由!」


「冒険者だからね」


「便利だな、その言葉!」


 笑い声が。


 夕方の道に響いた。


 俺は。


 隣を歩く。


 ハリトを見る。


 今回の冒険で。


 ハリトは。


 緑の勇者になった。


 でも。


 それより前に。


 自分で。


 行き先を決めた。


 自分で。


 道を選んだ。


 自分で。


 進むことを決めた。


 自分で。


 止まることも決めた。


 そして。


 最後に。


 自分で。


 緑の装具へ手を伸ばした。


 勇者だから。


 できたんじゃない。


 勇者に。


 選ばれたからでもない。


 ハリトが。


 自分で選んだ。


 その道の先に。


 緑の勇者があった。


 だから。


 これは。


 緑の勇者になるためのクエストじゃない。


 最初から。


 最後まで。


 ハリト自身が選んだ――。


 ハリトのクエストだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


これにて――


第三章『緑の勇者』、完結です!


第一話『ハリトのクエスト』から始まった今回の冒険。


《エルティア大森林》で起きている異変を調べる。


その依頼を選んだのは、ハリトでした。


森の奥で感じる、理由の分からない懐かしさ。


魔物たちが近づかない《空白地帯》。


ギルドの地図にも載っていない古代遺跡。


オオカミ型《守護体》との戦い。


そして、その先で待っていた緑の《勇者装具》。


けれどハリトは、「呼ばれたから」進んだわけではありません。


行くのか。

戻るのか。

どの道を進むのか。

仲間を信じるのか。

そして、緑の装具を受け取るのか。


一つずつ、自分で考えて、自分で選びました。


その結果――。


ハリトは、緑の勇者になりました。


勇者になったから、ハリトの冒険が始まったのではありません。


ハリト自身が選んだ冒険の先に、緑の勇者があった。


だからこそ。


第一話では『ハリトのクエスト』。


そして最後は――


『僕のクエスト』。


そんなタイトルにしました。


そして今回、リーフも少しずつハリトとの旅を始めています。


五百年前の情報を持っていても、今の世界をすべて知っているわけではない。


リーフが教える。

ハリトが確かめる。

そして最後に決めるのは、ハリト自身。


ベルトさんとニールがそうだったように、ハリトとリーフもこれから一緒に成長していきます。


青と緑。


二人の勇者が揃ったことで、五百年間止まっていた何かが、少しずつ動き始めました。


でも、その前に。


まずはラグナードへ帰って、ギルドへの報告です。


未だ原因の分からない《エルティア大森林》の異変。


五百年前の古代遺跡。


《守護体》。


そして再びつながった二つの《勇者装具》。


彼らが持ち帰ったものは、果たして何につながっていくのでしょうか。


次章も、ぜひ一緒に冒険していただけたら嬉しいです!


第三章『緑の勇者』を面白かったと思っていただけましたら、★評価・ブックマークで応援していただけると、とても励みになります!


そして、


「ハリトのここが好き!」

「ベルトさんとリーフ、今後どうなるの?」

「《翠嵐》早く見たい!」


など、感想もぜひお待ちしています!


それでは――。


次のクエストで、またお会いしましょう!

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