第三十九話『三つ星の装備』(改訂版 ver1.01)
三つ星冒険者へ昇格したニール、ハリト、ミーナ。
厳しかった昇格試験も終わり、まずはみんなでお祝いです!
そして三つ星になったことで、これまでより少しだけ広がった冒険の世界。
次の冒険へ進む前に――まずは装備から!
父からもらった剣を使い続けたいニール。
故郷から持ってきた弓を手放さないハリト。
そして、新しい武器を探すミーナ。
三人それぞれの「三つ星の装備」とは?
第三十九話『三つ星の装備』
少し息抜きの、装備強化&お買い物回です!
ぜひ最後までお楽しみください!
面白いと思っていただけましたら、高評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです!
三つ星になった。
だから。
「かんぱーい!」
「声大きい!」
「今日くらいいいだろ!」
「昨日もそれ言ってたよね?」
言ったっけ?
まあ。
いいじゃん。
三つ星なんだから。
◇ ◇ ◇
その日の夜。
俺たちは。
《ラグナード》の食堂に集まっていた。
俺。
ハリト。
ミーナ。
シロナ。
そして。
「今日は好きなだけ食え!」
そう言って笑ったのは。
ディンだった。
「本当にいいの!?」
「おう。助けてもらった礼だ」
「ディン」
隣に座っていたメリアが。
呆れた顔をする。
「この子にそんなこと言って大丈夫?」
「え?」
「遠慮しなさそう」
「もちろん!」
「少しは遠慮しなさいよ!」
ミーナに怒られた。
「いいっていいって」
ディンが笑う。
「約束したからな」
行方不明になっていた。
三つ星冒険者。
ディン・ハーグ。
そして。
メリア・ノール。
二人を見つけて。
《ラグナード》まで連れて帰った時。
確かに。
飯を奢るって。
言っていた。
「それに」
ディンが。
俺たちを見る。
「三つ星になったんだろ?」
「そう!」
俺は。
冒険者証を出す。
「見て!」
「もう見た」
「三つ!」
「分かった分かった」
「三つある!」
「増えねえからしまえ」
メリアが笑う。
「嬉しいのね」
「めちゃくちゃ!」
「昨日からずっとこれなんです」
シロナが言った。
「いいじゃん!」
「いいと思いますよ」
「じゃあ言うなよ!」
料理が。
次々に運ばれてくる。
肉。
魚。
野菜。
パン。
見たことのない料理もある。
「これ何!?」
「食べてから聞けば?」
「毒だったらどうする!」
「店で出さないでしょ」
「確かに!」
「ニール」
ハリトが。
俺を見る。
「三つ星になっても、そこは変わらないんだね」
「何が?」
「……なんでもない」
なんだよ。
◇ ◇ ◇
「それで」
しばらくして。
シロナが。
俺たち三人を見る。
「皆さん、これから装備はどうするんです?」
「装備?」
「はい」
俺は。
自分の身体を見る。
剣。
防具。
ブーツ。
それから。
腰のベルトさん。
「別に壊れてないぞ?」
「壊れてから買い替えるものではありませんよ」
「そうなの?」
「そうです」
シロナが。
俺の防具を見る。
「皆さんが今使っているものは、冒険者になったばかりの頃から使っているものも多いでしょう?」
「うん」
「これからは三つ星の依頼を受けることになります」
三つ星。
その言葉に。
ちょっと。
ニヤける。
「ニール」
「何?」
「顔」
「何もしてない!」
「してる」
シロナが。
小さく笑った。
「三つ星だからといって、急に強い魔物と戦わなければならないわけではありません」
「うん」
「ですが、これまでより危険な場所へ行く機会は増えるでしょう」
「…………」
「ですから」
シロナが言った。
「一度、装備を見直しておくのもいいと思いますよ」
「新しい装備……」
俺は。
自分の剣を見る。
「剣も?」
「それは、ご自分で決めればいいと思います」
「…………」
俺は。
柄に触れる。
十五歳の誕生日に。
親父からもらった剣。
「俺は、これがいい」
即答だった。
「でしたら」
メリアが言う。
「買い替えなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「武器って、買い替えるだけじゃないから」
「どういうこと?」
ディンが。
自分の剣を。
軽く叩いた。
「素材を使って、打ち直す方法もある」
「打ち直す?」
「魔物の素材や鉱石を使ってな。今使ってる武器を補強したり、性質を変えたりできる」
「…………」
俺は。
剣を見る。
「強くできるの?」
「できる」
「このまま?」
「剣そのものを捨てる必要はない」
「それだ!」
俺は。
立ち上がった。
「明日行こう!」
「今からじゃないんだ」
「店閉まってるだろ!」
「そこは冷静なんだね」
ミーナ。
なんだその顔。
「ハリトは?」
俺が聞く。
「僕も」
ハリトが。
自分の弓を見る。
「この弓を使いたい」
故郷から。
持ってきた弓。
「だったら、一緒に見てもらおうぜ!」
「うん」
「ミーナは?」
「私は……」
ミーナが。
二本の短剣を見る。
「新しいの、見てみようかな」
「おお!」
「なんでニールが喜ぶの?」
「装備更新だぞ!」
「私のだけど」
「パーティー全体の強化だ!」
「急にそれっぽいこと言い始めた」
「俺、三つ星だからな!」
「関係ないよ」
◇ ◇ ◇
翌日。
「うおおおお……!」
俺たちは。
《ラグナード》の武具街にいた。
剣。
槍。
斧。
弓。
盾。
鎧。
革製品。
素材。
旅道具。
店。
店。
店。
「全部見よう!」
「見ないよ」
「なんで!?」
「今日が終わるから」
ミーナに。
即座に却下された。
「まずは武器ですね」
シロナが言う。
「よし!」
俺は。
剣の柄を握った。
◇ ◇ ◇
「買い替える必要はねえな」
「本当!?」
武器屋の奥。
俺の剣を見た職人が。
そう言った。
「ああ」
刃を見る。
柄を見る。
何度か。
軽く叩く。
「ちゃんと手入れされてる」
「してます!」
「……自分で?」
「…………」
「バルドさんに教えてもらったのを、ハリトに教えてもらいながら」
「ほとんど僕じゃん」
「俺もやってる!」
「まあいい」
職人が。
剣を置く。
「元の作りも悪くねえ」
その言葉が。
なんか。
嬉しかった。
「親父にもらったんです」
「そうか」
職人は。
それ以上。
何も聞かなかった。
「だったら、こいつを使えばいい」
「でも」
俺は聞く。
「強くできるんですよね?」
「ああ」
職人が。
店の奥に並ぶ。
素材を見る。
「武器ってのは、鉄だけでできてるわけじゃねえ」
鉱石。
魔物の牙。
角。
爪。
鱗。
知らない素材が。
いくつも並んでいる。
「素材によって、性質が違う」
「炎が出たり!?」
「いきなりそんなもん求めんな」
「違うの?」
「そういう特殊な武器もあるが、値段を聞いたら泣くぞ」
「やめます」
「早えな」
職人が。
笑った。
「お前は剣を持って走るんだろ?」
「走ります!」
「動きも速い」
「はい!」
「だったら、重くして頑丈にするより、今の重さを大きく変えずに強度を上げた方がいい」
「なるほど」
「それと」
職人が。
俺を見る。
「魔力は使うか?」
「使います」
《蒼閃》。
剣へ。
魔力を通して放つ技。
「だったら魔力を通しやすい素材を少し混ぜる手もある」
「それ!」
俺は。
剣を見る。
「それがいい!」
「値段聞いてから決めろ」
「…………いくら?」
職人が言う。
「金貨二枚」
「…………」
「ニール?」
「…………お願いします」
「今すごい顔してたよ」
「強くなるには金がかかるんだな……」
知らなかった。
◇ ◇ ◇
次は。
ハリト。
「弓もできる?」
「物による」
職人が。
ハリトの弓を見る。
「こいつも悪くねえ」
ハリトが。
少しだけ。
嬉しそうな顔をした。
「ただ、弓は剣と同じやり方じゃ駄目だ」
「はい」
「硬くすりゃいいってもんじゃねえ。しなりを殺したら終わりだ」
「なるほど」
俺は。
分かったような顔をする。
「ニール、分かってないでしょ」
「分かってる!」
「じゃあ説明して」
「…………次行こう」
「分かってないじゃん」
職人が。
弓を確認する。
「補強するなら、弓幹だな」
柔軟性を残したまま。
負荷のかかる部分を。
魔物素材で補強する。
弦も。
今より強いものへ。
「今より強く引ける」
「飛距離も伸びますか?」
「腕次第だ」
「じゃあ練習します」
「いい答えだ」
「俺の時より優しくない!?」
◇ ◇ ◇
「私は」
ミーナが。
棚に並んだ短剣を見る。
「買い替えようかな」
「今のは?」
「普通の短剣だし」
一本を。
手に取る。
「冒険者になった時に買ったものだから」
「思い入れないの?」
「使いやすいけど」
ミーナが。
俺を見る。
「道具は道具でしょ?」
「かっこいい……」
「何その反応」
「俺も言ってみたい」
「ニールには無理じゃない?」
「なんで!?」
ミーナが。
何本か。
短剣を試す。
握る。
振る。
戻す。
また。
別のものを持つ。
「結構ちゃんと選ぶんだな」
「当たり前でしょ」
そして。
一組の短剣で。
手が止まった。
「これ」
刃は。
今までのものより。
少し細い。
色も。
普通の鋼とは違う。
「魔獣の牙を芯材に使ってる」
店員が言った。
「軽い。錆びにくい。採取にも使える」
「これがいい」
「早っ!」
「持った瞬間分かった」
「俺もそういうの言いたい!」
「言えば?」
「……この剣、持った瞬間分かった」
「お父さんにもらった時?」
「そういうことになるな」
「じゃあ本当じゃん」
「確かに!」
◇ ◇ ◇
そして。
防具。
「三つ星用の鎧ください!」
「そんなものはありません」
「また!?」
シロナが。
笑っている。
「星の数で装備が決まるわけではありませんよ」
「分かってるけど言ってみたかった!」
「でしょうね」
防具屋には。
革。
金属。
鱗。
甲殻。
毛皮。
いろんな素材で作られた防具が。
並んでいた。
「魔物だ……」
俺は。
一つの胸当てを見る。
「これ、魔物から作ってるの?」
「そうですよ」
店員が答える。
「魔物の皮や甲殻は、種類によっては普通の革より丈夫です。軽いものもあります」
「へえ……!」
「ただし、素材が良ければ何でも強いというわけではありません」
「違うの?」
「使う人に合うかどうかです」
その言葉で。
俺は。
試験を思い出した。
俺にできること。
ハリトにできること。
ミーナにできること。
装備も。
同じなのかもしれない。
◇ ◇ ◇
俺が選んだのは。
濃い青の。
軽装鎧だった。
魔獣の硬い皮を。
何層にも重ね。
胸や肩。
前腕には。
軽い金属が入っている。
「軽い!」
身体を。
ひねる。
剣を。
抜く。
「動ける!」
「前に出る剣士向けですね」
シロナが言う。
「動きを邪魔せず、守るところは守る」
「俺にぴったり!」
「突っ込んでいいという意味ではありませんよ」
「分かってる!」
ミーナと。
ハリトが。
俺を見る。
「何だよ!」
「別に」
「何も」
「信用しろ!」
◇ ◇ ◇
ハリトが選んだのは。
軽い革を使った防具だった。
肩周りが。
かなり自由に動く。
「薄くない?」
「弓を引くからね」
「大丈夫?」
「当たらなければ」
「それミーナも言ってた!」
「基本だから」
腕を上げる。
弦を引く。
何度繰り返しても。
邪魔にならない。
「これにする」
「早いな」
「必要なものが分かってるから」
「かっこいい!」
「ニールも分かってたじゃん」
「俺は青いやつ!」
「色で選んだの!?」
「違う!」
◇ ◇ ◇
ミーナは。
三人の中で。
一番時間がかかった。
「これもいいけど……」
動く。
「こっちは少し音がする」
戻す。
「これは軽いけど、腰が動かしにくい」
戻す。
「…………」
「ミーナ」
「何?」
「まだ?」
「ニール」
「はい」
「装備選びで急かす人、嫌われるよ」
「待ちます!」
そして。
ようやく。
「これ」
ミーナが選んだのは。
薄い魔獣革を使った。
軽量防具だった。
柔らかい。
軽い。
動いても。
ほとんど音がしない。
腰には。
新しい二本の短剣。
小さな道具入れ。
そして。
髪には。
琥珀色のラグナ石。
「…………」
「何?」
「いや」
俺は。
ミーナを見る。
「似合ってるな」
「…………」
ミーナが。
一瞬。
止まった。
「防具?」
「全部」
「…………そ」
「なんだよ、その反応」
「別に」
ミーナが。
髪飾りに。
少し触れる。
「ありがと」
「おう」
◇ ◇ ◇
宿へ戻る頃には。
財布が。
ものすごく。
軽くなっていた。
「…………」
「ニール?」
「金貨四枚あったんだぞ」
「うん」
「三つ星になったんだぞ」
「うん」
「なのに」
財布を見る。
「貧乏になった」
「装備買ったからでしょ」
「三つ星って金持ちじゃないの!?」
「誰が言ったの?」
「俺のイメージ!」
「知らないよ」
しかも。
剣は。
強化のために預けてある。
ハリトの弓も。
加工が終わるのは。
数日後。
「待ち遠しいな」
俺が言う。
「うん」
ハリトも。
少し嬉しそうだった。
「ミーナはいいよな。もう武器あるじゃん」
「その代わり一番高かった」
「いくら?」
「教えない」
「なんで!?」
「女の子に所持金聞かないでよ」
「またそれ!?」
◇ ◇ ◇
数日後。
俺は。
完成した剣を握っていた。
「…………」
見た目は。
ほとんど。
変わらない。
親父からもらった。
俺の剣。
でも。
少しだけ。
違う。
握る。
軽く。
魔力を流す。
「おお……」
今までより。
滑らかに。
剣へ。
魔力が通る。
「ベルトさん」
『――肯定』
「まだ何も聞いてないけど!?」
『――……』
「黙るな!」
ミーナが。
笑っている。
ハリトも。
新しく補強された弓を。
何度か。
確かめている。
「どう?」
「いい」
ハリトが言った。
「前より引ける」
「俺のもすごいぞ!」
「よかったね」
「反応薄い!」
「だってニール、さっきからそれしか言ってないし」
「すごいものはすごい!」
俺は。
剣を見る。
剣は。
変わっていない。
でも。
変わった。
俺たちも。
同じなのかもしれない。
突然。
別の誰かになったわけじゃない。
ミーナは。
ミーナのまま。
ハリトは。
ハリトのまま。
俺も。
俺のまま。
それでも。
少しずつ。
できることが増えていく。
三つ星になった。
LEVELも上がった。
装備も。
新しくなった。
「よし!」
俺は。
剣を鞘へ戻す。
「次の依頼、何にする?」
「もう行く気?」
「だって三つ星だぞ!」
「また始まった」
「三つ星の依頼だぞ!?」
どんな場所へ。
行けるんだろう。
どんな依頼が。
待っているんだろう。
まだ。
何も決まっていない。
だから。
楽しみだった。
新しい装備。
三つになった星。
そして。
まだ知らない。
次のクエスト。
俺たちの冒険は。
また少しだけ。
広がった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回は三つ星昇格のお祝いと、久しぶりの装備更新回でした!
ニールとハリトは、新しい武器へ買い替えるのではなく、これまで使ってきた剣と弓を素材によって強化。
一方のミーナは、自分の戦い方に合った新しい短剣を選びました。
防具についても、
前に出るニール。
弓を使うハリト。
身軽さと静かさを重視するミーナ。
同じ三つ星冒険者でも、必要な装備はそれぞれ違います。
そして個人的に大切にしたかったのが、
「強くなる=今までのものを捨てる」ではないこと。
ニールは父からもらった剣を。
ハリトは故郷から持ってきた弓を。
これまでの冒険を一緒に歩んできたものを残しながら、少しずつ強くしていく。
三人自身の成長にも、少し似ているのかもしれません。
三つの星。
新しくなった装備。
そして、まだ見ぬ三つ星の依頼。
ここからまた、三人の冒険の世界が広がっていきます。
次回もぜひお楽しみに!
続きが気になる、三人の次の冒険も見届けたいと思っていただけましたら、ぜひ高評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです!




