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第三十八話『三つ目の星』(改訂版 ver1.01)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ニール、ハリト、ミーナ。


三人そろって、ついに三つ星冒険者へ昇格しました!


今回の昇格試験で問われていたのは、

単純な「強さ」ではありませんでした。


戦うのか、避けるのか。

助けるのか、先へ進むのか。

どこまでやるのか、どこで止めるのか。

そして、誰に何を任せるのか。


正解が決められていない状況で、自分たちで考え、自分たちで選び、依頼を果たして生きて帰ってくる。


それが今回、三人が手に入れた「三つ目の星」です。


最初は何も知らなかった三人も、少しずつ冒険者らしくなってきました。


そして三つ星になったことで、これまでとは違う依頼や、新しい冒険も少しずつ見えてくることになります。


ニールたちの冒険は、まだまだこれからです。


次回もぜひお楽しみに!


面白かった、三人の成長をもっと見たいと思っていただけましたら、

ぜひ高評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです!


皆さまの応援が、三人の次の冒険への大きな力になります!

 翌朝。


 《ルーベン村》を出た俺たちは。


 《ラグナード》へ向かう街道を歩いていた。


「なあ、シロナ」


「はい?」


「帰りも試験なの?」


「もちろんです」


「じゃあ帰り道で魔物を倒したら加点とか――」


「そういう発想をしているうちは、減点したくなりますね」


「なんでだよ!」


 ミーナが。


 吹き出した。


「ニール、まだ点数あると思ってるの?」


「だって試験だぞ? 普通あるだろ!」


「最初にないって言われたでしょ」


「でも実は裏で百点満点とか――」


「ありません」


「即答!」


 ハリトまで。


 笑っている。


「じゃあ何を基準に合格決めるんだよ」


「それを私に聞くんですか?」


「…………」


 俺は。


 シロナを見る。


 シロナは。


 にこりと笑った。


「私の顔に答えは――」


「書いてないんだろ! もう覚えた!」


「素晴らしいです」


「そこだけ褒められても嬉しくない!」


 結局。


 最後まで。


 シロナは何も教えてくれなかった。


     ◇ ◇ ◇


 帰り道は。


 驚くほど平和だった。


 魔物にも遭遇しない。


 壊れた荷馬車もない。


 水の出ない井戸もない。


 《絡み蔓(バインドヴァイン)》も出てこない。


 助けを求めて。


 走ってくる人もいない。


 ただ。


 歩く。


「…………」


「ニール」


「何?」


「暇そうだね」


「暇だよ」


「いいことじゃん」


「分かってるけどさ」


 ミーナが。


 ふと。


 足を止めた。


 街道脇を見る。


 俺も。


 止まる。


 ハリトも。


 止まった。


「どうした?」


「……いや」


 ミーナが。


 耳を動かす。


「小動物。多分」


「そっか」


「うん」


 再び。


 歩き始める。


 少しして。


 今度は。


 ハリトが。


 道の先を見る。


「少し南側を通ろう」


「何かある?」


「昨日の《絡み蔓》の近くは避けたい。別の個体がいないとも限らないから」


「分かった」


「私もそれでいい」


 それだけ。


 誰も。


 言い争わない。


 俺は。


 なんとなく。


 思った。


 最初だったら。


 多分。


 ミーナが止まれば。


「魔物か!?」


 って。


 剣に手を伸ばしていた。


 ハリトが。


 遠回りしようと言えば。


「近い方でいいだろ!」


 って。


 言っていたかもしれない。


 今は。


 ミーナが止まれば。


 俺たちも止まる。


 ハリトが道を決めれば。


 理由を聞く。


 納得したら。


 ついていく。


 俺が荷物を持って。


 疲れたら。


 誰かに渡す。


 ただ。


 それだけ。


 でも。


「なんか」


 俺は言った。


「パーティーっぽくなったな」


「今さら?」


 ミーナが言った。


「僕たち、ずっと一緒に依頼受けてるけど」


「そうじゃなくて」


 なんて言えば。


 いいんだろう。


「前より、楽になった」


「歩くのが?」


「違う」


 俺は。


 少し考える。


「全部、自分でやらなくていいっていうか」


 昨日。


 《絡み蔓》を前に。


 俺は。


 最初。


 全部。


 自分で斬ろうとした。


 でも。


 俺には。


 根の場所なんて分からなかった。


 ミーナには。


 分かった。


 俺一人じゃ。


 何本もの蔓を抑えながら。


 根元まで進めなかった。


 ハリトには。


 それができた。


 だから。


 任せた。


 俺にできないことを。


 二人に。


 そして。


 二人が作ってくれた道を。


 俺が進んだ。


「……まあ」


 ミーナが言った。


「最初からそうなんだけどね」


「え?」


「ニール一人じゃ、何にもできないでしょ」


「言い方!」


「剣は使える」


「うん」


「魔法は下手」


「おい」


「索敵もできない」


「おい」


「地図もハリトに任せてる」


「ちょっと待て」


「料理も――」


「もういい!」


 ハリトが。


 笑っている。


「でも、ミーナの言ってることは間違ってないよ」


「お前まで!?」


「僕だって、一人じゃできないことはある」


 ハリトが言った。


「ミーナもそうでしょ?」


「まあね」


「だから三人でやってる」


「…………」


 俺は。


 少し前に会った。


 一人の男を思い出した。


 ハルキ・サトー。


 七つ星。


 一人で。


 国からの依頼までこなす。


 とんでもなく強い冒険者。


 あの人は。


 本当に。


 強いんだと思う。


 でも。


「俺は、こっちの方がいいな」


「何が?」


 ミーナが聞く。


「なんでもない」


 俺は。


 笑った。


     ◇ ◇ ◇


 《ラグナード》へ戻ったのは。


 翌日の昼過ぎだった。


「帰ってきたー!」


 西門を抜ける。


 見慣れた街。


 人の声。


 店。


 行き交う冒険者。


 数日しか。


 離れていないのに。


 なんだか。


 懐かしい。


「まだ終わってませんよ」


 後ろから。


 シロナの声。


「分かってる!」


「本当ですか?」


「ギルドで報告するまでだろ?」


「はい」


「完璧!」


「ようやく覚えましたね」


「長かったね」


「ミーナまで!」


 そのまま。


 俺たちは。


 冒険者ギルドへ向かった。


     ◇ ◇ ◇


 扉を開ける。


 いつもの。


 喧騒。


 依頼掲示板。


 酒を飲んでいる冒険者。


 受付。


 そして。


「あ」


 俺たちを見つけた。


 リディアさんが。


 笑った。


「おかえりなさい」


「ただいま!」


 俺は。


 受付へ向かう。


「届けてきた!」


「はい。《ルーベン村》からも受領確認が届いています」


「早っ!」


「冒険者ギルドですから」


「便利だな!」


 ハリトと。


 ミーナも。


 受付へ並ぶ。


 最後に。


 シロナが。


 前へ出た。


「リディアさん」


「はい」


「三名とも、無事帰還しました」


 その言葉で。


 なんとなく。


 空気が変わった。


「では」


 リディアさんが。


 書類を出す。


「三つ星昇格試験の報告をお願いします」


「俺から?」


「三人からです」


「全員?」


「はい」


 俺たちは。


 顔を見合わせた。


「……長くなるぞ?」


「仕事ですから」


「じゃあ遠慮なく」


     ◇ ◇ ◇


 全部。


 話した。


 街道で。


 荷馬車が壊れていたこと。


 積まれていた。


 魔物除けが大量にこぼれていたこと。


 その影響で。


 《鉄牙猪(アイアンボア)》が。


 移動していたこと。


 倒せる相手だった。


 でも。


 倒す必要はないと判断して。


 戦わず。


 迂回した。


 宿場では。


 井戸の水が出なくなっていた。


 俺たちは。


 時間を決めて。


 原因を調べた。


 ハリトが。


 沢の流れが変わっていることに気づいた。


 でも。


 全部を直そうとはしなかった。


 必要な分だけ。


 水の流れを戻して。


 残りは。


 宿場の人たちに任せた。


 そして。


 《ルーベン村》へ向かう。


 最後の街道。


 《絡み蔓(バインドヴァイン)》に。


 荷車が捕まっていた。


 俺は。


 最初。


 全部。


 自分で斬ろうとした。


 でも。


 それじゃ。


 駄目だった。


 ミーナが。


 根元を見つけた。


 ハリトが。


 蔓を抑えた。


 俺は。


 二人に任せた。


 そして。


 二人が作ってくれた道を進んで。


 根元を斬った。


 最後に。


 木箱を。


 期限内に。


 《ルーベン村》の診療所へ届けた。


「以上!」


 俺は。


 胸を張った。


「で」


 リディアさんを見る。


「何点?」


「点数はありませんよ」


 シロナが言った。


「まだ諦めてなかったの?」


 ミーナが。


 呆れる。


「だって試験だぞ!」


「最初に言ったはずです」


 シロナが。


 俺たちを見る。


「この試験に、一つの正解はありません」


「じゃあ」


 俺は聞く。


「何を見てたんだ?」


「皆さんが、何を選ぶのかです」


「選ぶ?」


「はい」


 シロナは。


 まず。


 ミーナを見る。


「ミーナさん」


「はい」


「今回、あなたは自分で見て、自分で考え、自分で進む道を決めました」


「…………」


「《鉄牙猪》を発見した時」


 ミーナの。


 耳が。


 少し動く。


「戦わないと決めたのは、あなたでしたね」


「……はい」


「魔物の位置。風向き。地形」


 シロナが。


 微笑む。


「誰かについていくのではなく、自分の判断で、仲間の進む道を決めた」


 ミーナが。


 黙って聞いている。


「あなたが見つけたから、避けられた危険があります」


「…………」


「あなたが決めたから、進めた道があります」


「……はい」


「自分の感覚と判断を、もっと信じていいと思いますよ」


「…………はい」


 ミーナが。


 ちょっと。


 照れている。


 珍しい。


「何?」


「いや?」


「ニヤニヤしないで」


「してない!」


「してる」


 次に。


 シロナが。


 ハリトを見る。


「ハリトさん」


「はい」


「あなたは今回、何度も立ち止まりました」


「…………」


 俺は。


 思わず。


 シロナを見る。


「それ褒めてる?」


「褒めています」


「よかった」


「なぜニールさんが安心するんですか?」


 シロナが続ける。


「進むことだけが、判断ではありません」


 井戸。


 倒木。


 水。


「どこまで手を貸すのか」


 空。


 残り時間。


 目的地。


「いつ切り上げるのか」


 そして。


「誰が、何をするのか」


 ハリトは。


 黙って。


 聞いている。


「あなたは自分で考え、仲間に役割を伝え、最後には自分で『ここまで』と決めました」


「……はい」


「できることと、今やるべきことは違う」


 ハリトが。


 少しだけ。


 目を見開く。


「あなたが言った言葉ですね」


「……はい」


「自分たちの目的を忘れず、自分で方針を決める。それも冒険者に必要な力です」


「はい」


 そして。


 シロナが。


 俺を見る。


「ニールさん」


「はい!」


「あなたは」


「はい!」


「最初から最後まで、一番危なっかしかったです」


「俺だけ悪口!?」


 ミーナが。


 吹き出した。


「ちょっと待って! 二人めっちゃ褒められてたじゃん!」


「最後まで聞いてください」


「はい……」


「ですが」


 シロナの表情が。


 少しだけ。


 柔らかくなる。


「一番変わったのも、ニールさんだったと思います」


「……俺が?」


「はい」


 シロナは。


 俺の腰にある。


 青の《勇者装具》を見る。


「あなたは、強くなろうとしています」


「うん」


「仲間を守るために」


「……うん」


「それは、とても大切なことだと思います」


 でも。


「仲間を守ることと、すべてを自分でやることは違います」


「…………」


「《絡み蔓》を前にした時も、最初は自分だけで何とかしようとしましたね」


「……はい」


「ですが最後は」


 シロナが。


 ハリトと。


 ミーナを見る。


「二人に任せた」


 俺は。


 昨日のことを。


 思い出す。


 ミーナに。


 根元を探してもらった。


 ハリトに。


 蔓を抑えてもらった。


 俺は。


 二人の声を信じて。


 進んだ。


「仲間を信じることと、仲間に任せることは、少し違います」


「…………」


「任せるということは、その人ならできると信じることでもあります」


 俺は。


 ハリトを見る。


 ミーナを見る。


「そして、自分も任された役割を果たす」


 シロナが。


 笑った。


「それができるようになったのは、大きな成長だと思いますよ」


「……うん」


 なんか。


 ちょっと。


 恥ずかしい。


 でも。


 嬉しかった。


     ◇ ◇ ◇


「それにしても」


 リディアさんが。


 報告書へ目を落とす。


「三人とも、よく我慢しましたね」


「我慢?」


「特にニールさん」


「俺?」


「《鉄牙猪》を倒さなかった」


「そこ!?」


「《絡み蔓》でも、必要以上に戦わなかった」


「最初は全部斬ろうとしたけど……」


「それでも、途中で判断を変えたのでしょう?」


「……うん」


「試験前にもお話ししましたね」


 リディアさんが言う。


「三つ星になると、ギルドから細かな指示を出せない依頼が増えます」


 俺は。


 試験が始まった日のことを。


 思い出す。


 目的。


 期限。


 荷物。


 それだけ。


 道も。


 戦うかどうかも。


 誰が何をするのかも。


 全部。


 俺たちが決めた。


「依頼の途中で、何が起きるかは分かりません」


 リディアさんが。


 俺たち三人を見る。


「だからこそ、自分たちで考えなければならない」


 進む。


 止まる。


 戦う。


 避ける。


 助ける。


 任せる。


 戻る。


「そして」


 リディアさんが。


 少しだけ。


 笑った。


「生きて、帰ってくる」


「…………」


「得たものを持ち帰り、報告する」


 あ。


 俺は。


 なんとなく。


 分かった。


 これが。


 試験だったんだ。


 強い魔物を。


 倒せるか。


 じゃない。


 正しい道を。


 当てられるか。


 でもない。


 何が起きるか。


 分からない中で。


 自分たちで考えて。


 自分たちで決めて。


 依頼を終わらせて。


 生きて。


 帰ってくる。


「それが」


 リディアさんが言った。


「三つ星冒険者に、ギルドが求めるものです」


「…………」


 俺は。


 少しだけ。


 背筋を伸ばした。


     ◇ ◇ ◇


「あ、そうだ」


 俺は。


 思い出した。


「シロナ」


「はい?」


「なんで最初から、箱の中身が薬だって教えてくれなかったんだ?」


「なぜ教える必要があるんです?」


「だって」


 俺は言う。


「薬なら大事だろ?」


「では」


 シロナは。


 すぐに返した。


「薬でなければ、大切に運ばなくてもよかったのですか?」


「…………」


 俺の口が。


 止まる。


「あ」


「依頼人にとって、何が大切なのか」


 シロナが言う。


「それを冒険者が勝手に決めてはいけません」


 薬。


 食べ物。


 手紙。


 石。


 何だって。


「誰かが、あなたたちに届けてほしいと託した」


 シロナは。


 俺たち三人を見る。


「その時点で、それは大切な荷物です」


「…………」


 俺は。


 あの。


 小さな木箱を思い出した。


 中身なんて。


 知らなかった。


 でも。


 《ルーベン村》では。


 誰かが。


 待っていた。


「なるほど」


 俺は言った。


「だから教えなかったのか」


「そういうことです」


「じゃあ最初から、それを言ってくれれば――」


「それでは試験にならないでしょう?」


「ですよね!」


     ◇ ◇ ◇


「それじゃ」


 俺は。


 リディアさんを見る。


「合格?」


「まだです」


「…………え?」


「まだです」


「なんで!?」


「今、皆さんからの報告を受けたばかりでしょう?」


 リディアさんが。


 俺たちの前にある書類を。


 指で軽く叩く。


「これからシロナさんの試験報告と照らし合わせ、これまでの依頼記録も確認します」


「今ので決められないの!?」


「昇格試験ですよ?」


「…………」


 言われてみれば。


 そうかもしれない。


「結果は明日、お伝えします」


「明日!?」


「はい」


「今夜眠れない!」


「寝てください」


「もし落ちてたら!?」


「明日分かります」


「気になる!」


「明日分かります」


「ちょっとくらい――」


「明日分かります」


「リディアさん強い!」


 ミーナが。


 俺の服を引っ張る。


「帰るよ」


「待て! まだ交渉が!」


「ありません」


「リディアさん!?」


「また明日」


 笑顔。


 なのに。


 絶対に。


 教えてくれそうにない。


「……帰ろう、ニール」


 ハリトまで。


 俺の肩を叩く。


「お前ら気にならないの!?」


「気になるよ」


「じゃあ!」


「でも明日なんでしょ?」


「ぐっ……!」


 俺は。


 受付を見る。


 リディアさん。


 笑顔。


 シロナ。


 笑顔。


 駄目だ。


 こいつら。


 絶対教えてくれない。


「……明日かあ」


 俺たちは。


 ギルドを出た。


     ◇ ◇ ◇


 翌日。


「早いですね」


 冒険者ギルドへ入った瞬間。


 リディアさんに言われた。


「寝られなかった!」


「寝てくださいと言いましたよね?」


「寝たよ!」


「では?」


「早く目が覚めた!」


「子どもみたい」


「ミーナ!」


「ニール、僕たちより一時間早く宿を出ようとしてたからね」


「ハリト!」


「皆さん仲がいいですね」


「今そこ褒める!?」


 でも。


 ミーナも。


 ハリトも。


 俺と一緒に。


 朝からギルドへ来ている。


 なんだ。


 二人だって。


 気になってるじゃん。


「では」


 リディアさんが。


 三人を見る。


 昨日とは。


 少しだけ。


 違う顔。


 受付の人じゃない。


 ギルドの人として。


 俺たちを見ている。


「昨日の三つ星昇格試験について、審査結果をお伝えします」


「…………」


 急に。


 緊張してきた。


 ミーナも。


 黙っている。


 ハリトも。


 リディアさんを見る。


「試験官シロナ・エルネージュさんからの報告」


 シロナ。


「今回の依頼達成状況」


 木箱。


「これまでの二つ星冒険者としての活動記録」


 今までの。


 依頼。


 失敗。


 成功。


 全部。


「それらを踏まえ、ギルドで審査を行いました」


 リディアさんが。


 俺を見る。


「ニール・レインさん」


「はい!」


「ハリト・ヴェールさん」


「はい」


「ミーナ・フェルさん」


「はい」


 一拍。


 置いて。


 リディアさんが。


 笑った。


「三名とも」


 俺は。


 息を止める。


「三つ星冒険者への昇格を認めます」


「…………」


 机の上へ。


 三枚の。


 冒険者証が置かれる。


 俺は。


 自分のものを。


 見る。


 星が。


 一つ。


 二つ。


 そして。


 三つ。


「……増えてる」


「そりゃ増えるでしょ」


 ミーナが言った。


「分かってるよ!」


 でも。


 なんか。


 嬉しい。


 すげえ。


 嬉しい。


「三つだ……」


 初めて。


 《リーヴェル》の冒険者ギルドで。


 登録した日。


 何も知らなくて。


 依頼の選び方すら。


 分からなくて。


 ハリトと二人で。


 初めて。


 町の外へ出た。


 護衛をした。


 野営した。


 知らない街へ来た。


 ミーナと出会った。


 シロナと出会った。


 色んな冒険者に会った。


 失敗した。


 無茶した。


 倒れた。


 怖くなった。


 それでも。


 また。


 青の《勇者装具》をつけた。


 仲間と。


 依頼を受けた。


 そして。


 ここまで来た。


「おめでとうございます」


 リディアさんが言う。


「今日から皆さんは、三つ星冒険者です」


「…………」


 三つ目の星。


 強い魔物を。


 倒したから。


 もらったわけじゃない。


 LEVELが。


 高くなったからでもない。


 ミーナは。


 自分で見つけて。


 自分で道を決めた。


 ハリトは。


 自分で考えて。


 俺たちを動かして。


 止まる場所を決めた。


 俺は。


 仲間に任せることを覚えた。


 そして。


 三人で。


 依頼を終わらせて。


 帰ってきた。


「よっしゃああああああ!」


「声大きい!」


「だって三つ星だぞ!」


「ギルドの中!」


「いいじゃん今日くらい!」


「ニールさん」


「はい!」


「減点しますよ?」


「もう試験終わっただろ!?」


 リディアさんが。


 笑う。


 ミーナも。


 ハリトも。


 笑っていた。


 俺は。


 もう一度。


 冒険者証を見る。


 三つの星。


 これで。


 何が変わるのか。


 どんな依頼が。


 待っているのか。


 まだ。


 分からない。


 でも。


 今日は。


 それでいい。


 俺たちは。


 また一つ。


 冒険者として。


 前へ進んだ。


 三人で手に入れた。


 三つ目の星だった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


ついに――


ニール、ハリト、ミーナ。三人そろって三つ星冒険者へ昇格!


今回の試験では、強い魔物を倒したわけでも、難しい依頼を一人で解決したわけでもありません。


異変に気づく。


戦わないと決める。


困っている人を助ける。


でも、すべてを背負わない。


そして、自分にできないことは仲間に任せる。


三人が試されていたのは、そんな冒険者としての「選択」でした。


そしてもう一つ。


箱の中身が薬だと知らなくても、大切に届ける。


誰かが託した時点で、それは大切な荷物。


これも今回の試験で、ニールたちが学んだことの一つです。


そして最後。


ずっと森から何かを感じていたハリトが、ついに言いました。


「誰かに呼ばれたからじゃない。僕自身が、行きたい」


呼ばれたから進むのではなく、自分で次の冒険を選ぶ。


三つ目の星を手にした三人の、次なるクエストが始まります。


次回――北の森へ。


よろしくお願いします!

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