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第三十七話『任せるということ』(改訂版 ver1.01)

三つ星昇格試験、最後の一日。


ミーナは、自分で道を選び。


ハリトは、自分で考え、進むために止まることを選びました。


そして残るのは――ニール。


「仲間を信じる」ことと、

「仲間に任せる」ことは、少し違う。


危険な時ほど、自分が前に出ようとするニールが、

今回どんな答えを選ぶのか。


第三十七話『任せるということ』


ぜひ最後までお楽しみください!

 翌朝。


「よし!」


 宿場を出たところで。


 俺は大きく伸びをした。


 空は晴れている。


 昨日。


 俺たちが水の流れを戻した沢には。


 朝早くから宿場の人たちが向かっていた。


 井戸にも。


 少しずつ水が戻っているらしい。


 ここから先は。


 宿場の人たちの仕事だ。


 そして。


 俺たちには。


 俺たちの仕事がある。


「今日こそ俺の番だ!」


「朝からうるさい」


 ミーナが。


 呆れた顔で言った。


「ニール、何の話?」


「LEVELだよ!」


 俺は。


 二人を指差す。


「ミーナが七! ハリトが九! 俺が十!」


「うん」


「二人とも試験が始まってから上がった!」


「それで?」


「だから次は俺だ!」


「何が『だから』なの?」


「流れがあるだろ!」


「ないよ」


 ハリトまで。


 即答した。


「じゃあ賭けようぜ!」


「嫌だよ」


「即答!?」


 少し離れたところでは。


 シロナが。


 俺たちを見ている。


「シロナ!」


「はい?」


「俺、今日LEVEL上がると思う?」


「知りません」


「もうちょっと試験官っぽいこと言ってよ!」


「では――」


 シロナが。


 少し考える。


「頑張ってください」


「それ何回目!?」


 ミーナが笑う。


 ハリトも笑う。


 いつも通りだ。


「行こう」


 ハリトが言った。


「《ルーベン村》まで、今日中に」


「おう!」


 俺は。


 木箱を背負い直す。


 期限は。


 今日の日没。


 三つ星昇格試験。


 最後の一日が。


 始まった。


     ◇ ◇ ◇


 昼前。


 俺たちは。


 順調に街道を進んでいた。


「暇だな」


「いいことじゃん」


 ミーナが言った。


「試験中なんだぞ?」


「だから何も起きない方がいいでしょ」


「そうなんだけどさ」


 昨日は。


 壊れた荷馬車。


 《鉄牙猪(アイアンボア)》。


 宿場の井戸。


 色々あった。


 だから。


 なんとなく。


 今日も何か起こる気がしていた。


「ニール」


「ん?」


「何か起きてほしいみたいな顔しないで」


「してない!」


「してる」


「してないって!」


「してるよ」


 ハリトまで。


 俺って。


 そんなに分かりやすいのか。


「あとどれくらい?」


「このままなら、夕方より前には着く」


 ハリトが。


 地図を確認する。


「余裕だな!」


「油断しないでよ」


「分かってるって」


 そう言った。


 その時だった。


「――おーい!」


 遠くから。


 声がした。


 俺たちは。


 足を止める。


「今の聞こえた?」


「うん」


 もう一度。


「おーい!」


 街道の先から。


 男が走ってくる。


 息を切らしながら。


 俺たちのところまで。


 駆けてきた。


「冒険者か!?」


「そうです!」


「よかった……!」


 男は。


 膝に手をついて。


 大きく息を吐いた。


「頼む! 手を貸してくれ!」


     ◇ ◇ ◇


 男に案内され。


 街道を少し進む。


「……なんだ、これ」


 俺は。


 思わず立ち止まった。


 街道の真ん中。


 一台の荷車が。


 緑色の何かに覆われている。


 蔓。


 だった。


 太い蔓が。


 車輪に。


 荷台に。


 車軸に。


 何重にも巻きついている。


「植物?」


「近づかないで」


 ミーナが。


 俺の服を掴んだ。


「え?」


「あれ」


 見る。


 蔓が。


 動いた。


「…………」


 もう一度。


 見る。


 うねうね。


 動いている。


「草が動いた!」


「《絡み蔓(バインドヴァイン)》だ」


 ハリトが言った。


「絡み蔓?」


「うん」


「バインドヴァイン?」


「そう」


「名前そのまんまじゃん!」


「魔物の名前に文句言わないでよ」


「だって絡む蔓だから絡み蔓だぞ!?」


「分かりやすくていいでしょ」


 そういうものなのか。


 男が。


 荷車を指差す。


「急に地面から出てきたんだ。気づいた時には、あの有り様で……」


「人は?」


「俺一人だ。馬は何とか外した」


「怪我は?」


「ない」


 よかった。


 なら。


「よし」


 俺は。


 木箱を下ろそうとする。


「ミーナ、これ頼む」


「待って」


「ん?」


「何する気?」


「何って」


 剣を抜く。


「斬る」


「…………」


「なんだよ」


「いや」


 ミーナが。


 絡みついた蔓を見る。


「ニールならそう言うと思った」


「だって蔓だぞ?」


「魔物だけどね」


「蔓なら斬れる!」


 俺は。


 荷車へ近づく。


「ニール」


 ハリトの声。


「気をつけて」


「任せろ!」


 一本。


 太い蔓がある。


「これを――」


 剣を振る。


 ザンッ!


「よし!」


 切れた。


 地面へ落ちた蔓が。


 しばらく。


 びくびくと動いている。


「ほら! 余裕――」


 ズルッ。


「……ん?」


 地面から。


 新しい蔓が伸びた。


 荷車へ。


 巻きつく。


「…………」


 さらに。


 ズルッ。


「増えた!?」


「だから待ってって言ったのに!」


「先に言ってくれ!」


「私だって知らないよ!」


「じゃあなんで止めた!?」


「分からないからでしょ!」


「なるほど!」


 さらに。


 蔓が動く。


「ニール、下がって!」


「うおっ!」


 足元。


 地面を這っていた蔓が。


 俺の足首へ伸びてくる。


 飛び退く。


「危なっ!」


 一本。


 二本。


 三本。


 切った場所とは。


 別の場所から。


 蔓が伸びてくる。


「これ」


 俺は剣を構える。


「全部斬ればいいのか?」


「話聞いてた!?」


     ◇ ◇ ◇


「……おかしい」


 少し離れた場所。


 俺たちは。


 荷車を見ていた。


 蔓は。


 相変わらず。


 荷車に絡みついている。


「切っても増える」


「増えてるっていうより」


 ミーナが。


 地面を見る。


「別の蔓が伸びてきてる感じかな」


「同じじゃないの?」


「違うよ」


「何が?」


「…………」


「そんな顔するなよ!」


 ハリトが。


 蔓の伸びている方向を見る。


「全部、どこかにつながってるのかもしれない」


「どこか?」


「根」


 ミーナが言った。


「植物なら、根っこがある」


「なるほど!」


 俺は。


 剣を持ち直す。


「じゃあ根っこ探して斬ればいいんだな!」


「見つけてから言って」


「はい」


 俺たちは。


 荷車の周りを見る。


 地面。


 草。


 蔓。


 でも。


「分からん」


 俺には。


 全部同じに見える。


 ミーナは。


 しゃがみ込んで。


 地面を調べている。


「こっちの蔓は細い」


「うん」


「こっちは太い」


「うん」


「それで?」


「今見てるから黙って」


「はい」


 ハリトは。


 少し離れた岩へ登る。


 上から。


 周囲を見渡す。


「ミーナ」


「何?」


「街道の南側」


「どこ?」


「あの低木の奥。蔓が集まってない?」


 ミーナが立ち上がる。


「…………」


 しばらく見て。


「ほんとだ」


「本体?」


「多分」


 俺も見る。


「どれ?」


「ニールには分からないと思う」


「なんで!?」


「さっき全部同じって言ってたから」


「ぐっ……!」


 でも。


 二人には。


 見えているらしい。


 俺には。


 見えないものが。


「じゃあ行って斬ってくる」


「待って」


「今度は何!?」


 ハリトが。


 低木までの地面を指差す。


 よく見ると。


 草の間に。


 何本もの蔓が這っている。


「近づいたら絡まれると思う」


「だったら全部斬りながら――」


 言いかけて。


 止まった。


 全部。


 斬る。


 また。


 それだ。


「…………」


 剣を見る。


 俺なら。


 行けるかもしれない。


 《蒼駆Ⅰ》を使って。


 一気に距離を詰めて。


 蔓を斬って。


 根元まで。


 俺一人で。


 突破する。


「ニール?」


 ミーナが。


 俺を見る。


 できる。


 多分。


 できる。


 だったら。


 俺が――。


 その瞬間。


 思い出した。


 《石角羊》。


 三十七体。


 ミーナが怪我をして。


 ハリトに連れて行かせて。


 俺一人で。


 残った。


 あの時も。


 そうだった。


 俺が。


 やればいい。


 俺が。


 全部。


 何とかすればいい。


 仲間を。


 守るために。


「…………」


 間違ってたとは。


 思わない。


 あの時は。


 あれしか。


 思いつかなかった。


 でも。


 今は?


 俺は。


 一人じゃない。


「……ベルトさん」


 腰の装具へ。


 手を伸ばす。


 どうすればいい?


 聞こうとして。


「…………」


 手を止めた。


 いや。


 違う。


 今回。


 答えを出すのは。


 俺たちだ。


「ニール?」


 俺は。


 二人を見る。


 ハリト。


 ミーナ。


 俺には見えないものを。


 二人は見ている。


 だったら。


「ミーナ」


「何?」


「根っこ。見つけられるか?」


「……やってみる」


「頼む」


 ミーナが。


 少し驚いた顔をする。


 俺は。


 ハリトを見る。


「ハリト」


「うん」


「俺が根元まで行く間、蔓を抑えられる?」


 ハリトが。


 弓を見る。


 地面を見る。


 そして。


 頷いた。


「できると思う」


「危なくないか?」


「危なくないとは言えない」


「…………」


 やっぱり。


 俺が――。


 その言葉が。


 喉まで出た。


 でも。


 飲み込む。


「……任せていいか?」


 ハリトが。


 俺を見る。


 少しだけ。


 笑った。


「うん」


「頼む」


 俺は。


 剣を握る。


「俺は?」


 ミーナが聞く。


「根元までの道を教えてくれ」


「分かった」


「ハリトが蔓を抑える。ミーナが道を決める」


「うん」


「俺は」


 低木の奥を見る。


「二人が作ってくれた道を行く」


     ◇ ◇ ◇


「右!」


 ミーナの声。


 俺は。


 右へ跳ぶ。


 直後。


 さっきまでいた場所を。


 太い蔓が薙いだ。


「うおっ!」


「止まらないで!」


「分かってる!」


 前。


 蔓。


 一本。


 二本。


 三本。


「ハリト!」


「任せて!」


 矢が飛ぶ。


 一本目。


 地面へ突き刺さる。


 蔓が。


 矢へ巻きつく。


 二本目。


 別の蔓の先を。


 弾く。


「今!」


「おう!」


 走る。


 自分で。


 全部見ようとしない。


 ミーナの声を聞く。


 ハリトを信じる。


「左!」


 左。


「止まって!」


 止まる。


 目の前を。


 蔓が通り過ぎる。


「進んで!」


 走る。


 不思議だった。


 俺一人で。


 戦っている時より。


 周りが。


 よく見える。


「ニール!」


 ハリト。


「前!」


「見えてる!」


 剣を振る。


 一本だけ。


 斬る。


 全部じゃない。


 必要な一本だけ。


「その先!」


 ミーナが叫ぶ。


「あの低木の下!」


「どれ!?」


「一番太い蔓!」


「それなら分かる!」


 低木の下。


 地面が。


 大きく盛り上がっている。


 そこから。


 何本もの蔓が伸びている。


「あれか!」


 根元。


 あれを。


 斬ればいい。


 踏み込む。


 でも。


 その瞬間。


 地面が。


 動いた。


「ニール!」


 何本もの蔓。


 一斉に。


 俺へ向かってくる。


「くっ!」


 多い。


 これ。


 全部。


 俺が――。


「ニール!」


 ミーナの声。


「しゃがんで!」


 考えるより先に。


 しゃがんだ。


 頭の上を。


 矢が飛んだ。


 蔓へ突き刺さる。


 一本。


 進路が逸れる。


「右へ!」


 ハリト。


 右へ。


 蔓が。


 俺の横を抜ける。


「今!」


 二人の声。


 俺は。


 地面を蹴った。


「《蒼駆Ⅰ》!」


 一気に。


 距離が縮まる。


 まだ。


 止まるのは苦手だ。


 だったら。


 止まらなくていい。


 目の前。


 根元。


 剣を。


 構える。


「これで――!」


 青い光が。


 刃へ集まる。


「《蒼閃Ⅰ》!」


 振り抜いた。


 青い一閃。


 太い根元へ。


 走る。


 斬った。


 一瞬。


 何も起きない。


「…………」


 次の瞬間。


 バサッ。


 街道中に伸びていた蔓が。


 一斉に。


 力を失った。


「……やった?」


 一本。


 また一本。


 地面へ落ちる。


 動かない。


「やった!」


 ミーナの声。


「ニール!」


 ハリトが走ってくる。


「大丈夫!?」


「おう!」


 俺は。


 剣を見る。


 それから。


 二人を見る。


「…………」


「どうしたの?」


 俺は。


 笑った。


「いや」


 なんだ。


 簡単だった。


 一人で。


 全部やらなくても。


 よかったんだ。


「ハリト」


「何?」


「ありがとな」


「うん」


「ミーナも」


「何?」


「ありがと」


「……うん」


「二人に任せて正解だった」


 ミーナが。


 少し笑う。


「今さら?」


「今さらってなんだよ!」


「だって、前からそうでしょ」


「そうだけど!」


 信じてた。


 ずっと。


 二人のことは。


 仲間だって。


 思ってた。


 でも。


 危なくなると。


 俺は。


 自分が前に出ることしか。


 考えてなかった。


 守ることと。


 全部背負うことは。


 同じじゃない。


 信じるなら。


 任せてもいい。


 頼ってもいい。


 その代わり。


 俺も。


 二人から任されたことを。


 やればいい。


 その時。


 腰の。


 青い装具が。


 光った。


「……え?」


《LEVEL――上昇》


「…………」


 まさか。


《LEVEL 10 → 11》


「きたああああああ!」


「うるさい!」


「だって来たんだぞ!」


「何が!?」


「LEVEL十一!」


「本当に!?」


「ほら! やっぱり俺の番だった!」


「そこ!?」


 でも。


 終わらなかった。


 青い光が。


 いつもより。


 強くなる。


「……ん?」


 身体の奥。


 何かが。


 変わる。


《勇者技能――成長》


《蒼駆Ⅰ → 蒼駆Ⅱ》


「え?」


 さらに。


《伝説技能――成長》


《蒼閃Ⅰ → 蒼閃Ⅱ》


「…………」


「ニール?」


 俺は。


 自分の手を見る。


「Ⅱ……?」


 《蒼駆》。


 《蒼閃》。


 LEVEL十で。


 使えるようになった。


 二つの力。


 それが。


 変わった。


「ベルトさん」


『――肯定』


「強くなったのか?」


『――肯定』


「どれくらい?」


『――回答不能』


「そこ教えてくれよ!」


「いつも通りだね」


「いつも通りだな」


「お前らまで!」


 でも。


 俺は。


 笑っていた。


 LEVELが上がったから。


 だけじゃない。


 《蒼駆》と《蒼閃》が。


 成長したから。


 だけでもない。


 俺は。


 二人を見る。


 一人で。


 強くなるんじゃない。


 三人で。


 前へ進めばいい。


 その方が。


 なんか。


 俺には。


 ずっと。


 強くなれる気がした。


     ◇ ◇ ◇


「本当に助かった」


 荷車の男が。


 何度も頭を下げる。


 《絡み蔓》が動かなくなり。


 荷車に絡みついていた蔓も。


 簡単に外せるようになった。


「怪我は?」


「ない。荷車も大丈夫だ」


「よかった」


 俺たちも。


 無事。


 依頼の木箱も。


 無事。


「どこまで行くんですか?」


 ハリトが聞く。


「《ルーベン村》だ」


「同じだ」


「そうなのか?」


 男は。


 嬉しそうに笑った。


「なら一緒に行かないか?」


 俺たちは。


 顔を見合わせる。


「どうする?」


 俺が聞く。


「いいんじゃない?」


 ミーナ。


「僕もいいと思う」


 ハリト。


「じゃあ決まり!」


 俺たちは。


 荷車と一緒に。


 再び街道を進み始めた。


     ◇ ◇ ◇


 それから。


 しばらく歩いて。


「あ」


 ハリトが。


 前を見る。


 街道の先。


 小さな村が。


 見えてきた。


 入り口には。


 木の看板。


 そこに。


 名前が書かれている。


 《ルーベン村》


「着いた……」


 俺は。


 空を見る。


 太陽は。


 まだ。


 沈んでいない。


「間に合った!」


「まだ届けてないよ」


「分かってるって!」


     ◇ ◇ ◇


 依頼書に書かれていた場所は。


 村の。


 小さな診療所だった。


「すみません!」


 扉を開ける。


 中から。


 一人の女性が出てきた。


「冒険者の方ですか?」


「ラグナードの冒険者ギルドから来ました」


 俺は。


 ずっと運んできた。


 木箱を差し出す。


「これを」


 女性の目が。


 大きくなる。


「よかった……」


 両手で。


 大切そうに受け取る。


「間に合った」


 俺たちは。


 顔を見合わせる。


「あの」


 俺は聞いた。


「それ、何なんですか?」


「薬です」


「薬?」


「ええ」


 女性が。


 木箱を開ける。


 中には。


 小さな瓶が。


 いくつも入っていた。


「この村では作れない薬なんです。定期的に《ラグナード》から届けてもらっているんですが、在庫が少なくなっていて」


「…………」


 俺は。


 木箱を見る。


 薬だった。


 俺たちは。


 何が入っているのかも知らずに。


 ずっと。


 運んできた。


 昨日。


 壊れた荷馬車を助けた。


 《鉄牙猪》とは。


 戦わなかった。


 宿場の水を調べた。


 でも。


 全部直そうとはしなかった。


 今日。


 《絡み蔓》に出会った。


 俺一人で。


 全部やろうとしなかった。


 もし。


 途中で出会ったもの。


 全部を。


 俺たちだけで背負っていたら。


 もし。


 魔物を見つけるたび。


 全部倒していたら。


 もしかしたら。


 間に合わなかったかもしれない。


「本当に」


 女性が。


 頭を下げる。


「ありがとうございます」


「…………」


 俺は。


 ハリトを見る。


「ハリト」


「何?」


「昨日」


「うん」


「止めてくれて、ありがとな」


 ハリトが。


 少しだけ。


 目を見開く。


「……うん」


 ミーナを見る。


「ミーナも」


「私?」


「昨日も。今日も」


「何それ」


「色々!」


「雑!」


「でも、ありがとな」


 ミーナが。


 少しだけ。


 驚いた顔をして。


 それから。


 笑った。


「どういたしまして」


     ◇ ◇ ◇


 診療所を出る。


 外では。


 シロナが。


 待っていた。


「シロナ」


「はい」


「届けたぞ」


「見ていました」


 俺たち三人は。


 顔を見合わせる。


 そして。


「じゃあ」


 シロナを見る。


「試験は?」


 シロナは。


 俺。


 ハリト。


 ミーナ。


 三人を。


 順番に見た。


「《ラグナード》へ戻ってからです」


「ええええっ!?」


「まだ帰還して、報告するところまでが依頼ですから」


「聞いてない!」


「今、言いました」


「ずるい!」


「依頼というものは、報告するまで終わりませんよ」


「ぐっ……!」


 正論だ。


 何も。


 言い返せない。


 ミーナが笑っている。


 ハリトも。


「でも」


 シロナが。


 少しだけ。


 優しい声で言った。


「皆さん」


 俺たちは。


 シロナを見る。


「よい冒険でしたね」


「…………」


 俺は。


 笑った。


「はい!」


 三つ星昇格試験。


 まだ。


 終わってはいない。


 でも。


 ミーナは。


 自分にしか分からないものを見て。


 進む道を決めた。


 ハリトは。


 自分で考えて。


 俺たちを動かして。


 進むために。


 自分から止まることを決めた。


 そして。


 俺は。


 仲間に任せることを覚えた。


 仲間を守るって。


 全部。


 自分で背負うことじゃなかった。


 信じるだけじゃない。


 任せる。


 頼る。


 そして。


 自分も。


 任されたことをやる。


 それでいい。


 だって。


 俺たちは。


 一人で。


 冒険してるんじゃないんだから。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ミーナは「自分で決める」。


ハリトは「自分で考え、仲間を動かし、止まる場所を決める」。


そしてニールが今回覚えたのは、

「仲間に任せる」ということでした。


仲間を守りたいからこそ、自分が全部やろうとしてしまう。


でも、本当に仲間を信じるなら、

頼ってもいいし、任せてもいい。


そして自分も、仲間から任された役割を果たせばいい。


そんな三人の成長とともに、ついにニールもLEVEL11へ。


《蒼駆Ⅰ》は《蒼駆Ⅱ》へ。

《蒼閃Ⅰ》は《蒼閃Ⅱ》へ。


勇者としての力も、少しずつ次の段階へ進み始めました。


さて――三つ星昇格試験は、まだ終わっていません。


依頼は「報告するまで」が依頼。


ラグナードへ帰還した三人を待つ、試験の結果は――?


続きもぜひお楽しみに!


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