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第二十話『LEVEL十』(改訂版 ver.2.00)

《緊急依頼》を終え、六人全員がLEVELアップ。


ニールはLEVEL七へ。

ハリトはLEVEL八へ。

ミーナはLEVEL六へ。


そして――。


カイルは、LEVEL十へ。


ところが、自分のLEVELを確認していたカイルが気づきます。


「LEVELだけじゃない」

「なんだ、これ……?」


LEVEL十になると、一体何が起こるのか。


これまで積み重ねてきた経験は、ただLEVELという数字になるだけではないようです。


そしてカイルに起きた変化は、ニール自身のLEVEL十にもつながっていくことに――。


第二章 第二十話『LEVEL十』


今回から、少しずつこの世界の《技能》についても明らかになっていきます。


面白かったら、ぜひブックマーク・評価で応援していただけると嬉しいです!

「なんだ、これ……?」


 カイルは目を閉じたまま、そう呟いた。


 信号弾を見て駆けつけた三つ星の冒険者たちが、《エルティア大森林》周辺の確認へ向かっていく。


 俺たちに任された仕事は、まだ避難地点の警戒だ。


 だけど。


 今は六人全員が、カイルを見ていた。


「何か変なの?」


 ミーナが首を傾げる。


「分からねえ。LEVEL十になったのは分かる。でも、それとは別に……なんかある」


「なんかって?」


「だから、それを確かめてんだよ」


 カイルが眉間に皺を寄せる。


 しばらくして。


「……槍術?」


「槍術?」


 俺も聞き返した。


 カイルが目を開ける。


「《槍術Ⅰ》」


「何それ!?」


「俺に聞くなよ!」


「カイルの中に出てきたんだろ!」


「だから俺も今知ったんだよ!」


「二人とも」


 ハリトが呆れた顔をする。


「とりあえず落ち着いたら?」


「落ち着いてる!」


「どっちも声が大きいよ」


「はい」


 俺とカイルが黙る。


「それ、技能じゃない?」


 セラが言った。


「技能?」


 俺は聞き返す。


「聞いたことない?」


「ない」


「僕はあるよ」


 ハリトが答えた。


「LEVELが一定の段階まで上がると、その人が身につけてきたものが《技能》として成立することがあるって」


「それ!」


 セラがハリトを指差した。


「学校でも習った。最初の節目がLEVEL十だったはず」


「LEVEL十……」


 俺はカイルを見る。


 ついさっきまでLEVEL九だった。


 《緊急依頼》でLEVEL十へ上がった。


 だから――。


「《槍術Ⅰ》が出てきた?」


「たぶんな」


「出てきたっていうか」


 カイルは少し考える。


「見えるわけじゃねえんだ」


「え?」


「LEVELを確認する時と似てる。目を閉じて、自分の中を探るだろ?」


「ああ」


「今まではLEVELしか分からなかった。でも今は、そこにもう一個ある」


 カイルは自分の胸を指差した。


「意識すると、分かるんだよ。《槍術Ⅰ》って」


「文字が見えるの?」


「だから違うって」


「じゃあ、どうやって分かるの?」


「…………」


 カイルが困った顔をする。


「分かるもんは分かる」


「説明下手だなあ」


「お前に言われたくねえ!」


 ミーナが吹き出した。


「でも、LEVELも似たような感じだよね。数字が目の前に浮かんでるわけじゃないけど、自分がLEVELいくつかは分かるし」


「そう。それに近い」


 カイルが頷く。


「ただ……」


 もう一度、目を閉じる。


「意識すると、もう少し分かる」


「何が?」


「《槍術Ⅰ》――槍を扱う時に働く、常時発動型の技能」


「常時発動?」


「使おうとしなくても、槍を使ってる間は勝手に働くらしい」


「そんなのあるの!?」


「パッシブ技能ね」


 セラが言った。


「ぱっしぶ?」


「技能には、自分で発動させて使うものと、条件を満たしている間ずっと働くものがあるの。後者を《パッシブ技能》って呼ぶのよ」


「へえ……!」


 なんか急に冒険者っぽい。


 いや。


 今までも冒険者なんだけど。


「で?」


 俺はカイルへ近づいた。


「《槍術Ⅰ》って、どれくらい強くなるんだ?」


「近い近い!」


 カイルが俺の顔を押し返す。


「今確認してる!」


 また目を閉じる。


「槍を扱う時の……身体操作、威力、精度……そういうものを補助する」


「おお!」


「効果は……」


 カイルが止まった。


「どうした?」


「およそ五%」


「五%!?」


「…………」


「…………」


 俺とカイルは顔を見合わせた。


「五%って、どれくらい?」


「知らねえよ」


「なんで!?」


「俺だって今知ったんだよ!」


「でも五%だぞ!」


「だから五%がどのくらいなんだよ!」


「分かんないけど、なんかすげえ!」


「お前、適当だな!」


 ミーナが腹を抱えて笑っている。


「ニール、数字出ると急に喜ぶよね」


「だって五%だぞ!」


「だから何が?」


「……なんだろう」


「知らないんじゃん!」


     ◇ ◇ ◇


「試してみれば?」


 オルドが言った。


「試す?」


「実際に槍を使えば、何か分かるかもしれないだろ」


「それもそうだな」


 避難者たちから十分に離れた場所へ移動する。


 カイルが槍を持った。


 いつもの構え。


 俺も何度も見ている。


「いくぞ」


 カイルが踏み込む。


 シュッ――!


「おお!」


「……ん?」


 カイル本人が首を傾げた。


「どう?」


 ミーナが聞く。


「もう一回」


 槍を引く。


 踏み込む。


 突く。


 シュッ!


 さっきより速い。


 いや。


 速いというより――。


「なんか、綺麗」


 俺が言った。


「それ」


 ハリトも頷く。


「動きが前より滑らかに見える」


「……俺もそんな感じがする」


 カイルが槍を見る。


「槍が軽くなったわけじゃねえ。俺が急に力持ちになった感じでもない」


 もう一度構える。


 軽く槍を払う。


「身体が、前より槍についてくる」


「それが五%?」


「たぶんな」


「五%すげえ!」


「お前、五%好きだな」


「なんか強そうじゃん!」


「五%なのに?」


「五%も、だよ!」


「どっちでもいいよ」


 ハリトが切った。


     ◇ ◇ ◇


「でも、なんで《槍術》なんだ?」


 俺は聞いた。


「カイルが選んだの?」


「いや」


 カイルが首を振る。


「気づいたらこれだった」


「じゃあ、勝手に決まった?」


「勝手にって言い方はどうなんだろうな」


 セラが考える。


「学校では、それまでの経験が影響するって習ったわ」


「経験?」


「カイル、ずっと槍を使ってるでしょ?」


「ああ」


「だからじゃない?」


 俺はカイルを見る。


 カイルが使うのは、いつも槍だ。


 昇格試験でも。


 ラグナードへ来る旅でも。


 さっきの戦いでも。


「じゃあ、ずっと剣を使ってる人なら《剣術》?」


「可能性は高いと思う。でも、全員が同じになるわけじゃないみたい」


 セラが答える。


「戦い方も、経験も違うから」


「へえ……」


 俺は自分の剣を見る。


 これまでやってきたことが。


 LEVEL十になった時。


 《技能》になる。


「面白いな」


「ニール、好きそう」


 ミーナが笑う。


「好き!」


「即答だね」


「だって、自分がやってきたことが力になるんだぞ?」


 俺はカイルの槍を見る。


「なんか、いいじゃん」


 カイルも少しだけ笑った。


「まあな」


     ◇ ◇ ◇


「でもさ」


 俺は気づいた。


「《槍術Ⅰ》のⅠって何?」


「そこ?」


 ハリトが言う。


「大事だろ!」


 俺はカイルを見る。


「Ⅰってことは、Ⅱもある?」


「あるらしい」


「Ⅲは?」


「ある」


「Ⅳ!」


「ある」


「Ⅴ!」


「あるって」


「Ⅵ!」


「ない」


「…………え?」


「普通はⅤまでだ」


 答えたのはオルドだった。


「俺も詳しいわけじゃないが、パッシブ技能の上限はⅤだって聞いてる」


「じゃあ《槍術Ⅴ》になったら?」


「さあな」


 オルドが肩をすくめる。


「俺は持ってないから分からん」


 セラが少し考えてから言う。


「Ⅰが五%なら、単純に考えればⅤで二十五%くらいなのかな」


「二十五%!?」


「たぶんよ。技能によって違うかもしれないし、数字そのものも目安みたいなものだから」


 それでも。


 二十五%。


「すげえ……」


「また数字に食いついた」


 ミーナが笑う。


「じゃあ、カイルがLEVEL二十になったら《槍術Ⅱ》?」


「必ずそうなるとは限らないと思う」


 セラが答えた。


「LEVEL十、二十、三十みたいな節目で、それまでの経験に応じて技能が成立したり、持っている技能が成長したりする。そう習ったわ」


「じゃあカイルがこれから槍を使わなくなったら?」


「《槍術》が成長しない可能性もあるんじゃない?」


「使うけどな」


 カイルが即答した。


 槍を肩に担ぐ。


「せっかく《槍術Ⅰ》までついたんだ。今さら変える理由もねえよ」


「じゃあⅤ目指す?」


「まずはⅡだろ」


「俺ならⅤ目指す!」


「お前の技能じゃねえ!」


     ◇ ◇ ◇


 ふと。


 俺は自分のLEVELを確認した。


 七。


 あと三つ。


 LEVEL十。


 カイルには《槍術Ⅰ》が生まれた。


 じゃあ。


「俺は何になるんだろ」


「剣じゃない?」


 ミーナが言う。


「でもニール、魔法も使うよね」


 セラが続ける。


「《水球術》とか?」


「嫌だ!」


「なんで!?」


「もっと格好いいのがいい!」


「技能に文句言う人、初めて見た」


「まだ決まってないから!」


 ハリトが笑う。


「ニールの場合、何になるか分からないね。剣も使うし、水魔法も使うし、すぐ突っ込むし」


「最後の関係ある?」


「《無鉄砲Ⅰ》」


「絶対いらない!」


 ミーナが吹き出す。


「でも似合う!」


「いらないって!」


 俺たちが笑っていると。


 腰から声がした。


『――選択』


「……え?」


 笑い声が止まった。


 俺は青の《勇者装具》を見る。


「今、何て言った?」


『――選択』


「選択?」


『――肯定』


「何を?」


 沈黙。


「技能?」


 少し間があった。


『――肯定』


「え?」


 俺はカイルを見る。


「技能って選べるの?」


「いや」


 カイルが首を振る。


「俺は選んでねえ」


「セラ?」


「私が習った限りでは……普通は、それまでの経験から成立するはず」


「ハリト?」


「僕に聞かれても同じだよ」


「じゃあ……」


 俺は青の《勇者装具》を見る。


「俺は、選べるの?」


『――肯定』


「…………」


 なんで?


「何を選べる?」


 沈黙。


「何個?」


 沈黙。


「いつ選ぶ?」


 少し間があって。


『――LEVEL十』


「やっぱり!」


「ニール」


 ハリトが青の装具を見ている。


「それ、カイルの技能と同じ仕組みじゃないんじゃない?」


「……たぶん」


 胸が高鳴った。


 LEVEL十。


 あと三つ。


「じゃあ、どんな技能が選べる?」


『――回答不能』


「そこおおお!」


 思わず叫んだ。


「一番知りたいところ!」


『――回答不能』


「二回言わなくていい!」


 ミーナが笑う。


 カイルも。


 セラも。


 オルドも。


 ハリトまで笑っていた。


 でも。


 俺はもう一度、自分のLEVELを確認した。


 LEVEL七。


 あと三つ。


 カイルはLEVEL十で、《槍術Ⅰ》を得た。


 これまで積み重ねてきた経験が、技能になった。


 そして俺は。


 どうやら――選べるらしい。


 どうして俺だけ違うのか。


 何を選べるのか。


 まだ分からない。


 でも。


 LEVEL十。


 そこに何かが待っている。


「……楽しみだな」


 俺が呟くと。


『――肯定』


「お前も楽しみなの?」


 少し間があった。


『――肯定』


「そっか」


 俺は笑った。


 また一つ。


 LEVELを上げる理由が増えた。

ついに《技能》の登場です!


LEVEL十へ到達したカイルに成立したのは、


《槍術Ⅰ》――パッシブ技能。


これまで槍を使い続けてきたカイルの経験が、そのまま新しい力として形になりました。


突然まったく知らない力を与えられるのではなく、


「今まで何をしてきたのか」が、次の成長につながっていく。


そんな仕組みになっています。


そしてニールは現在LEVEL七。


「自分もLEVEL十になったら何を覚えるんだろう?」


そう思ったところで、青の《勇者装具》から返ってきたのは――。


『――選択』


カイルは技能を選んでいない。


なのに、ニールは選べる?


しかも装具は、


『――LEVEL十』


と答えました。


普通の冒険者と《勇者》では、どうやらLEVEL十で起こることにも違いがあるようです。


もっと聞きたいニールに対する、


『――回答不能』


は、もはや安定のベルトさんです(笑)。


ニールがLEVEL十へ到達した時、何が待っているのか。


そしてその前に、まだ《エルティア大森林》の異変も終わっていません。


森の奥から響いた音と、それに反応したハリト。


冒険者としての成長と、少しずつ近づいてくる次の冒険。


引き続きお楽しみください!


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