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第十九話『守るための戦い』(改訂版 ver.2.00)

「来るぞ!」


土煙の向こうから現れたのは、行方が分からなくなっていた商隊の馬車。


そして、その後ろを走る複数の魔物たち。


今回ニールたちに任されたのは、魔物を倒すことではありません。


避難している人たちを守ること。


ニール、ハリト、ミーナ、カイル、オルド、セラ。


六人の二つ星冒険者たちは、それぞれにできることを使って《緊急依頼》に挑みます。


しかし――。


魔物たちは本当に、商隊を追っているのでしょうか?


《エルティア大森林》で続く異変。


森の奥から響く、正体不明の音。


そして、その音を聞いたハリトは――。


第二章 第十九話『守るための戦い』


お楽しみください!


続きが気になった方は、ぜひブックマーク・評価で応援していただけると嬉しいです!

「来るぞ!」


 街道の向こう。


 土煙を上げながら、一台の馬車が走ってくる。


 速い。


 いや――速すぎる。


「道を空けろおおお!」


 御者の叫び声が聞こえた。


 荷台にも人がいる。一人、二人――もっとだ。


「あれが戻ってこなかった商隊?」


 セラが目を凝らす。


「たぶん!」


 ミーナの獣耳がぴんと立つ。


「七人いる! 聞いてた人数と同じ!」


「全員無事か?」


 オルドが聞く。


「そこまでは分かんない!」


 そして――馬車の後ろ。


 土煙の中を、いくつもの影が走っている。


 一匹。


 二匹。


 三匹――。


「……多い」


 ハリトが弓を構える。


 さらに、四匹。五匹。


「グラスドッグ!」


 俺にも分かった。見慣れた灰緑色の体毛。


 だけど。


「待って」


 ハリトの声が低くなる。


「奥にもいる」


「え?」


「グラスドッグだけじゃない」


 その言葉と同時に、土煙の向こうから大きな影が飛び出した。


 鎌のような前脚。細長い身体。


「レイザーマンティス!」


 ラグナードへ来る途中で見た魔物だ。


 本来なら、もっと森の奥にいるはずの魔物。


「一匹!」


 ハリトが言う。


「グラスドッグは五!」


 腰の青の《勇者装具》が、短く声を発した。


『――危険』


「分かってる!」


『――対象――複数』


「それも見れば分かる!」


「装具と喧嘩してる場合じゃないよ」


 ハリトに言われた。


「喧嘩してない!」


「戦えるか?」


 カイルが槍を構える。


「戦えるかじゃない」


 俺は後ろを見る。


 街道沿いの休憩所には、二十人ほどの避難者がいる。


 そして今、七人を乗せた馬車がこっちへ向かってきている。


 俺たちの仕事は、魔物を倒すことじゃない。


「ここで止める!」


「了解!」


     ◇ ◇ ◇


「オルド!」


「任せろ!」


 オルドが前へ出た。


 大きな盾を構えながら、馬車の進路へ走る。


「馬車は俺が誘導する! お前らは魔物を近づけるな!」


「セラ!」


「分かってる!」


 セラが杖を上げる。


「《火球》!」


 赤い炎が生まれ、一直線に飛ぶ。


 狙ったのは魔物じゃない。


 グラスドッグの前方だ。


 ボンッ!


 炎と土煙が上がった。


 先頭を走っていた二匹が驚き、進路を変える。


「当てないの!?」


「馬車に近すぎる!」


 セラが叫び返す。


「それに今は、倒すより引き離す方が先!」


「なるほど!」


「ニール! 前!」


「おっと!」


 炎を避けた一匹が、こちらへ飛び込んできた。


 剣を抜く。


 踏み込む。


 速い。


 だけど――見える。


 俺のLEVELは六。


 少し前までとは、身体の動きが明らかに違う。


 まだ、この力を全部使いこなせているとは思わない。それでも、グラスドッグの動きを目で追える。


「はっ!」


 剣を振る。


 グラスドッグが横へ跳んだ。


「ハリト!」


「分かってる」


 ヒュッ。


 矢が飛ぶ。


 狙ったのは魔物じゃない。その進行方向だ。


 地面に矢が突き刺さり、グラスドッグが反射的に向きを変えた。


「ニール!」


「おう!」


 俺が回り込む。


 剣の腹で弾く。


 グラスドッグは地面を転がり、すぐに起き上がった。


 でも、俺たちには向かってこなかった。


 そのまま岩場へ走っていく。


「一匹!」


「倒してないけどね」


「追い払ったから一匹!」


「それでいい」


 ハリトが次の矢をつがえる。


「目的はここを守ることだから」


「分かってる!」


     ◇ ◇ ◇


「馬車、入るぞ!」


 オルドの声。


 馬車が迫る。


「止まれ! こっちだ!」


 オルドが大きく手を振る。


 御者が手綱を引いた。


「止まらねえ!」


「馬が怯えてる!」


 まずい。


 このままじゃ休憩所に突っ込む。


「ミーナ!」


「行く!」


 俺が言い終わるより先に、ミーナが走った。


「速っ!」


 馬車の横へ並ぶ。


「危ない!」


 御者が叫ぶ。


「手綱貸して!」


「は!?」


「早く!」


 ミーナが馬車へ飛び乗った。


 御者の隣に着地する。


「右! 少し右に寄せて!」


「そっちは――」


「大丈夫!」


 前方でオルドが盾を叩いた。


 ガンッ!


「こっちだ!」


 大きな音に、馬が顔を上げる。


「今!」


 ミーナと御者が手綱を引いた。


 馬車が曲がる。


 ガタガタガタッ!


「うおおおお!?」


 荷台から悲鳴が上がる。


 それでも速度は落ちた。


「止まれええ!」


 御者が叫ぶ。


 馬車は休憩所の手前で、ようやく止まった。


「よし!」


 オルドがすぐに荷台へ走る。


「怪我人は!?」


「一人、腕をやられてる!」


「セラ!」


「あとで見る!」


 セラが答える。


「今はこっち!」


 残った魔物が迫っている。


 セラが杖を構えた。


「《風刃》!」


 空気が鋭く走る。


 グラスドッグの足元で土が弾け、魔物が驚いて飛び退いた。


「風も使えるの!?」


「初歩だけ! 学校で習ったの!」


 セラが次の魔法を準備する。


「ただし!」


「ただし?」


「実戦はまだ慣れてない!」


「そこ大事!」


「だから話しかけないで!」


「はい!」


     ◇ ◇ ◇


「来る!」


 カイルの声。


 レイザーマンティス。


 グラスドッグより明らかに大きい。


 鎌のような前脚を広げて突っ込んでくる。


「俺が前に出る!」


 カイルが走った。


「一人で行くな!」


「分かってる!」


 槍を構える。


 レイザーマンティスの鎌が振られた。


 カイルが槍の柄で受ける。


「っ……!」


 硬い音が響き、カイルの足が地面を滑る。


「重っ……!」


「カイル!」


 俺も走る。


「右から行く!」


「来い!」


 レイザーマンティスの注意はカイルへ向いている。


 横へ回る。


 俺は手を前へ出した。


 水。


 丸く。


 形を保つ。


 昨日までより、ずっとはっきりと。


「《水球》!」


 水の塊が飛ぶ。


 今までみたいな、ただの水の塊じゃない。


 ちゃんと丸い。


 ばしゃっ!


 レイザーマンティスの顔に命中した。


 魔物が頭を振る。


「…………」


 ハリトがこっちを見る。


「何だよ!」


「いや」


「地味って思っただろ!」


「言ってないよ」


「顔に出てる!」


「でも、昨日より丸い」


「そこ!?」


「それに効いてる」


「ならいい!」


 レイザーマンティスの動きが一瞬止まる。


「今だ!」


 カイルが槍を振るった。


 横から叩く。


 魔物が体勢を崩した。


「ハリト!」


「任せて」


 矢が飛ぶ。


 前脚の付け根。


 命中。


 レイザーマンティスが大きく後退した。


「もう一発!」


 俺が踏み込もうとした。


「待って!」


 ミーナの声。


「何!?」


「グラスドッグ!」


 見る。


 残ったグラスドッグたちが、こっちへ来ていない。


「……逃げてる?」


 街道を南へ。


 ラグナードの方角へ走ろうとしている。


「まずい!」


 このまま避難地点を抜けさせたら駄目だ。


「オルド!」


「任せろ!」


 盾を持って道を塞ぐ。


「セラ!」


「分かってる!」


「《火球》!」


 炎が飛ぶ。


 今度も魔物には当てず、その進路へ。


 グラスドッグが散った。


「ミーナ!」


「右は任せて!」


 ミーナが短剣を抜いて回り込む。


「そっちは駄目!」


 グラスドッグの進路を変える。


 ハリトの矢。


 セラの魔法。


 オルドの盾。


 ミーナの速さ。


「カイル!」


「分かってる!」


 俺とカイルが前へ出る。


 倒す必要はない。


 休憩所へ近づけない。


 街道を抜けさせない。


 人のいない方向へ追い返す。


「こっちは通さない!」


 剣を振る。


 グラスドッグが飛び退く。


「そっちだ!」


 カイルが槍で進路を塞ぐ。


 魔物たちは次々と岩場へ走っていった。


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 最後の一匹も離れていく。


「よし!」


「まだ!」


 ハリトの声。


 そうだ。


 レイザーマンティス。


 振り返る。


「……あれ?」


 いない。


「どこ行った!?」


「森」


 ハリトが指差す。


 木々の向こうで、大きな影が遠ざかっていく。


「戻っていった?」


「うん」


「なんで?」


「分からない」


 ハリトは森を見る。


「でも……」


「でも?」


「あいつ」


 少し間を置いた。


「僕たちを襲いたくて、ここまで来たようには見えなかった」


     ◇ ◇ ◇


「全員、無事か!?」


 オルドが避難者たちを確認していく。


 元からいた二十人ほどの避難者。


 そこへ到着した商隊の七人。


 全員いる。


「怪我人は?」


「商隊に一人。腕を怪我してる」


 セラがその人のそばへしゃがむ。


「見せてください」


「治せるのか?」


 俺が聞く。


「治癒魔法は苦手」


 セラは傷の状態を確認しながら答えた。


「だから応急処置をする。シロナさんみたいな真似はできないわ」


「そっか」


「できないことを無理にやって、悪化させる方が駄目でしょ?」


「……確かに」


 セラは持っていた布と薬を使い、手際よく処置していく。


 魔法学校へ行っていたからって、何でも魔法でできるわけじゃない。


「痛みますか?」


「少し」


「では、動かさないでください。ラグナードへ戻ったら、治癒魔法を使える方に診てもらいましょう」


「ああ。ありがとう」


「どういたしまして」


 俺はその様子を見ながら、なんとなく思った。


 みんな、できることが違う。


 ハリトにはハリトの。


 ミーナにはミーナの。


 カイルにはカイルの。


 オルドにはオルドの。


 セラにはセラの。


 そして俺にも。


 きっと、俺にできることがある。


 全部一人でできる必要なんてない。


 六人いるんだから。


     ◇ ◇ ◇


「商隊の人に話を聞こう」


 ハリトが言った。


 御者の男が水を飲んでいる。


「少しいいですか?」


「ああ」


「魔物に追われ始めたのは、どの辺りです?」


「北東街道を曲がった辺りだ」


「最初から、あの数だった?」


「いや」


 御者が首を振る。


「最初はグラスドッグが二匹だった」


「途中で増えた?」


「ああ。でも、変なんだ」


「何が?」


「俺たちを狙ってたっていうより……」


 男は《エルティア大森林》の方を見る。


「一緒に逃げてたような気がする」


 俺たちは黙った。


「レイザーマンティスも?」


 ミーナが聞く。


「途中から出てきた。馬があいつを見て怯えたんだ。それで俺たちも、あいつに追われてると思った」


「魔物同士は?」


 ハリトが聞く。


「え?」


「グラスドッグとレイザーマンティス。戦ってました?」


「…………」


 御者が考える。


「いや」


 ゆっくり首を振った。


「戦ってねえ」


 種類の違う魔物。


 本来の生息域も違う。


 なのに、同じ方向へ逃げていた。


「……何から?」


 俺が呟く。


 誰も答えなかった。


 その時だった。


 ズン――。


「……え?」


 足元が、ほんのわずかに揺れた。


『――反応』


 腰から声がした。


「反応?」


 俺は青の《勇者装具》を見る。


「何に?」


 少し間があった。


『――回答不能』


「そこは分かんないのかよ!」


「ニール」


 ハリトの声がした。


 いつもの声じゃなかった。


「ハリト?」


 顔色が変わっている。


「これ……」


 ハリトが森を見る。


 ズン――。


 もう一度。


 低い。


 地面の奥から響いてくるような音。


 そうだ。


 森から戻ってきた調査班が話していた。


 獣の鳴き声でもない。


 木が倒れる音でもない。


 《エルティア大森林》の奥から、地面を伝って響いてくる正体不明の音。


「この音……」


 ハリトが胸元を押さえる。


「やっぱり」


「知ってるの?」


「……分からない」


 ハリトは答えた。


 でも、その目は森から離れなかった。


「前にも同じこと言ってたよな」


「うん」


「聞いたことないのに、知ってる気がするって」


「……うん」


 ズン――。


 また。


 ハリトの指が、胸元の服を強く握った。


「ハリト」


「大丈夫」


 そう言うけど、俺には大丈夫には見えなかった。


 知らないはずなのに。


 知っているような気がする。


 俺にも覚えがある。


 《蒼天遺跡》へ向かった、あの時。


 見たこともない場所だったのに。


 なぜか、懐かしいと思った。


「……ハリト」


「何?」


「いや」


 俺は言うのをやめた。


 まだ、何も分からない。


 ただ――。


 青の《勇者装具》も、今の音に反応した。


     ◇ ◇ ◇


「信号弾を上げよう」


 ハリトが言った。


「大型魔物はいないけど?」


「これは僕たちだけで判断する情報じゃない」


 ハリトは森を見る。


「魔物の移動。調査班が聞いた音。そして、今の揺れ」


「……そうだな」


 俺も頷く。


 俺たちだけで答えを出す必要はない。


 分からないなら、分かる奴に伝える。


 それも冒険者の仕事だ。


 俺たちは二つ星だ。


 ここから森へ入って原因を調べるのは、俺たちに任された仕事じゃない。


 ハリトが緊急信号弾を取り出す。


「離れて」


 全員が下がる。


 筒を空へ向ける。


 作動。


 ヒュウウウ――!


 赤い光が空へ昇った。


 パンッ!


 ラグナードの空に、赤い光が広がる。


「これで来る?」


 ミーナが聞く。


「三つ星以上の班が確認に来るはず」


 ハリトが答える。


「じゃあ、それまで」


 俺は剣を握り直した。


「ここを守ろう」


「うん」


「了解」


「任せろ」


 六人がそれぞれの場所につく。


 俺たちは森へ行かない。


 魔物を追いかけない。


 勝手に原因を調べない。


 今いる場所を守る。


 今の俺たちには、守るべき人たちがいるから。


 ズン――。


 それでも、森の奥から響く音は止まらなかった。


 ズン――。


 ズン――。


 俺は森を見る。


 隣では、ハリトも同じ場所を見ていた。


 あの森で。


 何が起きている?


 そして、どうしてハリトは。


 あの音を――知っているような気がするんだ?


     ◇ ◇ ◇


 それからしばらくして。


 信号弾を確認した三つ星の冒険者たちが、街道へ到着した。


 俺たちは見たもの、聞いたものをそのまま伝えた。


 グラスドッグ。


 レイザーマンティス。


 違う種類の魔物が、同じ方向へ逃げていたこと。


 商隊の証言。


 森から響いた低い音。


 地面の揺れ。


 分からないことは、分からないまま。


 勝手な答えをつけずに伝える。


 その間も俺たちは、避難者と商隊を守った。


 そして――。


『――成長』


「え?」


 突然、青の《勇者装具》が声を発した。


「また?」


 ミーナが振り返る。


『――共有』


「共有って……」


 ハリトが俺の腰を見る。


 俺には、その言葉に覚えがあった。


「もしかして、《成長共有補正》?」


『――肯定』


 やっぱり。


 でも。


 今回は、あの時とは違う。


 シロナが加わった時に起きた、よく分からない成長。


 あの時は俺とハリトとシロナだけだった。


 ミーナには何も起きなかった。


「今回は?」


 青の装具が答える。


『――対象――六』


「六?」


 俺たちは顔を見合わせた。


『――ニール・レイン』


 胸の奥が、熱くなる。


『――LEVEL七』


「上がった!」


『――ハリト』


 ハリトが目を閉じる。


『――LEVEL八』


「……本当だ」


『――ミーナ・フェル』


「私も!?」


『――LEVEL六』


 ミーナがすぐに目を閉じた。


 数秒後、目を開く。


「六! 本当に六!」


「また一つ差か!」


「追いつくからね!」


『――カイル・ローデン』


「俺もか?」


『――LEVEL十』


「……十」


 カイルが目を閉じる。


『――オルド・バッシュ』


『――LEVEL八』


「おお……」


『――セラ・ミルフィ』


『――LEVEL八』


「私まで……」


 六人。


 全員が一つずつ上がった。


「なんで?」


 ミーナが青の装具を見る。


『――経験』


「経験?」


『――共有』


 それだけだった。


 それ以上の説明はない。


 でも。


 なんとなく分かる気がした。


 俺たちは、魔物をほとんど倒していない。


 それでも。


 馬車を守った。


 避難してきた人たちを守った。


 魔物を追い払った。


 怪我人を助けた。


 状況を確認した。


 分からないことを報告した。


 六人で。


 それぞれにできることをやった。


「……そっか」


 俺は呟いた。


 これも。


 俺たちの経験なんだ。


「ニール」


 ハリトが少し笑った。


「何?」


「嬉しそうだね」


「そりゃ嬉しいだろ!」


「魔物を倒してないのに?」


「倒さなくても上がったから、余計に!」


 ミーナが笑う。


「ニール、こういうの好きそう」


「好きだよ!」


 俺は自分の手を見る。


 LEVEL七。


 また一つ。


 強くなった。


 でも。


 たぶん、今日増えたものは、それだけじゃない。


 誰かを守ること。


 仲間に任せること。


 分からないことを報告すること。


 戦わないこと。


 追いかけないこと。


 それも全部。


 冒険なんだ。


「…………」


 その時。


 カイルだけが、まだ目を閉じていることに気づいた。


「カイル?」


「……待て」


「どうした?」


 カイルが眉を寄せる。


「なんか……ある」


「何が?」


「分からねえ」


 ゆっくり目を開く。


 そして、自分の槍を見た。


「LEVELだけじゃない」


「え?」


 カイルはもう一度目を閉じた。


 何かを確かめるように。


「なんだ、これ……?」


 俺たちは顔を見合わせた。


 誰も。


 その答えを知らなかった。


 ただ一つ分かったのは。


 LEVEL十。


 そこには俺たちがまだ知らない、何かがあるらしいということだった。

今回の《緊急依頼》、ニールたちは魔物をほとんど倒していません。


それでも六人全員がLEVELアップしました。


戦うことだけが経験ではない。


馬車を守る。避難者を守る。仲間と役割を分担する。怪我人を助ける。状況を判断する。そして、自分たちだけでは判断できない情報を上位の冒険者へ引き継ぐ。


それらも全部、冒険者として積み重ねた《経験》です。


ニールはLEVEL七。

ハリトはLEVEL八。

ミーナはLEVEL六。

オルドとセラもLEVEL八。


そして――。


カイルはLEVEL十へ。


ところが。


「LEVELだけじゃない」

「なんだ、これ……?」


どうやらLEVEL十には、ニールたちがまだ知らない「何か」があるようです。


そしてもう一つ。


商隊を追っているように見えた魔物たちは、本当に商隊を襲っていたのでしょうか。


種類も生息域も違う魔物たちが、同じ方向へ逃げていた。


《エルティア大森林》から響く、あの音。


それを「知っているような気がする」と話すハリト。


少しずつ、森の奥にある何かが近づいてきています。


次回は、カイルに起きたLEVEL十の変化にも触れていきます。


ここまで読んでくださってありがとうございます!


面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ぜひブックマーク・評価で応援していただけると嬉しいです!

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