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第十三話『自分の経験』(改訂版 ver.1.01)

シロナを加え、四人で初めての依頼へ!


今回の依頼は《薬草採取者の護衛》。


魔物を倒すだけではなく、依頼人を守り、危険を見つけ、無事に帰ってくる。


ニールたちは少しずつ、「冒険者の仕事」を知っていきます。


そして、さっき突然LEVELが上がった三人を横目に、一人だけLEVEL四のままだったミーナ。


果たして今回は――?


四人での初めての冒険、お楽しみください!


面白かったら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

 四人で受けることになった《薬草採取者の護衛》。


 依頼書を受付へ持っていくと、リディアさんは俺たちの顔を順番に見た。


 俺。


 ハリト。


 ミーナ。


 そして――シロナ。


「……ずいぶん豪華ですね」


「そう?」


「二つ星推奨の護衛依頼に、四つ星冒険者が参加することはあまりありません」


「やっぱり?」


 俺がシロナを見る。


「今からでも遅くありませんよ」


「何が?」


「私に全部任せようという考えを捨てることです」


「まだ何も言ってない!」


「先ほど言っていましたよね?」


「言ってたね」


「言ってた」


 ハリトとミーナまで。


 味方がいない。


「まあ、問題はありません」


 リディアさんが依頼書に目を落とした。


「依頼人は薬草採取を生業にしている方です。目的地は《ラグナード》東部の《エルナ渓谷》。往復で一日ほど。危険度の高い地域ではありませんが、最近は街道を外れた場所で魔物の目撃が増えています」


「また?」


 思わず聞き返した。


 旧採石場。


 その前は、《リーヴェル》から《ラグナード》へ向かう途中の《エルティア大森林》。


 最近。


 魔物のいる場所がおかしい。


 そんな話を何度か聞いている。


「今回の依頼との関連は分かりません」


 リディアさんは釘を刺すように言った。


「何でも同じ原因だと考えないでくださいね」


「……はい」


 先に言われた。


「今回の目的はあくまで護衛です。依頼人が必要な薬草を採取し、無事に《ラグナード》へ帰還する。それが達成条件です」


「了解!」


「ニールさん」


「はい?」


「知らない穴があっても入らないでくださいね」


「入ってないよ!」


「前回は、ですね」


「信用されてない……」


「され始めてはいますよ」


「始めて!?」


 隣でミーナが笑っていた。


     ◇ ◇ ◇


 東門の前で待っていたのは、大きな背負い籠を背負った男だった。


 年齢は父さんと同じくらいだろうか。


 日に焼けた顔に、短い茶色の髪。


 丈夫そうな服を着て、腰にはいくつもの小さな袋が下がっている。


「今日の護衛か?」


「はい!」


「元気だなあ」


 男は笑った。


「マルク・リードだ。薬草採りをやってる」


「ニール・レインです」


「ハリト・ヴェール」


「ミーナ・フェル。よろしく」


「シロナ・エルネージュです。よろしくお願いいたします」


 マルクさんはシロナを見ると、少し驚いた顔をした。


「ハーフエルフか。珍しいな」


「そうですね」


「薬草には詳しいか?」


「多少は。ただ、専門家ではありません」


「四つ星だって聞いたが」


「四つ星でも、知らないものは知らないですよ」


 マルクさんが豪快に笑った。


「そりゃそうだ!」


 俺は首を傾げる。


「シロナでも知らない薬草あるの?」


「ありますよ」


「四つ星なのに?」


「ニールさん」


「はい」


「四つ星を何だと思っているのですか?」


「なんでもできる人」


「違います」


「即答!?」


 ミーナが吹き出した。


「ニール、シロナに夢見すぎじゃない?」


「だってLEVEL二十六だぞ!」


「LEVELと知識は別です」


 シロナはさらりと言った。


「ちなみに」


 マルクさんが背負い籠を叩く。


「薬草のことなら、その四つ星さんより俺の方が詳しいと思うぞ」


「マジで?」


「俺は二十年以上、これで飯を食ってるからな」


「LEVELは?」


「十六」


「シロナより低い」


「だから?」


「…………」


 さっきから何度目だろう。


 LEVELが高ければ、何でもできるわけじゃない。


 なんとなく分かっていたつもりだったけど。


 冒険者になってから。


 それを何度も教えられている気がする。


「では、行きましょうか」


 シロナが言った。


「今回、薬草についてはマルクさんが先生ですね」


「四つ星に先生って言われると照れるな」


「専門家を頼るのも、冒険者の仕事ですから」


 そう言ってシロナは歩き出した。


 俺たちも、その後に続いた。


     ◇ ◇ ◇


 《ラグナード》を出て東へ。


 最初は整備された街道だった。


 けれど一時間ほど進むと道は細くなり、周囲に岩肌が目立ち始める。


 さらに進むと、両側から岩壁が迫り、その間を細い川が流れる場所へ出た。


「ここから《エルナ渓谷》だ」


 マルクさんが言った。


「すげえ……」


 思わず上を見上げる。


 切り立った岩壁。


 その隙間から見える青空。


「ニール、前」


「分かってるって」


「今、完全に上見てたけど」


「見てないと景色見られないだろ?」


「護衛中だよ」


「はい」


 ハリトに怒られた。


 少し先を歩くミーナの獣耳が、忙しなく動いている。


「今のところ、何もいないよ」


「分かるの?」


「音。匂い。それと小動物の気配かな。大きな魔物が近くにいたら、鳥とか小動物の動きも変わるし」


「へえ」


「まあ、LEVEL四だけどね」


「それLEVEL関係ある!?」


「さあ?」


「ないだろ!」


 ミーナが笑う。


「ミーナさん」


 後ろからシロナが声をかけた。


「ん?」


「先ほどから、ずっと周囲を探っていますね」


「まあね。護衛なんだから、見つけてからじゃ遅いでしょ?」


「良い心がけです」


「シロナは? なんか感じる?」


「今のところ、大きな魔力反応はありません」


「じゃあ大丈夫そうだね」


「ただし」


 シロナが周囲を見渡した。


「危険なのは、魔物だけではありませんよ」


「魔物以外?」


「足場、落石、毒草、天候。知らない土地では、何が危険になるか分かりません」


「なるほど」


 その時。


 ミーナの獣耳が、ぴくりと動いた。


「……待って」


 全員が止まる。


「どうした?」


「水の音」


 俺も耳を澄ませる。


 川の流れる音しか聞こえない。


「普通じゃないの?」


「さっきより大きい」


 ハリトも川を見る。


「水量が増えてる?」


「上流で昨日、雨が降ったらしい」


 マルクさんが答えた。


「ここは晴れてても急に増えることがあるぞ」


 シロナはすぐに周囲を確認した。


「川から離れましょう。少し高い場所を進みます」


「遠回りになるぞ?」


「構いません」


 シロナは即答した。


「依頼の目的は、早く着くことではありませんから」


 マルクさんは一瞬考えてから頷いた。


「分かった。護衛の判断に従う」


 俺たちは川沿いを外れ、岩場の少し高い場所へ移動した。


 その数分後だった。


 ゴウッ――!


「うわっ!?」


 水の音が一気に大きくなった。


 濁った水が。


 さっきまで俺たちが歩いていた場所を、勢いよく流れていく。


「……マジか」


「増水しましたね」


 シロナは冷静だった。


「ミーナさんが気づいてくれなければ、判断が遅れていたかもしれません」


「私?」


「はい。よく気づきましたね」


 ミーナの尻尾が。


 少し上がる。


「まあね」


 得意そうだ。


「LEVEL四だけど」


「そこ関係ないって!」


 俺が言うと。


 ミーナが笑った。


     ◇ ◇ ◇


 目的の場所に着いたのは、それからしばらくしてだった。


「ここだ」


 マルクさんが岩場の一角を指す。


 薄い青色の葉をつけた草が、岩の隙間に生えている。


「《青鈴草》だ」


「これが?」


「ああ。乾燥させると解熱薬の材料になる」


 俺はしゃがみ込んだ。


「普通の草に見える」


「抜くなよ」


 伸ばしかけた手を止める。


「まだ触ってない!」


「根まで抜くと、来年生えなくなる。必要なのは葉だけだ」


「へえ」


 マルクさんは小さな刃物を取り出すと、必要な葉だけを丁寧に切り取った。


「全部採らないの?」


「全部採ったら、次がなくなるだろ」


「なるほど」


「薬草採りも、今日だけ儲けりゃいいってもんじゃない」


 俺は《青鈴草》を見る。


 魔物を倒す。


 素材を取る。


 依頼を達成する。


 冒険者の仕事って。


 それだけじゃないんだな。


「俺も手伝っていい?」


「駄目だ」


「なんで!?」


「お前、さっき根っこから抜こうとしただろ」


「抜いてない!」


「採取は俺がやる。お前らは護衛」


「はい……」


「適材適所ですね」


 シロナが言った。


「シロナまで……」


「事実です」


 俺たちは。


 マルクさんを囲むように位置を取った。


 前方に俺。


 少し離れた岩の上から周囲を見るハリト。


 外周を動くミーナ。


 そしてシロナは、マルクさんの近く。


 四つ星のシロナがいるんだから大丈夫。


 少し前の俺なら。


 そう思っていたかもしれない。


 でも。


 今は違う。


 俺には。


 俺の役目がある。


 剣の柄に手を置く。


 その時だった。


 カサッ。


「止まって」


 ミーナの声。


 全員が動きを止める。


 獣耳が。


 岩場の奥を向いている。


「何かいる」


 ハリトが弓を構えた。


「どっち?」


「右。二……いや、三」


「私も確認しました」


 シロナが杖を構える。


「魔力反応は大きくありません」


 岩陰から。


 何かが飛び出した。


「来る!」


 灰褐色の身体。


 細長い四肢。


 岩肌を這うように駆ける、小型の魔物。


「《クリフジャッカル》だ!」


 マルクさんが叫んだ。


 三匹。


 俺たちを見る。


 ――違う。


「マルクさん狙ってる!」


「食料か薬草の匂いに反応したのでしょう」


 シロナが答える。


 その声は。


 驚くほど落ち着いていた。


「ニールさんは正面。ハリトさんは右をお願いします。ミーナさん、左から回れますか?」


「いける!」


「マルクさんは私の後ろへ」


「分かった!」


 気づけば。


 全員が動いていた。


 シロナが全部やるわけじゃない。


 誰が。


 どこで。


 何をすればいいのか。


 それを一瞬で見ていた。


 一匹が飛び込んでくる。


「はっ!」


 剣で受ける。


「……!」


 押されない。


 前より。


 ずっと軽い。


 LEVEL六。


 さっき上がったばかり。


 まだ自分でもよく分かっていない。


 だけど。


 身体は確かに違っていた。


「ニール!」


「分かってる!」


 剣を滑らせ。


 攻撃を横へ流す。


 ヒュッ!


 ハリトの矢が地面へ突き刺さった。


 外した?


 違う。


 クリフジャッカルが矢を避け、進路を変える。


「こっち!」


 そこに。


 ミーナがいた。


 岩を蹴る。


 二本の短剣が閃く。


 一匹を仕留めるためじゃない。


 マルクさんから。


 遠ざけるために。


「うまい!」


「見てる場合!?」


「はい!」


 二匹目が来る。


 俺は片手を向けた。


 水魔法。


 岩肌を濡らす。


 クリフジャッカルの足が滑った。


「今!」


 踏み込む。


 一撃。


 魔物が倒れる。


 三匹目が岩壁を駆け上がった。


「上!」


 ハリトが弓を向ける。


 だが。


 クリフジャッカルが狙ったのは。


 俺たちじゃない。


 マルクさんだ。


「危ない!」


 ミーナが走る。


 間に合わない。


 そう思った瞬間。


 白い光が広がった。


 バンッ!


 飛びかかったクリフジャッカルの身体が。


 空中で弾かれる。


「え?」


 シロナだ。


 杖の先に。


 淡い光が残っている。


「今の何!?」


「《光壁》です」


「そんなの使えるの!?」


「話は後です」


「はい!」


 地面に落ちたクリフジャッカルが起き上がる。


 もう一度。


 マルクさんへ向かおうとする。


「させない!」


 ミーナが割って入った。


 倒すためじゃない。


 依頼人へ近づけないために。


 短剣で攻撃を受け流し。


 身体を横へ押し出す。


「ハリト!」


「見えてる!」


 矢が。


 退路を塞ぐ。


 俺が前へ出る。


 逃げ場を失った魔物が。


 飛びかかってくる。


「はあっ!」


 剣を振るう。


 数秒後。


 静かになった。


「……終わった?」


 ミーナの獣耳が動く。


 しばらく。


 周囲を確認する。


「……うん。もういない」


「よし!」


 剣を収める。


 俺はすぐにシロナを見る。


「今のすげえ!」


「何がです?」


「光る壁!」


「《光壁》ですよ」


「俺にもできる?」


「適性があれば」


「水じゃ無理?」


「水の壁なら、できるかもしれませんね」


「おお!」


「今すぐ試さないでください」


「まだ何もしてない!」


「顔に書いてありました」


 ハリトが笑っている。


「ニールは分かりやすいからね」


「ハリトまで!」


 その時。


『――成長』


「え?」


 腰から声がした。


 青の《勇者装具》。


『――ミーナ・フェル』


「私?」


『――LEVEL五』


「…………」


 ミーナが固まった。


「え?」


 そして。


 すぐに目を閉じる。


 自分の内側へ。


 意識を集中させる。


 数秒後。


 目を開いた。


「……五」


「上がった!?」


「LEVEL五!」


「おお!」


 俺が手を上げる。


 ミーナも勢いよく手を上げた。


 ぱんっ!


 手を合わせる。


「やったじゃん!」


「やった!」


 ミーナの尻尾が。


 ぶんぶん揺れている。


「これで、さっきの分を一つ取り返した!」


「さっきの分?」


「忘れたの? 依頼を受ける前」


「あ」


「さっきまで私とニール、同じLEVEL四だったんだからね」


「そうだったな」


「なのにニールだけ、一気に六!」


「俺が悪いみたいに言うなよ!」


「だって一瞬で二つも離されたんだよ?」


「俺だってびっくりしたんだって!」


「でも――」


 ミーナが。


 ふっと自分の手を見る。


「これは……私が上げたんだよね?」


「え?」


「さっきみたいに、急に装具が光って上がったんじゃない」


 川の音の変化に気づいた。


 周囲を探った。


 魔物を見つけた。


 マルクさんを守るために。


 自分で動いた。


「さっきのは、なんかよく分かんない勇者のやつでしょ?」


「たぶん」


「でも」


 ミーナは。


 もう一度。


 自分の手を見る。


「これは、私のやつ」


 その言葉に。


 シロナが少しだけ笑った。


「そうですね」


「シロナ?」


「ミーナさん」


「ん?」


「先ほどの判断。とても良かったですよ」


「判断?」


「最後の一匹です」


 シロナがマルクさんを見る。


「倒すことより先に、依頼人との間へ入りましたよね」


「ああ……」


「それが護衛です」


 ミーナが。


 目を閉じる。


 自分の内側にある。


 LEVEL五を。


 もう一度確かめる。


「……そっか」


 そして。


 笑った。


「私がやったことが、ちゃんと私の経験になったんだ」


「私はそう思います」


 その時。


 腰の青い《勇者装具》が。


 ごく小さく光った。


『――経験』


「ん?」


『――共有』


「共有?」


『――肯定』


 俺が装具を見る。


「ミーナがLEVEL上がったのと関係ある?」


 少し間があった。


『――肯定』


「じゃあ、お前がミーナのLEVELを上げた?」


『――否定』


「え?」


 ミーナも装具を見る。


「じゃあ、私が自分で上がったの?」


『――肯定』


「おお!」


 ミーナの獣耳が。


 ぴんっと立った。


「聞いた? ニール」


「聞いたよ」


「私のやつ!」


「分かったって!」


「勇者じゃなくても上がるんだからね!」


「そりゃ上がるだろ!」


「さっき三人だけ上がったから言ってるの!」


「まだ根に持ってる!」


 ハリトが笑った。


「しばらく言われそうだね」


「俺が悪いの!?」


「誰も悪いとは言ってないよ」


「でも絶対言われるやつじゃん!」


 青の装具が。


 もう一度。


 淡く明滅する。


『――成長』


『――共有』


『――継続』


 俺自身のLEVELは六のまま。


 ハリトも七。


 シロナも二十六。


 上がったのは。


 ミーナだけ。


 だけど。


 装具は。


 確かに。


 ミーナの成長を見ていた。


 さっき。


 俺。


 ハリト。


 シロナ。


 三人に起きた。


 よく分からない成長。


 そして今。


 ミーナが。


 自分で積み上げた経験。


 同じLEVEL上昇でも。


 何かが違う。


 まだ。


 俺には。


 その違いをうまく説明できなかった。


 でも。


 ミーナの嬉しそうな顔を見ていると。


 なんとなく。


 こっちの方が。


 強くなったって感じがした。


     ◇ ◇ ◇


「採れたぞ」


 マルクさんの声。


 背負い籠には。


 必要な量の《青鈴草》が収められていた。


「もういいの?」


「ああ。採りすぎても仕方ないからな」


「じゃあ帰る?」


「帰るまでが護衛ですよ、ニールさん」


「分かってるって!」


「本当ですか?」


「なんで疑うの!?」


 シロナが少し笑う。


 マルクさんも。


 背負い籠を担ぎ直した。


「帰りも頼むぞ、冒険者さんたち」


「もちろん!」


 俺たちは。


 来た道を戻り始める。


 マルクさんを真ん中に。


 前に俺。


 周囲を見るハリト。


 音と匂いを探るミーナ。


 後ろから全員を見るシロナ。


 LEVEL六。


 LEVEL七。


 LEVEL五。


 LEVEL二十六。


 数字は違う。


 できることも違う。


 知っていることも違う。


 だから。


 一緒に冒険する。


「ニール」


「何?」


「前見て歩いて」


「見てるよ」


「LEVEL五からの忠告」


「俺、六なんだけど」


「…………」


「ミーナ?」


「今に追いつくから」


「じゃあ勝負する?」


「する」


「LEVELって勝負するものじゃないと思うけど」


 ハリトが呆れている。


「じゃあ」


 俺はミーナを見る。


「いっぱい経験しようぜ」


「え?」


「LEVELが上がるかどうかは分からないけどさ」


 昨日。


 ミーナが教えてくれた。


 知らない街を歩くことも。


 知らないものを見ることも。


 冒険だって。


 今日。


 シロナが教えてくれた。


 自分で体験したことだからこそ。


 自分の経験になる。


「魔物を倒すだけじゃないんだろ?」


「…………」


 ミーナが。


 少しだけ目を丸くする。


 それから。


 笑った。


「そうだね」


 琥珀色のラグナ石が。


 獣耳の横で揺れる。


「じゃあ、いっぱい経験しよっか」


「おう!」


 四人での。


 最初の依頼。


 魔物とも戦った。


 知らなかったことも知った。


 そして。


 ミーナは。


 自分で見て。


 自分で考えて。


 自分で動いて。


 一つ。


 強くなった。


 だけど。


 依頼は。


 まだ終わっていない。


「ニール、前」


「見てるって!」


 俺たちの冒険は。


 まだ。


 帰り道の途中だった。

「これは、私のやつ」


今回、一番書きたかったのはここでした。


前回、《勇者共鳴補正》によって突然LEVELが上がったニール、ハリト、シロナ。


そして、一人だけ何も起こらなかったミーナ。


でも今回は違います。


川の異変に気づいた。


周囲を警戒した。


魔物を発見した。


そして何より、倒すことよりも先に依頼人を守ることを選んだ。


その一つ一つがミーナ自身の経験となって、LEVEL四から五へ。


青の《勇者装具》も、


『――経験』

『――共有』

『――継続』


と、その成長をちゃんと認識していました。


《勇者共鳴補正》と《成長共有補正》。


似ているようで、どうやら同じものではなさそうです。


そしてミーナは勇者ではなくても、ちゃんと自分自身の冒険で強くなっていく。


「勇者だから強くなる」だけが、この世界の冒険ではありません。


ちなみにニールはLEVEL六。


ミーナはLEVEL五。


さっき一気に二つ離された差を、早くも一つ縮めました(笑)


さて、帰るまでが護衛依頼。


四人での最初の冒険は、まだ終わっていません。


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