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第二十一話『銀髪の少女』(改訂版 ver.1.01)

二つ星冒険者となったニールとハリトが向かうのは、かつて子どもの頃に足を踏み入れた《蒼天遺跡》。


その道中で出会ったのは、昔からよく知るロイドおじさんと――謎の銀髪の少女。


同じ森で起きている異変を、それぞれ違う立場から追う三人の道が、ここで初めて交わります。


楽しんでいただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

 蒼天遺跡。


 子どもの頃、俺とハリトが一度だけ足を踏み入れた場所。


 父さんには、何度も言われていた。


『絶対に近づくな』


 もちろん、当時の俺は近づいた。


 子どもという生き物は、「絶対にやるな」と言われると、ちょっとやってみたくなるのである。


 そして今。


「ニール」


「何?」


「何でそんな嬉しそうなの?」


「嬉しそう?」


「うん」


「気のせいじゃない?」


「さっきから依頼書、何回見てる?」


 俺は手に持っていた依頼書を、そっと畳んだ。


「仕事だから」


「へえ」


「二つ星冒険者としての、立派な仕事だから」


「遺跡に行けるのが嬉しいわけじゃない?」


「…………」


「ニール?」


「仕事だから!」


 ハリトがため息をついた。


     ◇ ◇ ◇


 俺たちが受けた依頼は、


 《蒼天遺跡周辺における魔物分布の調査》。


 最近、リーヴェル北東部で、魔物の生息域に変化が起きているらしい。


 特に異変が報告されているのが、蒼天遺跡へ続く旧街道の周辺だった。


 普段なら森の奥にいるはずの魔物が街道近くまで出てきたり、逆に、いつもなら見かける魔物が姿を消したりしているという。


 原因は不明。


 だから俺たちの仕事は、魔物を倒すことじゃない。


 調べること。


 記録すること。


 そして、ちゃんと帰って報告すること。


「分かってる?」


「分かってるって」


「遺跡の中に入る依頼じゃないからね」


「何回言うんだよ!」


「ニールだから」


「俺の信用!」


「この前、上がったばかりだね」


「二つ星に!」


「そういう意味じゃない」


 ひどい。


 でも、俺だって少しは成長した。


 二つ星への昇格試験で学んだことがある。


 冒険者の仕事は、魔物を倒すことじゃない。


 依頼されたことをやって、ちゃんと帰ってくることだ。


 だから今日は絶対に余計なことはしない。


 絶対に。


「……今、何かやらかしそうな顔してたよ」


「してない!」


     ◇ ◇ ◇


 リーヴェルを出発してしばらく。


 旧街道を北東へ進んでいたところで、前を歩いていたハリトが右手を上げた。


「……止まって」


 俺もすぐに足を止める。


「何かいる?」


「分からない」


「分からない?」


「音がした」


 ハリトの尖った耳が、わずかに動く。


 俺も耳を澄ませた。


 風。


 葉の揺れる音。


 遠くで鳴く鳥。


 それから――。


 ガサッ。


「……今の?」


「うん」


 街道から少し外れた森の方だ。


 俺は剣の柄へ手を置き、ハリトも弓を手に取った。


「行く?」


「確認だけ」


「了解」


 俺たちは周囲を警戒しながら、森へ入った。


 少し進むと、木々の向こうに人影が見えた。


「人だ」


 大きな木の根元に、一人の男が座り込んでいる。


 片足を押さえていた。


「大丈夫ですか!?」


 走り出そうとした俺の腕を、ハリトが掴んだ。


「待って、ニール」


「あ」


「先に周りを見る」


「……うん」


 危ない危ない。


 昇格試験で学んだばかりなのに。


 怪我人がいるからといって、すぐ飛び出していいとは限らない。


 近くに魔物が潜んでいるかもしれないし、もっと危険な何かがあるかもしれない。


 俺が周囲を見渡している間に、ハリトは地面へしゃがみ込んだ。


「……足跡がある」


「魔物?」


「小型。たぶんグラスドッグ」


「何匹?」


「そこまでは分からない。でも、新しくはない」


 ハリトがさらに周囲を確認する。


「今は近くにいないと思う」


「じゃあ行こう」


「うん」


 俺たちは男へ近づいた。


 そして、顔が見える距離まで来たところで。


「……え?」


 見覚えがあるどころじゃなかった。


「ロイドおじさん!?」


 男も顔を上げる。


「……ニール? ハリトもいるのか」


 ロイドおじさん。


 ダンの父さんだ。


 リーヴェルで羊を飼っていて、俺たちが子どもの頃から何度も世話になっている。


「何やってんだよ、こんなところで!」


「それはこっちの台詞だ。お前ら、いつの間にこんなところまで来るようになったんだ」


「俺たち、もう冒険者だから!」


「知ってるよ。村中で話してるだろうが」


「マジで!?」


「ニール」


「今はそっちじゃないね」


「あ、そうだった!」


 ロイドおじさんの隣には、大きな麻袋が落ちていた。


 袋の口から、白い穂のついた草が覗いている。


「これ、《白穂草》?」


「ああ。冬に備えてな」


 《白穂草》は、この辺りに生える牧草の一種だ。


 干して普通の牧草に混ぜると羊がよく食べるらしく、ロイドおじさんのところでも毎年集めている。


「でも、なんでこんなところまで?」


「旧街道沿いの斜面に、いいのが生えてるんだよ。森の奥まで入るつもりはなかったんだがな」


 ロイドおじさんが、自分の足を見る。


「草を刈ってたら、藪から急にグラスドッグが飛び出してきやがった。驚いて足を滑らせた」


「襲われたの?」


「いや。向こうも俺を見て驚いたらしい。すぐ逃げていったよ」


「グラスドッグが?」


 ハリトが聞き返した。


「ああ。二匹だったかな」


「どっちへ?」


「北の森だ」


 ハリトが森を見る。


「……この辺りまで出てくるのは、少し珍しいね」


 俺も北の森を見る。


 普段なら森の奥にいる魔物が、街道近くまで出てきている。


「……これ」


「うん」


 ハリトが頷いた。


「僕たちが調べに来た異変かもしれない」


「いきなり見つけた!」


「喜ぶところじゃないと思うけど」


「そうだけど!」


 場所。


 種類。


 二匹。


 北の森へ逃げた。


 あとで忘れず記録しておこう。


「それよりロイドおじさん、足は?」


「岩で切っただけだ。大したことは――」


「結構腫れてない?」


「ああ。立とうとはしたんだが、どうにも力が入らん」


「じゃあ応急処置を――」


 俺が荷物を下ろそうとした。


 その時だった。


「そのまま動かさないでください」


「え?」


 声がした。


 後ろから。


 俺とハリトが同時に振り返る。


 そこに、一人の少女が立っていた。


「…………」


 最初に目に入ったのは、銀色だった。


 長い髪。


 森から差し込む光を受けて、白銀みたいに輝いている。


 白を基調とした旅装。


 手には一本の杖。


 そして、髪の間から覗く耳は、人間よりも少しだけ尖っていた。


 エルフ?


 いや。


 ハリトほど長くない。


 たぶん――ハーフエルフ。


 銀髪の少女は俺たちの横を通り、ロイドおじさんの前へしゃがみ込んだ。


「その足、傷そのものより腫れの方が問題ですね」


「分かるの?」


 俺が聞く。


 少女がこちらを見る。


「見れば」


「見れば!?」


「はい」


 俺には全然分からない。


「少し触りますね」


「あ、ああ」


 ロイドおじさんの足を慎重に確認する。


「ここは痛みますか?」


「少し」


「こちらは?」


「そこは結構痛いな」


「……骨には異常はなさそうですね」


「触っただけで分かるの!?」


「ある程度は」


「すご……」


「ただ、無理に歩かない方がいいですね」


 そう言うと、銀髪の少女は杖を向けた。


 小さく息を吸う。


「――《癒しの光》」


 淡い光が灯った。


「……!」


 ロイドおじさんの足が、柔らかな光に包まれていく。


 俺は思わず覗き込んだ。


「おお……!」


「近いです」


「え?」


「顔が」


「あ、ごめん」


 一歩下がる。


 やがて光が消えると、赤く腫れていた足が少し落ち着いていた。


「すげえ……」


「完全に治したわけではありません」


「え?」


「回復魔法は万能ではありませんから。傷が塞がっても、身体のすべてが元通りになるわけではありません。しばらくは無理をしないでください」


「分かった。ありがとう」


 ロイドおじさんが頭を下げる。


「いえ」


 銀髪の少女は立ち上がった。


 そして、俺を見る。


「では、この方を街道まで運んでください」


「俺!?」


「はい」


「ハリトもいる!」


「僕は周囲を警戒するよ」


「裏切った!」


「適材適所だよ」


「急にもっともらしいこと言うな!」


 銀髪の少女が俺を見る。


「……元気ですね」


「褒められた?」


「たぶん違うと思う」


「ハリト!」


     ◇ ◇ ◇


 結局。


 俺がロイドおじさんに肩を貸すことになった。


 ハリトが前方を警戒し、銀髪の少女は少し後ろを歩きながら、ときどき森へ目を向けている。


「しかし助かったよ」


 ロイドおじさんが言った。


「嬢ちゃん、回復魔法が使えるんだな」


「少しだけです」


「少しって感じじゃなかったけど」


 俺が言う。


「《癒しの光》は基礎的な回復魔法ですよ」


「基礎!?」


「はい」


 セラといい、この人といい。


 魔法が使える奴は、どうして平然とすごいことを言うんだ。


「ニール」


「何?」


「声が大きい」


「はい」


「素直ですね」


 銀髪の少女が言った。


「怒られ慣れてるから」


「自慢することではないと思います」


「……はい」


 ハリトの肩が揺れた。


「今笑った?」


「気のせい」


「絶対笑った!」


 銀髪の少女も、ほんの少しだけ口元を緩めた。


 街道が見えてきたところで、彼女が不意にロイドおじさんへ尋ねた。


「先ほどのグラスドッグですが」


「ん?」


「本当に二匹でしたか?」


「ああ。たぶんな」


「他に魔物は?」


「いや、見てない」


「どちらから出てきたか覚えていますか?」


「森の奥……というより、北側の藪だな。いきなり飛び出してきた」


「そうですか」


 銀髪の少女が、北の森を見る。


 さっきまでとは少しだけ目つきが違った。


「何かあるの?」


 俺が聞く。


「いえ」


「でも今――」


「少し気になっただけです」


「何が?」


「…………」


「何が?」


「質問が多いですね」


「気になるから!」


「そうですか」


「それだけ!?」


     ◇ ◇ ◇


 街道まで戻ると、ロイドおじさんを道端の安全な場所へ座らせた。


 近くの集落へ向かう商人の馬車が、このあと通る予定らしい。


「本当に助かった」


「帰ったらダンに言っとくよ」


「余計なこと言うな。あいつ絶対笑うぞ」


「じゃあ『ロイドおじさんがグラスドッグにやられた』って」


「やられてねえ!」


「ニール」


「冗談だって!」


「お前は昔から変わらんな」


 そう言いながら、ロイドおじさんは笑った。


 それから、俺とハリトを見比べる。


「……いや」


「何?」


「少しは変わったか」


「え?」


「ガキの頃は、二人揃って森に入って大人に怒られてただろ」


「…………」


「今じゃ、人を助ける側か」


 なんとなく。


 俺は返事に困った。


 昔は、俺たちが助けられる側だった。


 父さんに。


 村の大人たちに。


 いろんな人に。


 それが今は――。


「まあ、まだ二つ星だけどな」


「二つ星だぞ!」


「そこは昔から変わってないね」


「ハリト!?」


 ロイドおじさんが声を上げて笑った。


     ◇ ◇ ◇


 ロイドおじさんと別れたあと。


 俺は隣を歩く銀髪の少女を見た。


「ねえ」


「何でしょう?」


「君も冒険者?」


「…………」


 一瞬、銀髪の少女が俺を見る。


「一応」


「一応?」


「あなたは?」


「俺?」


 待ってました。


 俺はギルドプレートを取り出す。


「冒険者! 二つ星!」


「…………」


「二つ星!」


「見えています」


「反応薄くない!?」


「二つ星ですよね」


「そう!」


「おめでとうございます」


「なんか雑!」


「では、どう返せば正解なんですか?」


「もうちょっとこう……」


「すごいですね?」


「そう!」


「すごいですね」


「言わせたみたいになった!」


「言わせたんですよ」


 横でハリトが笑っている。


「ハリト!」


「ごめん」


「絶対ごめんと思ってない!」


 銀髪の少女が小さく息を吐く。


 でも、今度は確かに少しだけ笑っていた。


「君は何の依頼?」


 俺が聞くと、銀髪の少女は少しだけ間を置いた。


「調査です」


「調査?」


「はい」


「俺たちと同じじゃん!」


「そうかもしれませんね」


「何の調査?」


「魔物の生息域について、少し」


「やっぱり同じだ!」


 俺はハリトを見る。


「な!」


「似てはいるね」


「似ては?」


 銀髪の少女が言った。


「私が調べているのは、もう少し森の奥ですので」


「森の奥?」


「はい」


「一人で?」


「はい」


「危なくない?」


「…………」


 銀髪の少女が俺を見る。


「心配してくださるんですか?」


「そりゃするだろ」


「そうですか」


 なぜか。


 また少しだけ笑った。


「ですが、大丈夫です」


「ほんとに?」


「ニール」


「何?」


「たぶん僕たちより強いよ、この人」


「え?」


 俺は銀髪の少女を見る。


「…………」


「…………」


「そうなの?」


「どうでしょう」


「なんで教えてくれないの!?」


「聞かれましたので、答えました」


「答えてないよ!」


     ◇ ◇ ◇


「お二人は、どちらへ?」


 今度は銀髪の少女が聞いてきた。


「蒼天遺跡」


「周辺」


 俺が答えた直後、ハリトが付け足した。


「……蒼天遺跡?」


 銀髪の少女の表情が、ほんの少しだけ変わった。


「知ってる?」


「名前だけは」


「古い遺跡なんだ」


「それくらいは知っています」


「俺、子どもの頃に入ったことが――」


「ニール」


「…………何?」


「それ、知らない人に自慢する話じゃないと思う」


「……確かに!」


 銀髪の少女が、今度こそ笑った。


「何?」


「いえ」


「今笑ったよね?」


「気のせいです」


「ハリトと同じこと言ってる!」


 彼女は少し先に見える森へ視線を向けた。


「蒼天遺跡周辺の調査……ですか」


「そうだけど」


「なるほど」


「何?」


「いえ。そちら側の調査でしたか」


「そちら側?」


「お気になさらず」


「いや、気になるだろ!」


「ニール」


「何?」


「僕もちょっと気になる」


「だよな!」


「ですが」


 銀髪の少女は俺たちを見る。


「依頼の範囲を越えて、森の奥まで入らない方がいいと思います」


 さっきまでとは、少しだけ声が違った。


「何かいたの?」


「…………」


「いた?」


「まだ、分かりません」


「まだ?」


「ですから」


 銀髪の少女が静かに言う。


「調べているところです」


 俺とハリトは顔を見合わせた。


 何か知っている。


 いや。


 何かに気づいている?


 でも、それ以上、彼女は何も言わなかった。


     ◇ ◇ ◇


 やがて、道が分かれる場所まで来た。


「私はこちらですので」


「もう行くの?」


「はい」


「また森?」


「依頼ですから」


「一人で?」


「先ほども聞かれました」


「だって危ないだろ」


「…………」


 銀髪の少女は一瞬だけ俺を見つめ、それから小さく息を吐いた。


「ご自分の依頼を忘れないでください」


「…………」


「蒼天遺跡の『周辺』ですよね?」


「…………はい」


 なんで。


 まだ名前も知らない人に、ハリトと同じようなことを言われてるんだ、俺。


「じゃあ、俺たちは行くから」


「はい」


「あ!」


 俺は呼び止めた。


 銀髪の少女が振り返る。


「何でしょう?」


「名前!」


「…………」


「聞いてなかった」


 銀髪の少女は、少しだけ首を傾げた。


「あなたは?」


「え?」


「あなたのお名前です」


「……あ」


 そういえば。


 俺もちゃんと名乗ってない。


「ニール。ニール・レイン」


 隣を指す。


「こっちはハリト・ヴェール」


「自分で言えるよ」


「いいだろ別に!」


 銀髪の少女は、俺たちを順番に見る。


「ニール・レインさんと、ハリト・ヴェールさん」


「そう」


「覚えておきます」


「じゃあ君は?」


「…………」


 少し考えてから。


 彼女は答えた。


「また会うことがあれば、その時に」


「ええ!?」


「では」


「ちょっと待って!」


 そのまま歩いていく。


 銀色の髪が、木漏れ日の向こうへ遠ざかっていった。


「……行っちゃった」


「行っちゃったね」


「俺たちだけ名乗ったんだけど」


「聞かれたからね」


「なんか負けた気がする」


「何に?」


「分からない」


 銀色の髪。


 少し尖った耳。


 回復魔法。


 丁寧な喋り方。


 なのに、なんか容赦がない。


「……変な人だったな」


「ニールが言う?」


「どういう意味だ!」


 でも。


 不思議だった。


 初めて会ったはずなのに。


 なんとなく、また会うような気がした。


 理由なんてない。


 ただ、そんな気がした。


「行こう、ニール」


「うん」


 俺たちは再び歩き出す。


 目的地は――蒼天遺跡。


 子どもの頃。


『――まだ早い』


 そう告げられた場所。


 今度は冒険者として。


 自分たちの仕事として。


 俺たちは、あの場所へ向かう。


     ◇ ◇ ◇


 ニールたちと別れてから。


 銀髪の少女は、一人で北側の森へ向かっていた。


 街道から離れるにつれて、木々は深くなっていく。


 やがて、彼女は足を止めた。


 地面へ視線を落とす。


「…………」


 残されている。


 いくつもの足跡。


 一種類ではない。


 小型のもの。


 それより大きなもの。


 方向もばらばら。


 ただ、その多くが森の奥から外へ向かっている。


 銀髪の少女は腰の鞄から、一枚の依頼書を取り出した。


 そこには、こう記されていた。


 《三つ星依頼》


 《蒼天遺跡北東森林域における魔物生息異常の調査》


「グラスドッグまで、街道側へ……」


 小さく呟く。


 ニールたちが調べているのは、旧街道から蒼天遺跡周辺まで。


 だが。


 彼女が調べているのは、そのさらに奥だった。


 銀髪の少女は依頼書をしまう。


 そして――ふと振り返った。


 もう二人の姿は見えない。


「ニール・レインさん……」


 なぜか、名前が残っている。


 騒がしくて。


 妙に真っ直ぐで。


 自分より明らかに経験が浅いのに、一人で森へ入る自分を心配した。


「……変な方でしたね」


 ほんの少しだけ笑う。


 だが、すぐに表情を戻した。


 森の奥を見る。


 グラスドッグだけではない。


 何種類もの魔物が、生息域を変えている。


 まるで――。


 森の奥から離れようとしているように。


「……何があるんでしょうね」


 銀髪の少女は、さらに深い森へ向かって歩き始めた。


 その先に何が待っているのか。


 まだ、誰も知らなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


今回の改訂では、銀髪の少女との出会いだけでなく、ニールたちが受けた《魔物分布の調査》そのものが物語の中で動き始めるように構成を見直しました。


羊の餌となる《白穂草》を採りに来ていたロイドおじさん。


本来なら街道近くまで出てくることの少ないグラスドッグ。


そして、ニールたちよりもさらに森の奥を調査していた銀髪の少女。


どうやら、魔物たちは何かを避けるように森の奥から移動しているようです。


そして何より――


「また会うことがあれば、その時に」


名前すら教えてくれなかった銀髪の少女。


果たして、本当にまた会うことになるのでしょうか。


次は、いよいよニールとハリトが《蒼天遺跡》へ向かいます。


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