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★第8話ー9

「僕に伝えたい事?」

「はっはい! もちろん……ととさま! を、むっ迎えに、来る、事と、ルッルルカの、角を、もっ持ち帰る……のが一番の! 目的です。けっけど! それだけじゃ……ないです」

「なんでも聞くよ」


 まだほんの少しの時間しか一緒に過ごして無いけど、ハルルはいつでも一生懸命だし、人を騙したりなんか出来そうにない純粋で綺麗な心の持ち主だと分かる。だから僕に不利になるような事はしないし言ったりはしない気がする。


「じっ実は、わっ私も……転生者! なのです」


「「「!!!」」」


 あまりの驚きに僕たちは、言葉を失い固まってしまった。


「わっ私は、日本……の、かっ過去。たぶん、えっ江戸……時代に、生まれました……」



 辿々しく話し始めた、ハルルの内容は驚くべきものだった。


 江戸の商家の娘、小夜として生まれたが、人の良い両親は同業者に騙された挙句に、小夜の目の前で殺された。そして小夜は花街に売られたが8歳の時に流行病で亡くなった。



 はずだったけど……。


 

 次に目が覚めた時には、この世界で魔王の赤子として新たな生を受けていた。


 ととさまも、かかさまも、ルルカも優しくて、温かい人たちなのに、どうしても前世の事が頭から離れなくて忘れられなくて、けれど前世の事を打ち明ける覚悟も出来ず、ただただ部屋に閉じこもって毎日を過ごしていた。


 そんなある日、惨劇は起きた。白の大陸から侵略者ティルティポーが突然やってきて、両親を殺されルルカも角を失い、全てを奪われた。


 ハルルは2度も、最愛の両親を失っていたのだ。


 絶望感で、もう何もかもが、どうでもよくなっていた。


 それから数十年経ったある日、いつになるかまでは分からないけど未来で同じように日本から”この世界に転生者が来る”と、色鮮やかで鮮明な夢を見た。それが、ただの夢ではなく予知夢だと直感した。


 更に15年の月日が経った頃、遂にこの世界にアレティーシアとして生を受け継いだ”倉田木シン”が転生して来た。時代は違っても同じ故郷、同じような境遇の”シン”に、興味を持った。


「そ、それで、ここからが! じゅ重要! なのです」


 静かな地下室で、緊張のあまり僕を含めた皆んなの喉がゴクリと音をたてる。

 

 城に引き篭もり続けたハルルが、ルルカに内緒で城を抜け出し、慣れない旅までして僕に会いに来た理由。


「しっ白の大陸は、もうダメです。大陸……と、つっ繋がる、王がいない! から! けっけど、王が、ふっ2人いる。黒……の大陸から、おっ王を! こっこの地に! 黄の大陸に、つっ連れてくる……事が! 出来たなら!」


「なるほどね! この黄の大陸とアレティーシアが契約すれば大地が生き返る。と言うのだね?」


 ヴァレリーが確認するように尋ねると、ハルルはコクンと頷いた。


「じゅ順を、おって……はっ話します!」


 元々ティルティポーは白の大陸にいた。その白の大陸の王の血筋は数千年も前に途絶えていた。ティルティポー王の死には、間違いなくラウルとシャイナの先祖が関与してると噂があった。

 王に成り代わろうとしたんだろうが、王になるには大陸に認められる必要がある。それを知らなかった為に、大陸を死に至らしめてしまった。

 徐々に生気を失って行く白の大陸を見捨て、たまたま近くにあった黄の大陸を侵略し、今度はただ殺すだけでは駄目だと判断して”王を人柱”にしたが、次第に大地は力を失い始めた。

 大陸と王家は一心同体、精神と魂で繋がってるから、死んだ時点で契約は切れてしまう。だからこそ王は、死んでいてはいけないのだ。


 本来ならルルカかハルルが契約出来る王なのだけど、王になる為の大切な継承の儀式をする前に、王が殺されてしまったので、ルルカもハルルも王にはなれず大陸と契約も出来ないと言う訳だ。


 しかし王家の交代をするとなると、強力な力のある王家の者でなけれはならない。それまであった王家の情報を根こそぎ上書きする訳だから生半可な血筋では書き換えが出来ない。


 なにしろハルルたちの父は、魔王でありながら穏やかで種族の違いを気にすることも無い、全てに優しく時に全てに厳しい素晴らしい賢王だったのだから。


 だからこそアレティーシアしかいないのだ。

 前世の記憶を持ち、この世界の草食獣一族王家と肉食獣一族王家の2つの血を引いた唯一無二の強力な血筋と力を持つ存在だからだ。


「こっ! この大陸は! こっこの地の、核は……きゅ急速に、弱って……いるけど、まっまだ、死んで、無い! のです」

 

 このままティルティポーを野放しにすれば、王が次々に殺されて大陸が、世界全体が死に至る。


 全てが手遅れになる前に、動かなくてはならない。

 

「では、まずは予定通りティルティポーを制圧するしか無いだろうな」

「そのようだね。まずはティルティポーに気づかれないように黒の大陸に戻ってアデルギィに行くのはどうだい?」

「あぁ。それが一番良いだろう。隠れて動くには最適だ。あと情報も欲しいからな」

「決まりだね」


 僕の事になると火花を散らすリュカとヴァレリーも、協力するしかない状況なのは分かっているみたいで意気投合している。


 ちなみに天音は、耳をピクピクさせながら部屋の隅で話が終わるのを待っていた。



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