★第8話ー10
「ティルティポーのヤツラに悟られず動くとなると……」
「海を渡る手段を考えないといけないね。港を使うのはやめた方がいいだろうからね」
う〜ん。と、唸り出したリュカとヴァレリーを見て、ある事を思いついた。
「あのさ! ルルカに連絡を取るとかどうかな?」
鴉を呼び出し提案してみた。
「そ! それが! 良い……です」
ハルルはすぐに、ふにゃんと笑んで同意してくれた。ルルカの角を取り返した事で、ティルティポーに察知される心配も無いと思ったのはハルルにも分かったみたい。
「わっ私、が手紙! 書きたい……です」
「頼んでいいの?」
「は、はい!」
これまでの事と、これからの事はもちろん、きっと個人的な事も書きたいのだと思う。僕たちの、やり取りを見ていたリュカが、カバンから羊皮紙と羽ペンを取り出すとハルルに渡した。
「あっありがとう!」
リュカから受け取ると壁を机代わりに、真剣な顔でペンを走らせる。
「こっこれ、お願い……します!」
「うん!」
小さな字で、びっしり書かれた羊皮紙を受け取ると、それを丸めて鴉の脚に縛り付ける。
「ルルカの所まで、よろしくね!」
「クカァ!」
地下室から元気よく飛び出して行くのを確認する。
「ルルカ! に、明日の、あっ朝、こっここの地上で、あっ会いたい! と書きました」
「では今から地上に出て野営の準備するのが良さそうだね」
「はっはい!」
部屋から出て、2つの大扉を再び封印し直して地上に向かう事になった。
またあの螺旋階段で揉めた。そして来た時と同じように、10段ずつリュカとヴァレリーが交代で僕を抱っこすることになった。ハルルは楽しそうに見てるだけだし、天音は階段をピョンピョン跳ねながら登っていく。
地上に出ると夜が近づいていた。辺り一面、夕陽の残光に照らされ、ほんのり岩場が赤く染まり薄闇が広がり始め気温も下がり肌寒い。
リュカがカバンから薪を出し火を起こし、更に大きな敷布を広げて4人と1匹で固まって座った。じんわりと暖かさが体に伝わってくる。
「今日は昼ごはん抜きだったから腹が空いただろ? 今からスープでも作るから待っててくれ」
「じゃ! 俺はパンを提供するよ」
「うん! お腹空いた〜!」
「おっお願い……します!」
「にゃ〜!!」
焚き火のパチパチ爆ぜる音と、リュカが即席で作った干し肉と干し野菜の塩スープの香りが漂う。パンはヴァレリーが持って来ていたのを串に刺して火に炙っている。食欲をそそる香ばしい匂いに、お腹の虫も「くぅ〜っ」と、鳴いてしまった。
「タキ。ハルル。天音。先に食べろ」
「パンも良い感じだよ」
リュカが木皿にスープを3人分注ぎ、ヴァレリーが串に刺さったパンを渡してくれた。
「ありがと! いただきます!」
「あっありがとう。いっ! いただき……ます」
「にゃ〜ん!」
ホカホカ熱々のスープはしっかり煮込まれて干し肉も野菜も柔らかく塩味がきいて美味しいし、パンは焼いたおかげで外はパリパリカリカリで中はフワッとして、スープに浸さなくてもとっても美味しかった。直火だから少し焦げていたけど気にならなかった。
「体が温まったし美味しかったぁ! ごちそうさま!」
「スッスープも! パンも! おっ美味しかった……です。ごちそう! さまでした」
「ミャ〜ン!」
僕たちが食べ終わった後に、リュカとヴァレリーが食べはじめた。スープ用の木皿が、3つしか無かったから仕方がないみたい。
食後、僕とハルルは一緒に眠ることにしたけど、リュカとヴァレリーは周囲の警戒と、昼間に縛って拘束しておいた蜘蛛男が逃げたりしないように見張りを交代ですると言っていた。ちなみに、手伝うと言ったら「寝てろ」と言われてしまった。
朝、目が覚めると、既にルルカがドラゴンの上から僕とハルルを見下ろしていた。天音はルルカの肩にちゃっかり座っている。
「ようやく目が覚めたようじゃな!」
「おはよう! ルルカ!」
「ルッルルカ! おっおはよう……ございます」
「おはようなのじゃ!」
「にゃん!!」
リュカとヴァレリーを見ると、敵陣の真っ只中なので、火の始末をしながら野営の痕跡を消している最中のようだ。
「おはよう! リュカ! 兄さん!」
「おっお2人共、おっおはよう……ございます」
「おはよう! もう準備は出来てる」
「おはよう! アレティーシア、ハルル」
リュカが、荷物を纏めてカバンに全て入れ立ち上がり、ヴァレリーが蜘蛛男を背負った。
「準備は出来たようじゃな! それではコヤツの背に乗るのじゃ」
僕はリュカに抱えてもらいながらドラゴンの背に登って、ヴァレリーは蜘蛛男をドラゴンの足に括りつけてから僕の後ろに飛び乗った。ハルルはルルカと一緒にドラゴンの首の辺りに座っている。
「行き先はアデルの森でいいのじゃな?」
「うん! ルルカよろしくね!」
「タキの頼みじゃ! お安いごようなのじゃ!」
ドラゴンが大きな翼を羽ばたかせ、フワリと飛び立つ。ぐんぐん地上が遠ざかって雲の上をゆったりとした速度で進んでいく。
「わぁ! 雲が光ってる! 綺麗だね!」
太陽の光の加減なのか? それともこの世界だからなのかは分からないけど、下に広がる雲の色が虹色にキラキラ輝き幻想的な美しさを放っている。
「美しいじゃろ! 朝にしか見られない景色なのじゃ!」
「そうなんだ! 本当に綺麗!!」
リュカもヴァレリーもハルルも天音も、煌めくような美しい光景に見入っている。
「名案が浮かんだのじゃ! 天音が育てば大空も飛べるのじゃ。その時が来たら妾のドラゴンと一緒に空中散歩でもどうじゃ?」
「うん! 行きたい! 約束だよ」
「うむ! 約束なのじゃ」




