★第8話ー8
「ヴァレリー! アッアレティーシア! さんに、会えて、よっ良かった……です」
ハルルは少し涙ぐみながら、まるで自分の事のように、僕たちの”出会い”を喜んでくれた。
「それは、途中でグレダ……蜘蛛男を見失って行き詰まっていた俺に、アレティーシアが生きてると教え導いてくれたハルルのおかげだよ」
「ヴァレリー! が、わっ私を、信じて……くれた! からです」
「ハルルの目に偽りの光は無かったからね。あとアレティーシアが関わっているんだ。信じるに決まっている!」
行く先々で2人は仲良さそうには見えないと話に聞いていたけど、僕には2人の間に信頼関係があるように感じた。僕とリュカと一緒で、旅をするうちに少しずつ打ち解けていったのだと思う。
出来ればヴァレリーに会えた喜びを、もう少し噛みしめていたい所だけど敵の本拠地に、いつまでもいるのは危険だしシャイナたちはワープのような事が出来るから体制を整えて、いつ襲って来るか分からない。
早く動いた方が良いと思う。
「ハルル。この奥には何があるの?」
「こっここには、私と、ルッルルカの、とと……さまが、眠って、いっいます。それと、ルルカ! の大切な……角が、あります。だから!」
「うん! 僕も一緒に行くよ」
「オレも気になる事がある」
「アレティーシアが行くならば当然! 俺も行く」
「みんな! あっ! ありがとう」
ハルルは、ふにゃんと嬉しそうに笑った。
「たぶん、わっ私が! いた頃と……変わって! なければ、こっ! こっち……です」
崩れ落ちた岩の先を歩きだす、ハルルの後をついて行く。内部は4人が横並びになっても大丈夫なほど広い通路なんだけど暗くて冷んやりとした空気が満ちている。まるで洞窟のような道を、ハルルが指に炎を灯し、壁に一定間隔に掘られた小さな穴の中にある燭台に火をつけながら歩く。仄かな光でも十分に明るく歩きやすい。
途中、地下に向かう長い螺旋階段があったんだけど、リュカとヴァレリーのどちらが僕を抱っこするかで揉めた。
「では10歩ずつで妥協しよう! それ以外は認めない」
と、ヴァレリーは踏ん反りながらリュカに言って、面倒臭くなったリュカは「それで良い」と溜息をついていた。
ちなみに僕も意外と大変だった。だってさ。リュカとヴァレリーが抱っこ交代するんだけど、階段を10段降りるごとに2人の腕の中を行ったり来たりしなくてはならなかった。しかもその様子をハルルはニコニコ満面の笑みで楽しそうに見てるし、天音はハルルの頭の上に座り尻尾を立ててご機嫌だ。
長い螺旋階段で最下層まで降りると、雰囲気は変わって煉瓦で作られた空間が広がっていた。そして一つだけある木製の大扉に、ハルルが手をかざすと複雑な模様のような魔法陣が浮かび「ガチンッ!」と音を立てて、ガガガッと蝶番を軋ませ開いた。
ハルルが先に室内に入って、部屋の四隅に配置されている燭台に火を灯す。
ほんのり明るい室内に入ると、目の前にもう一つ大扉がある。しかも今度は鉄製で鎖が張り巡らされ、中央には鍵の代わりに”何かの角”で封じが施されている。
「この角って、もしかしてルルカの?」
「そ! そう……です。すっ少し、離れて! ください」
僕たちが後ろに下がったのを、ハルルは確認すると部屋の封印を解いた時と同じように、魔法陣を浮かびあがらせ、そのまま指先を角に当てた。
パキッ! パキッーン!!
瞬間、鎖が弾け飛び角が床にコトンと落ちた。その角をハルルは大切そうに拾い懐から出した赤い布に包み左手で抱え持つ。
「さ! 先に、すっ進み。ましょう! こっこの先が、もっ目的地……です」
最奥への大扉を開き、ハルルが四隅の燭台に火を灯し入る。僕たちも一緒に入っていく。そこは咽せ返るような鉄錆の匂いで充満していた。
「……と! ととさま!!」
ハルルが奥に向かって走りだす。
部屋の1番奥は祭壇のようになっていて、中央の縦に長い長方形の岩に、手足を鉄杭で磔にされ胸には銀の槍が深々と突き刺さって、白く長い髪は床にまで垂れ、身体全体がミイラのように干からびた男性がいた。一眼見て魔族と分かる姿だけど、角は両方とも折られて無くなっている。
「ととさま……む……迎えに! きっ来ました!」
一つ一つ、杭と槍を抜いていくハルルを、ヴァレリーは見ていられなかっただろう。ハルルを手伝い、ハルルの父の傷ついた身体を磔台から、ゆっくりと慎重に床に下ろした。そして父を抱きしめ泣き出したハルルの肩を抱きしめる。
「ヴァレリーも……み……みんなも……あっありがとう」
深呼吸をしてから真っ赤な目を手で拭い、か細い声でお礼を言うハルルは、父を取り戻せた喜びを滲ませ、ふにゃんと笑んだ。
ハルルは気持ちが落ち着くと、懐から赤い布を出して父の遺体を包みこんで、先ほどのルルカの角と共に、腰に下げていた小さな鞄に慎重に入れていった。リュカが持っているマジックバッグと同じもののようだ。
「わっ私が、ここに! 来た理由が、もっもう一つ……あります。ア! アレティーシア……さん! あなたに、つっ伝えたい……事が、あるの、です!」




