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田舎村の小学校の音楽室で、アシュリーは「ゴロちゃん」宛てに手紙を書いていた。彼女は先生の希望で、バイトの音楽教師に雇われていた。
アシュリーは上品なリボンベルト付きタックワンピースを着ていた。本人の気品も相まって、深窓の令嬢という印象だった。
音楽室の窓から、校庭(と工事中のプール)が見えた。アシュリーは時々手を止めて、鉄棒で逆上がりする子供達や、それを真剣に指導する地味ジャージ姿の先生に微笑んだ。校長に怒られた彼女は、いやらしい格好を止めなくてはいけなくなった。
終業のベルが鳴った。アシュリーは童謡を弾いて生徒を出迎えた。しばらくすると、坊主頭と半ズボン、三つ編みの子が一番乗りで音楽室にやってきた。
「よーし今日も俺一等賞!ピアノのお姉ちゃんこんにちは!」
「こんにちは」
「今日何!?何のお歌歌うの?」
千代浜は存亡の危機を迎えつつあった。しかしながら、差し当たって、田舎村には平和な時間が流れていた。
校庭の木に、黒いカラスが一匹止まっていた。カラスは校舎の様子をじっと見つめていた。
(続く)




