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大河に注ぎ込む支流の河口部に、大きな商業都市があった。街の南には大河、東には支流が流れていて、この支流が王国と千代浜の境目になっていた。
水上交通で栄えた水の都だった。この市の内外に、運河が複雑に張り巡らされていた。鉄道が通るとターミナル駅に指定され、各地から列車が乗り入れるようになった。この街を守るため、全周防衛線が形成された。水路を掘に見立て、その裏に鉄条網+塹壕が構築され、要所にコンクリ製の強化地点が設置された。
一帯は豊津要塞と呼ばれていた。この地に、今は千代浜の旗が翻っていた。
王子の予想より数日早く、秋水は結城を下した。王子の計画では、西部軍のほぼ全軍を北上させて、敵中央軍を粉砕した後、速やかにここに西部軍を戻す予定だった。しかし王子に数日先んじた秋水は、一隊を派遣してがら空きの街と要塞を乗っ取ってしまった。
秋水とテリーは、街一番のビルの屋上に立って、伝令兵の報告を受けていた。
「その後、東部軍、西部軍は本国に後退!魔王の軍は北上して北畠領に侵入しました!現在は武都を目指して進軍しております!」
「ご苦労様。体を休めて」とテリーは労った。伝令兵は頭を下げて退出した。
「信じがたい結果です。ここまで強いとは……」とテリー。
「兵の質でも量でも北畠が上回っていました。将帥の差もそこまであったとは思えない。単純に、考えの違いに付け込まれたのでしょう」
「それは魔王にも言えますね? 恐ろしい男ですが、歪な考えにはそれだけ付け込む隙が生まれる。軍師殿の指図に従い、この豊津要塞を魔王の墓標に変えてみせます」
阿片戦争では、少数の英軍に清朝の大部隊は翻弄された。六十年後の義和団事件では、民兵の大部隊は列強の小部隊を北京の一角に追い詰めた。両者の違いは蒸気船と鉄道だった。足で動く軍と汽船で動く軍が戦えば、速度に勝る後者が勝つだろう。しかし鉄道は船より早く、大量に物を運べた。列強が思わぬ場所に上陸してきても、鉄道はその何倍もの兵を直ちに送り込めた。それでは、鉄道で動く軍同士が正面からぶつかれば、どうなってしまうのだろう。
「いえ、司令官はあの方にお任せしています。この戦いを任せるのに最適な方です」
テリーは「?」という顔になった。秋水は少し笑って、それから寂しい表情で運河を見下ろした。この戦いに勝てば、兄は西海岸の覇者となる。今はただ、それが恐ろしい。




