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千代浜の沖合に、岩島という島があった。島は全土が要塞化されていた。
列強の植民地侵略パターンは、まず大河の河口を押さえ、それから川伝いに勢力を広げていく、というものだった。船上輸送で物資を迅速に運べるからである。王子は最初に目を付けられるであろう岩島に、多数の砲台を築き、軍港を整備し、地下トンネルをアリの巣状に掘り広げた。元の住民は追い出され、軍人以外の立ち入りは禁じられた。
この岩島軍港の埠頭に、反乱を起こした蒸気艦隊十数隻が集結していた。艦隊旗艦の司令部に、主だった将官が集結して、今後の対応を話し合っていた。
司令部の突然ドアが開いて、武装した水兵が雪崩れ込んできた。将官は「貴様ら何をしている!」と怒鳴った。青年参謀が遅れて司令部に入ってきた。
「覇気ヘアー」の、逞しい総書記系男子だった。昔風のイケメン顔で、首から上は演歌スターのよう。百九十センチ百十キロ(ほぼほぼ筋肉)で、首から下はAⅤ男優のよう。合体させるとどことなく間抜けで、どことなく爽やかで、どことなく恐ろしい、不思議な印象の青年になった。
司令官や他の将官は、総書記系男子に命乞いした。
「今戻れば提督と戦う事になる。共倒れだ。喜ぶのは結城しかいない」
「主君殺しに力を貸すのか?」
「ピアース分かってくれ。我らは真に千代浜を思って決起したのだ」
ピアースは拒絶した。
「言い訳は裁判官にしてください。反乱を起こした時点で、あなた方は侍でも軍人でもない。刀を出してください」
将官は武士の魂、そして軍人の証である刀を取られ、丸腰のまま連行されていった。ピアースも自分の刀を部下に手渡した。
「艦隊は情勢を見て千代浜に帰還させろ。いいな?直ちに、じゃないぞ」
部下は敬礼して出て行った。司令部から誰もいなくなった。先ほどまで将官が座っていた机には、千代浜軍の配置図と、差出人「田村家軍師 田村秋水」の開封済手紙が置かれていた。ピアースは机に座って手紙を読んだ。




