表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/103

取り乱したのは

「ではまず交渉の前に、別のことを話そう。昼に夏草庶務があんなに取り乱した理由だ。それ次第ではこちらの意見を変える」

「うん、僕達もだ。綾ちゃんの態度によっては意見を変える」

「綾ちゃんがあの女と似たような事を言わない限り、綾ちゃんが意見を変える必要はないよ」


 あの女、とは花咲さんの事か?それぐらいしか予想出来ない。

 彼女のどんな発言が取り乱す原因になるんだ?


「それは微妙だね。人の考えはその時々によって変わる。自分の生き方に関するほど大きなものじゃなければね。たとえば、宇宙人の存在を信じるかと聞かれた場合、私の答えはその時の気分で決まってしまう」

「君は気分で決まることが多すぎる気がするな。でもまぁ大丈夫だと思う。俺らが知りたいのはそんなものではないから」

「そう?なら問題はないんじゃないかな。じゃ、夏草庶務。理由をお聞かせ願えるかい?」


 黙って頷く日向。

 彼が取り乱した理由が私に絶対入ってほしくないからとかだったら、さすがに意見を変えるべきだろう。

 半泣きになるほど拒まれているということなのだからな。

 彼らを見る限りそんな事はなさそうだが。


「僕達ね、君を探すために教室へ行ったんだよ。クラスだけは入学式の時に配られたやつに載ってたから知ってたんだ」


 千尋と教室を出た時夏草兄弟は見かけなかったから、結構後に来たのだろう。彼らが教室に着いた時がイベント発生の時間だったのかな?会長もそうだったが、イベント発生時刻が妙に遅くないか?

 今から思えば、イベントが発生する時間まで覚えてる花咲さんってどんだけ『君想』が好きだったんだ?


「教室に行ったのは良いけど、俺らは誰が綾ちゃんなのかわかんなかったんだよね。だから近くの子に聞いたんだよ。えっと、こう、髪の毛がくるっとなってる子」


 身ぶり手振りで髪型を表現しようとする葵。多分花咲さんのことだろう。


「パッと見て、可愛いな~って感じの子でしょ?」

「えーっ······あー······うん」


 えらく歯切れが悪いな。好みではなかったのか?


「······綾ちゃん、あの女と仲良いの?」

「いや、それはないね。私は彼女と親しくした覚えは無いし、親しくする気も無い」


 良かった、と安堵した様子の日向。そりゃあ気ぃ遣うよな。今から話す内容はあまりよろしいものではなさそうだし。


「俺があの子に『乙さんは誰?』って聞いたら、凄い顔になって、またあの女とか呟いてんの。いくら俺でもさすがにあの子は······うん、無理」


 無理とか言うなよ。ちょっと現実と仮想世界を混同しているだけだぞ?かなり失礼なだけだぞ?それを除けば私よりずっとまともで、ずっと可愛らしい夢見る女の子(妄想少女)だぞ?

 顔とかスタイルとか、あんなにハイスペックな体を持っていながら、この女好きに無理と言わせるとは······花咲さんすげぇ。


「しかもだよ!?なんか急に依存するなだの変わらないなんて有り得ないだの。最後には依存は本当の愛じゃないとか言ってきてさ······。その時は『何言ってんの?』って返して葵と一緒に別のトコ行ったけどさ」


 顔をあの時のように歪める日向。

 あの時から思っていたが、葵は取り乱す様子を見せない。気にしていない訳ではなさそうだし、ただ表情に出していないだけだろう。

 日向の話を聞く限り花咲さんの発言は、興味を持たせるというよりは彼らを動揺させただけのようだ。

 場面が違うと、こうも感じ方が変わるものなのか。


「依存なのかはわかんないけど、僕達がお互いや、周りに執着してるってのはわかってる。それがおかしいって事も。だけど、今までそれで特に問題無かった」


 へぇ、自覚はあるんだ。自覚してんのは葵だけかと思ってた。

 ······でもその答えはまだ完璧じゃない。()()()()にも目を向けてみよう。日向が思うほど君達は似ていない。表情や仕草は勿論、それから読み取れる『執着の仕方』もね。

 ほら、もう一人はちゃんと知ってるみたいだよ?自分達の執着の違いに。

 もっとも、ここまで気付く必要はないと思うけど。

 私だって他人の感情には(うと)い。今回気付いたのは偶然だから、あまり偉そうな事は言えないんだよね~。


「今まで問題は、無かったのに。今朝、いつもより遅く来た会長が······あ、僕達毎朝早くから生徒会室に行ってるんだ。会長にこれからは大丈夫って言われたんだけど、まぁ今は良いや。でね、会長がさ、来て早々藤せんせーと話し始めたの。何の話?って聞いたら、『新しく入れたい奴がいる』って言って······。それが綾ちゃんだったんだ」


 え、おい今朝かよ。出会った直後じゃねぇか。私との会話の中のどこにその要素があったんだ?あれか?会長をバカにしたからか?フッいい度胸だみたいな?それとも逆に、もっと虐げてくれ?どっちだ!?

 ······会長がマゾの方面に目覚めていない限りは面白いことになりそうだし、あんま気にしなくていいのかな?ってかサラッと流したが『藤せんせー』は、顧問の藤崎先生の事だよな?案外常識的なニックネーム······っていやいやそれよりも。


「夏草庶務、夏草会計。桐生会長に聞かれなかったの?」

「何を?」


 あれ、こんな短い文なのに葵だけが答えた。よく理解できない双子パワーは働いていないらしい。昼休みの時のシンクロ率は事前に打ち合わせか何かしていたのかな?


「私を生徒会に入れていいかって事。聞かれたと思うんだけど······」

「あぁ聞かれたよ~。僕達は嫌だって言ったんだけど、藤せんせーとやなりんは『良い』って言ってたし、副会長にメールしたら『良いですよ』って返ってきたし。多数決で決まっちゃうかもって思って」

「私を脅しに来たんだね?」

「うん······まぁ」


 なるほど。詳しい条件を全く知らなかったのか。

 『藤せんせー』は分かりやすかったが、『やなりん』······?あ、そういえば書記の名字が柳瀬(やなせ)だったか。おそらく『やなりん』とは彼の事だろう。彼は一応先輩のはずだが······失礼じゃないのか?


「綾ちゃんあの時、結局自分の意見通したでしょ?それ聞いて、このままじゃ会長達が僕に構ってくれなくなると思って、だけどこういう執着?はあの女が言ってたみたいに本当の愛とは違うのかなって」


 え、本当の愛とか言っちゃう?え、言っちゃうの?

 こんな反応って今はすべきじゃないのかな?なんかゴメン。黙ります。


「でも、僕は葵も会長達も好きなつもりだし、自分が考えてることの意味が分からないし。もう頭の中がグチャグチャになっちゃったんだ」


 だろうな。花咲さんのセリフで動揺した後に更にショックを受けたからか、考えが色んな方向にブッ飛んでる。これ一回考えを整理した方がいいんじゃないか?


「夏草会計は?夏草庶務ほどじゃないにせよ、何らかの思いは生じたんじゃない?」

「何らかの?」

「そ、何らかの。たとえば、私は本当の愛(笑)とやらの定義を知りたいなと思ったよ。君は?」

「特に何も無いよ?」


 ニコリと笑う葵。

 嘘つきだね。

 日向が花咲さんのセリフを復唱した時、明らかに気にしている様子だった。その後もたまに日向を見て、黙りこくって。

 さっきだってあんな意味深に笑いながら『何も無い』だなんて、『何かありますよ、気付いて~』って言ってるようなもんだろ。

 面倒だから指摘はしないが。


「ふぅん。ま、別にいいや」


 葵の方はそこまで問題視していない。なんだかんだ言って、こいつは私が生徒会に入ろうが入るまいが気にしないだろうからな。

 問題は日向の方だ。彼が私に何を求めているのかが分からない。

 彼らが私に意見を合わせる条件は『私が花咲さんと似たような態度をとらないこと』だが······。あまりにも大雑把で対応しづらいのだ。

 とりあえず、日向の混乱を鎮めるお手伝いをしましょうか。


「夏草庶務、混乱するのは複数まとめて考えるからじゃないかな?一個一個納得のいく答えを出してみよう」

「一個ずつ?」

「うん、一気に考える必要はないからね。まず最初の『このままじゃ会長達が僕に構ってくれなくなる』ということについて」

「改めて考えると、その表現ってなんか恥ずかしいんだけど」


 『構って』というのが幼い子が使うような言葉だからだろうか。だがこういう願望を持つ人は少なくないのだし、恥ずかしがらなくてもいいと思うけど。


「どうして君は構ってくれなくなるって思ったの?」

「綾ちゃんが入ったら、皆綾ちゃんばかり構って、僕を放っておくかもしれないじゃん」


 いやいやいやいや。そりゃ生徒会役員になったら仕事を教える為にも、多少は話すだろうさ。でも、それだけの事だ。


「夏草庶務。君は生徒会役員とあまり仲良くないの?」

「ううん。仲良いよ。いっぱいお話するし」

「なら大丈夫」

「「え?」」


 うわ、ビックリした。日向はわかるが、なんで葵は驚いてんだ?そんな目ぇ見開いてこっち見んなよ。まるで私が変な事を言ったみたいじゃないか。


「滅多に話さないともかく、君達は既にある程度の関係を築いているんでしょう?だったら心配しなくても大丈夫。新しく人が入ってくるぐらいで起こる変化は、案外気にしなくていいんだ。例外がないとは言わないけど」


 まぁあんまり例外は起こんないから問題ない。うん。


「······じゃあ、君が入っても僕は心配する必要がないって事、だよね?」

「もちろ」


 ガチャリ、とドアノブが回る音がする。

 ──────やっべぇ!!バレる!!

 ドアを開ける相手から見えないようにする為、椅子から降りて葵の傍に座る。

 葵は驚いたようだが、声は出さないでくれた。ありがとう。


「······日向くん、葵くん······どうして、ここに?」

「あ、やなりん」


 入り口から聞こえる声。日向が『やなりん』と呼んだから、柳瀬さんなのだろう。

 簡単に彼の説明をしておこう。

 『柳瀬(やなせ) (りょう)』。『君想』の攻略対象で、二年生。生徒会書記を務める。

 髪の毛は茶色で、癖っ毛。瞳は千尋いわく黄色。無口キャラだったと思う。

 何故彼がここに······あ、戸締まり時間過ぎても電気がついてたからか。

 いやね、一応ダメではないんだよ?日向達は生徒会役員だから別に指定時間を過ぎても使用して良いし、私だって深夜徘徊として補導される時間じゃなければ自由に学校に入って良いし。こういう特殊な空間だって利用して構わない。

 ただ、生徒会役員のように鍵を渡されている、という訳ではないから元々鍵が開いてるとかじゃないと入れないんだけどね。

 だから校則違反にはならないのだが、自由に入れる理由を説明するのがヒッジョーに面倒だ。

 よって私は隠れる。柳瀬さん、どうか私に気付かず出ていってくれっ!

双子のターンが終わらないッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ