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8話 影の正体にて


(失敗……か)


上空より円形状の町を見下ろしながら結果を確認する。


(ゴブリンやオークに知性を与えたが……やはり下級は下級)


援護する為に門を破ってはやったが先程展開された光の壁で再び町が囲まれた。

もはや下級共にはどうしようもあるまい。


(まぁいい。 手は他にもある)


そう言って手をかざすと中空に黒い円が浮かび上がる。

開いた門(ゲート)に入ろうとした時だった。


(光!?)


輝きが煌めき瞬時に黒い円を取り囲む!


(これは……っ!?)


手を伸ばすと鋭い痛みと共に大きく弾かれる!

それと同時に下から怒鳴り声が飛んできた。




「逃がすかよ!! てめぇが元凶だな?」


俺は上空に浮かぶ影を睨みつけながら言葉を続ける。


「その円、入ろうとしてたな? 帰りの手段なんだろうがあんな事をしでかしておいてタダで帰れると思うなよ」


(反射的に結界で封じてやったぜ、逃がしてたまるかよ)


暫く留まっていた黒い影だったが、やがてゆっくりと降り始めた。

遠くからだと揺らめく黒い影に見えていたが、目の前に降り立ちその姿が鮮明になる。


(人……じゃねーか、あんなデカい翼がありゃな)


外見は普通に男性。

背は高くスラリとした体型に高貴そうな服を着ている。

それだけならまるで何処ぞの貴族の様だったが……明らかに人では無い部分があった。

人と違うのは背中より出ている大きな黒い翼だ。


(まるで蝙蝠の翼だな。 色といい形といいそっくりだぜ)


手にしたメイスをそいつに向けつつ、


「お前は何だ? 人なのか? なぜ町を襲わせた?」


コイツが元凶ならコイツのせいでみんなが!

倒れた冒険者達がフラッシュバックしていく……先日訓練場で会話を交わしたものもいた、俺を慕う奴らもいた、家族がいるやつだって!!


(感情的になるな)


頭でそう思っても言葉は思いの外強く叩きつけられた。


「答えろ! お前は何のために----」


そいつが顔を上げ……目と目が合い思わず言葉が途切れた。


(燃えるような……血のような……紅い瞳)


真紅の瞳に飲み込まれるように一瞬我を忘れたが、


「っ!? ……お前は一体」


首を振って我を取り戻すと再びそう言って睨みつける。

そうしてやっと相手が口を開いた。

しかしそれは俺の質問への答えではない。


「……あの光は何だ?」


そいつはそう言って円を取り囲んだ光を指し示した。


(まるで地を這うような……ゾッとする声だ)


ポタリと額から汗が垂れた。

気づけばメイスを握る手にも力が入っていて手汗が溢れる。

俺は手汗を拭いつつ、


「質問に答えろ! お前は何で、何が目的だ!」


しかしそいつは紅い瞳をこちらに向けたまま微動だにしなかった。


「答えねーなら答えさせてやるぜ」


いつもならしないであろう自己強化……素早く自身に『防御上昇(プロテクション)』を掛けると地面を蹴って駆け出す。


距離を詰めるのは一瞬だった。

正体不明のそいつが目の前に迫り俺はメイスで打ち払う!


相手はそのまま棒立ち……避けないのか!


メイスが……空を切った。


「んな!?」


思わず出た声、それと同時に素早く辺りを見回す。


(消えた? どこだ! どこ行きやがった!!)


左右、後ろ、上、……いない


(……逃げたのか?)


「くそっ!」


思わずメイスを握りしめる!

その瞬間!


「ぐぁ!」


脇腹に衝撃を感じた!

と、次の瞬間身体が少し浮いたかと思うと数メートル飛ばされ……木に激突して身体中を激痛が走り抜ける!


(ぐぅぅ、息が……苦しい……)


地面に倒れ伏したまま必死に上体を起こし把握しようとするが、身体が言う事を聞かず再び地面に倒れ伏す。


(何を……された? どこから……)


近付いてくる足音が聞こえる。

急いではない、しかし一歩一歩確実に来ている。


そして側まで来ると髪の毛が引っ張られる感覚と共に身体を持ち上げられた。


「髪を掴んで……もちあげんじゃねーよ。 一応……こう見えて、女だ、ぜ?」


そいつは俺を持ち上げたまま、


「お前を消せばあれは消えるのか?」


「さぁな?」


俺の返事を待たずにそいつが腕を振るう!

鋭い痛みが走ると同時に左腕が垂れ下がった。


(ちっ……左腕はもう駄目か)


千切れてはいない様だが感覚が無い。

『防御上昇』をしていなければ腕は間違いなく落ちていただろう。


消せば消える


アイツはそれを試そうと思ったようだ。

再び腕を振るおうと目の前で構えて……


『聖印(ホーリー)!!』


気合いと共に魔法を唱える!


(どうだ! 魔のものに直接叩き込みその動きを束縛する結界魔法だ!)


そいつは振るおうとした腕で俺の『聖印(ホーリー)』を受けると俺を離して咄嗟に飛び退いた!


「いだ!」


飛び退いた時に放られ地面に落下する。

尻から落ちて間抜けな声が漏れたがすかさず相手に視線を向けた。


奴の腕には魔法による聖印が浮かび上がり、そこから光の帯が伸びて全身を包もうと伸びていく……


よし!『聖印(ホーリー)』は間違いなく入った


後はこのまま光の帯がアイツの全身を拘束するだろう。

しかしそれを見て息を呑む。


(なんだ……と)


そいつは何の迷いもなく自らの……聖印を受けた腕を切落とした!


聖印の入った腕はみるみる炭化していきそのまま消えてしまう。

そして腕を落としたそいつはバサリと大きく翼を広げると、落とした腕口を押さえながら上空へと飛び上がった!


(逃げるのか! 待ちやがれ!!)


そう叫ぼうとしたがふらっと身体が揺れる。

目の前も徐々に暗くなっていく。


(あ……やべ)


俺自身が満身創痍なのも忘れて、た……ぜ。


そんな考えと共に俺は土臭い地面へと倒れ込んだのだった。

8話でございました!


流れや展開が早いかも? と、ちょっと心配


それでも読んで頂いててる皆様には感謝です!


ありがとうございました〜



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