6話 防衛戦にて
調査の日から1週間程が経った。
ベリタテ一行は情報を持ち帰り今後の検討をするという事で王都へと戻っていった。
そうして俺はいつもの様に冒険者ギルドに顔を出しミラと話し込んでいた。
丁度そんな時だった。
冒険者ギルドの扉が壊れんばかりに開かれギルド所属の冒険者が転がり込んできたのは。
「アルコル!? どうしたの? そんな慌てて」
驚いて動きを止めたミラが入ってきた冒険者に尋ねる。
アルコルと呼ばれた冒険者は額の汗を拭いつつ息を整えると、
「大変だ! 大変なんだよ!!」
「落ち着けって。 何が大変なんだ?」
思わず俺もアルコルに声を掛けると、
「アノンもいたのか。 大変な事になった」
「それはもう聞いた。 だから何が大変なんだよ?」
「魔物だ。 大量の魔物と魔獣がこちらに向かってきてる」
「何だって!?」
その言葉にギルドにいる全員がざわめき立つ。
「間違いないのか? たまたまこちらの方向に来てるだけじゃなくて?」
「いや、あれは様子がおかしかった。 魔物共はゴブリンやオークを筆頭に武具をつけていたし、何より魔獣を従えていたのもありえない話だ」
魔獣は野生の獣が原因不明の……一説には魔の気に触れた獣が魔獣に変化すると言われている……となったもので基本は野生の獣と大差はない。
強いて言うなら魔獣になるとどんな獣も人を襲うようになり人肉を好む様になる。
しかし行動そのもの自体は人がいなければただの獣でしかない。
町に向かってくるなどあり得ない事だった。
「話を聞く限りこちらに来るかどうかはともかく確かに尋常じゃないな。 どっちから来てる?」
「俺が見たのは南側からだったけど、それ以外は分からない」
「それじゃ動くわよ!」
ミラがパンパンと手を叩き、
「私はギルド長に報告するから、貴方は衛兵に伝えて! 貴方は門兵に言って閉門を……」
ミラがテキパキと冒険者達に指示を出していく。
俺も戦いになりそうなのを感じ取り準備をし始める。
(一体何が起こっているんだ?)
そう心で呟くも答えは出ないしただ不吉な思いが押し寄せてくるのみだった。
アルセフィナの町は王都から離れている。
それも考慮してそれなりに籠城出来るような作りとなっていた。
高い塀に覆われているのもその理由であり、備蓄などもそれなりに蓄えられていた。
ここらへんは領主(と言っても王令の元準備していただけだが)の備えによるものだった。
そして北門には衛兵の宿舎、南門には冒険者ギルドが設置されており、いざという時すぐ駆けつけられる構造となっていた。
閉じられた門には大きな閂が掛けられ塀の上には衛兵達が、門の内側には冒険者達が装備を整え待ち構えている。
勿論来ないでくれることが一番だったのだが、報告が入る度にこちらに向かっているのは濃厚になっており、遂には門の内側にいても分かるほどの地響きが轟いていた。
「お前等、無理はするなよ?」
俺は新人達の面倒を任されていた。
新人を入れないといけないほど人手は不足している。
戦いを学んだと言っても指示出しは必要だろう。
「アイン、緊張し過ぎだ」
以前助けた新人冒険者のアインも参加している。
トラウマになってもおかしくないがそれを乗り越え冒険者として志願してくれていた。
「だ、大丈夫です。 それに僕もアノンさんの力になりたいんです」
緊張からか顔を赤くしブルブル震えるアインの肩に手を置き、
「それは嬉しいけど無理はするなよ?」
「は、はい」
と返事はするもののより一層緊張したのかカチコチになっている。
(はぁ、全く……)
俺は肩に置いた手をアインの頭に置くと、
『防御上昇』
「これって!?」
アインが驚いたように目を見開き、
「アノンさんって神聖魔法も使えるんですか?」
「あぁ? 今ごろかよ、前に使った……ってそうか、あの時お前気を失っていたな」
アインを助けた時に神聖魔法の一つである回復魔法を掛けてあげたのだか気絶していたので見ていなかったようだ。
「す、すごいです。 強いだけじゃなくて強化魔法まで」
「あ〜〜まぁ、元々シスターだからな。 教会にいた時に魔法の素質があるとかで叩き込まれたぜ。 まぁ冒険者として活用出来るから役に立ってるけどな」
魔法は大きく分けて二つに分かれる。
相手を攻撃することを主体とする自然魔法。
名前の通り自然の中にある魔素と呼ばれるものを取り込み炎や水へと変換することで攻撃手段へと変える。
これが魔術師達が使う魔法である。
それに対して俺が使ったのは神聖魔法。
こちらは体内の中にある信力と呼ばれる力を変換することで使える。
信力は教会に勤めることで開眼し、神への祈りにより高めることができる。
神聖魔法には回復魔法、強化魔法とあるが祈りの時間をサボっていた俺はあまり得意ではない。
ただ神聖魔法の中で唯一、結界魔法だけは得意だった。
(なんか神様に祈りを捧げるってのが合わなかったんだよなぁ〜〜)
ふと気づくとキラキラした目でこちらを見ているアイン。
流石に照れくさくなり、
「まぁ、気休め程度だ。 無理はすんなよ?」
「ありがとうございます! 一生大事にします」
(いや、一生は魔法がもたねーよ)
と心の中でつっこみつつ、他の新人達にも気休め程度の強化魔法を掛けていく。
そうしている中頭上から大声が降ってきた。
「魔物達がきたぞーーーー」
その言葉で全員に緊張が走る。
(来ちまったか)
俺は長い髪を後ろで一纏めにし、前髪も目に掛からないようかき上げ紐で結ぶ。
(とりあえずは塀と門がある。 塀の上から衛兵達が弓で撃退してくれれば……)
いくら魔物達が数で攻めてきても早々破られる程アルセフィナの守りは脆くない。
魔物相手にここまでの有事はなかったが、過去にも人同士の戦争で守りきってきたと言う実績があった。
「はなてぇ!!」
塀の上で声がするやいなや弓の風切音が何十と重なり響き渡る!
今頃魔物達に向けて矢の雨が降っていることだろう。
「うぅ……」
震えている新人達をポンポンと励ますように叩きながら、塀の上に目を向けて様子を見守る。
衛兵達は一心不乱に矢を射っており、衛兵達自身へは何の攻撃も来ていないようだ。
(このままなら一方的に……)
少し安堵したその時だった。
巨大な爆発音と共に南門が吹き飛んだ!!
爆風と共に門の破片や岩が降り注ぎ、冒険者達も何人かが地面を転がる!
(何が!?)
思うまもなく耳のすぐ横を矢が掠める!
「!?」
破壊された門の土煙の中からいくつもの矢が飛来し数名の冒険者達が悲鳴を上げた!
「うわぁ!」
「うぐっ!」
「がぁ!」
まともに受けて倒れるもの、ぶつかり合うもの、倒れた冒険者に躓き倒れる者。
門の爆発から一瞬にして混乱に陥る冒険者達。
そしてそんな冒険者達になだれ込んだ魔物や魔獣が襲い掛かった!!
引き続きお読み下さり、ありがとうございます
スタックはありますのでしばらくはマメに更新いたします〜
楽しんで下さる皆様のお時間頂きありがとうございます~心から感謝!です




