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5話 炭鉱にて


ベリタテと名乗った奴を追って俺が冒険者ギルドに入ると、丁度ミラと話をしているようだった。

2人して真面目な顔をして話し込んでおり、あれが先程言っていた用事とやらなのだろうか?


(むぅ、仕方ねぇちょっと待つか)


と思っていると……俺に気づいたミラがヒョイヒョイと手招きをする。

どうやら呼ばれているようだ。


よく分からないままに寄っていくと、


「アノンさん、こちら王都からきた上級冒険者のベリタテさんとお付きのエルナトさん」


ミラは手を広げ二人を紹介してくれる。


(っていうかアイツ上級冒険者だったのかよ)


無論さっき戦ったので実力は疑うところはない。

俺を打ち倒しているが飄々とした表情で平然と、


「ベリタテだ」

「ベリタテ様お付きのエルナトと言う」


二人がそう名乗ったのでこちらも見習うしかない。


「アノンだ、よろしく」


俺達の挨拶が終わるのを見届けるとミラが口を開いた。


「さっそくだけど、アノン。 お二人にこの前のゴブリンの挙動を伝えてもらっても良い?」


「二人に?」


「そう。 お二人は王都からその調査に来た冒険者なのよ」


ミラの言葉に少し驚きつつ、


「王都って……ってことは結構な問題になってるのか?」


俺の言葉に反応したのはベリタテ。

軽くうなずきつつ、


「そうだ。 特にこの南方方面の魔物に顕著な挙動が見られることがわかった」


「そこで冒険者ギルド本部から直々の命を受けてベリタテ様自らいらしたってことだ」


エルナトが自慢気にそう告げて胸を張る。


「こちらの職員に軽く話は聞いた。 つい先日もゴブリンに会い挙動がおかしかったとか……」


「……ああ。 今までにない……」


俺はゴブリン達に知性がついた様な話を聞かせる。

一通り話を聞くと、


「ふん、馬鹿馬鹿しい。 あんな低俗なゴブリンどもに知性だと?」


バカにしたように鼻で笑うエルナト。

その横ではベリタテが手を顎につけて考え込んでいたが、


「……冒険者達の犠牲は?」


「ここ数ヶ月でざっと20人ほど……」


思い出したのか声を落としてミラが告げる。


「……たまたまにしては多いか」


ベリタテは首を振りながら、


「やはり直接見てみる必要がありそうだな」


そう告げるとエルナトに向き直り、


「エルナト、明日朝イチで出るぞ。 準備しておけ」


「分かりました、ベリタテ様」


そう言われたエルナトは恭しく頭を下げる。

それを見届けると、


「それではここの冒険者ギルドからも人を出してもらおうか? 俺達は地理に疎いのでな。 案内をしてもらいたい」


「それでしたら……」


ミラはそう言いながら俺の方を見る。


「……え? 俺?」


「アノンならうってつけでしょ?」


そう言ってミラがにこやかに微笑む。

俺がミラのお願いを断らない事を知っているからだ。


(くぅ~〜俺帰ってきたばかりなのに!)


そう思いつつも承諾する俺だった。



そうして次の日。

俺達は早朝町を出て少し離れた谷にある炭鉱に来ていた。


ここの炭鉱は廃棄されて長く魔獣が住み着いたりするため、定期的に冒険者ギルドから調査兼魔獣討伐で来ることになる。

そしてこれも実は初心者向けの依頼(クエスト)であった。


「わざわざ初心者のクエストで来たのはそういう訳か」


「ああ。 ゴブリン達はなぜか弱い魔獣とかが住み着く場所にいる」


「これもその挙動か」


「そうだ。 まるで初心者冒険者を狙っているようにな」


話しながら炭鉱の入り口に目を向ける。

周りに変わった様子はなくゴブリンどころか魔獣の姿も見えない。

風が軽く吹き土埃が上がるもののそれ以外の音は何も聞こえてこなかった。


入り口付近には砂が山盛りに積まれており、それ以外は拳大の岩がゴロゴロと転がっているのみだ。

炭鉱の入り口を離れた位置から見ていた俺達だが、


「何もいないようだが?」


エルナトの言葉に俺はメイスを、ベリタテは剣を静かに抜き放った。


「ベリタテ様?」


「構えろエルナト」


鋭く静かな一言。

それを受けたエルナトは素早く剣を抜き放った。


金属の擦れる音。

それが合図となったのか……高く積まれた砂の山、その影からゴブリンが数匹現れる。


「ほう。 確かに異変だな、ゴブリンどもが武装とは」


感心するかのようなベリタテの言葉通り、ゴブリン達はこん棒を手にするのみではなくある者は盾を、ある者は兜を被っている。


残虐性で攻撃しか頭にないゴブリンが武器はともかく身を守る防具を付けるなど今までならあり得ない事だった。


「行くぞ、ゴブリンども!  ……ぐぇ!」


叫ぶなり走り出したエルナトだがベリタテが首根っこを掴んで引き戻した。

潰れたカエルみたいな声を上げたエルナトは目を白黒させている。


「あんな足場の悪い場所にわざわざ行くなど自殺行為だぞ? 全く……」


ベリタテは呆れたようにそう告げやれやれと首を振る。

炭鉱の入り口付近。

ゴブリン達に向かうには岩が転がる場所を抜ける必要がある。

もし転んだりしてしまえば格好の餌食となるだろう。


「見た目では気づきにくい天然の罠ってやつだな」


「その通り。 その証拠にあいつらもこちらを認めたのに突っ込んで来ない。 これは間違いなく待ちという訳だ」


俺の言葉にベリタテも頷く。

会話をしつつも目は相手を見据えて警戒を一切解かない。


(さすが上級冒険者。 察知、考察、警戒……どれをとってもこっちの冒険者ギルドメンバーじゃ及ばない所ばかりだな)


そんな風に思っていると後ろから焦ったように、


「でもベリタテ様、近寄らなくてはゴブリンどもをいつまで経っても倒せないのでは?」


「そうだな……そろそろ仕掛けるか」


ベリタテはそう言うなり走り出す!


「ベリタテ様!」


焦ったエルナトの声を背に素早く岩場を走り去ると先頭のゴブリンに剣を突き立てる!


ゴブリンは醜い顔をさらに歪め奇声を上げながら地面に倒れた。

剣を抜くと緑色の血飛沫が地面を染める。


ベリタテもただ突っ立っていた訳ではない。

ゴブリン達の様子を窺いつつ駆け抜けるための足場を確認し道を作り出していた。


倒れたゴブリンを見て他のゴブリンが一斉にベリタテに襲いかかる!

振り上げたこん棒が振り下ろされる前に横薙ぎの一閃がゴブリン数匹を切り裂いた!


しかし……鈍い音と共にその閃光が止まる。

ベリタテの剣は唯一盾を持っていたゴブリンに止められていた。


醜悪に笑うゴブリンがこん棒を振り下ろす寸前!

俺のメイスがそいつの横顔にめり込む!


グチャリと言う不気味な音と共にゴブリンが吹っ飛び地面をゴロゴロと転がった。


それを見届ける間もなくベリタテが手首を返し次のゴブリンに斬りかかり、俺はその逆側にいるゴブリンへと襲い掛かった。


こん棒を振り上げようとしたその手首にメイスを叩きつけると思わずこん棒を取り落とす!

そのまま逆袈裟のようにすくい上げその顔面にメイスをめり込ませた!

柔らかくも硬いような手応えと共に何かが潰れたような感触が伝わった。


そいつを倒して振り返ると丁度ベリタテが剣を納める所だった。

辺りには倒れたゴブリンしか見当たらない。


「片付いたか」


「そっちもみてーだな」


メイスの血を拭い仕舞うと、


「しかしゴブリンがここまでとは……」


ベリタテは険しい顔つきで倒れたゴブリン達を見下ろす。


「何があったのでしょうか?」


岩場を抜けてきたエルナトもベリタテに付き添いながら首を傾げる。


とは言ってもここで考えても答えが出るわけではない。

その後、俺達は炭鉱内の調査を終えると一旦報告のためアルセフィナに戻る事にしたのだった。


五話目でございました


読んで頂きありがとうございます!


引き続き楽しんで頂けると幸いです〜


よろしくお願いいたします

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