4話 上級冒険者にて
「やっと見えてきたな!」
「仰る通りでございます、ベリタテ様」
会話をしながら山道を歩く二人は王都からやって来た冒険者だ。
王都の冒険者ギルドから依頼があり南の町アルセフィナに向かっていた。
アルセフィナまでの道は徒歩で一ヶ月は掛かる。
だからこそ二人も馬車で向かっていたのだが……。
「馬車の車輪が壊れるなんてついてないな」
「そうですね。 次からあの馬車は使わない様にしましょう」
中年男性の言葉に相槌をうちつつ返答を返す。
「ゴブリン達の挙動がおかしい……か。 調査して何か分かればいいが」
「そうですね」
「挙動が変わろうが強さは変わらないと思うが……」
「まったくその通りですね」
「まぁしかし実際犠牲がでていると言うなら……」
「……あ、ベリタテ様」
「どうした?」
ベリタテと呼ばれた冒険者は険しい顔のまま付き従う男性の指差す方向に顔を向ける。
「あれがか?」
「はい、アルセフィナの町でございます」
ベリタテは足を止めて一息ついた。
「エルナト」
「はい」
エルナトと呼ばれた若い男性は頭を下げながら、
「町に入ったら宿の手配を頼む」
その言葉に恭しく頭を下げる。
(さて? 噂の真偽は如何ほどか?)
ベリタテは心の中で呟くと足を踏み出したのだった。
アルセフィナの町についた2人はまず冒険者ギルドに向かった。
王都の冒険者ギルドからの依頼を伝え協力や情報共有をするためだ。
と、2人が冒険者ギルドの前まで来た時だった。
冒険者ギルドの道向こうより大きく湧き上がる歓声に、2人は何事かと足を止め振り返る。
「なんでしょうか? お祭り……では無さそうですね」
「訓練場だな。 こんな辺境な冒険者ギルドでは腕の立つやつが居るかどうか?」
そうは言いつつ興味をそそられたのかベリタテは訓練場の中を見回し……その目がピタリと止められた。
その目は1人の少女に向けられている。
金色の髪をなびかせ矢継ぎ早に数名の冒険者達を打ち倒すその姿にほぅ?と感心すると、
「少し寄る」
ベリタテはそう言うとエルナトの返事も聞かずズカズカと訓練場の方へと足を進める。
「あ、ベリタテ様!」
それを見てエルナトが慌てて後を追いかけた。
(まぁ、今日はこんなもんか?)
一人一人はそうでもなくともこれだけ数がいれば鍛練になる。
地面に大の字で寝転がる冒険者達を見ながら額の汗を拭い、金色の髪が汗で張り付くのを後ろに流していると、
「やるじゃないか」
知らない声が聞こえ振り返ると、全身黒ずくめの男性がこちらを値踏みするように見ていた。
(誰だ? 見ないやつだな……)
年は30半ばだろうか?
精悍な顔つきに鋭い目、整えた口髭を蓄えた男性だった。
少し細身だが細すぎるということはなくむしろ高い背丈と相まってスタイリッシュに見える。
改めてみてもやはり見たことはない男性だが、腰にさす短剣や汚れた外套から冒険者であろうと見当をつけた。
「何か?」
「いや、可愛い顔をしてなかなかの使い手のようだと思ってな」
可愛い……のは兎も角として上からの言い草に少しムッとしたが、
「そりゃどうも」
「性格もなかなかだな」
男はクックと笑いながら外套を脱ぎ地面に落とす。
その下にはこれまた黒で統一された薄手の鎧が現れた。
身体にフィットしているのもあるがしっかりと鍛えられている体躯なのが見て取れる。
そのままゆっくりと俺に向き直ると、
「訓練場と言うことは参加しても良いのだろう?」
(なんだよ、単に参加希望か)
自信に満ちた顔。
俺を試したいと言うのが伝わって来る。
(軽く見られたもんだぜ)
そういう時は実力を見せてやれば良い。
俺は申し出を受けることにした。
「そうこなくては……」
男は下に落ちていた木剣を拾うとこちらに向けて、
「それではお相手願おう。 俺の名はベリタテだ」
「アノンだ」
互いに名乗り礼をする。
と次の瞬間には鋭い突きが繰り出された!
踏み込みが段違いに早く向き合ってなければ躱せたかも分からない。
先程相手にしたムジカとはスピードがまるで違った!
矢のような突きを冷静に打ち払いつつ合間に剣を狙って叩きつける!
剣は一瞬沈み込むもののそれでも体勢を崩すことなく次々と素早い突きが繰り出された。
(こいつ!?)
ムジカ同様流して前に進もうとするも横に回り込み懐に入らせない。
それどころか回り込まれる形となりこちらの方が分が悪くなる。
(それなら……)
一旦体勢を立て直そうと下がる……追いすがるように詰めて来た。
更に追うように剣も突き出される。
(だよなっ!)
下がる=距離を取りたがる……と思うのが筋。
だからきっと追ってくると思った。
しかしそれこそが俺の狙いだ!
剣を躱しつつ下がった足で地面を蹴り上げ前に出る!
これで懐だぜ!
(とった!)
ガラ空き……腹に向かって素早く棒を突き出す!
棒は吸い込まれるようにベリタテの腹に……は吸い込まれずひらりと躱したベリタテのすぐ横を突き抜けた!
(そんな体勢で身体をひねるだと!?)
更に捻ることで剣を持つ手が引き寄せられ……逆に今度は俺が隙だらけとなる。
(しまった!)
と思うまもなく……スッと出された足に躓きつんのめった!
そのまま顔面から地面に突っ込み……そのままの体勢で動きを止めた俺に、
「田舎の冒険者にしてはやるが……まだまだだな」
バッと顔を起こしペッペッと口の中の土を払い振り返ると、平然とした表情で俺を見下ろす奴の顔が見えた。
(く、屈辱!)
「くそぅ! もう1回だ! 今度こそ俺が……」
リベンジを叫ぶ俺に手のひらを向けると、
「悪いが他にも用がある。 もう少し強くなったら相手をしてやろう」
そう言ってくるりと背を向けた。
「あ、おい! 待て! 逃げるのか!? お前も土を味わえ!!」
叫ぶ俺をそのままに奴はそのまま冒険者ギルドへと向かって行ったのだった。
4話です!
読んで頂いた方々、ありがとうございました。
引き続き頑張りますね!




