36話 深夜にて
スピカが合流して次の日の朝。
『作戦会議をしましょう』そうスピカに言われて、俺達は借りている宿の一室に集まっていた。
「な、なんかいきなり賑やかになったっすね」
クルサの視線は俺の後ろにいる騎士達に目を向ける。
「クルサさんも先日以来ですね。 今回も同行することになりました、宜しくお願いいたしますね」
「は、はいっす」
スピカの丁寧な挨拶に珍しく緊張して固まっている。
「宜しくお願いいたします。 シャムと申します、以後よしなに」
キラーンとでも光りそうな白い歯を見せてキザっぽく決めるシャム。
お前……そんな一面があったんだな
「……アル」
……俺の後ろから顔だけだして挨拶する小動物
「スピカがいれば安泰だな!!」
トノニ王子はもちろん知っているようだ。
「王子もお変わりなく」
本当にな!
普通ならこんな旅出れば痩せるだろ!
「お前……また何か俺様に失礼な事を思ったりしてないか?」
「気のせいだ」
トノニ王子にきっぱり言い切った!
別に失礼じゃねーよな?
デブとは言ってねーし
「今回こちらの5人の騎士も小隊として参加いたします。 残りの者たちは弱体化したアルデバランの防衛隊として残します」
「カフだ」
「シェダル」
「ツィーです」
「ルクバーと言います」
「セギンと言う」
それぞれ挨拶するが……うん、全員兜で顔が隠れて誰が誰か全然分からん!
背格好も鎧も全て同じ様な感じだしな
「次はもう王都アルギエバに?」
「いいえ、まだ王都までは距離があります。 それに道中もミュー王国程安全ではありませんから」
スピカは地図をバサッと開くと指で指し示しつつ、
「ここがアルニタク大橋……ここから王都まではひたすら東を行きますが」
ある一点で指をとめると、
「ここは周りがひらけており四方から敵に襲われる可能性が高いかと、王都も近いですし……なのでその前に」
指を戻すと2方向を指でなぞる。
「北は山が厳しいですが立地上、壁を背にできるので不意打ちなどには対応出来ます、それに山間なら無事な村などもあるかもしれません」
もう一方をなぞると、
「南はアルニタクで渡ったアケルナル川沿いに進むルートです。 こちらも川沿いなので挟撃されにくいです。 村は……期待薄いですが川に逃げた人も居るかもしれません」
スピカの提案な皆が頭を捻る中、
「真っ直ぐだな。 回り込むとか疲れるだけだ」
「トノニ王子? ですが魔物達に囲まれる危険性が……」
お菓子を食いながら聞いていたトノニは汚れた手で地図をなぞると、
「こう行くんだよ! メンドイな」
「ですがそこは道では……」
「別に道行く必要ないだろ? 要は襲われなきゃ良い、もしくは襲われても囲まれないなら問題ないだろ」
改めてトノニ王子の道を見る。
スピカの直進ルートから若干南に外れて見通しのよいエリアの縁側を進む……片方は崖か
確かに囲まれる心配は無いし見通しが良いってことはこっちからも発見しやすい
敵が来る前に体勢もとれそうだな
「良いんじゃねーか?」
「お? お前もそう思うか? 馬鹿みたいな奴だが珍しく今回は俺様と合ったな」
「お前は一言と脂肪が邪魔なんだよ!」
「脂肪は今関係ないだろうが!」
睨み合う俺とトノニ王子を放置しスピカは、
「確かに……どうせ馬車は使えませんし道ではなくても……」
ブツブツ言っていたが、
「さすが王子です。 それが良さそうです!」
スピカの声に他のメンバーも頷く。
「では準備を怠らない様にして下さいね。 出発は明日です」
(うーん、眠れないな)
明日出発という興奮からか……深夜にも関わらず布団を抜け出す。
ひんやりした空気が肌を差し更に目を覚ます。
暗闇に目が慣れ俺は部屋から滑るように外に出た。
(まぁ、ちょっと外の空気吸って……ん?)
どこの部屋だろうか?
部屋の一室から灯りが漏れているのが見えた。
(こんな夜に? 消し忘れか?)
静かにその部屋に近づくと扉をそっと開けてみる。
すると……
(トノニ?)
横幅の広い体型が悲鳴を上げる椅子に座り机に向かって何かしている。
(何してやがんだ?)
机の上をみようと少し扉を押したのが間違いだった。
キィーー
(あ! 扉が……)
「誰だ!」
軋む音にトノニ王子が慌てて振り返る。
こうなっちゃ仕方ねーか
「わりぃ、俺だ」
「貴様……こんな時間に何で起きてる?」
「たまたまだ。 そうしたら明かりが見えてな……」
嘘をつく必要はないし正直にそう告げる。
トノニ王子はしばらく考えて居たようだが、
「まぁ、いい。 気になるだろうからな。 入れ」
「あ、ああ」
珍しいな?
てっきりさっさと部屋に帰れ!とか言うと思ったが
トノニ王子が椅子に座ってるのでどうしたらと思っていると、
「そこに座れ」
……えっと?
さすがにベッドは……いくらなんでも俺女なんだけど?
すぐ話しして終わりじゃねーの?
「何してるか聞きたいんだろ?」
正直……そうでもないが……
そもそも、たまたま目に入っただけだしな
「帝王学だ」
「は?」
「帝王学だよ。 勉強してた」
「ああ、そっかお前王子だしな」
次期国王となるには色々学ぶ事もあるんだろう……と思っていたのだが、
「俺様は……王にはなれない」
「は? だってお前王子だろ? だったらーー」
「次期国王は弟のサラ王子だ。 俺様は外されている」
??
意味がわからない
王になるために勉強してたんじゃねーのか?
俺の考えが分かったのか、
帝王学の教本に手を置きながら俺と視線を合わせると、
「王にはなれない。 だけど俺様は未練がましく追い縋ってるんだ」
笑えるだろ?……トノニ王子はそう言うと、
「我儘、好き放題に育てられた俺はこの性格だ。 気がつけば城中で厄介者扱い、そして弟のサラを次期国王に推す声ばかりだ」
「お前それ分かってんなら……」
「性格を直せって? もうこの状態だぞ? 性格なんてそうそう直せるものじゃない。 それにーー」
トノニ王子は俯くと、
「イメージだよ。 今更治っても皆が俺様に抱いたイメージは払拭されない」
「んなことねーだろ」
「……例えば、お前に対して周りの奴らが抱くイメージ……お前がおしとやかになったとして、そうそう変わると思うか?」
俺の今の姿から……んー?
例えばしおらしくお淑やかに?
この俺が!?
想像もつかねーぜ
「無理だな」
「そういう事だ」
トノニ王子は自嘲する様に笑うと、
「それでも諦められず色々学んでいた。 そんな中、お前が父上に魔族討伐を頼んだと聞いたんだ」
トノニは自分の掌を見ながら、
「王になれないなら、せめて父上の憂いだけでも……いや、ただ俺様が褒められたいだけかもしれないが」
拳をぎゅっと握ると、
「俺様も何か成し遂げたいと思った。 だからついてきたんだ」
マジかよ……こいつ思いつきとかでついてきたんじゃなかったのか!
しかもオヤジのためとか、褒められたいとか……なかなかじゃねーかよ!
「お前なかなかいい奴だったんだな!」
俺は誤解してたぜ!
トノニ王子のことを
トノニに近寄りその両手を握ると、
「俺も応援してやるよ! そんな粋な心持ってるなら最初から言えよな!!」
いきなりの事にボカンとしていたトノニに、
「一緒に頑張ろうぜ! どうせなら王を目指してオヤジに認めてもらったらどうだ!!」
両手を握りトノニの顔を覗き込んでいたのだが……
ん? こいつ聴いてんのか?
「トノニ?」
顔に近づき目をのぞき込む……トノニの目には金髪で小柄な俺が映っている。
んん? なんだ?
急にトノニがゆでダコみたいに真っ赤に?
「おい、お前顔赤いぞ? 熱でも出たんじゃねーのか?」
そう言って額を触ろうとした次の瞬間!
「さ、触るな!」
いきなり立ち上がったトノニは、
「もう部屋に帰れ!」
「えぇ? お前だって熱が……」
相変わらず顔を赤くして、
「大体、こんな真夜中に女が男の部屋に来るとか常識ってものがないのか!?」
「んなぁ!? お前が入れって言ったくせに……」
「うるさい! さっさと出ていけ!!」
まくしたてられるように部屋から追い出される俺。
(意味が分からん! もーいいや! いい加減寝るか)
首を傾げつつ自分の部屋に戻る事にした。
その夜、アノンはぐっすり眠れたのだが、トノニは一晩中眠れなかったのだった。
ご一読ありがとうございます!
こういう展開は得意ではないですが(得意なものもよく分かりませんが)、楽しんで頂けたら幸いです。
言い回しなど難しい場合は仰って下さいね。




