35話 戦いの後にて
「おい! しっかりしろ!!」
「う、あ……」
俺の呼びかけは届かず握っていた手は力なく落ちる。
その者の目はもはや何も映してはいなかった。
(くそっ! 駄目だった……)
俺は立ち上がると生き残りを探して辺りに目を走らせる。
「しっかりするっすよ」
クルサが兵士の一人に肩を貸しながらアルデバランに向かって行く。
シャムとアルはアルデバランに隣接して作られた医療テントで手伝っているだろう。
(!)
動く手を見つけて慌てて駆け寄る。
「しっかりしろ!!」
「死に……た……」
そこまで口を動かした兵士はそのまま息絶えた。
(ちくしょう! 駄目か!)
息のある者を探し、治療テントまで連れて行く……だが見つけた怪我人の幾人はその安心感からか息を引き取ってしまう。
「おい! 息はあるな? 待ってろよ」
新たに見つけた怪我人に『治癒』を掛ける……だが、やはり遅い!
(早く……)
傷口が徐々に閉じていくがその間にも血は流れ続ける。
それでもこの兵士は何とか生き残ってくれた、
「アノンさん、その方は?」
「ああ、大丈夫。 連れて行ってくれ」
「はいっす」
回復魔法で危機を脱した兵士をクルサが連れて行く。
アルデバランから教会の方や冒険者の僧侶も参加してくれて回復して回っているが圧倒的に手が足りない。
危機を脱したら他の人が連れて行くと分担して救助に当たっていた。
カランと足に何かが当たり目を向けるとそれは農耕具のクワだった。
きっとアンデッドが持っていたものだろう。
(……魔族。 ただ人が嫌いとかじゃない、命の冒涜、弄びやがって……)
すでにアンデッド達は砂と化している……俺は短く祈りを捧げながら次の生き残りを探すのだった。
アルニタク大橋の戦いから2日後
馬車停留所
「おい! どういう事だよ! 馬車が出せないって!!」
顔を赤くして御者に詰めるのは毎度の事で我らがトノニ王子
全く……コイツほんと何しに来たんだ?
あ……旅費担当だったわ
「だ、だから、無理なんですよ! 兵士達もいないし魔物達がいる場所へ出すなんて!」
「まさかこの距離を歩いて行けっていうのか! この俺様に!!」
「そう言われましても……」
「金ならある! ほら! だから……」
「命あってのものだねですので……」
逃げるように御者は去っていった。
「どいつもこいつも……」
「仕方ねーだろ、無理は言えねーよ」
「お前は俺様に『怪我人の治療を手伝え!』とか無理矢理引っ張っていっただろうが!」
その無理はいいだろ……命かかってねーし
とゆーか、お前は今回何もしてないからな?
まぁ邪魔だったからだけど
「お前、今なにか失礼なことを考えてただろ?」
キッと睨みつけるトノニ王子に、
「そんなことねーよ、ただ『邪魔だったなぁ』って」
「だからそれが失礼って言ってんだよ! ってなんかデジャヴ!」
「おぉ、見事な一人ツッコミだな」
「お前のせいだろ!」
トノニ王子は付き合ってられないと首を振ると、
「良いか? 俺様は歩きたくない、馬車の代わりを探しておけよ?」
それだけ言って何処かに行ってしまった。
(はぁ、全く! 誰のせいだよアイツ連れてくる羽目になったのは!)
歩き出そうとして……ハタと足を止めると、
原因……俺だったわ
ちょいちょい
(ん?)
見るとアルが裾を引っ張っている。
「どうしたアル?」
「呼んでる、冒険者ギルド」
それだけ言って俺の後ろにピタリと付く。
サッと動くも……着いてくる。
なぜ縦一列?
不思議に思いながらギルドに向かうのだった。
「お? 来たか」
冒険者ギルドで俺を出迎えたのはニコニコ顔のメンカルとその対面に座るスピカだ。
「なんか用事あるって?」
「まぁまぁ、先ずはそこに座ってからだな」
メンカルに勧められた席に腰を下ろすと、
「先ずは改めてだな……あの後もバタバタ尽力したくれてたし」
メンカルはガシッと頭を下げると、
「アルデバランを救ってくれたこと礼を言う」
「おいおい、やめてくれよ」
俺は慌ててそれを制する。
「いや、やめない。 アノン、お前がいなければどれだけの人が犠牲になっていたか」
「それを言うなら俺だってだぜ? 俺も同じ気持ちで戦っていただけだ。 礼を言われる筋合いはねぇよ」
メンカルは顔を上げジッと俺を見つめていたが、ニカッ!と笑顔になると、
「そうか、それなら礼は言わん、お互いに守るものを守ったと言う事だ」
「ああ! そういうことだぜ」
コイツ俺の気持ち分かってんじゃん!
俺もメンカルにニヤリとしてお互いにニヤニヤしてると、
「コホン! それでは今度は私の番でよろしいでしょうか?」
「お、そうだったな」
メンカルは頭をかきつつ少し下がると、
「では私から。 まずはご健勝で何よりですアノン」
「まぁ元気だな! 俺はこう見えて風邪すら引いたことがないからな!」
「何とかは風邪を引かないってやつだな!」
メンカルの茶々にフン!とすると、
「元気が一番に決まってんだろ! ……馬鹿でもないからな?」
「ま、まぁ元気そうでなにより」
困惑したスピカだが再度咳払いすると、
「此度は王より直々の命を下されたと……」
「そうだぜ。 まぁ途中でここの戦いになったけどな」
「ええ。 今回私がここに来たのはアルデバラン救済だけではありません」
「あ? そうなのか?」
メンカルも知らない話なのか?
彼の驚きを目にしてそう感じる。
「勿論それもありますよ? ですが私も王より命を受けたのです」
「スピカも?」
「はい、私もアノンに同行して魔族討伐を支える様にと」
(王様……)
厳格な顔の裏で本当に色々してくれている
本当に俺達のひいては民のことを思っているのだろう
「と、言うことですので……」
スピカは背筋を伸ばして俺を見ると、
「これから宜しくお願いいたしますね、アノンさん」
ちょっと書くペースが落ちたので投稿をちょっと減らしてます。
ごめんなさい!
まだ途切れたりはありませんので引き続き読んで下さると嬉しいです。
よろしくお願いいたします〜。




