29話 合流にて
翌日、冒険者ギルドのウレンの部屋に来たのだが……
「えっと? アノン、一体どういう事なのかな?」
ウレンが戸惑ったような困ったような何とも言えない表情を浮かべた。
その視線は俺の後ろに向けられている。
そりゃそーだよな?
どうしてこうなったか俺だって知りてーよ
「俺様はミュー王国の王子、トノニ様だ! この不埒者の旅について行くことになった!」
両手を腰に当てワハハハと笑う王子。
横にいるウレンの三倍ぐらいの体型だ。
あれもう着ぐるみとかじゃねーよな?
ウレンはこめかみを押さえて少し考えていたが、
「トノニ王子ですよね? こちらの席にどうぞ」
ウレンが笑顔で近くにある椅子を勧める。
「ん、苦しゅうないぞ! やはり俺様への扱いはこうてなく……ムニャムニャ……グァァァーー、グォォォォーー」
座った瞬間寝た!?
これって魔法か!
……てか、いびきデケェ! うるせぇ!
「さ、て、と……アノン?」
くるりとこちらを見たウレンの顔は……まぁアレだ
マイアの三倍増しでヤバかった
「ええと、これには深い訳があってだな?」
「あのねぇ? 今から魔族を倒しに行くんだよね? ね?」
「えっと……ハイ、ソノオトオリデゴザイマス」
今のウレンには何も通じそうに無い!
俺の何かが警鐘を鳴らし続けている
「仲間は必要だよ? うちからも出すから来てもらったわけだし……でも」
チラリとトノニ王子を見るとこの世の終わりみたいなため息をついて、
「……どーすんの? アレ」
遂にウレンからもアレ呼ばわりされる王子……まぁそれは仕方ない!
「どうもこうも……無理矢理着いてきてるから俺もどうしようもなくてな」
ギルドの計らいで借りていた宿屋……窓から抜け出そうとしたら兵士達が見張りに使われていてアッサリ見つかった。
そこからずーーっと後をついて来ているのだ。
「危険だといくら言っても聞かないし、挙句の果てには……暴挙を……」
俺は「くっ!」と悔しそうに唇を噛む。
そんな俺の姿にウレンは慌てて、
「ど、どうしたの? 何かされたの?」
「……、……るって」
「え? 何? 聞き取れなかったよ」
「旅費、全部出してくれるって」
「……………………」
たっぷり一分程あった。
ウレンは一つ深呼吸をすると、
「確か冒険者ギルドから旅費渡したよね? 渡してなかったかな〜〜?」
にこやかな笑顔を見せる……この表情を笑顔と言っていいか分からんが。
「渡してもらってた」
「ああ、そうだよね? 良かったぁ、私が忘れた訳じゃないんだ!」
……知ってて言ってる笑顔が怖い
誰が助けてくれ! 今ならマイアでも特別許可してやる!
「旅費は?」
「使ったとゆーか、まぁこれに変わったとゆーか」
腰のメイスにチラリと目を落とす。
「…………はぁ」
ウレンは再度深々とため息を付くと、
「王子なんだからね? 分かってると思うけど……怪我とかさせないように、きちんとアノンが面倒をみてね」
諦めたようにウレンはそう言うと、
「クルサ、シャム、アル」
部屋の外に声を掛けると、三人の男女が入って来た。
見知った顔のクルサは俺を見ると片手を上げ、
「お久しぶりっす、アノンさん」
「おーー元気してたか?」
「元気っす! けど、昨日エルクルドに戻って来たところっすよ」
やれやれと肩をすくめるクルサに、
「悪いね。 本当ならもっとゆっくりさせたいんだけど、人員不足でなかなか……ね?」
ウレンの一言に、クルサは慌てて両手を突き出し首をブンブン振って答える。
「いや、ウレン様のせいではないっすよ! そ、それで今日はどうしたんすか?」
話題を変えようと慌てるクルサ。
「君達三人には、ここにいるアノンの護衛兼パーティーとしてレグルス王国に行ってほしい」
「またレグルス王国っすか?」
「そうだ、そこに居るだろう兵士や冒険者達の支援を受けて、力を合わせて魔族を倒して欲しい」
ウレンの言葉にクルサはガッツポーズで叫ぶと、
「よっしゃー! 今度は魔族といえ負けないっすよ!」
前の戦いではやられっぱなしだったからなあ……
そんなクルサを諫ましめる様に一緒に入室してきた男性の声が苦言を告げる。
「気合いは良いが調子に乗るなよ? クルサ」
「分かってるっすよ!」
クルサは弓を背負った男性にそう答える。
クルサの隣に立つ男性はクルサより背が高くひょろ型、緑かかった茶髪をしており、後ろ髪を軽く刈り上げている。
背には大きな弓と矢筒を背負っており、冒険者ギルドから考えると探索者だろうと見当がついた。
そしてもう一人……ウレンと同じくらいの身長だろうか?
そんな姿の少女が俺の前までちょこちょこ歩いてくると、
「アル。 女の子同士。 よろしく」
小さな声出そう告げる。
珍しく白い髪で腰の辺りまで真っ直ぐ伸びている。
顔は可愛らしいが何処となく淋しげな悲壮感があり暗い印象だった。
ローブ姿と背中の大きな杖から魔術師と分かった。
「クルサは知ってるよね。 後、背の高い男性がレンジャーのシャム。 小さな女の子が魔術師のアル」
ウレンの紹介に初対面の二人が俺に頭を下げる。
俺も頭を下げつつ、
「セイバーのアノンだ。 よろしく頼むぜ!」
俺の言葉遣いにシャムは目を丸くして固まり、アルはコクンと頷いた。
「じゃあ早速明日の朝一でエルクルドを発って、まずは国境沿いにあるアルデバランを目指して」
「アルデバラン?」
疑問符のついた俺の言葉に、
「ミュー王国とレグルス王国を結ぶアルニタク大橋、その袂にある町っす」
「国境沿いにあり要塞の役も兼ねている為、アルデバランは城塞都市として有名です」
クルサとシャムが教えてくれる。
「今日はしっかり準備して明日からに備えてね。 みんな! 気をつけていくんだよ?」
ウレンの言葉に俺達は全員力強く頷いたのだった。
「あ、アノンはちゃんと王子持ってってね」
「……分かってるよ!」
ご一読ありがとうございました。
また、前話にて誤字の報告ありがとうございました!
助かりました!
見落とし申し訳ございません、気をつけて参りますので引き続き応援していただけたら嬉しいです!




