26話 武器屋にて
冒険者ギルドを出た俺は再び街を歩いていた。
(「2時間後にお城に行くようにね、特別に呼ばれてるから」……か)
ウレンの言葉を思い出しながら2時間の暇つぶしを兼ねてブラブラしていると……何処からか食欲をそそるいい匂いが立ち込めてきた。
(そっか、もう昼前か……お?あれ美味そうだな)
「おっちゃん、その串焼き一つくれ」
「あいよ!」
美味しそうな露店の串焼きを見つけそれを頬張りながら歩く。
焼き加減絶妙の肉とキノコと野菜が交互に刺さっており、ピリ辛の香辛料が甘いタレを引き立てる。
肉も柔らかくジューシーで串から抜けそうなほど柔らかい。
(美味いなこれ、今度ミラに作ってもらえないかな?)
など味わいながら歩いていた俺の目が一軒の店で止まった。
(これは……武器屋か)
店先には樽に乱雑に詰め込まれたなまくら。
看板には剣と盾の絵が描かれている。
(そーいや俺のメイスも結構年季入ってるよなぁ)
散策ついでと俺は店のドアを開けたのだった。
どう見ても流行ってねぇ……
薄暗い店内、アチコチ乱雑に並べられた武具。
重そうな剣もあれば俺の身長より長い槍、古めかしいハンマーなどもそこかしこに積まれている。
客も一人も居なかった。
(ん〜~まぁ、入っちまったし折角だから見てくか)
そう決めるとキョロキョロ店内を探す。
俺が持てるのは刃のない武器に限定されるからだ。
(剣……斧……ナイフ……槍……)
棚を順に見ていき、
「お? ここら辺がメイスとかか?」
俺のものより戦闘に特化した戦棍、形状が凝った形式的なもの、トゲトゲのついた棘棍……数は多くないがズシッとした重さもあり造りとしては頑丈そうだ。
「嬢ちゃんにそれは重すぎやせんか?」
急に低い男性の声が聞こえ……
「おわっ!?」
急に声を掛けられ手にしたメイスを落としかける。
「び、びっくりしたぜ! 居るなら居るって言いやがれ!」
「ワシの店なんじゃから居て当たり前じゃろうが?」
文句を言いながら言葉の主に視線を向ける。
薄暗いカウンターの向こう側から白髭を蓄えたずんぐりむっくりした老人の男性がロッキングチェアに座って何やら雑誌を見ていた。
(あれ? 今こいつ俺の方を見ずに持っているメイスを……?)
不思議に思い首を傾げつつも、
「つーか居たんなら『いらっしゃいませ』ぐらい言えよ」
「武器を求める奴を出迎えてやる気持ちは持ち合わせておらん」
雑誌から目を上げずそう答える。
(武器屋やってんのに武器を求める奴嫌ってんのか?)
いまいちよく分からない……が、
(店主がいるなら聞いてみるのが早ぇか)
「なぁ? さっきのが俺に重すぎるって言うなら俺に合うのを出してくれよ」
「……」
今度は無視かよ!
「おいって!」
「聞こえとるわい。 お前さん……嬢ちゃんの様な姿だが普通じゃないのう」
「普通じゃないってなんだ?」
「見た目通りじゃないって事だ。 力はそれなりにあるか……それに信力もか」
「なっ!?」
こいつ……雑誌しか見てねぇくせに、なんでそんな事分かんだよ
「お前さんに合うのは一つあるが……値が張るぞ?」
そこでようやく雑誌から顔を上げこちらに向き直る。
それを見て俺は息を呑んだ。
「じーさん、アンタ目が……」
老人の顔には大きな横一文字の傷跡があった。
それは両目を潰す形で付いており、目は完全に閉じられていた。
「見えてないのに雑誌見てたのか?」
「見てるふりだけで、初めての客には目が見えない事など気付かれないからな。 それに……」
じーさんは椅子から立ち上がると、
「見えないからこそ見えるものも多いからな…………少しそこで待ってろ」
そう言って店の奥へと消えていく。
その姿は本当に目が見えない事を思わせない動作だった。
そして暫くして奥から一振りのメイスを持ってきた。
「これだ」
ゴトリとカウンターの上に置かれたメイス。
黒く金属質……長さは2尺程だろうか
俺の身長を考えると丁度よい長さに思える
先端は普通に殴打用に四角形……金床の形状だが、不思議な丸い模様がいくつか書かれている。
「これか?」
手にしてみる……悪くない
実際軽く振ってみる。
重さも重すぎず軽すぎず
やはり長さも良さそうだな
「お前さん敵が硬い奴に苦戦したことは?」
「あるぜ? 殺人熊の皮とか膝じゃねーとダメージ通らなかったしな」
「そうだな。 魔物や魔獣の中にはもっと硬い奴らもいる。 そんな時には……」
俺の手にしたメイスの持ち手を指して、
「柄の下にある部分……回してみろ」
言われた通りすると……
「なんだこれ! 凄ぇ!!」
四角形をしていたメイスの頭部分、そこに描かれていた丸い模様……その部分が盛り上がり三角錐の棘と化した!
すげーカッコイイし、これなら硬いやつもイチコロだぜ!!
めちゃくちゃ惹かれる!
「それならば硬い敵にも通じよう」
……これ欲しい
俺はそこまで武具とかにこだわるタイプじゃないと思っていたが、どうしてもそれを欲しいと思ってしまった。
まるでじーさん魔法だ
「これ買った!」
「大丈夫なのか? 値が張ると言ったぞ?」
ふふん! 俺にはこれがあるのさ!
俺は懐から金のドッグタグを見せると……と言っても見えてないから口で、
「金のドッグタグ! これならどーだ!」
少し間があり、
「……久しぶりだな、それは。 やはりお主普通じゃないな」
そう言うと紙に何かを走り書きし、
「それがあるならこの値段で売ってやろう」
紙を見て……嘘だろ? 金のドッグタグ使って俺の今の全財産だと!?
しかし俺の口は勝手に言葉を発していた。
「買った!」
店を出た俺は満足感と消失感に襲われる。
エヘヘ……カッコイイぜ、このメイス
ホクホク顔で……財布の中身を見る。
うん! どうしょう! 一銭もねーや!
「まぁ、なんとかなるだろ!」
俺はそう呟いて城へと向かったのだった。
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