23話 開演にて
王都エルクルドを中心とした大国ミュー。
そこから東にある大河を挟んだ大陸をレグルス王国と呼ばれる武力国家が治めていた。
元々は独自の文化を持っていたが周辺国から入ってきた文化により王都アルギエバなどは他国と同じ様式に変わってきていた。
新旧の文化を取り込み独自に発展した国ではあったが、今やその王都は火に包まれていた。
王都アルギエバ 王の間
いつもは物静かで広がりのある王の間もこの時ばかりは騒がしく広間が狭く思えるほど兵士達が入り乱れている。
城の外からは悲鳴や怒号が聞こえ近衛兵達の顔も緊迫した状態が見て取れた。
「王! もうこの城は持ちません! 早くお逃げ下さい!!」
王の間に飛び込んできた血だらけの近衛兵の一人が倒れ込みながら大声で叫ぶ。
騒がしかった王の間が一瞬静かになり皆の視線が玉座に集まった。
「……逃げはせん。 この国を捨てて何処へいけというのだ?」
玉座に座す王はハッキリと言い切る。
「王……」
側に控えて辛そうな顔をしていた宰相はキッと顔を上げると、
「いけません! 王が逃げれば再興も可能です」
「……我が国は古来より武力の国と謳われてきた。 そんな国の王が逃げるだと?」
王は玉座より立ち上がると側に置いてある剣を手にする。
「敵は魔族とは言えたった1体。 その1体に国が滅ぼされるなど……」
王が話す言葉に交じり……音楽が流れて来た。
「なんだこの曲は!?」
「一体どこから?」
近衛兵達がざわめく。
メロディーとしては素晴らしいが聴けば心が乱れ不安になる様なそんな曲だった。
「静かにせぬか! たかが音楽ではないか!」
一喝した王の言葉を否定するように……上書きするかの様にその声が響き渡った。
「たかが音楽ですか……少なくとも貴方達よりは価値があると思いますわ」
それはまるで身体に纏わりつくような、もしくは地の底に引きずり込まれるような……そんな妖艶な女性の声だった。
「何者だ!!」
王の間に姿を現したのはまるで絵画から抜け出てきたような絶世の美女。
スラリとした体型に足首まである服を着ており、腰辺りから入ったスリットからは白く美しい脚が見えている。
ウェーブ掛かった髪を上品にすくい上げ一歩、二歩と王の間に足を踏み入れる。
血まみれの近衛兵が声を絞り出すように、
「魔族……」
その一言に王の間が凍りつく。
この美女が魔族……王都をここまで崩壊に追い込んだ張本人。
「貴様!」
「おのれ!」
魔族に飛び掛かろうとした近衛兵達だが魔族の後ろからなだれ込んできた不死者ノ軍達によって遮られた。
「なんだ、このアンデッドは!」
なだれ込んだ骸骨兵士達により王の間の至る所で戦闘が始まった。
近衛兵達と骸骨兵士達の剣が交差し火花が散る。
崩れ落ちる骸骨兵士を踏みつけ前に出る兵士もいれば、断末魔を上げて胸を貫かれる近衛兵もいた。
正にそんな阿鼻叫喚の中、魔族に肉薄するも今一歩届かない。
「魔術師隊!!」
業を煮やした近衛兵隊長の号令で王の側にいる魔術師達が一斉に魔法を放つ!
王の守りを固める魔術師だけあってその魔法や威力は超一流であった。
巨大な雷が、氷の塊が、炎の渦が、風の刃が……一つとなって放たれた!
魔法なら遮られず魔族に直接攻撃出来る!
誰もがそう思った……その時、
「『G.P』」
訪れたのは静寂……無音。
その場だけ切り取られたかのように音と共に大量の魔法が……掻き消えた。
「なん……だと」
目を見開く近衛兵隊長だったが我に返ると再度魔術師達に指示を出す。
しかし結果は同じであった。
怒りで顔を赤くした近衛兵隊長は部下達と剣を抜き放つと魔族に襲いかかるが……やはり骸骨兵士達に遮られてしまう。
そうして気付けば王の間に居るのは王のみとなってしまっていた。
「魔族めが……良くも我が国、我が民を……!」
そう言って剣を構える王に向かって、
「煩くて耳障りな声だこと」
魔族は顔の前で手を振り邪魔だとでも言うような素振りを見せると、
「貴方達に相応しい『葬送曲』を奏でてあげるわ」
その言葉を合図に女性の背後に浮かんだ楽器が現れる。
そこからは声にならない悲鳴が奏でられるホールと化したのだった。
それから3週間後。
魔族によって王都アルギエバが滅ぼされたとの情報が各国に伝わったのだった。
ここから少し世界が広がります。
新章みたいな感じでしょうか?
引き続き読んで応援してくれると嬉しいです。
ありがとうございます。




