21話 戦闘後にて
回復魔法を掛けると丁度目を覚ましたクルサが起き上がった。
激しくぶつけたであろう背中を押さえてしかめっ面をすると、
「ってて……」
「大丈夫か? クルサ」
「あ〜~ちょっと節々が痛いけど、全然平気っすよ! 受け止めたレサトさんは大丈夫だったっすか?」
「ああ、もう起きてそこにいるぜ?」
「よかったっす。 せめてもう少しレサトさんが軽ければここまで痛くは……」
「ク〜ル〜サ〜く〜ん?」
クルサの真後ろにいたレサトが笑顔で肩を軽く叩いた。
クルサからは見えないが……え、笑顔だけどめちゃ怖ぇ!
「あ、や! 何でもないっす!」
クルサは引き攣った顔になると振り返りもせず慌ててレサトから距離を取る。
まったく……まぁ元気っぽいし大丈夫だな
他はどうかと辺りを見回す。
(えっと……ベリタテも完治じゃないが大丈夫、エルナトは気絶してただけだしな)
広間を見渡していると、端のほうにいるスピカの姿が目に入った。
悲痛な表情で横たえられた2人の騎士に布を被せている。
……くそっ、2人は駄目だったか
回復魔法にも限度がある
死んでしまえばどうしょうもない
俺はスピカに歩み寄ると、
「スピカ……」
「お気にせず、彼らもこうなる事も覚悟の上の参加ですから」
俯いていたスピカだったが、俺の声に顔を上げると気丈にも少し微笑んでみせる。
俺に気を遣いやがって……辛いのは俺じゃなくてお前だろうに
目も少し潤んでんじゃねーかよ
スピカは俺の考えを振り払う様に声を張り上げると、
「これより撤収いたします! 2人の英雄は後に迎えに来させます」
そう告げると3人の騎士を連れ立ち広間を後にする。
3人の騎士も重傷ではあったが、時間を掛けた回復魔法のかいあって歩ける程には回復していた。
「私達も行きましょうか〜~」
レサトののんびりした声に促され俺達も洋館から外に出た。
もう陽も落ちかけそろそろ夕方になろうとしている頃だった……が、その陽光の中、廃墟入り口に辺りに集団が居るのが見える。
「あれは……?」
先に出て目を凝らしていたスピカが、
「……どうやら援軍の様でしょうか?」
確かに魔物とかではなく人の様だな?
「取り敢えず行ってみようぜ」
「っすね!」
クルサの返事を合図に俺達はその集団に向かって歩き出した。
向こうもこちらに歩いて向かってきたのか徐々にその姿が鮮明になる。
そして……
「げっ!」
俺がそいつに気づくと同時にあっちも気づいた様だ。
「アノンちゃーーん」
ブンブンと手を振りながら、豊満な胸もブンブン揺らしながらこっちに走って来るマイアの姿……
「なんか……凄いっすね」
「あら〜~クルサくんはああ言うのが好みなの?」
「好みと言うか……あれは爆裂級っすね〜~と」
俺の後ろからそんなやり取りが聞こえるが……ってマイアはぇ!!
かなりあったはずの距離がいつの間にか詰められており、気がつくとマイアは目の前だった!
「アノンちゃん!!」
抱きついてこようとするマイアを俺は素早く躱す!
いや、躱したはずだった!
気がつくとふくよかな身体に抱き締められている!
(そんな馬鹿な! 完全に躱したはずなのに!?)
「可愛いーー! これよこれ! この身体もこの髪もこの肌も私の求めているアノンちゃんだーー」
「やめろ、離れろ、暑い、苦しい、ってか胸を押し付けるな!!」
「良いじゃない〜~アノンちゃんもしかして羨ましいの? 揉んでみる?」
「揉まねーよ! つか人の話を聞けぇ!!」
抱き着かれて良いようにされている俺をさっき迄共に戦った仲間達が生暖かい目で見てくる。
「お前ら、見てないで助けろーー!!」
夕暮の足音が近づく中、俺の叫びが廃墟にこだましたのだった……。
「じゃあやっぱり援軍に?」
すっかり夜の帷が降りた頃、ようやく解放された俺は仲間達と焚き火を囲んでマイアの話を聞いていた。
「そうよ。 ここってアルセフィナからの方が近いでしょ? アノンちゃんと同じ様に王都を発った後、一度アルセフィナに戻ってから準備を整えて向かったって訳」
マイアは冒険者の一部と来ており、少しでも戦力になればと思ったらしい。
曰く「だってあたしの大事なアノンちゃんが危機かもしれないじゃない」との事だった。
「しかしアリエスまで連れて来てくれたのは助かったぜ」
アリエスとは羊を一回り大きくした生き物で馬のように乗って移動するのに使う。
馬より足が短く速度はそうでもないが、短い分地面をしっかりと捉えるため岩が多い場所などの荒れ地や急勾配の多い山岳地帯でも安定して乗ることが出来る。
また羊の様な毛皮もあるため長時間乗っていてもお尻が痛くならないと言う超便利な乗り物(?)だ。
「戦力もそうだけど帰り怪我人がいるかもしれないと思ってね」
こう言った所はしっかりしてるんだよなぁ
いつもこの調子でいてくれればいいのに……
「やだぁ、そんなジッと見つめちゃって! あたしに惚れちゃったの?」
見ていただけだがそう言って身体をくねらせ始めた
真面目モードが終了したらしい……
「と、取り敢えず応援は感謝いたします。 お陰でみなを連れ帰ることが出来ますから」
騎士2人をここに置いて置くことを心苦しく思っていたスピカがマイアに頭を下げる。
「いえいえそんな。 国の為に力を尽くしてくださった方々ですから、力になれて幸いでした」
マイアも真面目な顔でスピカに頭を下げた。
「ひとまず今日はこのままここでキャンプして明日の朝に出立しましょう。 野営道具もありますので」
「それは助かる」
「ベリタテ様すみません、この様な宿の無い場所で寝る事になってしまい……」
ベリタテにエルナトが申し訳無さそうに言っているが……あいつらいつも宿じゃねーだろ?
前に王都向かってた時野宿したじゃねーか
「助かるっすね」
「そうね〜~テントは無かったけどマイ枕持ってきてて良かったわ〜~」
普通逆だろ!?
なんで枕があってテント持ってきてねーんだよ……
「あたしはアノンちゃんと二人だけのテントね! YES、NO枕も……あ、これYES、YES枕か……もあるからね!」
お前はほんとブレないな……まぁ一緒のテントはご遠慮させてもらうけどな
……ある意味貞操の危機だわ
「レサト、一緒に寝ていいか?」
「そ、そんな!? まさかアノンちゃん、すでにその女と!?」
アホなことを言っているマイアを放置してレサトに合図すると、
「あらあら〜~」見たいな顔をして、
「まぁ、私はよろしいですよ〜~」
その夜、キャンプでは一晩中マイアのすすり泣きが聞こえていたのだった。
戦闘後のお話です。
本当ならもっと色々あるかもしれませんね。
私の書き方テンポ早いのかも〜。
今回もありがとうです。




