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20話 アルゴル戦にて


「また消えたっすよ!? どーすんすか!」


焦るクルサ、オロオロするエルナト、剣を構えて微動だにしないベリタテ、そして困り顔で杖を構えて止まっているレサト。


あれから色々試しているが、やはり消えるのは厄介で全ての攻撃が通用していなかった。


「お互いの背を向けて守り合うのです!」


残った騎士二人とスピカはそれぞれの背を合わせどこの方向から来ても良いような体勢を取る。


しかしそれは相手が見えていればこそ対応が可能になる。


「ぎゃ!」


「うわっ!!」


1人、また1人と騎士が見えない力で吹き飛ばされる。


「よくも仲間達を……許せません!」


怒るスピカだが相手が見えなくてはどうしようもない。


と、離れた場所にアルゴルが姿を現す。


「見えない私に見えない攻撃……さぞや怖かろう」


(ちっ! 好き勝手しやがって……ん?)


「貴様!」


素早く駆け寄ったスピカが持っていた剣を入れ替えた!


(あれは……レイピア?)


細く突きに特化した剣……普通の剣より素早く攻撃する為か?


と思っていたのだが、スピカにはそれ以上の理由があった様だ。


「王国式剣術『三重突(トリプル)』」


目で追えぬ程の神速による三重の刺突。

アルゴルの姿が掻き消える前にそれを捕らえた!


ビリッとアルゴルの服が破れそのままその姿が掻き消える。


「服だけ……しかし次は逃がしません!」


「恐怖より怒りが勝つか……しかし人は『不可視』に恐怖する、見えないものに畏怖を抱く」


姿を消したまま不気味に声だけ広間に響き渡る。


何処にいきやがった?

くそっ! このままじゃジリ貧だ!

何か手を考えないと……


恐らく前回使った手は通じないだろう

だけど捕まった時もそうだが、相手が攻撃した時や姿を現した時の攻撃は有効そうだ

姿を隠すということは無敵などではないということだろうし……


やはり事前に立てていた作戦……カウンターが一番いいのか?



「くっ!」


いきなりベリタテが声を上げたかと思うと、反射的に剣を振るう!

剣は鋭い音を立てて宙を切った!


「ベリタテ様!」


「大丈夫だ、エルナト。 気配を感じて躱せている……しかし厄介な攻撃だな」


再び剣を構える。

ベリタテは作戦通りカウンターを狙っているようだが、やはり当てるのは難しい様だ。



「では何とか範囲魔法で〜~」


とレサトが杖を構えた瞬間、「きゃ!」という短い悲鳴を残して吹っ飛ばされた!


「危ないっす!」


クルサがそれを受け止めるが二人して壁に叩きつけられる!


「レサト! クルサ!」


二人して重なり合うように倒れ……一瞬クルサの手が上がったがそれもすぐに力なく地に落ちた。


そうして再度アルゴルが姿を現す。


「後3人。 そいつらを葬(おく)ったら、いよいよお前だ……最後まで恐怖して死んでいけ」


そうしてまた姿が消えて行く……が!


「逃さない! 『三重突(トリプル)』」


スピカの剣閃が逃さないとばかりにアルゴルの身体を狙い穿つ!

しかし距離があった為か今一歩遅く、その姿を捉えることが出来ない。


「っ!!」


逆にスピカの方が見えない何かに殴りつけられたように横薙ぎに身体が浮かび地面にバウンドして壁にぶつかった!


「スピカ!」


すぐにスピカに駆け寄り抱え起こすと痛みで顔をしかめた。


(意識は……ある。 鎧のお陰で助かったか)


スピカの身を守る鎧はボコボコに凹んでいたが、お陰で彼女自身はまだ動けるようだ。


俺がスピカを見ている間もベリタテは不可視の攻撃をギリギリで躱していた。


「ベリタテ様!」


「来るなエルナト!」


心配から駆け寄ろうとしたエルナトを手で制する。

しかしベリタテに止められるとエルナトは怒りの形相で剣を無闇矢鱈に振り回し、


「ベリタテ様ばかり狙いおって卑怯者が! この私、ベリタテ様お付きの従者エルナトが相手になるぞ!」


「よせ!」


ベリタテが叫ぶが一瞬遅くエルナトの身体が俺の方に吹き飛ばされてくる。


(運のいいヤツ! 俺が近くで良かったな!)


「『聖衣(ベール)』」


エルナトの身体が光に包まれそのまま壁に叩きつけられる!

しかし魔法のお陰でその衝撃はかなり抑えられたようで呻き声を上げただけで済んだ様だ。


「ぬぅ!」


ベリタテの唸るような声と金属がぶつかる音に慌てて振り返ると、


(ベリタテ、捉えたのか!)


空中でベリタテの剣が止められている。

……が一瞬後に剣がすかされたあとベリタテの身体が他の人同様吹き飛ばされた!


ベリタテにしては珍しく迷った様に見えたが……


(そうか! カウンターを止められて次の一手に迷ったのか!?)


引くのか、押すのか、追撃するか、回避するか……相手が見えないから動きようがなかったのかもしれない


迷ったその一瞬を突かれたか!


つまりカウンターも受けられれば危ないという事かよ


ベリタテは吹き飛ばされて床をゴロゴロと転がり最後には壁に激突して止まった。


「ベリタテ!」


名前を呼ぶが動く様子がない。

そうして再び現れた奴の姿を見るなりスピカが地を蹴る!


再度アルゴルに攻撃を仕掛けるも、姿を消されてレイピアは空を切る。

スピカは素早く反転して広間の端……角へと走っていく。


(作戦通り頼むぜ、スピカ)


スピカの動きを確認しながら俺もベリタテの下へと滑るように辿り着く。


「おや? 逃げるのかね?」


アルゴルの言葉に対しスピカは角に辿り着きそちらを背にすると、 


「これならば貴方の攻撃が限定出来ます! 差し違えてもお前を倒しましょう!」


「私を捉えることすら出来ないお前達が『差し違える』か……愚かな、死ぬのはお前一人だと言うのに」


少し離れた場所に現れたアルゴルの小馬鹿にしたような言葉に、スピカはただ静かにレイピアを構えて答える。



そのやり取りを窺いながらベリタテの状態を確認すると、


(良かった! 気絶してるが思った程の傷じゃねぇ)


俺はベリタテに手を添えると、


「『治癒(ヒール)』」


得意じゃない……得意じゃないが何とか治ってくれ!

ちょっとで良いから……いや出来れば沢山がいいけど!


魔法を掛けつつ信力も高めていく。

信力には回復力を上げる力もある。


そうしてスピカ達の方に視線を戻すと、再びアルゴルの姿が消えている。

スピカが気を張り集中して回避に専念している様子が見えた。


(作戦通りなら、そろそろだな……)


俺もそれに備えてベリタテの元からスピカのいる広間の角に向かって駆け出した。

と、スピカが何かを躱すかのようにいきなりその身を投げる!


「なに!?」


アルゴルの驚く声と同時に、


「今です!」

「任せろ!」


瞬時に高めていた信力を放つ!


「『聖域(サンクチュアリ)』」


先程スピカがいた角を含めて広く覆うような巨大な光の壁が現れた!


「差し違える」と言っていた相手が回避した事で驚愕し逃げの判断が遅くなったはず……完全に捉えたか?


俺の想像通り、壁と『聖域(サンクチュアリ)』に挟まれたアルゴルが姿を現した。


「やっと捕らえたぜ! このコウモリ野郎が!」


「なぜ私の居場所が分かった?」


「お前自分で言ってたろ?『不可視』って……つまり見えないだけで消えたわけじゃないってことだ」


俺はスピカを見て頷くと、


「だからスピカに頼んで誘い込んでもらったんだよ!」


「そんな事で……」


話をしながら結界の抜け道を探し素早く赤い目を走らせるアルゴルだが逃げ道はない。


「そしてお前が『聖域(サンクチュアリ)』に弾かれるのは前回見て分かってる。 もう逃がさねぇよ!」


「なるほどな……魔族である私を。 永劫かなうはずのない人ごときが」


徐々に結界を狭めていく……そうして遂には角にアルゴルを追いやる。


「さて? どうする? 降参するなら……」


言いかけた俺を遮って、


「人は滅びる。 私が死んでもそれは変わらん。 人は魔族には絶対に勝てないのだから」


「ふん、今勝ってやったが?」


「私など魔族の下っ端程度だ。 私達の王はお前達など簡単に凌駕する」


そう言うと自ら結界に触れた。

激しい衝撃がアルゴルを襲うがそのまま身体を触れさせ続け……やがて弾かれる段階を通り越して身体が崩れ始めた。


「!?」


「お前らに囚われるなど……」


激しい衝撃と放電するかのような光がアルゴルの身体を走り回る。


そのままアルゴルは黒い煤となり消えていったのだった。


切りの良い20話でこのお話となりました。


戦闘シーンは伝わるのかが一番不安な部分です。


楽しんで貰うためにも伝わるよう努力していきますね。


ありがとうございました〜。

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