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19話 廃墟にて


「どうでしたか?」


スピカの質問に騎士の1人は首を振って答える。


廃墟となった町、正面の奥に見えるのがひときわ大きく目を引く建物であり、恐らくアルゴルが潜む洋館であろう。


見張りの冒険者がいるはずなので様子を伺いに行った騎士の反応がそれだった。


「そうですか。 どうやら私達のことはバレているらしいですね」


「道中アレだけ手厚い歓迎をしてくれたんだ。 まぁそうだろうな」


「だとしたら罠を張られているのではないのですか?」


俺の言葉に少し怪訝そうなスピカだが俺とベリタテが同時に、


「罠ねぇ……人に負けたことの無い奴が罠を張るか分からねぇが」

「負けを知らぬものが負けないように備えるかどうか……」


俺はベリタテと顔を見合わせると、


「まぁ、そう言う事だな」


「そんなものでしょうか……」


渋々という感じでスピカは頷く。

と、そこへ、


「やはり廃墟に敵の姿は無いようですよ〜~」


魔法で探っていたレサトが間延びした声で報告をする。


「んじゃまぁ行くか!」


そう言って俺は廃墟の中に足を踏み入れる。


「えぇ? そのまま行くのですか?」


普通に洋館に進もうとした俺に驚愕するスピカだが、


「こう言うのは正面から行く。 裏に回り込むとか分かれるとかする方が悪手だ」


俺の回答に珍しくエルナトが頷いて、


「まぁ、アノンの言う事もちょっとはあるかも知れませんね。 建物の配置も不明、戦力を分けるのもよいとは思えませんし。 ですよね? ベリタテ様」


「そうだな」


「ふふふ、私の読み通りです」


……それ俺の意見だろ? なんでエルナト(おまえ)が自慢気なんだよ?


まぁ突っ込んでもキリがないので放置することとする。

そうして俺達は揃って廃墟の中を進み洋館に向かい始めた。



辺りを見るがまともに残っている建物は一つもない


(全部崩れてやがる……か。 魔獣とかに荒らされた形跡もあるな)


昔は洋館に住む者……恐らく領主的なのが居たのであろう、そいつを中心として発展した町だったのだろうが今や崩れた建物も含めて荒野の様に荒れ果てている。


「あら〜~これだけ綺麗ですねぇ〜~」


レサトの声に全員がそちらに目を向け足を止めた。

確かに……ほぼ原形を留めていない建物の中、それだけは崩れも壊れもせずそのままの形を留めていた。


「これって……天使か?」


天に祈るような美しい女性の背に大きな翼が生えている……そんな石像だ。


「どうしてこんな物が?」


「昔は神の使いである天使もよく祀られていたと聞きます。 今でもたまにありますよ」


スピカは知っている様で平然と答える。


「よく壊れてないっすね」


「だな。 周りを見るにコイツも壊れてておかしくないのに……」


俺はそう言いながらも得も言われぬ胸騒ぎを感じていた

何かしら落ち着かない……そしてあまり心地良いものでも無い、そんな思いが湧き上がる


「まぁ、今はいいだろ? 行こうぜ」


俺は皆にそう言って歩き出した。

少しでも早く離れたいと言う思いに駆られて。



そうして俺達は洋館の正面扉まで来ていた。


「ここまでは何もありませんでしたね〜~」


「そうだな、でも流石にこの先はアイツが居るだろう」


俺は軽く扉に触れる。

昔は立派であったろうその扉は今や劣化で風化し埃が至る所に溜まっていた。


「じゃあ行くぜ?」


俺は仲間達にそう告げると扉を開ける。

鍵はなく大きく軋みながら両扉が開いていった。


……扉を開けたそこは広間となっており、正面には階段、左右には他へ通じる扉が見えた。


広間は色褪せていたが赤い絨毯に覆われ当時の絢爛さを物語っている。

階段の上には大きなステンドグラスがあり窓が少ない広間にも関わらず配置が分かるほどの採光となっていた。


そして……階段の上、そこに立つ魔族アルゴルの姿もハッキリと見ることができた。


「あれが魔族……」


スピカの呟きに誰かがゴクリとツバをのむ。


俺以外は皆初めて魔族を目の当たりにしたはずだ

張り詰めた緊張感が音一つ立てることを許さない


そんな静寂を破ったのはアルゴルだった。


「人は魔族に勝てない。 今までの歴史を学ばずまた来るとは……人はやはり実に愚かな生物だな」


こちらを見下ろし言葉を紡ぐ。

決して大きくないもののその声はよく通り俺達全員の耳にもしっかり届いた。


「それならばなぜあの様な襲撃を? わざわざあの様な者達を送るということは我々に来て欲しくなかったのではないのですか?」


スピカがチラリと俺を見てそう返す。

俺が奴の腕を破壊したことを暗に「恐れているのでは?」と言っているのだろう。


アルゴルは平然としたまま、


「……羽虫を潰すにしても時間も行動も取られるのは面倒と言うことだ」


その言葉に騎士の1人が激高すると、


「我らを羽虫呼ばわりするか!!」


剣を抜いて地を蹴るとアルゴルに向けて距離を詰める!


「止まりなさい! 早まってはいけません!」


そう言った時にはもうアルゴルに斬りかかろうとしていた。


(さすが王国騎士、動きが速い! だがあれじゃ前の俺の二の舞に……)


「しねぇ! 魔族が!」


構えた剣が振り下ろされる前にアルゴルの姿が空中に溶け込む様に消えて行く、


「なに!?」


勿論アルゴルが消えるという情報は共有していたが、実際に目にするところまでは半信半疑だったのかもしれない。

しかし実際目の前で奴が消えた事でそれが真実だと突きつけられる。


「何処だ!? 何処に行った!!」


いつかの俺のように慌てて辺りを見回す騎士。

そしてその身体が見えない何かに吹き飛ばされた!!


「うわぁ!」


そのまま広間の壁に激突して赤い花を咲かせる。

壁を滑るように落ちてそのまま動かなくなった。


「よくも!」


憤る騎士達だがアルゴルが何処に行ったのかは全く見えない。


「レサト!」


レサトは首を振り、


「『探知(サーチ)』では細かい場所までは……ここに居るのは間違いありません」


次の瞬間、大きな音を立てて入って来た扉が閉まる。

近くにいた騎士が慌てて開けようとするも、


「あ、開かない……ぐあ!」

「ぐっ!」


開けようとした騎士の体がまたもや吹っ飛び他の騎士を巻き込みながら壁に激突した!


「シェルタン! アルニラム!」


スピカが騎士の名を呼ぶが二人ともピクリともしない。



そして、広間の中央にアルゴルが再び姿を現した。


「心配するな。 人は滅びる運命、早いか遅いかだけだ」


そう言って俺を指差すと、


「お前には借りがある。 仲間が全員死んだのを見て哀しみの中で死んでいくといい」


そう言ってその姿が再び消えていった。


投稿不定期ですみません。


それでも読んで下さる読者の方々には感謝です。


ありがとうございます!

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