17話 移動にて
「さすが馬車、人の知恵ってやつだな! まさかもうここまで着くなんて」
馬車から街道に降り立った俺はウーンと背伸びをしながら感想を口にする。
行きの地獄が嘘のようだったぜ
やっぱり長距離は馬車じゃねーと
王都エルクルドを出て1週間程で俺達は魔族アルゴルが居ると言われた廃墟近くに辿り着いた。
「ここからは道が悪いので歩きです」
そう言って歩み寄ってきたのはいつぞやの女性騎士。
王国大隊騎士団の団長スピカである。
王国に関わる問題は大抵この騎士団が出ることになっており、今回は相手が相手と言うこともあって騎士団の小隊も着いてきていた。
(騎士団が来るってことはやっぱり王家も知ってる話。 そしてそれだけの相手って事か)
確かに人が勝ったことのない相手なら冒険者だけとはならないのかもしれねーけど……
「今の騎士団長のスピカはウレン様と知り合いだ。 その伝で説得をされたらしいな」
同じく馬車から降りてきたベリタテが騎士団を見ながら説明してくれる。
「ベリタテ様〜〜」
少々情けない声で馬車から降りてきたのはエルナト。
酒にでも酔ったように顔は赤くふらふらしている。
「エルナト様、大丈夫ですか〜?」
俺は素早くエルナトによると彼の手を両手でぎゅっと握りしめ心配そうに顔を覗き込んだ。
「うはぁ! だ、大丈夫だから! もういいから!」
素早く後ずさり距離を取るエルナト。
(くっくっくっ……狭い馬車内で隣に座って散々おべっか使ってやったからな。 つかコイツ本当に女に免疫ねーな)
いつかのリベンジ……俺を置いていったことも含めて手厚く御礼をしてやったエルナトは、始終顔を赤くしてドギマギしていた。
未だ『天使のようだ』と言われた外見は健在だぜ?
ここに来るまでにも何回男に言い寄られたか……まぁ言葉か性格を知ると逃げちまうけど
「ふぇ〜やっと着きましたね」
そして同じく馬車から降りてきた冒険者。
ギルドから加えられたのはベリタテと同じ上級冒険者のレサト。
青みがかった黒い髪を後ろで一纏めにして束ねており、穏やかそうな表情をしている女性だ。
のんびり屋の様で言葉の端々にもそれが表れている。
魔術師らしくツバの広い三角帽子にローブ姿、手には大きめの杖を携えている。
年齢は若いはずだが「馬車は腰に来ますね〜」と年寄りじみたことを言っている。
実力は確かだから……とウレン様が言うぐらいだからそうなのだろう。
そしてもう1人上級冒険者の剣士であるクルサが馬車から飛び出してきた。
こちらもウレン様お墨付きの冒険者だ。
身体を伸ばしながら、
「やっと着いたっすね」
「まだまだだから〜〜ここから歩くのよ」
「うげぇ〜〜マジっすか」
レサトに言われてゲンナリした顔を見せる。
若いにも関わらず上級になった実力者らしい。
燃えるような赤い短髪で顔つきからもわかるようにヤンチャな性格をしている。
そして……
「アノンさんは馬車大丈夫っすか?」
「歩きより全然マシだったぜ」
「えーーアノンさん、この距離歩いたんすか! すごいっすよ」
なぜか後輩のようなノリで慕われてしまっている。
(ムジカとアインを足して割って実力つけたらこんな感じか?)
と、わけの分からない計算をしていると、
「みなさん静かに願います!」
スピカのひと言で俺も耳を傾けた。
「ここから廃墟まではもう少しありますが険しい山の中を通ります。 魔獣や魔物に気をつけるようにして下さい!」
全員を見渡しながら注意を呼びかけている。
「見張りの話では洋館の中にいるとの事ですが、何をしてくるか分かりません。 話では見えない攻撃をしてくるとの情報もあります。 重々注意して何か分かればすぐに知らせる様にして下さい! 以上です」
丁寧かつ圧を感じさせる言葉に全員がしっかり頷く。
でもなんか神父様達とピクニックに行った時の注意事項を読み上げてるシスターっぽかったな
先生と言うか何と言うか
そんな事を考えている間にスピカは次々指示を出して隊列を組み直している。
そうして俺達は1列になり、薄暗く無気味な山の中へと足を踏み入れたのだった。
今回もお付き合い頂きありがとうございます。
私の小説は道中カット多めかも知れません。
道中描写がもっと欲しいよーって方いらっしゃるのかなぁ?




