13話 覚悟にて
かつては街道沿いの宿として賑わっていた村、それが今は何一つ音のしない静寂に包まれている。
辺り一面見通すことの出来ない暗がりの中、遠くで獣が魔物かが奇声を上げるのが聞こえた。
その村の中心で俺達は焚き火を囲んでいた。
誰も何も喋らず、ただパチパチと火が爆ぜる音だけが聞こえる。
静寂に耐えられなくなったのか、それとも自分の気持ちを吐き出したかったのかは分からないが……気付いたら呟いていた。
「俺が……無理にアイツを追いかけないでいれば」
静かな小さな言葉は……ただ静寂に消えていく
「俺が傷を与えなければ……此処にいた奴らは……」
この村にあった遺体は20体だった。
宿の従業員とその客達だったのであろう。
冒険者も数名おりドッグタグはベリタテが回収していた。
「……アノン」
静寂の中、静かだが良く通る声でベリタテが名前を呼んだ。
今まで聞いたこともないような……静かで優しげな声だ
「お前を王都に呼んだ理由は二つある」
ベリタテは少し迷ったようだが話を続けだした。
「一つはお前が魔族に傷を与えたという事。 今までどんな冒険者も手が出なかった相手に、だ」
「……」
「そしてもう一つはお前の異常さ、だ」
(異常?)
意味がよくわからずベリタテに視線を向ける。
それを見てベリタテが……初めて笑顔を見せた。
「やっとこっちを見たな? それでいい、話を続けるぞ」
すぐにベリタテの笑顔は消えいつもの様な精悍な厳しい顔に戻る。
「お前が魔族に神聖魔法で傷を与えたと聞いてからその魔法について確認をした。 更に教会の記録からお前への教え方も一般的なのは確認が出来ている」
「?」
俺の魔法? 何が言いたいんだ?
「扉が破壊された時に張った『聖域』。 そして魔族に傷を負わせた『聖印』そうだな?」
念を押すベリタテに俺は頷いてみせる。
「その魔法は、普通ならそんな広い範囲や威力なんて無いはずなんだ」
「……どう言う意味だ?」
「そのままの意味だ」
ベリタテが薪を焚き火の中に投げ込む。
火の粉が舞い暗闇へと消えていった。
それを見ながら話を続ける。
「そもそもあの門のでかさを結界で覆うなど普通に出来ると思うか?」
「え? 俺は……出来ると思ってやったけど」
「つまりお前は自身の信力がそれだけあると感じている、分かっているんだ」
だが----ベリタテは焚き火から目をそらすと、
「普通なら出来ないと分かる。 一般的には張れる結界なんて家のドア程度。 『聖印』なんて精々動きを鈍らせる程度の補助魔法でしかないはずなんだ」
ベリタテは一息つくと再び俺を視線に捉え、
「だからお前はきっと……特別なんだと俺は思っている」
「特別……」
「そうだ。 魔族は長い間この惨状を繰り返してきた。 討伐しようにも人では勝てない。 そしてこの先もそれがずっと続くと思っていた」
ベリタテの真っ直ぐな視線
俺もその瞳を見つめ返す
「だが、お前なら止められるかもしれないと……俺はそう思っている」
(俺が……俺なら)
「止められる……?」
応えるように薪が爆ぜて大きな音を立てる。
そしてベリタテも小さく……だが確かに頷き、
「ああ、止められる。 お前なら救い、守ってくれる」
ベリタテは微かに……ほんの微か
もしかしたらそれは焚き火のせいでそう見えただけかもしれない
少し顔を赤くして、
「俺は……直感なんて信じないが、お前に感じた直感なら信じたいと思っている」
それだけ言うと、
「明日は朝から歩くことになる、お前も早く休め」
そう言ってゴロリと横になる。
それを見て俺も横になった。
先程まで自身を責めていた思い、感覚、後悔、そういったものはいつの間にか薄れ、今は別な想いが心を揺さぶっていた。
(俺が……俺になら止められるかもしれない)
それならきっとやる事は一つだ
そう決めると目を閉じた。
先程までは落ち着かなかった静寂が今は落ち着くように感じる。
焚き火の音に誘われ俺はそのまま眠りに落ちていったのだった。
お読み下さりありがとうございます!
いつも明るい掛け合いが多いので、こういうしんみり系は伝わるか心配でございます
イメージ出来ると良いですが……引き続き頑張りますね!




