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12話 惨劇にて


「そ、そんな……村が……」


ベリタテ達が馬車を預けた村。

小さな村であり街道沿いで憩いとされていた宿場だったのだが……今やそれは見る影もなかった。


建物であったであろう物は黒く炭化してその骨組みだけを残し、あちこちにあらゆる物が散乱している。

誰かの荷物であろう袋、何かを運ぶ為の物だった壊れた樽、服などの布の切れ端、そして2度と動くことの無い人。


「駄目だな。 生きている者はいない様だ」


しゃがみ込んで倒れた人の様子を見ていたベリタテが首を振りながら立ち上がる。


「くそっ! ……くそぉ!!」


今更どうしようもない、様子を確認したがそれなりの時間が経っていた。

俺達が走ろうが急ごうがこの惨劇は防げなかっただろう。


それでも……少しでも急げば間に合った奴だって……


唇をかみしめ拳を握り締める。


肩に手が置かれ、


「割り切れ。 すべてを守れることなんてない。 出来ることを考えろ」


「ベリタテ……俺はあんたほど割り切れるやつじゃねぇ」


「それでも、だ。 何かしろ。 手を動かせ。 後悔なら動きながらでも出来る」


「……くそっ!」


俺は小さく悪態をつくと改めて辺りを見回す。


遺体はどれもそのままの姿で残されている。


……つまり食べる為に襲った訳じゃない?

魔獣じゃないってことか


離れた場所に横たわる遺体に近寄る。

中年女性のようだが、目は大きく見開かれ口は開き、驚愕の表情で事切れている。


離れた場所で死んでいるのは逃げようとした為だろうか?


(……すまない)


手遅れなのを心で詫びて目と口を閉じる。


死因は胸を一突き……欠損はないからやっぱり食べる為じゃねーな

傷も鋭く武器によるもの……だろうか?


女性の遺体を整えて立ち上がる。

目を向けるとベリタテは別な遺体を、エルナトは建物を見て回っているようだ。


(確かに小さな村だな……建物は3つ程、跡形もないが)



「アノン」


ベリタテに呼ばれ近づくと、


「こいつを見ろ」


さっきベリタテが見ていた遺体か……


腰には帯剣、背中には盾を背負い鎧を身に纏っている。

首にはドッグタグが見え冒険者であることは一目瞭然だ。


「肩から腰へと一刀か……鎧を着ててもこの斬れ味だなんてな」


「それもだが、気づかないか?」


ベリタテに言われ再度遺体に目を向ける。


剣と盾を持っていることから剣士だろうな

前線で戦う者が正面からこれだけの袈裟斬りを食らうだろうか?

止めたり受け流したり回避しようとすれば何かしら……痕跡が……?


そうして俺はベリタテが言わんとしていることに気付いた。


「こいつ剣と盾構えてねぇ!」


「剣は帯剣したまま、盾も背負ったまま。 敵が攻めてきてそんな冒険者がいるか?」


倒れている場所も村の中心辺りだし格好からも……寝ていた、宿で休んでいた、も考えにくい


「正面からわけも分からず殺されたってわけか」


「わけの分からない攻撃。 お前の言っていた魔族の攻撃に似てないか?」


「!?」


そうだ! 見えない攻撃だ!

アイツも姿が消えたと思ったら、その後わけの分からない攻撃で吹っ飛ばされたんだ


「じゃあこれも魔族の仕業なのか?」


「分からんが……」


冒険者の遺体を整えて立ち上がったベリタテは、


「今まで魔族が出ることは早々無かった。 それが今回現れたのはお前の話からほぼ確定だろう。 そして傷を負わせている」


ベリタテは俺をまっすぐ見ると、


「これは傷を負った奴の八つ当たりかもしれん」


「!?」


それじゃあ、この惨状は……俺のせい……なのか?


「あくまで『かもしれん』だ。 何一つ確定はしていない。 お前だからこそ話した、気負うなよ?」


「……」



「あ、ベリタテ様!」


建物跡を調べていたエルナトが何か見つけたのか走り寄ってきた。


「どうだ? 何かあったか?」


「それが、やっぱり預けた馬車は完全に壊されてまして……馬も」


「そうか……」


ある程度予想はしていたのだろう。

すぐに考えをまとめたベリタテは、


「王都までは歩くしかないな。 途中で馬車が拾えればよいが……そうそう無いだろう」


馬車は高額であり行き交う数も多くはない。

途中で会えることはまずなさそうだ。


「エルナト、お前は野営の準備をしろ。 俺はこの人達を……」


倒れた人達を指し示すベリタテの手には、いつの間にか取ったのかドッグタグが握られている。


そして立ち尽くす俺に向かって、


「お前は少し休め。 色々あり過ぎだ、整理する時間もいるだろう」


それだけ告げると他の遺体へと歩いて行ったのだった。


お読み下さり感謝です

ありがとうございましたー!

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