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10話 出発にて


日も落ち暗くなった自室で俺はベッドで横になって休んでいた。

既にみんなは引き上げており俺一人となっている。

テーブルに置かれた蝋燭がジジッと音を立てる以外静かなものだった。


(魔族……ねぇ)


横になりながら先程ベリタテに聞いた話を反芻する。



魔族は魔物や魔獣を生み出し人を襲わせる

人を滅ぼそうとしている存在だ

表に出てくることは滅多になく姿を現した時には大きな被害を受ける事件を起こす


今までも幾多の冒険者や兵士が挑んだものの倒せたことは無い

その理由は魔族の使う特殊な能力にあると言われている


それだけ強いのになぜ滅多に出てこないのか

能力とは何なのか


分かっていることはほとんどなく、唯一分かっているのは人に似た姿でありながら羽や翼、角といった特異な部分がある……と言うことだけだった



(魔族……アイツがアルセフィナを襲わせたに違いない)


考えながらベッドに腰掛けて包帯を巻き直す。

蝋燭の灯りに照らされ白くきめ細やかな肌が浮かび上がった。

傷を負ってはいるもののその美しさが美少女と言われる所以なのだろう。


(シスター時代に習った応急手当も色々役立つもんだな)


千切れかけた腕は気絶している間に運ばれた先、治癒師達の回復魔法で治してもらっていたが、それを治すのが精一杯だったらしい。

全快まではまだ遠く解いた包帯の下からはまだ生々しい傷が現れた。


それを覆うように新しい包帯をテキパキと巻いていく。


(腕は完全に治ってやがるな……そう考えるとやっぱり回復魔法って大事だなぁ)


包帯巻き終え簡易的な服を纏うとベッドに横になる。


天井に目を向けぼーっとしながら、


(そーいや結局どうして俺は王都に行くことになったんだ?)


俺の怪我が癒え次第出発すると言っていたけど……話だけなら済んでるのになぁ


(何だか面倒な事に巻き込まれちまったなぁ……)


そんな事を思いながら目を閉じ眠りに落ちていったのだった。



〜〜〜〜1週間後〜〜〜〜


「準備できたか?」


いきなり扉を開け入ってくるなり開口一番そう告げるベリタテ。


「だからノックぐらいしろ! 俺が着替えてたらどーすんだよ!」


もはや何度目になるか分からないが勝手に入ってきたベリタテに向かって軽く睨みつけてやる。


全く! こいつの頭ン中どーなってやがんだ?


「別にどうもしない、それよりさっさと出発する準備をしろ」


淡々とそう告げるベリタテに腹が立つ!


一応俺だって着替えとか見られるのは恥ずかしいんだぞ!

それなのにコイツは〜〜!


「だー!! くそっ! 準備だな!? 出来てるよ! 外出て待ってろ!」


一人で吠える俺をそのままに部屋を出ていくベリタテ、それと入れ違う形でミラが入って来た。


「おはようアノン。 身体も準備ももうバッチリみたいね」


準備が終わっている姿を見て笑顔を見せたが直ぐに暗くなる。


「アノン、無理だけはしないでね? 王都に呼ばれた理由もまだハッキリとはしてないみたいだし……心配で……」


そう言って俺の裾を掴む。


(そうなんだよなぁ。 王都に呼ばれた理由はベリタテも知らない様だし……)


しかし彼女を心配させるわけにはいかない。

俺は笑顔を見せると、


「大丈夫だって! ぱーって行ってぱーって帰ってくるからよ」


「気を付けて行ってきてね」


「ああ。 さっさと帰ってこないとな! こっちのギルドは俺が居ねぇとやわな奴らばっかりだし」


その言葉にミラがクスリと笑みを漏らした。

と、急に気づいたように、


「あ、それと王都って言ったら可愛い子は誘われちゃうらしいから気をつけてよね?」


意地悪っぽくそう告げる彼女に、


「あのなぁ? 俺は色恋には興味ねーよ、変なこと言ってきたら逆にぶん殴ってやるぜ」


「ふふ、やりすぎないようにね?」


会話しながら部屋を出て鍵を掛ける。

この部屋は冒険者ギルドの建物にある一室でセイバーの仕事柄借用させてもらっていた。


「はい鍵。 掃除しといてあげるから」


「おぉ、助かる、頼んだぜ?」


差し出された手に鍵を落とすとそのままギルドの外に向かう。

荷物は大きめの背負い袋と腰に下げた巾着、そして愛用のメイスだ


(忘れもんはねーよな? まぁ大丈夫だろう)


ポンポンと巾着を叩きながら外に出ると眩しい日差しに思わず目を細める。

雲一つ無い程の快晴で風もなく王都までの旅でなければピクニック気分で出歩けただろうに。


俺の姿を認めると待ち構えたようにベリタテとエルナトが歩み寄ってきた。


「遅いぞ! 一般冒険者がベリタテ様を待たせるなんてあってはならないことだ!」


顔を赤くして文句を言うエルナト。


(うーん、前から思ってたけど……もしかして俺ってコイツに嫌われてんのか?)


マジマジとエルナトを見つめると、それまで口をとがらせてガミガミ言っていたエルナトが急にトーンを落として小声になる。


「な、なんだ!? 何か文句でもあるのか? いち冒険者風情が!」


いや、視線をそんな風に逸らしながら強気で言われても……


ベリタテにもチラリと視線を向けたが心底どうでも良さそうだ。


うーん? 正直コイツはどうでも良いけど、これから旅をするって時に仲がこじれるのは避けたほうが良いか?

嫌われてるって事は知らねーうちに何かしちまったのかもしれないしな


(そうと決まったら久しぶりにアレをやるか! 子供の時によく使ってた必殺技(?))


俺は歩幅を小さくトコトコとエルナトに近づく。


「な、なんだ?」


いきなり目の前に来たことで文句でも言われると思ったのかアタフタするエルナト。

そんな彼に向かって下から見上げると、


「これからご一緒ですね、よろしくお願いいたします」


両手を胸の前で重ね合わせ出来るだけ可愛らしくそう告げてやった。


「!?!?!?」


目を白黒させ口をパクパクするエルナト。

手をせわしなく動かし顔を赤らめ落ち着きなく目が彷徨い……、


「あ、その……まぁ、なんだ……よろしく」


茹で上がりそうなほど真っ赤になって呟くようにそう答えた。


(くくっ、この技で何度神父様の怒りを回避したか!  大抵の奴はこうすれば怒りも小言もお叱りも消えちまうって技だぜ!)


俺に背を向けそそくさと離れるエルナトをニヤニヤ笑いながら見送ってやる。


「お前、意外にあくどいな」


呆れたような感心したようなベリタテの言葉に、


「生き残りの知恵ってやつさ。 んじゃまぁ仲良くなれたって事で出発しようぜ!」


そう言って歩き出そうとした俺は……足を止めた。


「お前等……」


いつの間に来ていたのかミラを筆頭にアインやムジカ達、冒険者の連中まで集まっていた。


「気をつけて!」

「お土産期待してるぜ」

「帰ってきたらまた勝負お願いします!」

「一旗あげてこいよ!」


口々にそう叫ぶ奴らに手を振る。

そんな中ミラと目が合う。


(いってらっしゃい)


そう聞こえた気がして俺は握り拳を突き上げる。

そして大声で叫んでやった!


「行ってくるぜ! 留守は任せたかんな!」


そうして俺はアルセフィナの町を後にしたのだった。

ありがとうございます!


今回アノンの違う一面が見れた会となりました。


これからも応援してくださいますと嬉しいです。

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