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288話 安堵とそれぞれの気持ち

「ロナ!!」


 様々な話の後、俺はロナのいる部屋へと案内された。そこには女医とベッドで眠るロナの姿が。もしかして何かあったのか? と思って女医に問い詰めたが、どうやら眠っているだけのようだった。


 ただ、使われた薬が少し強めの薬らしく、あのロナの父親の男の話にあったとおり、一度目が覚ましても眠る事があり今はその状態なのだそうだ。


 俺はベッドの側に寄り椅子に座ってロナの手を握る。見た感じ特に異常は無さそうだ。


「ロナ君には目が覚めるまでここにいてもらおうと思う。彼女から話も聞きたいしね」


「……そうですね。今はここの方が安全ですし、その方がいいでしょう」


 一緒に来ていたレイブン将軍の言葉に頷く。いつ目が覚めるかわからないし、もしかしたら副騎士団長たちの仲間が彼女を襲うかもしれない。来たら許すつもりはないが、態々危険を犯す必要もない。


 それから、レイブン将軍たちと今後の話をする事になった。今回の事はレイブン将軍から陛下には話してくれるようなので、俺はとりあえず屋敷に帰る事にした。ここにいても出来る事が無いし。


「レディウス、大丈夫か?」


 色々と考え事をしていたら後ろから声をかけられた。振り返るとそこにいたのはティリシアだった。心配そうな顔で俺の顔見る彼女。


 ……普段はキリッとした表情を見せている彼女がそんな顔をするなんて可愛いな、そんな事を思うのは気持ちを聞いて受け入れたからかもしれない。


「ティリシア。すまないな。迷惑をかけて」


 ただ、そんな事を考えている事をおくびも出さず軽く頭を下げる。彼女に迷惑をかけてしまったからな。


「気にするな。私は職務を全うしただけだ。それにロナ殿がそんな事をしないのはわかっていたしな」


 そう笑うティリシア。そう言われると救われる。ただ


「それから、私の家に行くって話はまた今度でいい。今はロナ殿を気にかけてあげてくれ」


 笑いながらそんなこと言うが、少し悲しそうな表情を一瞬浮かべたのは見てわかった。俺は何も言わずにそのままティリシアを抱きしめた。


 彼女は一瞬驚いて体を強張らせるがそのままゆっくりと抱きしめ返してくれる。鎧を着ているため硬いがそれでも所々彼女の温もりを感じる事ができた。


「……本当にすまないティリシア。君に我慢させる事になって」


「何を言う。レディウスがロナ殿を大切にしている事は知っている。私の事は、彼女の事が解決してからでいい。でも……ふふっ、君とこんな事をする日が来るとは思わなかったよ」


 そう言いながら少し力を込めて抱き締めてくれるティリシア。確かにあの時はこんな関係になるとは思っていなかった。


 しばらく、抱き締めあった後、どちらも何も言う事なく自然と離れる。恥ずかしそうに頬を染めるティリシアを見てると俺まで赤くなりそうだ。


「まあ、ロナの件が落ち着いたらまた話そう。俺も元々予定していた滞在日数を伸ばすつもりだから」


「わかった。……そ、その、私から会いに行ってもいいか?」


「く、くくっ、勿論だよ」


 あまりにも不安そうにする姿が可笑しくて思わず笑ってしまった。その事にムッとした顔をするティリシアだが、ここでまた抱き締めると先ほどと変わらないのでそのまま手を振り別れる。彼女もまったく、と言いながらも笑顔で送ってくれた。


 そのまま、屋敷に戻ると


「レディウス!!」


 アレスが飛び出して来た。朝、ロナの事を伝えに来てくれた後、俺が王宮に行く事になったから帰ったと思っていたが、どうやら俺がいなくなってから一度帰ったらしいが、心配でいてもたってもいられなくなりまた来てくれたようだ。屋敷を管理する侍女には、アレスは自由に通していいって言ってたしな。


 取り敢えず、帰ってくるかわからなかったけど夜までいようとしてくれていたようだ。


 ……ティリシアとアレスの心配してくれる表情を見て、なんか心の奥底にあるモヤモヤが晴れるようだ。


 今回の事件も、結局俺が黒髪である事で不満に思ったリンダロス副騎士団長が俺を貶めようとして企てた事だ。


 元々計画されていたとはいえ巻き込まれて亡くなったエシュフォード伯爵に、ロナも巻き込んでしまった。


 昔黒髪の俺が関わる事で周りに迷惑をかけてしまい後悔していた時に、ヴィクトリアに救って貰い、その後元王子のせいでヴィクトリアが危ない状態になった時はセプテンバーム公爵に救われた。


 そこからはあまり考えなくなっていたところで今回の事件。また黒髪だから……と考えていたが、こんな黒髪でも俺を心配してくれて、好意を向けてくれる人たちがいるんだ。


 2人だけでなく、レイブン将軍にミストリーネ団長もだ。彼らは俺の実力を認めてくれて、髪色なんか関係無く心配してくれる。


 それなのに、勝手に落ち込んで自分を勝手に卑下するのはその人たちに失礼だよな。


「レディウス?」


 急に黙り込んだ俺を心配そうに見てくるアレス。さっきのティリシアの時もそうだが、好意がはっきりとわかった今だと、その仕草一つにしても愛おしさが湧いてくる。気が付けばアレスを抱きしめていた。


「ありがとうな、アレス。皆が俺を心配してくれるから、俺も救われる」


 突然俺が抱き締めたので、腕の中であわあわと慌てるアレスだが、俺の言葉を聞いてゆっくり抱き締め返してくれた。


「僕だってレディウスに救われたからね。これからは一杯助かるから!」


 にヒヒ、と笑うアレスに俺は心が熱くなり再度強く抱き締める。……早く領地に帰って彼女たちも抱き締めたくなったな。


「むっ、今は私だけ!」


 ……女性ってなんでわかるんだろな。俺は苦笑いしながらアレスを抱きしめながら頭も撫でるのだった。


 それからアレスと夕食を共にして、アレスを家へ帰してから、溜まった書類を片して今日は寝る事にした。昨日はロナの事が気になってほとんど眠れなかったからな。


 色々とこれからも考える事はあるが、まず1つ問題が片付いた。早くロナとも話したいな。

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