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まれかわつうた。まれかわつうた。きこえるか?
――つくえさん? つくえさん?
そうだ、まれかわつうた、おれだ
――なんで? つくえさんは、消えたんじゃ
ふふ、まだそんざいしている
――よかった! よかった! 本当によかった、よかった……
「ふっ!」
息を吹き返したと言ってもいいだろう。通太は目覚めた。
目を開けて、僅かな光に滲む茶色の机の木目を確認した。それからゆっくりと顔を上げた。時計に目をやる。あと五分ほどで午後からの授業が始まる。それにしても深い眠りだった。十分ほどの短い時間でも熟睡していたのは、間違いない。すっきりしているから。
(今のは、夢?)
通太は自問した。
(声が聞こえたような……夢か……)
彼は、また机に伏せた。夢かどうか確かめるために。
目を瞑り、語りかける。
(つくえさん、つくえさん)
――――
(つくえさん、つくえさん)
――――
(つくえさん)
――――
(やっぱり夢――
(――れかわつうた)
「え?」
(稀川通太、きこえるか?)
「つくえさん?」
声が出ていた。
(声が大きいんじゃないか?)
「本当に、本当に、つくえさん?」
(ああ、おれだ)
「本当に?」
(ああ)
「ひゅうぅぅー――やったぁああああああああああああああ」
通太は飛び上がった!
「やったぁぁ! やったあぁぁ!」
天井を見て喜ぶ。ガッツポーズもする。
当然、教室にいる生徒らは、唖然の目で彼を見る。
喜ぶのも束の間、通太は再び、机に突っ伏す。
勢い余っておでこを机に強打した。
(大丈夫か?)
(痛てて。はは、大丈夫です)
通太は心の中での会話に切り替えている。
(よかったよかった、本当によかった)
涙が出ていた。
(また……またこの教室で逢える……つくえさんと逢える……)
涙と鼻水と汗で机はぐしゃぐしゃ。でも、かまわない。
いつもなら、腕におでこをのせて机に伏せるのだが、今は頬を直に机に擦りつけ喜びを享受している。
隣の席にいる女子生徒に通太の顔は丸見え。生徒は、驚いている。
驚かれていることは知らない通太だったが、額を腕にのせて、いつも、つくえとコンタクトをとる姿勢に戻った。
(この机に帰ってこれたんですね。よかったよかった。僕はもう駄目と――)
(まれかわつう――)
(――ってました。あれからどうなったんです? 一波さんの体から抜け出したんですか?)
(稀川通太!)
(はい!)
大音響が脳内にこだましたので通太は驚いた。
(どうしました?)
(話をきいてくれ)
ここで五時限目の始業チャイムが鳴った。




